この素晴らしい世界で俺だけが祝福されない   作:ZAT  

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第12話

「お、イチノセか。久しぶりだな」

 朝の平和なギルド内に響き渡る泣き声。

 その発生源へ向かうと、テーブルに泣き伏せる青髪の女性とカズマ達がいた。

 

「あぁ、一週間ぶり位か。……それよりどうしたんだ。その人は」

 彼女の泣き声が寝起きの頭に響き、中々気分が悪い。

「いやあ、アクアには俺の本音をありのまま言っただけなんだが……」

「一体何を言ったんだ……?」

 

「……お前の回復魔法を教えろとか、宴会芸しか能のない穀潰し、とか?」

 飄々とした様子でえげつないことをさらりと言う。

「カズマの攻撃力でそんな風に言ったら、大抵の女性は泣きますよ」

 そう口にして呆れた目でカズマを見るのは、森で彼におぶられていた少女――めぐみんというらしい。

「ストレスが溜まっているのなら、代わりに私を口汚く罵ってくれて構わない!」

 一人興奮するダクネス。

 アクアと呼ばれる女性はチラチラとカズマを見て、泣いたり泣き止んだりを繰り返している。

 彼女も難儀な性格をしていそうだ。

 

「それで……、そこにいるのはカズマの友人ですか?」

「ん? あぁ、出身が同じでな。少し前に知り合った」

「イチノセ。一応、”アサシン”だ」

 この職業についてから一度も戦っていないので、実質名前だけみたいなものである。

「おぉ……」

 めぐみんの目が赤く光った。

「こいつは”アークウィザード”のめぐみん。それと”クルセイダー”のダクネス。そこで泣いてるのが”アークプリースト”のアクアだ」

「ダクネスとは最近一度クエストに行ったな」

 

 数日前の一撃熊討伐。

 あれはかなり刺激的な光景だった……主にダクネスが。

「マジかよ……大丈夫だったか? こいつは――」

 

 カズマが何か言いかけるのをアナウンスが遮った。

 

 『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で正門に集まって下さい!」

 

 

 *

 

 

 街中から集められたアクセルの冒険者達。

 安物の装備に身を包んだ初心者から、実力者としての風格を纏ったベテランまで様々だが、

 

「――俺の城に、毎日欠かさず爆裂魔法を打ち込んでく頭のおかしい大馬鹿は、誰だああああああ!」

 

 ここにいる全員が目の前にいる怒り狂ったモンスターの迫力に気圧されていた。

 

 首の無い馬に乗った、首無し騎士。

 自らの頭を手に持ち、そこから喋っているようだ。

 

 冒険者達は一瞬ざわついたが、ほぼ全員が犯人に心当たりがあるようで、一斉に辺りを見回す。

 

「カズマ。あれってデュラハンって奴じゃないか?」

「……あ、あぁ」

 カズマへ話しかけるが、何故か空返事。

 隣に目をやると、彼もさらに隣を見ている。

 というか、周りの冒険者全員が、冷や汗を垂らしためぐみんを見ていた。

 

 暫くして、何か決心がついたのか彼女は単身前に出て、デュラハンと対峙する。

 

「我が名はめぐみん。アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者……」

「……めぐみんってなんだ。バカにしてんのか?」

 

 俺もデュラハンと同じ感想だった。

 

「めぐみんって、本名なのか」

「紅魔族ってやつの特徴らしい。目が紅くて、高い魔力と知性を持った変な名前の種族だってアクアが言ってた」

 

 めぐみんは背丈ほどある杖をデュラハンに突きつけ、彼をおびき寄せる為に居所である城へ魔法を放っていたのだと豪語する。

 

「凄腕の魔法使いってわけか」

 現にデュラハンに対しても全く物怖じしていない。

 カズマがため息をつく。

「めぐみんは、爆裂魔法っていう一日一回しか撃てない魔法だけを使うポンコツアークウィザードなんだよ。しかも爆裂魔法以外の魔法を一切覚えようとしない」

 

 前言撤回。

 ダクネスよりも癖が強いかもしれない。

 カズマは”冒険者”といっていたが、このパーティーで一体どんな戦い方をしているのだろうか。

 

