株式会社デモニックヒーローズ   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第19話『聖女とは職業であり、本人の精神性は云々』

いずれ国王となるライアン殿下と、ラナ様の依頼により護衛する様に言われた少女アン。

 

どう考えてもこの世界において重要人物の中の重要人物である二人を護衛するというのは非常に神経を使う仕事である。

 

が、実のところ外的要因は俺の神経をそこまで削ることはなかった。

 

そう。どちらかと言えば、俺のストレスはそのほとんど全てが内部にある。

 

内部とは何かって? 決まってるだろ。ライアン殿下とアンちゃんだよ。

 

「タツヤ! これが分からない! 教えてくれ!」

 

「あー。はいはい。これはですねぇ」

 

「あーん。タツヤさん! 私、これが分からないんです! 教えてください」

 

「ちょっと待ってね。先にライ君に教えるから」

 

「向こうはずっと先の事を勉強しているのですから、大丈夫です。私の方が勉強は遅れているんですから、優先はこっちです!」

 

「あー。いや、それは」

 

「タツヤさんは、私が学園に入れなくても良いって言うんですか? うるうる」

 

「そういう訳じゃないよ。だから嘘泣きは止めてな?」

 

「おい! 貴様! 図々しいぞ! 私が先にタツヤへ声を掛けていたのだぞ!」

 

「優先順位って知らないんですかぁ? これだから甘やかされて育った甘ちゃんは」

 

「くっ! この! この!!」

 

「はいはい。暴力は駄目ですよ。ライ君。あくまで言葉で」

 

「しかしな! タツヤ! あの女はズルをしているのだぞ!?」

 

「分かっておりますって、でも、確かにアンちゃんの方が緊急度が高いのは確かですから」

 

「ほーら! 見ろみろ! べろべろばぁ~! ばーか! ばーか! あほ王子~!」

 

「この私に何たる不敬だ! 不敬罪でその首落としてやる!」

 

「きゃぁ~。タツヤさん! 私、暴君に襲われています! 助けてください!」

 

椅子から立ち上がった二人は円形のテーブルをくるくると回りながら、楽しそうにはしゃいでいる。

 

勉強する気あるんか?

 

俺は助けを求める様に、ライ殿下の付き人である爺さんへと目を向けるが、爺さんはライ殿下がアンちゃんと子供らしくはしゃいでいる姿に感動しており、それどころでは無いのだった。

 

ため息が出る。

 

本当に自由な人間の多い世界だな。

 

 

 

無論こういう争いは勉強の時だけでなく、ご飯を食べる時も、出かける時も、水浴びをする時も、寝る時にも起こる。

 

毎日毎時毎分毎秒どったんばったん大騒ぎだ。

 

勘弁して欲しい。

 

しかし、俺はそんな中でもやりきった!

 

ラナ様と当初約束をしていた一年間の護衛任務を全て完璧にやり抜いたのだ!

 

そして約束の日、ラナ様がアンちゃんの家に来たことで、俺の仕事は終わりとなった。

 

「お久しぶりです。タツヤさん」

 

「あぁ。そうか。今日でちょうど一年か」

 

「なんだ? その一年目というのは」

 

「あぁ。俺がアンちゃんを護衛する様に、ラナ様に依頼された期間だよ」

 

俺の言葉にアンちゃんは凍り付き、ライアン殿下は喜びを示す。

 

しかし、そんなライアン殿下も続くラナ様の言葉に顔を凍り付かせるのだった。

 

「では、当初の約束通り、封印へ行きましょうか」

 

当初の予定ってなんやねんと思いながらも、俺は初めからそうであったかの様に分かっていますよと返した。

 

そして、ラナ様に付いていくべく椅子から立ち上がり……立ち上がり?

