株式会社デモニックヒーローズ   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第41話『忍び寄る闇の気配』

チャーリーやアーサーと体育館でアホをやらかしてから、俺たちの日常は一気に慌ただしい物になった。

 

まぁ、冷静に考えればそうだと思うが、人間離れした運動神経を持っている人間がいると聞いて運動部が放っておくはずがないという事だ。

 

つまり……。

 

「僕たちと一緒に全国制覇をしようじゃないか!」

 

「野球は知ってるかい!?」

 

「サッカーは楽しいぞ!」

 

「バスケ、バスケだよな!? やっぱ!」

 

こうなるという訳だ。

 

俺はアーサー、チャーリーと共に迫る群衆から逃れて、教室へと向かった。

 

チャーリーとハリーは別々のクラスな為、俺はアーサーと共にため息を吐きながら教室に入り、それぞれの席についたのだが……。

 

今日も今日とて感じるのは好奇の目だ。

 

ひそひそと隠れて話しているつもりだろうが、全部聞こえてるんだよなぁ。

 

「アーサー君って彼女居るのかなぁ」

 

「居ないんじゃない? だっていつも森藤君たちと一緒でしょ」

 

「やっぱり森藤君が本命……」

 

止めい!

 

止めんか!!

 

俺は思わず立ち上がって、違うと叫びそうになったが、女の子の会話を盗み聞きしていたというのも外聞が悪いので、何でもないよと笑いながら、椅子に座る。

 

最悪だ。

 

「ふふ。突然どうしたんだい? タツヤ」

 

「何でもないよ」

 

「そう? なら良いけどね」

 

穏やかな顔をして笑うアーサーを目撃したのか、周囲からキャアキャアという声が上がった。

 

なんとも居心地の悪い事である。

 

二重の意味で。

 

いや、女の子にモテるのは嬉しい。

 

が、ただモテれば良いという話でも無いだろう。

 

異世界に来て、異変を何とかする為の力を貰っている状態で、その部分に惚れられても、嬉しくもなんともない。

 

もっと、こう、俺が一番頑張っている部分を気にしてもらいたいものだ。

 

例えばなんだ? と言われたら難しいが……まぁ、そうだな。料理とかかな!

 

 

 

という訳で、今日の調理実習は俺の独壇場である。

 

ハッキリ言っておくが、俺は料理の特殊能力なんざ欠片も持っちゃいない。全て経験と努力によって得て来たものだ。

 

ふふん。

 

まぁ、第七異世界課の子たちみたいなお洒落な料理は出来んが、上手い飯なら任せておけ。

 

「ほれ。完成だ」

 

「おー。流石はタツヤ。でも良かったのかな。僕は何もしてないけど」

 

「別に何もしてないって事は無いだろ。米を研いだり、野菜切ったり、色々してたろ。なぁ?」

 

「う、うん。そうだね!」

 

「そうそう! アーサー君は凄いいっぱい仕事してたよ!」

 

俺は同じ班になった女の子たちに同意を求めて、上手く頷いてもらう事に成功しつつ皿に綺麗に盛り付けて、それぞれの前に並べてゆく。

 

「わぁ……すごっ、え? プロ?」

 

「ホントに! メッチャ美味しそう!」

 

「ふふん。まぁね!」

 

俺は腰に手を当てながら当然だろうと笑う。

 

そんな姿に女の子たちはクスクスと笑いながら、俺の体に軽い突きをするのだった。

 

「おいおーい。そこは謙遜する流れだろー」

 

「そうだ。そうだー。かっこ悪いぞー」

 

「何を言うか! こうやって自分の技術を誇るのが大事なんだぞ」

 

「どういう意味だい? タツヤ」

 

「料理ってのは見た目も大事って話さ。まず俺の作ったメイン。ハンバーグだな。うん。見た目も完璧で百点満点だ。しかし、横に視線を移すと、アーサーの作ったご飯と、緒方さんと浦部さんの作ったサラダが並ぶ。アーサー。これを見て、どう思う?」

 

「どうって言われても、どこもおかしな所は無いと思うけど」

 

