株式会社デモニックヒーローズ   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第9話『37階の友情』

唐突だが、株式会社デモニックヒーローズという会社に入ってから驚いた事がいくつかある。

 

それは、この会社がどこかの世界に存在している訳ではなく、この会社に所属している天才学者達が、会社の為だけの空間を作り出し、そこにどこまでも無限に広がる土地を用意したという事だ。

 

水も食料も、全てこの空間の中で生成されており、それら全てはロボットと監視システムによって完全に管理されているのだ。

 

電気やら何やらを生み出すエネルギーは事故の危険性を考えて、エネルギーを作り出す専用の空間が存在し、そこからエネルギーだけを引っ張り出しているらしい。

 

一度、これらのシステムを作りだした天才と話をしたが、正直何言ってんのか分からなかった。

 

まぁ、理解していれば俺でも作れるって訳なんだろうな。

 

という訳で、理屈は分からんが、我々社員はこの無限に広がるフィールドで、好きな所に家を建てて、好きな服を来て、好きな物を食べて生活している。

 

あぁ、ちなみに食事に関してだが、社内で専門に料理を作っている人と、料理を作る趣味の人がやっている店があり、俺たち社員は好きな時に好きなだけ利用する事が出来るって訳だ。

 

自炊をしてる人も居るけどね。俺は専ら外食である。

 

と、話が逸れたが、要するに、社員はみんなこの空間の中で生活をしている訳だが、俺は面倒くさがりという事もあり、シンプルなマンションの一室を借りて生活をしている。

 

何階であろうと、ボタン一つで一瞬転移の最強エレベーターがある以上、関係ない為、ドヤ顔の地上37階で生活してる。

 

ちなみに最上階だし、チャーリーも同じ階に住んでる。

 

というか俺たちしか住んでない。

 

まぁ、だから夜まで騒ぎ放題なのだが……まぁ、それは良いや。

 

とにかく、この階には俺とチャーリーしか住んで居ないし、36階も35階も誰も住んでいないのだ。

 

だから、ここでどれだけ騒ごうと、文句を言ってくる人は居ない。

 

以上、説明終了。

 

という訳で、そろそろ現実逃避している場合では無いので、一触即発な空気で満ちている部屋に意識を戻した。

 

「ウィスタリア。わざわざ家にまで来るなんてね。遠慮っていう言葉を知らないのかな」

 

「ずっと邪魔をしていたアーサー君に言われたくはないですね」

 

ピリッとした空気が流れ、今にも爆発してしまいそうである。

 

どうしてウチでやるの? アーサーが起こした問題ならアーサーの家でやれば良いのでは?

 

アーサーの家大きいよ? みんなで一緒に住もうとか言いだすくらいには。

 

まぁ、いつか恋人が出来た時に気まずいからとチャーリーが妄想を吐き散らしていたから流れていたが、俺も一人暮らしという最高の環境を手放すつもりは無いので、チャーリーの味方だ。

 

37階の眺め、最高だしな。

 

「えと。あの。事情を聞いても良いですか? えと、ウィスタリア様? それにアーサー」

 

「ウィスタリアとお呼びください」

 

「いえいえいえいえ! そんな恐れ多い!」

 

「……」

 

「図々しい女だな。君は。そういうのはもっと仲を深めてから言うものだよ」

 

「アーサー君が邪魔をしなければ、もうそうなっていました」

 

「それはどうかな」

 

なんだ。なんだ。今日のアーサーは随分と噛みつくなぁ。

 

えらいハリキリボーイがやってきたじゃねぇか。

 

ウィスタリア様と何かあったんだろうか。

 

というか、既に二人が言い争いをして、他の女の子たちは、それを見守る状態になった為、俺はコッソリと動き、ハリーの元へと向かった。

 

「ハリー。ハリー」

 

「どうかしましたか? タツヤ」

 

「どうかしたのかは俺の台詞だよ」

 

「いいや。俺の台詞だ。タツヤ。どういう事だ。俺とお前は熱い友情を交わした親友同士じゃ無かったのか!? いつの間に、こんな可愛い子たちを家に呼ぶようになったんだ」

 

「呼んだんじゃない。急に来たんだ」

 

「何ィ!? そんなのおかしいだろ。俺だって37階に住んでるんだぞ」

 