 

「あの? アンちゃん? 腕を離してもらえると嬉しいんだけど。ほら、腕取れちゃうから」

 

「大丈夫です」

 

「いや、何も大丈夫じゃないんだけど」

 

アンちゃんの握力が強すぎて、骨折れそう。

 

いや腕取れそう。マジで。

 

俺は何とかアンちゃんの手から逃れようとするが、叶わず、もがくばかりであった。

 

そんな俺にラナ様は微笑むと、アンちゃんの手に自信の右手を置く。

 

「アンさん」

 

「……なんですか?」

 

「タツヤさんを解放していただけますか?」

 

「いやです!」

 

「そう言わず。どうかお願いします。世界の危機なのです。それに全てが終わったら学園にタツヤさんは向かいますよ」

 

「世界の危機? だから何ですか! そんな場所なら私だって一緒に行きますよ!」

 

「ラナとか言ったか。そう言われては私も引き下がれぬな! タツヤは私の兄だ! 世界の危機だと? そんな危険な場所にタツヤを向かわせるわけにはいかん!」

 

「ふふ」

 

アンちゃんとライアン殿下の言葉にラナ様が笑う。

 

そして何やらぶつぶつと呟くと、魔法を発動するのだった。

 

俺は、ラナ様の魔法に反応して神速で細剣を抜いた爺さんの剣を止めるのに必死で、ラナ様が何をしているのかを気にしている余裕はない。

 

が、その魔法がどの様な魔法かはすぐに知ることとなった。

 

「……眠った?」

 

「はい。睡眠魔法です。これで皆さん夢の世界へ行ったという訳ですね」

 

「そうですか」

 

「では行きましょうか。この世界に存在する闇を封印する為に」

 

 

 

かくして俺はラナ様と共に世界の果てへ行き、そこにあるいずれ聖女が封印するという闇を封印する為に向かうのだった。

 

「いや、そもそも俺たちで封印出来るのなら、初めからそうすれば良かったのでは?」

 

「確かにそうですね。しかし、それではスポンサーも納得されないでしょう?」

 

「それは確かに」

 

「特に私の配信を見てくださる方は曇らせ好きな方が多いですからね。ご要望には応えませんと」

 

「そうですか」

 

曇らせが好きとか、やばい趣味の連中が集まってるんだな。

 

いっそ恐怖すら覚えるわ。

 

「それでラナ様はその曇らせ好きのスポンサーを楽しませるための準備をしていたって訳ですね」

 

「いえいえ。私は何も。していたのはタツヤさんですよ」

 

「は?」

 

ニコニコ。

 

満面の笑みを浮かべるラナ様に俺は疑問を投げかけるが、その答えは驚きの無視であった。

 

そして、そうこうしている間に、この世界にある闇とやらが俺たちの目の前に現れ、俺たちは戦闘へと移行する。

 

「ラナ様!」

 

「タツヤさん。敵を引き付けてください。私が封印します」

 

「了解!」

 

連携も何もないが、どうやら闇はそれほど強くはないらしく、適度に傷つきはするが、それほど苦労せずに引き付けることができる。

 

拍子抜けだなと思いながらも一応警戒は忘れずに、ラナ様が封印を始めるまで、意識を尖らせ続けていたのだった。

 

しかし、どうやら敵は目の前だけに居るわけでは無いようだった。

 

なぜなら、ラナ様が背後から俺に向かって魔法攻撃を向けてきたからだ。

 

とっさの事に俺は反応できず、地面に転がってしまう。

 

「何を!?」

 

「ふふ。ふふふ。やっぱりタツヤさんは私が思っていた以上の方です。あんなにも容易く皆さんの心に入り込んでしまうとは」

 

「何の話をしているんですか!?」

 

「これまでの話ですよ。そしてこれからの話をしましょうか」

 

ラナ様は仰向けで倒れている俺の体に触れると、魔法を発動した。

 

そう。封印の魔法だ。

 

まさか、この女! 俺の体に封印するつもりか!?

 

「ラナ様!? 何やってるんですか!? 俺の体に封印したら、俺がこの世界を出ていくときに、復活しちゃうでしょ!?」

 

「えぇ。分かっておりますよ」

 

「なら!」

 

「それでも、貴方の中に居れば闇も弱まる。それならば、聖女の力で封印ではなく永遠に消滅させられるはずです」

 

「……なるほど?」

 

「ですから、この世界に永遠の平和をもたらす為に、聖女様に闇を滅ぼしてもらいましょう」

 

「あー。そういう事なら、オッケーです。分かりました」

 

俺の返答に、ラナ様はそれはもう嬉しそうに微笑むのであった。

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