「何を言うか。おかしな所が無いどころか、完璧な状態だろうが。見ろ。このお洒落なサラダを。俺じゃあこんな風には飾れんなぁ。それにご飯だって、今すぐ食べたくなる様な綺麗な見た目をしているだろう? これら全てが揃って、完璧な調和という訳だ。つまり、俺が百点満点なのだから、全員百点満点だという事だ。分かったかね?」

 

「話が、長いぞ! 森藤君!」

 

「あいたっ! 背中を叩くな!」

 

「ま、まぁ? 褒められて悪い気はしないから良いけどね」

 

まぁまぁ喜ぶ女の子たちを見ながら、俺は椅子に座り、用意された食事を食べる準備をする。

 

何故上手い料理を作るのか。それはこの一瞬の為にある。

 

そう。上手い飯を食べる為だ。

 

という訳で、いただきまーすと、手を合わせて言おうとした瞬間、背中が叩かれた。

 

「ん? どうした」

 

「なぁ、森藤。助けてくれよ。なんか変な感じになっちゃってさ」

 

「はぁー? まぁ、良いが。悪い。みんな。先に食べててくれ」

 

「え? でも悪いよ」

 

「そうそう。待ってるよ。あ・な・た」

 

「はいはい。いや、ほんとにさ。あったかい内に食べてよ。みんなが美味しく食べてくれる様にって、頑張って作ったんだからさ」

 

「はぁー。恥ずかしい事また言ってる!」

 

「もう逮捕しろ。この男ー!」

 

「はっはっは。じゃあ、後はよろしくー」

 

俺はそのまま席を離れて、すぐ隣の班に移動し、この班で作っていたスープを軽く味見する。

 

「……大分個性的な味に仕上げましたな? うむ」

 

「何とかなるか?」

 

「なるけど。このままでも俺は面白いと思うけどな」

 

「おいおい。勘弁してくれよ! 何とかなるなら、何とかしてくれって。な。お前からも頼めって。お前がやらかしたんだからさ!」

 

「あうっ、ご、ごめ……なさい。わたしの、せいで」

 

「おいおい。可哀想だろ。全員で作ってるんだからさ。責任は全員で。そうだろ?」

 

「……いや、そうだけどさ」

 

「それに、もし成功したなら、それは全員の成果って訳だ。任せろ」

 

俺は自席に戻っていくつかの調味料を持ってくると、それを使って味を整えてゆく。

 

まぁ、入れ過ぎた。足りなかった程度なら、調整するのはそれほど難しくはない。

 

訳の分からんモン。放り込まれたら難しいけどな。

 

「ほい。完成」

 

「す、すごい……」

 

そんなこんなで、俺は隣の班。そしてまたその隣の班と渡り歩き、気が付けばほとんどの班の調理に関わっていた。

 

これで良いのか? という思いも無くはないが、先生はこれも友情だと頷いているし、まぁ良いのだろう。

 

俺は自席で冷めたハンバーグを食べながら、冷めても美味いなと、自画自賛しつつ、授業を楽しむのだった。

 

 

 

無論それは調理実習だけでなく、体育の授業であったり、通常の授業であったりもそうだ。

 

よくよく考えれば、俺の学生時代は母の事ばかりが気になっていて、それほど楽しむ事が出来なかったからな。

 

こうやって友達とワイワイ楽しむのも良い物である。

 

いつまでもこんな日々が続けばいいな……なんて思ってしまう。

 

それが叶わないユメだと理解していても。

 

『本当に?』

 

「……?」

 

「どうした? タツヤ」

 

「今、誰か何か言ったか?」

 

「いや? 俺は何も言ってねぇよ」

 

「私も」

 

「僕も何も言ってないよ」

 

俺はアーサー達と一緒に歩いていた帰り道で、不意に聞こえてきた声に反応したが、気のせいだったらしく、小さく頷いた。

 

「そうか。いや、まぁ気のせいだな」

 

「おいおい。なんか変な妖じゃないだろうな?」

 

「そういう気配は無かったよ」

 

「なら良いけどな。なんかあったら言えよ」

 

「あぁ」

 

俺はチャーリーの声に頷いて、家に向かって進む。

 

演劇課の……。

 

『違うでしょ?』

 

「……」

 

あぁ、そうだったな。母さんの待っている家に、帰ろう。

 

二人で暮らしているあの家に。

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