この素晴らしい世界で俺だけが祝福されない   作:ZAT  

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第16話

「し、死ぬかと思った……」

 先程まで抱えられていたカズマは地面に座り込むと、興奮で暴れる心臓を抑えるようにして呟いた。

 回復魔法をかけ終えたダクネスを膝枕するアクアに、めぐみんが駆け寄る。

「アクア、ダクネスは大丈夫なのですか!?」

「傷は深かったけど、安心して。気絶しているだけよ」

 

「カズマ、座るにはまだ早いみたいだ」

「――! 噓だろ……」

 カズマもスキルの反応に気が付いたようだ。

 ”敵感知”は今尚、爆発の中心部を示している。

 

 

「……これで終わりというなら、勝負は俺の勝ちということだな」

 爆裂魔法を完全に受けきったベルディアは、大剣で体を支えながらこちらに語り掛けた。

「俺が抑える、カズマは次の策を!」

 カズマには酷だがここまで作戦を成功させた彼を頼る他無い。

 ダクネスがダウンした以上、奴の相手が出来るのは俺一人。

 ダガーと自身に魔法をかけ、単身でベルディアに仕掛ける。

 

「アサシンか、貴様とは正々堂々、一対一で勝負したいと思っていたぞ!」

「さっきはアンデッド共を他の冒険者達にけしかけておいて、よくそんな事がいえるな」

 

 興が乗ったのかベルディアは時間稼ぎの戦闘を受け入れる。

 先の一発が響き、次は確実に致命傷。

 狙うのは大剣、攻撃の機会を減らせればそれで十分。

 

 振り下ろしを外側に回避し、伸びきった腕を目掛けて殴るように斬りかかる。

「駆け出しにしては器用な真似をするではないか、アサシンよ」

「お前の体が鈍っているだけだ」

 爆裂魔法のお陰でベルディアの動きは緩慢になり、隙も出始めている。

 神聖魔法は未だ効いていない。

 

「考えろ、あいつの弱点はなんだ? 早くしないと今度こそ全滅だ――」

 カズマは次の一手を必死に模索している。

 この調子ならこのまま解答がでるまで回避し続けるのは簡単だが。

 

「貴様さえ殺せれば俺の勝利だ。さあ、この連撃、貴様に全て避けられるか!?」

 首が投げられ、ベルディアが構えた。

 この攻撃が始まれば、一気に話は変わってくる。

 ”シャドウステップ”は直線にしか動けず、連続攻撃に対処は不可能。

 であれば、自力で避けきる他ない。

 

 周りの景色が止まるほど思考を加速させても、ベルディアの剣裁きだけはその速さを変えず襲い掛かってくる。

 

 右斜め上からの斬り下ろし――後退して避ける。

 ベルディアが一歩踏み込んで斬り返すが、その位は予測できる。 

 横に回り込んだ所にさらに追撃。

 十を超えても止まることは無い。

 こちらの耐久力が無い分、ダクネスの時よりスピード重視で攻撃しているのだろう。

 

「水だ! おいアクア! 水くらい――」

 カズマは正解を見つけたらしい。

 後は首が落ち始めるのを待つだけ――

「油断したか、アサシン!」

 腹を狙った突きの一撃。

 振りかぶりを必要としない分、そのスピードは斬撃より上。

 

 死ぬつもりは毛頭無かったが、流石異世界、そう甘くはない。

 ベルディアが腕を突き出し、切っ先が迫る。

 

「”ルーンオブセイバー”ッ!」

 

 勢いを増す一撃を上から制したのは、魔剣グラム――キョウヤだった。

 

「無事か、イチノセ!」

「助かった……キョウヤ」

 心臓が破裂せんとばかりに暴れ、気分が悪い。

 死ぬ直前の感覚など、二度と味わいたくないものだ。

 

「エンシェントドラゴンゾンビを倒したか……。生憎テレポートは以前の一回分だけでな、ここで決着をつける他なかったのだが」

「さあ、今度こそ勝負だベルディア!」

 意気込むキョウヤだが、ドラゴン戦での消耗が目に見える程に大きい。

 どちらが勝ってもおかしくない状況だ。

 

 そんな熱い場面を他所に後ろからは呑気な声が聞こえる。

「洪水クラスの水も出せますから! 謝って!――」

「出せるならとっとと出せよこの駄女神が! ……洪水? おい、俺みたいに上から召喚するんじゃ――」

 

「僕のグラムで斬れないだと?」

「かなりやるようだが、俺の剣ごと斬るにはまだレベルが足りんなあ!」

 勇者と魔王軍幹部の激しい剣戟が始まり、満身創痍の冒険者達もその様子を見守っている。

 

「分かったわよ! 分かったからそんなに肩を揺すらないで! ……”セイクリッド・クリエイト・ウォーター”!」

 

「み、水があああ!」

 キョウヤの後ろから発射された災害レベルの水を目の当たりにしたベルディアが途端に戦闘を放棄する。

「な、ベルディア! 逃げる気――」

 追いかけようとするキョウヤを無理矢理引っ張り、その場を離れる。

 

「ぎゃああああああ!」

 

 爆裂魔法の比ではない威力をした水の奔流にベルディアは飲み込まれていった。

 草どころか地面ごと削り、アクセルの平原を湿地帯にでも変えんとする程の勢いで大地を飲み込む。

 

 暫くして、水が引いた後に残ったのは完全に弱り切ったベルディアの姿。

「な、なにが駆け出し冒険者の街だ。ふざけおって……」

「よくもうちのダクネスを痛めつけてくれたわね! クソアンデッド! 今度こそ消えて無くなりなさい!」

 アクアが飛び出すと同時、俺も”インビジビリティ”でベルディアと距離を詰める。

 

 これで倒せないのなら、連戦になるが後はキョウヤに託すしか無い。

 このスキルに全魔力を込め、叩き込む。

「”アサシネイション”ッ!」

「”セイクリッド・ターンアンデッド”!」

 

 神聖魔法の掛かった刃はベルディアの体を両断。

 続けざまに撃たれた天へ上る無数の光によってその肉体は跡形もなく消滅した。

 

 

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