「知ってるよ。別に彼女たちが来たのは、俺が37階に住んでるからじゃなくて、前に少し仕事で話したから……だと思うんだけど、多分」

 

「くっ、本当か? 本当なんだろうか?」

 

「嘘言ってもしょうがないだろ。てか、チャーリー。お前が好きなのはもっと大人のお姉さんじゃなかったのか?」

 

「それはそうだが、可愛い子に囲まれているお前を見ていると裏切られた気持ちになるんだ」

 

「勘違いだ。俺からすれば、ジャイアントマンティスに囲まれていた時と心境は変わらん」

 

「お前の目は節穴か!? あんな可愛い子たちのどこがカマキリに見えるってんだ」

 

「別に見えるとは言ってねぇ。それだけ緊張してるって言ってるんだ。お前も俺と同じ目にあえば分かる」

 

「くぅー。俺もそんなコト言ってみてぇぜ!」

 

俺は話が進まないと、チャーリーを放置し、ハリーに話しかけた。

 

もう一度、何があったのかと。

 

「私もそれほど詳しくは無いんですが、女神メリアがアーサーにあの子たちがタツヤの所へ行ったと伝えた瞬間、血相を変えて走り出しまして、今に繋がるという訳です」

 

「まるで意味が分からないな」

 

「そうですね。こればかりはアーサー達か、もしくは女神メリアに聞かなくては」

 

俺は未だウィスタリア様と言い争いを続けるアーサーを見て、どうしたものかと溜息を吐いた。

 

争いがしたいのなら、俺の部屋でやらないで欲しい。

 

『あらあら。随分と他人事ですね。森藤達也さん』

 

「ん?」

 

突然どこからか声が聞こえてきたかと思うと、ベランダから眩いばかりの光と、色とりどりの花びらが、開かれた窓の向こうから部屋の中に吹き荒れた。

 

酷い突風が部屋の中を暴れまわっているが、家具は一切揺れていない。

 

それどころかティッシュすら風の影響を受けていない。

 

ただ、花びらが床に落ちているだけだ。

 

いや、誰が掃除すると思ってんだ!? あぁん!?

 

『あら。申し訳ございません。森藤達也さん。こういう登場をすると皆さん喜ぶものですから』

 

「……ん?」

 

『どうかしましたか?』

 

俺はベランダから現れたとんでもない美人に間抜け面を晒しながら、首を傾げた。

 

今、ちょっと理解出来ない事が起きているんだけど。

 

「も、ももも、もしかして、俺の心の声とか、聞こえていたりしますか?」

 

『えぇ。聞こえておりますよ』

 

「申し訳!!! ございませんでしたぁぁああああ!!!」

 

DО☆GE☆ZA

 

それは我が魂の故郷にして、俺という人間を25年間育ててくれた最高の国の伝統文化である。

 

古来、この土下座は『そのまま首を落とされても文句はない』という意味で行われていた物であり、現在の俺も同様の気持ちでやっている。

 

女神様に何たる不敬。

 

『森藤達也さん。その様な事は必要ありませんよ。私も貴方も同じ会社に所属している。言わば同僚です。であるならば、私を一方的に立てる必要はありません』

 

「いえいえいえ! どの様な形であれ、女神様に対してその様な不敬は!!」

 

『ふむ。困りましたね』

 

世界によっては神は単なるシステムだとか。ちょっと力の強いだけの存在だとからしいが、俺の世界において神とは絶対の存在であり、敬うべき対象だ。

 

故に。下げた頭を上げる事はしない。

 

が、俺はそんな姿勢を一瞬で崩される事になる。

 

何故なら、土下座をしている俺の頭をひょいっと何者かが上げて、引っ張ると、やたらと柔らかい太ももの上に落としたからだ。

 

俺は絞られたバネの様に飛び跳ねて、一瞬で立ち上がった。

 

そしてクスクスと笑っている女神様を見据える。

 

「メリア! 何のつもりだ!」

 

『ふふふ。別に良いでしょう? 神への信仰なんて久しぶりに得たのですから』

 

危うく命を一瞬で奪われる所だった。

 

死因は、女神様の膝枕だ。

 

俺は今にも弾けて爆発しそうな胸の奥にある心臓を押さえ、消えそうな意識を何とか保つのだった。

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