「ていうかあいつ、毎日爆裂魔法撃たなきゃ死ぬとか駄々こねるから、城まで連れてってやったのに、一丁前に作戦とか言ってるぞ」

「撃たないと死ぬ……?」

 冗談と思いたいが、ここは異世界。

 そういう小難しい種族だとしても納得せざるを得ない。

「しかもさらっと、この街随一の魔法使いとか言い張っているな」

「しーっ! そこは黙っておいてあげなさいよ! 今日はまだ爆裂魔法使ってないし、後ろにたくさんの冒険者がいるから強気なのよ。今良いところなんだから、このまま見守るの!」

 

 ギルドで聞いたカズマの毒舌も凄かったが、アクアの的確に羞恥心を煽るような発言も中々の物だ。

 実際めぐみんの顔はほんのり赤くなっている。

 

 寛大なことにデュラハンは、めぐみんが爆裂魔法をやめればこちらに手出しはしないらしい。

 先程まで怒り狂っていたのが噓のようだ。

 その気になれば俺達レベルなど一捻り、とでも言うのだろうか。

 

 それでも撃つのを止めないと言うめぐみん。

 

「カズマ、止めなくていいのか。相手は魔王軍幹部だぞ。万一にも気が変わったら――」

 

 殺される。と言おうとしたが、カズマはデュラハンとめぐみんのやり取りをどことなく楽しそうに眺めている。

 いつの間にか彼女の横にアクアが並んで加勢しており、この状況の危うさを理解しているのは真剣な様子のダクネスのみ。

 

「――そうだな、ここは一つ、紅魔の娘を苦しませてやろうかっ!」

 デュラハンは左手の人差し指をめぐみんへ突き出した。

 この展開は不味い。

「汝に死の宣告を! お前は一週間後に――」

 ダクネスがめぐみんの前へ駆け出すが、それでは彼女が犠牲になるだけだ。

 「”ショートテレポート”!」

 ”アサシン”のスキルが発動すると共に視界が一変、発動前に注視していた場所――デュラハンの真後ろに切り替わる。

 

 逆手に握ったマジックダガーを肩口から袈裟切りに叩き込む。

 

「ひああああああー!」

 

 鎧ごと切り裂いた感触と、情けない悲鳴を上げるデュラハン。

 勿論詠唱は中断された。

 

 ぶっつけ本番でショートテレポートを使った所為で襲ってきた吐き気の波を何とか抑えながらダクネスの元へ移動する。

 

「……”デコイ”を使ってくれ」

「わ、わかった」

 

 いきなり隣に現れて驚いたのだろうが、直ぐに了承。

 俺に気付いたデュラハンが声を荒げる。

 

「お前か! いきなり背中に焼けるような痛みが走ったから、何事かと思ったわ! 何だそのとんでもなく強い神聖魔法が込められた武器は! ……と言うかその見た目、王都に出るやたら強い武器を持ってる奴らと特徴が似ているな? まさか神器持ちという奴か」

 

 クリスの持っていたダガーは思っていたよりも強力らしい。

 タダで貰ったので返した方がいいかとも思ったが、今は有難く使わせてもらうことにする。

 

「お前の相手は私だ! ”デコイ”!」

 

 ダクネスに合わせて”潜伏”、ではなく上位スキル”インビジビリティ”を発動。

 距離を取る為移動しても、足音は全く発生しない。

 後ろではめぐみん達の元へやってきたカズマが何やら作戦を伝えている。

 カズマとめぐみんが移動を始め、ダクネスを囮に俺は続けて死角からの奇襲。

 鎧を切り裂けたのは最初のみ。

 二撃目からはどういったわけか刃が通らなくなり、少しずつしか傷が入らない。

 

 「ええい! ちょこまかと動きおって!」

 

 デュラハンは兜を上に放り投げ、両手で大剣を握る。

 背中に走る悪寒。

 瞬間、デュラハンは俺にも迫る速度で身の丈程の剣を振りかぶりダクネスに切りかかる。

 

 背中側にいた俺は横を抜け彼女の体を掴む。

 身体を真っ二つにせんとする刃が眼前へと迫る。

 

「”シャドウステップ”!」

 急加速した体はダクネスと一緒に冒険者達の方向へ移動。

 ベルディアの一撃は地面を割り、人ひとり分の深さはある亀裂を造った。

 

「今だ! めぐみん!」

 どこからかカズマの声が聞こえる。

 ベルディアの周りに魔法陣が何重にも展開。

 

「――貴様ら覚えていろ! この報いは必ず!」

 奴も魔法の詠唱を始める。そして、

 

「”エクスプロージョン”ッッ!」

「”テレポート”ッ!」

 

 アクセルの正門前に、巨大なクレーターが形成された。

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