株式会社デモニックヒーローズ   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第23話『友よ。今君を想おう』

場は激しく混乱している。

 

ラナ様の暴走により、最悪の真実を知ってしまったこの世界における主要人物達は皆、動揺し、あれやこれやと大騒ぎだ。

 

そして、俺はラナ様の策略により、身の内に住まう闇を暴れさせられ、激しい痛みを感じて椅子にもたれかかっていた。

 

「みんな、落ち着け」

 

「落ち着ける訳がないだろう!」

 

「ど、どうすれば良いんですか? タツヤさん。私、どうすれば」

 

「落ち着いて! アンさん。今この状況をどうにか出来るのはアンさんだけなのでしょう!? ならば落ち着いてください!」

 

「それを言うなら、ミティアさんだって! 落ち着いてください!」

 

駄目だこりゃ。

 

まったく、悪趣味だぜ。ラナ様よ。

 

いくら曇らせたいって言ったってやり方があるだろうが、やり方が!

 

こんなやり方じゃあ子供の心に傷を残すだけだって、何で分からないのかね!

 

いや、分かっててやってるのか?

 

俺は少し離れたところで、ニコニコと笑っているラナ様を見て、ため息を吐いた。

 

つまり、この状況はラナ様の想定通りってことだ。

 

ならば、この後俺が消えて、みんなが悲しんでというのが彼女の望む展開という事だろう。

 

ふざけやがって。

 

そんなの許せるかよ。

 

何が何でもこの状況を変えてやる。

 

例え俺が消えるとしてもだ。

 

「みんなよく聞いてくれ。一つ、俺の秘密を打ち明けようと思う」

 

「秘密、ですか?」

 

「そうだ。実はな。俺はこの世界の人間じゃあ無いんだ。俺の世界から逃げ出した力の残滓を探して、この世界に来た」

 

「そんな……でも! タツヤ様は幼いころにエリスさんと出会ったのでしょう? であれば」

 

「子供の姿になっていただけだよ。本当はもっと大人なんだ。世界を渡る時に、子供になってしまったんだ」

 

嘘ばかりペラペラと出てくるが、まぁ今のところ疑われていないし問題ないだろう。

 

スポンサーにしても、ある程度楽しめれば、曇らせ要素は少なめでも許してもらえるはずだ。

 

多分。

 

いや、でも、何もしないよりは良いだろう。0よりは1の方が良い。

 

「だからな。聖女の力で闇を消しても俺は、元の世界に帰るだけだ。そんなに心配は要らない。まぁ、俺も向こうじゃ忙しいからすぐこっちに戻ってくるっていうのは難しいかもしれないけどさ。また会いに来るから「嘘よ」……え?」

 

不意に氷の様に冷たい言葉が、俺に突き刺さった。

 

それは、昔に比べれば幾分か柔らかくなったが、それでも出会った時とほとんど変わらない鋭さで、俺の言葉を否定する。

 

「エリスお嬢様……」

 

「嘘ばっかり。でも、そっか。これがそうだったんだ。コレが、貴方の目的だったのね。タツヤ」

 

「俺は」

 

「私はね。どうでも良いの。こんな世界。みんな、みんな大っ嫌いだわ! だから、一人、たった一人。貴方だけが居ればそれで良い」

 

そのエリスお嬢様の言葉に、俺はラナ様の言葉を思い出していた。

 

この世界に来る前に言っていた言葉を。

 

『この子は何もしない場合、悪の道を歩んでしまうのです』

 

『そして、悪の道を歩むと、この聖女さんが役割をこなす事が出来なくなってしまい、世界が滅ぶと』

 

これか!?

 

俺はエリスお嬢様から離れようとしたが、既にその行動は遅く。

 

俺の腕を握ったエリスお嬢様によって、俺の体の中にあった暴れまわる何かは全てエリスお嬢様へと移って行ってしまったのだった。

 

なんてこったい!!

 

「あ、あぁ……これが、世界を壊す力。これさえあれば! タツヤ!」

 

エリスお嬢様の影から伸びてきた手をかわし、俺はすぐ近くに居たアンちゃんとミティア様を両手でそれぞれ抱えて、教会の外へと走り抜ける。

 

途中何度も俺の要る場所に手が伸びてきたが、ギリギリ何とか避ける事が出来たのであった。

 

そして教会の外で止まると、すぐ横にライアン殿下を抱えたまま汗一つかいていない爺さんが現れて、安堵の息を漏らすのだった。

 

「タツヤ! なんで私を見捨てた!?」

 

「いや、殿下は助ける人が居たので、俺は二人を優先しました」

 

「まぁ、当然ですね! 私はタツヤさんのお嫁さんですから!」

 

「今はそんな寝言を言っている場合じゃないですよ。アンさん! エリスさんがこうなってしまった以上、聖女の力で何とかしてください!」

 

「えぇー!? いや、何とかって言われても、あの闇を消すと、エリスさんも大変な事になるんじゃないですか?」

 

俺はアンちゃんの疑問に首を縦に振って肯定を返した。

 

ラナ様の言葉を信じるならそういう事だ。

 

