株式会社デモニックヒーローズ   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第20話『ヒロインVS悪役令嬢VSライバル』

世界を破壊しつくすという闇を封印した俺であったが、特に体調面での問題は無いようだった。

 

しいて言うなら、胸になんか変な文字が刻まれているくらいで。

 

「しかし、それはそれで、冷静に恥ずかしいな」

 

ラナ様に言われ、これから学園とやらに通う訳だが、体育の時間とかに「見ろよ! こいつ胸に文字入れてんぜ!」とか言われたらどうしよう。

 

恥ずかしい。

 

恥ずかしすぎて登校拒否になっちまうわ。

 

故に、俺は社会人をやっていた時以上にきつくネクタイを締め上げて、学園に向かうのだった。

 

 

 

さて、俺は今、学園に向かって歩いているわけだが。

 

ここですでに帰りたい気持ちでいっぱいである。

 

何故か。

 

そりゃあ、俺が歩いているすぐ横をひゅんひゅん馬車が走り抜けているから。ですねぇ。

 

生きた心地がしないんですけど。

 

まぁ、この世界、道路交通法とか無いし。

 

そもそも車道も歩道も無いしね。

 

つまり、馬車にも乗れない一般人は気を付けて歩け、以上。という訳だ。

 

修羅の国ってレベルじゃねぇだろ。

 

しかも、貴族様の馬車にぶつかったら首を切られるらしい。

 

意味わからなくて笑う。

 

権力者っていうか、まさに支配者じゃねぇか。

 

「はぁ……これなら魔物と戦ってる方が楽だわ」

 

おかしいな。事前の資料だと、この世界は聖女様とお貴族様の恋愛事情によって世界が救われたり、救われなかったりするらしいんだが、どう考えてもクーデター直前の崩壊社会って感じですけど。

 

大丈夫? ラナ様の解釈本当にあってる?

 

てか、占い師の未来予想は本当にこれで良い?

 

不安になるわ。

 

「っ!?」

 

と、ダルさ全開で歩いていた俺は、不意に馬車の前に倒れた人物を見て、地面に置かれたレンガを砕きながらその少女に向かって飛び込んだ。

 

そして、少女を抱きかかえると、道の反対側まで行き、地面を削りながら着地する。

 

「あぶねっ」

 

が、これだけの大立ち回りがあっても馬車は当然無視して爆走して行った。

 

本当に世紀末だな。

 

「君。大丈夫だった?」

 

俺はこの世界の闇を噛み締めながら、とりあえず少女を地面に立たせ……ようとしたが、足が震えていて立てないらしい。

 

「ご、ごめんなさい」

 

「良いよ。気にしないで。怖い思いをしたんだから、当然だ」

 

「……! や、優しいんですね」

 

「普通だよ。普通」

 

人助けなんて誰でもやってること。

 

特にウチの会社じゃあみんなやってるしな。いちいち誇る事でもない。

 

「そう、ですか」

 

「ところで君。学園の生徒さんかな?」

 

「はい。今日から入学予定です」

 

「そっか。じゃあ、君さえ良ければ、このまま抱きかかえて行っても良いかな? 俺も遅刻はしたくないしさ」

 

「そ、そんな! ご迷惑ではありませんか?」

 

「んな事ないよ。君は羽の様に軽いしね。俺は疾風の様に早いから。余裕余裕」

 

「そうですか……では、お願いしても良いですか?」

 

「喜んで」

 

俺は未だ震えている少女を横抱きにし、そのまま学園に向かう道を走り始めた。

 

馬車は俺の事など気にせず爆走しているが、まぁしょうがない。

 

貴族様にとって平民など石ころ同然なのだから。

 

「ほい。到着っと」

 

という訳で、学園まで走り抜け、馬車が自由気ままに止まっている駐車場の様な場所に着いた。

 

どうやらここからは皆歩いて学園に向かうらしい。

 

いやー。良かった良かった。学園の中も馬車で爆走してたらどうしようかと。

 

俺も盗んだ馬車で走り出して、学園中の窓ガラスを割らないといけない所だった。

 

「お嬢さん。どこへ向かいましょうか」

 

「えと、そろそろ震えも止まったので、降ろしていただいてもよろしいでしょうか」

 

「はい。承知いたしました」

 

俺はお嬢さんをそっと地面に立たせると、預かっていたバッグを手渡した。

 

「本当にありがとうございました」

 

「いえいえ。お気になさらず」

 

「あの、何かお礼を」

 

「必要ありませんよ。では良き学園生活を」

 

「あっ! お待ちになって!」

 

俺は面倒になる前にさっさと行こうと、少女を置き去りにして学園に向かって走り出した。

 

これから始まる学園生活、俺はわくわくを心に……。

 

「待ちなさい。タツヤ」

 

感じていたんだがなぁ。

 

よく聞きなれた声に俺は足を止めた。

 

「随分と久しぶりじゃない。二年間もどこへ行っていたのかしらね」

 

「エリスお嬢様」

 

「フン。何がお嬢様よ。この私を二年もほったらかしにして!」

 

「申し訳ございません。重要な仕事がありまして」

 

「そ。私よりも重要な仕事ね。それはそれは。いったいどんな仕事だったのか聞かせてもらいたいものだわ!」

 

おかしいな。

 

面倒ごとを避ける為に少女から急いで離れたら、別の面倒ごとがやってきたぞ?

