この素晴らしい世界で俺だけが祝福されない   作:ZAT  

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第13話

 爆裂魔法。確かに一回しか撃てないのも納得だ。

 巨大なクレーターを眼前に、感心する他ない程の威力。

 

「あいつ、尻尾巻いて逃げ出しやがった!」

「我が爆裂魔法の前には、魔王軍幹部も敵ではありませんでしたね。次会った時には確実に仕留めてみせましょう」

 

 めぐみんを背負いながらやってくるカズマ。

 ダクネスはベルディアの攻撃を一身に受け、流石に堪えたのか地面にへたり込む。

 アクアが駆け寄って回復魔法をかけるが、鎧についた傷からしてダメージは相当だろう。

 

「すまない、無理をさせたか」

 一撃熊との戦いで見せた耐久力は確かに目を見張る物があったが、高難度モンスターと魔王軍の幹部を一緒くたにしたのは見積もりが甘かったと言わざるを得ない。

「だ、大丈夫だ。……むしろ最後の一撃、直撃したらい、一体どうなっていたか……!」

「お前興奮してるだろ」

「し、してない……」

 カズマのツッコミ通り、彼女の頬が紅潮していた。

 とは言え、あれ以上の攻撃を受ければ命の危険にさらされていた可能性は捨てきれない。

 

 背負われためぐみんが肩口から顔を覗かせると。

「それにしても、先程の猛攻は凄かったですよ! どこからともなく現れ、死角から切りかかったかと思えば、またどこかへ消えている……」

 彼女の目がギルドで見た時の数倍は紅く輝いている。

 

「そうだ、助かったよイチノセ。お前がいなかったらダクネスがヤバかった」

「義を見てせざるは勇無きなり。出来る事をしただけだ。……それに、俺は勝手にダクネスへ危険な立ち回りを頼んだ。カズマには悪い事をしたな」

「……まあ、この通り生き生きとしてるし。大丈夫だろ」

 カズマの指さす先では、完全復活したダクネスが自分の世界に入っていた。

 

「カズマ! カズマもレベルを上げて”アサシン”になるのです! 戦い方も姑息なカズマにピッタリではないですか! しかもあの言葉、意味は分かりませんが紅魔族の琴線に激しく響きます!」

「なれるか! ていうか姑息とか言うな」

 

 元の落ち着いた顔つきに戻ったダクネスとアクアが合流。

 真剣な面持ちで口を開く。

「ベルディアが最後に言っていたが、奴はまたこの街に来るだろう。騎士団が間に合えばいいが、最悪の場合ここにいる冒険者だけで戦わなければならない」

「その時は、私の浄化魔法で消し去ってあげるわ!」

 アクアはそう豪語する。

 

 脅威は未だ過ぎ去っていないものの、何とか撃退という形で幕を閉じた。

 

 

 

 

 ベルディアとの闘いから一週間。

 仕事が減った影響で閑散としたギルドの光景も見慣れてきた頃。

 朝一に来た俺は、掲示板を物色していた。

 ”アサシン”のスキルを試そうとしたものの、ソロで達成できるようなクエストは今日も張り出されていない。

 

 他にすることも無いので宿に戻ろうとしたが、外は快晴。

 冒険者ギルドで見た覚えのある顔が、人々が往来する中に点々と見える。

 大通りに店を構える店主達はここぞとばかりに呼び込みに精を出し、街がいつもより活気づく。

 

 いつだったか、街を散策したいと思った事があった。

 

 今日は予定を変え、取り敢えず人気のある方向へ歩くことに。

 行き先は当然決まっていない。

 

 以前お世話になった教会はこの世界の国教である女神エリスを祀る場所らしい。

 日本で見る程豪華ではない簡素な造りではあったが、かと言って劣っているような雰囲気は微塵も無い。

 ここを管理する司祭の男性は幸運の女神について懇切丁寧に説明してくれた。

 

「――司祭様! またアクシズ教が襲撃に!」

 

 後ろの扉が突然開く。

 血相を変えてこちらに来た信徒らしき人に呼び出され、彼はお礼を言う間もなく向かい。

 外では青い服装の金髪シスターが声を荒げる。

 

「……」

 

 建物内に一人、取り残される。

 宗教同士の対立に巻き込まれるのも御免なので、足早に教会を後にした。

 

 

「いらっしゃいませ!」

 

 街の少し外れ、ガラス張りの目立つ建物で”ウィズ魔道具店”と書かれた店。

 中の木棚にはポーションを始め、並べられた恐らく魔道具――その殆どが埃を被っているのが少々気がかりだが――であろう品々。

 

 茶髪で片目を隠す、紫のローブを着た店主の女性がカウンターの向こうから出迎える。

 店内を見て回れば彼女は熱心に魔道具の解説をするが、そのどれもが中々手の出せない高価な物ばかり。

 

「盗賊職にお勧めの物って、何かありますか」

 来たからには何か一つは買っておきたい。

 彼女に尋ねると、反対側の棚にちょこちょこと歩いていく。

 

「それでしたら、こちらなんてどうでしょうか!」

 

 勧められたのは、何かの皮で出来た三つの小さな鞘を纏めたホルダー。

「――これは魔力を込めるだけで使い捨ての投げナイフを作れるマジックアイテムで、魔力消費も少ないのでとても便利なんですよ!」

 状態異常のスキルを扱うので、遠距離攻撃用の道具は是非欲しい。

 投げナイフも勿論の事、弓矢を使うことも考えたが消耗品であり前者は費用が高く、後者は重量が足枷になる。

 

 確かにこのマジックアイテムは盗賊職にピッタリだ。

 多少高額でも購入出来ればかなりの戦力アップになるだろう。

「これ、幾らするんですか」

「百万エリスになります!」

 

 高すぎる。

 

「……手持ちが足りないので、買えるようになったらまた来ます」

「わかりました。またの来店をお待ちしていますね!」

 

 所持金で買える物も無い為、手ぶらのまま店を出る。

 最後まで屈託のない笑顔で接客され、心が痛んだ。

 

 

 夕方になり、店を閉める所も出始める。

 最後に寄ったのは、特に目立つ物も無い雑貨屋だった。

 

「お客さん、見た所冒険者みたいですが……それ、剣としては使いものになりませんよ」

 

 だが、店内に置かれている大振りな長剣。

 これに”宝探知”が今までにないレベルで反応していた。

 

「使えないというのは」

「やたら重いし、切れ味も悪いと来たもんで。一応インテリアとして売りに出してるんですが」

 

 そうは言っているが、スキルの反応からして間違いなく本物。持ち主も見当がつく。

 最初に会った日本人、キョウヤの持っていた物。

 

「誰が売りに来たのか、聞いても?」

「構いませんが……、新人って感じの冒険者でしたね。使えないからって引きずりながら持ってきましたよ」

 

 彼が売りにきたわけでは無さそうだ。

 盗まれたか、それとも何処かで置いてきたか。

 どちらにせよこの価値が分かる誰かに買い取られてしまっては、彼の元に戻ってこないかもしれない。

 

 財布を出す。

「お客さん、買われるんですか!? あとで使えないって文句言わないでくださいよ」

 

 店主に10万エリスを支払い、剣を受け取る。

 かなり重いが、持つだけなら問題は無い。

 

 何とか宿に戻る頃には、日が暮れていた。

 

 

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