「それなら私はやりたくありません!」

 

「アンさん! 世界が滅びるかもしれないんですよ!?」

 

「だとしても! 友達の命を奪って、得た未来にどんな価値があるって言うんですか!? 私は私の結婚式で悔しくて泣いているエリスさんとミティアさんが見たいんです。こんな結末は望んでいません! それともミティアさんはエリスさんが居なくなっても良いんですか!?」

 

「良くは無いですけれど。でも」

 

言い争いをするアンちゃんとミティア様を背に隠しながら、懐からナイフを抜いて、教会から出てきた黒い手を弾く。

 

続いて出てきた二本、三本目も弾き、このままなら大丈夫か? と感じていた俺だった。

 

が、どうやら一本や二本ではどうにもならないと察したのか、教会の屋根を破壊しながら、かつて封印した闇と同じ様な姿となったエリスお嬢様が姿を現すのだった。

 

『タツヤ……! どうして私を拒否するの!?』

 

耳障りなうめき声と共に響くのは、エリスお嬢様の声だ。

 

「エリスさん! 正気を取り戻してくださいな!」

 

「そうですよ! こんなやり方エリスさんらしくないです!」

 

『うるさい!! 知ったような口を利くな!!』

 

いくつもの鋭い刃となった黒い影がアンちゃんとミティア様に迫るが、俺はそれをなるべく弾き、弾けない分は体で受け止めながら、エリスお嬢様を見据える。

 

「タツヤ様!?」

 

「た、タツヤさん! 傷が! 今治します!」

 

「いや、良い。大丈夫だ」

 

俺は全身から流れる血とその痛みに、幾分か冷静さを取り戻しながら、この状況をどうやって打開するか考えていた。

 

どうあってもエリスお嬢様は、俺にしか興味が無いようだ。

 

恋でもなく、愛でもなく、ただ依存している相手を求めている。

 

しかし、それでは幸せになどなることは出来ない。

 

「……エリスお嬢様にとって、何が一番大事か。教えなくてはいけないな」

 

おそらくは俺がエリスお嬢様に最も教えなくてはいけなかった事、それを教える為に俺はエリスお嬢様に向かって緩やかに歩を進めた。

 

「タツヤ様! 危険です!」

 

ミティア様の言葉を手で制して、ただエリスお嬢様に向かって進む。

 

『な、なんのつもり!?』

 

「何のつもりも何も。ただエリスお嬢様と話がしたいだけですよ」

 

『なら、一つになってよ!』

 

「それはお断りします」

 

ナイフでエリスお嬢様から伸びる手を弾き、さらに進む。

 

「エリスお嬢様。俺はそれなりに長い時間、エリスお嬢様と共に居ました。貴女を見てきた」

 

『くっ!』

 

「幼少の貴女は孤独の人だった。友人もなく、家族は貴女をただの道具としてしか見ていなかった」

 

『そうよ! だから私にはタツヤが必要だったのよ! 私の事だけを見てくれる人が』

 

「違う! 貴女に必要だったのは、貴女の全てを肯定してくれる人間ではない!! 貴女と共に生きて、共に笑い、共に泣き、時に怒り、時に喜び、貴女と同じ景色を見てくれる人だ!!」

 

『そ、そんなの! そんな人なんて』

 

「居たでしょう!? 貴女と共に同じ時間を生きていた友人が、友が貴女には居たはずだ!」

 

『友達なんて、なんの役にも立たないじゃない! タツヤが消えるって時にも何も出来ない奴ばっかりだ!!』

 

「分かってないですね。エリスお嬢様。友の偉大さというものが」

 

俺は、いざという時の為に用意しておいた通信機を取り出して、連絡をする。

 

おそらくは俺にとって最も信頼できる友に。

 

「すまない。力を借りられるか?」

 

『勿論。準備は出来ているよ。タツヤ』

 

「流石はアーサーだな」

 

そして、俺が通信機を切ると同時に、天から光が差し込んで、エリスお嬢様にまとわりついていた闇を照らす。

 

俺は闇がひるんだ隙にエリスお嬢様に向かって飛び込むと、闇の中からエリスお嬢様を抱きかかえて、完全に崩壊してしまった教会の屋根の上に立つのだった。

 

「……タツヤ?」

 

「えぇ。少しぶりですね。エリスお嬢様」

 

「わたし、ごめ」

 

「今は無理に喋らなくても大丈夫ですよ。時間なら後でゆっくりと取れますから」

 

俺はエリスお嬢様を強く抱きしめて、再び体を取り戻そうとしているのか俺とエリスお嬢様に向かって黒い刃を伸ばしてきた闇からエリスお嬢様を護る。

 

「……タツヤ!」

 

「大丈夫、ですよ。言ったでしょう? 友の偉大さを教えると」

 

俺が笑いながら顔を上げると、ようやくこの世界に転移が終わったのか、いつもの光り輝く剣を持ったアーサーが俺に突き刺した闇の刃を切り裂くところだった。

 

「僕の親友に! これ以上手は出させない。ここからは僕が相手だ」

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