 

妙だな。

 

「実はですね「タツヤさん!!」」

 

そして、エリスお嬢様に事情を話そうとした瞬間、後ろから聞きなれた声が聞こえ、俺は急いでこの場を離れようとした。

 

しかし現実は残酷であり、一年前よりも動きが早くなったアンによって腕を掴まれ、抱き着かれてしまう。

 

その姿にエリスお嬢様は目を見開き、何やら魔力のようなものが炎の様に燃え滾っていた。

 

「説明しなさいよ。タツヤ。その女は」

 

「ん? タツヤさん。この人誰ですか? 最愛の妻である私に黙って女の人と二人で会うのはどうかと思いますよ?」

 

「……は?」

 

瞬間、世界が凍った。

 

なるほど、これが修羅場って奴かぁ!

 

おかしいな。俺はイケメンじゃないのだから、こんな場面に出くわすことは無いと思っていたんだけれど。

 

おかしいな……。

 

「あの、紳士様! ようやく追いつけました!」

 

そして最悪な事に逃げ出したはずの面倒ごとが追い付いてきた様だった。

 

まぁ、走り出してすぐに止まったからね。しょうがないね。

 

もっと離れていれば諦めただろうけど、視界の中にまだ居るのなら来るわ。

 

真面目そうな子だったし。

 

「紳士様。まずは自己紹介をさせて下さい。私は南の小国サンセトラ帝国から来ました、ミティア・リューン・サンセトラと申します。紳士様のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

「……私はタツヤと申します。平民故。家名を持ちません」

 

「そうですか。タツヤ様。素敵なお名前ですね」

 

頬を赤らめてらっしゃる、何故か国名と同じ家名をお持ちの方。

 

頼む! 偶然であってくれ!

 

「ま、まさか、サンセトラ帝国の姫君ですか?」

 

オー、マイガッ!

 

エリスお嬢様より最悪のお知らせです!

 

なんと、ミティア様はお姫様であらせられました。

 

「貴女は確か、ノロス王国のノルトス侯爵令嬢ですね?」

 

「はい。エリスと申します」

 

「はじめましてですね」

 

「え、えぇ。それで、そちらのタツヤとはどういったご関係で」

 

「はい。彼は、馬車が壊れ、歩きながら学園に向かっていたところ、他の方の馬車にぶつかりそうになってしまい。颯爽と助けて下さったのです」

 

外交問題待ったなしである。

 

馬車を走らせてて奴。本当に自重してくれ。

 

「あぁ、そうでしたか。『私の従者』がお役に立てたようで、良かったですわ」

 

「……私の従者?」

 

なんだろう。瞬間ピリッと空気に電流が流れたような気がした。

 

そして、心なしか腕に与える負担も増えている様な気がする。

 

アンの力で腕が取れちゃいそうだわ。

 

俺の腕は団子でも、うどんでもねぇからさ。圧力掛けても旨味はでねぇのよ。

 

「まぁまぁ! それはそれは! では今度エリス様には良き従者を紹介しなくてはいけませんね」

 

「どういう事でしょうか?」

 

「それはもう。タツヤ様が抜ける場合、代わりの方は必要でしょう?」

 

「そういう事ですか。確かに。それはありがたいですね。タツヤは将来私と共にノルトス家を継ぐ必要がありますから。代わりの人材を紹介してくださるのは助かりますわ」

 

「いえいえ。その様なご無理はなさらなくても! 世の中分相応という言葉があるでしょう? 平民であるタツヤ様に侯爵家を継ぐのは負担も大きいですわ。その点、私は王位を継ぐこともありませんし。タツヤ様の力を見れば父も統治ではなく、騎士団に組み込むような形で対応して下さいますから。ちょうど良いのではないかしら」

 

「どうでしょうか。いきなり王族と共に過ごすなんてタツヤには無理があると思いますけれど」

 

「私は王族と言うほどカリスマ性もございませんから、ちょうど良いかと思いますよ。立派な侯爵令嬢であるエリス様と違って」

 

「例えミティア様がどう考えていたとしても王族は王族ですわ。平民のタツヤには荷が重いですね」

 

「……」

 

「……」

 

神よ。居るなら百円やるから早くこの修羅場を何とかしてくれ。

 

はよ。

 

はよ!!

 

「んー。さっきから話聞いてて思ったんですけどぉー。平民のタツヤさんに相応しいのは同じ平民じゃないですか?」

 

ニュー!! チャレンジャー!! アン!!

 

地獄は続くよ。どこまでも。

 

「そうかもしれませんが、ただの平民ではタツヤ様に相応しいとは」

 

「あぁ、そういう事ですかぁ」

 

アンちゃんはニヤリと笑うと俺の腕から離れ、にらみ合うお二方の前に立った。

 

そして両手を腰に当てながら挑戦的な言葉を二人にぶつける。

 

「私、世界を救う聖女って奴に選ばれたんで。ただの平民じゃないですから」

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