この素晴らしい世界で俺だけが祝福されない   作:ZAT  

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第2話

「ツ……!!」

 

 強烈な痛みが頭を襲う。脳に直接何かを書き込んでいるかのような感覚が続く。

 暫くして痛みが引き、心地良い風が体に当たるのを感じる。

 俺は目の前に映る景色にただ呆然としていた。

 

「駆け出し冒険者の街、アクセル...。」

 

 木で出来た真新しい看板にはそう書いてある。

 雑草一本ない整備された石畳の道に、レンガ造りの家が並び、煙突からは煙が昇る。

 至る所から発せられた賑やかな話し声が耳に響き、息を吸えば体を澄んだ空気が巡り心地いい。

 

 消えた筈の脚も元に戻っている。

 

「間違いない、ここは異世界……。」

 

 そんなことはすぐに分かった。

 街を行き交う人達は、剣とか杖を持っていたり、猫耳みたいなのが生えてる人だっている。

 地球のどこを探したってこんな光景が見られる筈がない。

 

 突然、背中に衝撃をうけた。

 

 よろめきながら後ろを見ると、そこには蒼い鎧に身を包んだいかにも勇者っぽい青年が驚いた様子でこちらを見ていた。

 

「ご、ごめん! 君が立っていたのに全く気付かなくて!かなり突き飛ばしちゃったみたいだけど、ケガはない?」

 

 捲し立てるように話す彼。

 ケガとかそんなのはどうでもよかった、それよりも。

 

「大丈夫。それよりアンタ、日本人か?」

「え?」

 

 同郷ならすぐに気づく、明らかな日本人顔。

 仲間がいることに少し安心した。

 

「君も転生してきたの? 丸腰だし、来たばっかりって所?」

「あぁ。右も左も分からなくてな」

「なるほどね。アクア様からこの世界のことは聞いてるよね?先ずは冒険者ギルドに行くといいよ。それから――」

 

 彼にこの街の事を教えてもらった。

 アクア様、というのが誰かは分からないが、彼はその人の案内でこの世界に来たらしい。

 とすると、誰にも会わなかった俺は迷い込んだ、といった方が正しいのだろうか。

 日本人の好みだからと、幾ばくかのお金――エリスというらしい――を貰う。

 

 この世界で最初に会ったのが彼なのは間違いなく幸運だ。

 

 「僕はキョウヤ。魔王討伐を目指す同志として頑張ろう! それじゃあ、またどこかで」

 

 そういうとキョウヤは街のどこかへ消えていった。

 魔王討伐……、平和に暮らしてきた日本人を捕まえてそんなことさせている女神とやらは相当性格が悪いと見た。

 

 ……チート能力とか、貰えたりするのだろうか。

 

 

 

 

 

 「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ!」

 

 冒険者ギルドは結構な賑わいで、ゲームの酒場みたいな雰囲気を出していた。

 素人目には分からないが、鎧とかローブを身に着けた強そうな人達が、掲示板を物色したり酒みたいなのを飲んだりしている。

 

 ウェイトレスのお姉さんは、忙しそうに中を走り回っている。

 

 今の俺は、貧弱な体躯にジャージのみで、この中では明らかに悪目立ちしている。

 絡まれたりするのだろうかという心配は他所に、特に視線が集まったりはしなかった。

 他に転生者もいるようだし、意外と慣れていたりして一々突っかかったりしないのかもしれない。

 

 受付に向かいカウンターの前に立つ。

 

「はい、今日はどうされましたか?」 

「冒険者登録がしたくて」

「では登録手数料を」

 

 寡黙な雰囲気で細目な女の人は慣れた手つきで登録作業を進めていく。

 

「こちらが冒険者カードです。モンスターを倒して経験値を集めればこのレベルという項目が上昇していきます」

「レベル」

 

 ゲームみたいだ、という率直な感想。

 

「レベルが上がれば新たなスキルを得たり、強化したりできるようになります。それではこちらに必要事項を記入してください」

 

 カウンターに置かれた書類の項目通りに、身長、体重など簡単に書いていく。

 

「それでは、冒険者カードに触れて下さい。貴方のステータスが表示されますので能力を考慮して職業を選んでいただきます」

「……。筋力、生命力、魔力は普通、器用度は高めですね。知力は少し低い、そして敏捷性が……」

 

 と続けたところで突如固まった。心なしかさっきより目を見開いた様子で。

 数秒の間の後、失礼しました。と一言言って再開する。

 

「……冒険者の中でもトップクラスに高いです。この街でなら1、2を争うレベルかもしれません。そうですね……、この数値なら”盗賊”が適正でしょう。レベルが上がればすぐに上級職に就くことも可能です」

 

 見せられたカードには他より2桁大きい数値が敏捷性という項目の横に浮かんでいた。

 異様な体の軽さもこれを見れば納得。そして、原因にも心当たりがある。

 現れなかった女神、透けていた脚、転生した体。

 

 「盗賊で、お願いします」

 

 ……嫌な気分になったのでこれ以上は考えないことにした。

 

 「では、そのように登録を。……これですべての手続きは完了です。スタッフ一同、これからの活躍を期待しています」

 

 一抹の不安は残ったが、こうして、盗賊としての冒険者生活は幕を開けた。

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