株式会社デモニックヒーローズ   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第48話『光差す場所へ』

向かうべき場所は分かっていた。

 

前よりもずっと明るい何もない世界で。俺はただ、その光差す場所へと向かって歩き、そして……視界が光に包まれた。

 

「やぁ、遅かったね。タツヤ」

 

「そうか? 俺としてはかなり急いだつもりだったんだがな」

 

「どうせどっかで寄り道でもしてたんだろ」

 

「んな訳無いだろ。お前じゃないんだから」

 

「いやいや。タツヤも前科はかなりありますよ。途中魚を食べようと突然言い始めて、山奥に向かって行こうとした事があったでしょう」

 

「あの時は山に魔王の幹部が居たんだから結果オーライだろ?」

 

「結果論なんだよなぁー。冒険の足を引っ張るなよ。タツヤ」

 

「それを言うならチャーリー。お前だって娼館の子に恋した! って大騒ぎして旅立つのを拒否した事があっただろ。あれは足を引っ張って無かったのか?」

 

「おいおい忘れたのか。結局あの子は魔王軍の淫魔だっただろ。俺のお陰で倒せたんだぜ?」

 

「完全にハニートラップにハマる直前でしたけどね。私が気づいてなければ今頃どうなっていたか」

 

「いやいや。淫魔相手でも俺の方がベッドで強かったからな? 無限の体力舐めんなよ」

 

「その技能は戦闘で活かせ。戦闘で」

 

「まったく。タツヤもチャーリーも。私を見習って貰いたいですね」

 

「よく言うぜ。お前だって珍しい魔法を見つけた。魔法の道具を見つけたってだけで完全に魔王と関係ないダンジョンを奥まで俺たちに潜らせただろうが」

 

「これが平和な未来を導く鍵になるんですよ」

 

「ほー。そいつは凄い。是非とも果物の種を取り出す魔法で平和な未来を作ってもらいたいもんだ」

 

「この魔法の素晴らしさが分からないとは! これだから頭まで筋肉で出来てる戦士は。やれやれ。どれだけ高度な魔法かも理解出来ないのですか?」

 

「高度かどうかじゃなくて、それでどうやって明るい未来が出来んのかって言ってんだよ」

 

「この魔法により、スイカを食べる時も種を飲み込まずに済みます」

 

「……割と明るい未来が見えるな?」

 

「タツヤ騙されるな。んなモン口に入れて出せばいいんだぞ」

 

「いや、しかしその手間を無くしてくれるのならいい魔法と言えるのではなかろうか」

 

「確かにね」

 

「アーサー! お前もか!」

 

「まぁ、僕は種があっても無くても楽しめるからどっちでも良いと思うけど……でも、選ぶ権利があるっていうのは良い事だと思うよ。ね? タツヤ」

 

「あぁ、そうだな」

 

俺は世界に光が満ちてゆくのを感じながら、右手を握りしめた。

 

「未来は自分の手で選ぶ。それが大事って事だな。アーサー」

 

「あぁ、そうさ。だから、君が帰ってくるのを待っているよ」

 

「……」

 

俺は消えていく三人の気配をそのままに、目を閉じて、静かに深呼吸を繰り返す。

 

そして、一歩一歩声のする方へと歩いていくのだった。

 

 

 

光の中に包まれて、おそらくは現実世界に抜け出した俺だったが、どうやら状況はクライマックスもクライマックスの様だ。

 

ここは高校の教室で、俺は黒い液体で体を汚しながら、床に転がっており、すぐ背後にはおそらくヒナヤクさんと思われる黒い大きな何かが蠢いていた。

 

高さは天井に触れるかどうかという所で、大分デカい。

 

「タツヤさん!」

 

そして、そんなヒナヤクさんと対峙する様にアーサー達三人が武器を構えながら油断せずに立っていた。

 

ウィスタリアさんたちはここに居ないが、おそらくどこか別の場所から繋がっていたのだろう。

 

「タツヤ!」

 

チャーリーの叫ぶ声と同時に飛んできたナイフを空中で掴み、俺は黒い物体から伸びる手の様な物を切り裂いてアーサーのすぐ隣に跳んだ。

 

「すまん。心配かけた」

 

「いや、構わないさ」

 

「タツヤさん! ご無事ですか!? 私が、この事態を解決に導いたんですよ?」

 

アーサーと拳をぶつけ合っていた所、すぐ後ろから元気よくメリア様が話しかけてきて、俺は少しげんなりとする。

 

雰囲気壊れちゃうから、落ち着いて欲しい。

 

「アーサー。ラナ様たちは?」

 

「既に会社の世界へ移動済みだ。ここには僕たちしか居ないよ」

 

「そうか。それは良かった。じゃあ後はあの人を倒すだけだな。アーサー。チャーリー。ハリー!」

 

「私、私の事忘れてますよ」

 

「……」

 

「タツヤさーん! 聞こえてますかー! ターツーヤーさーん!!」

 

「分かってます。分かってます。聞こえてますよ。メリア様! はい。これで良いんでしょ?」

 

「っ! 私の事! 思い出して……!」

 

「いや、別に思い出してないです」

 

「え? いや、だって今、名前」

 

「……初めから。忘れてないですよ。メリア様の事は」

 

「あー。そういう事だったんですねぇ。って、え!? えぇ!!? それってどういう!」

 

「後にしろ! メリア! 来るぞ!」

 

『タツヤ! 私の!』

 

俺はメリア様を抱き上げながら、黒い手から逃れ、教室の中を跳ぶ。

 

床を壁を天井を。あらゆる場所を足場にして動き回り、とにかく手から逃れ続けた。

 

「アーサー! どうやって仕留めればいい!」

 

「それに関しては手配済みだ!」

 

「手配済み……?」

 

妙な言い回しの言葉に俺は疑問を浮かべたが、その答えはすぐに現れた。

 

そうどこに隠れていたのか。

 

いや、初めからそこに居たのかもしれない。

 

その女性は、教室の中央に立っていて……そして右手の人差し指と中指だけを立てた状態で横に振るった。

 

瞬間、黒い物体は思わず耳を塞ぎたくなる様な悲鳴を上げ、のたうち回った。

 

「へぇ。一度では消えませんか。中々しぶといですね」

 

「っ」

 

「……ヒナヤクさん」

 

そして、その声にメリア様が酷く辛そうな声を出した。

 

俺は腕の中に居る目を閉じて、祈る様に両手を握り合わせているメリア様を見て、息を吐く。

 

「メリア様」

 

「……! は、はい!」

 

「メリア様はヒナヤクさんと、親しくされていたのですか?」

 

「あ、いえ。凄く親しいという訳では無いのですが、何度か話す機会があり……それで」

 

「……」

 

「あ、でも! タツヤさんを苦しめたい訳ではなく、私は」

 

「アーサー!!」

 

「どうした!?」

 

「メリア様を頼む!」

 

光の剣でヒナヤクさんの手を弾いてるアーサーを呼び、俺はメリア様を投げ、アーサーがキャッチするのを見てから、黒い何かが剥がれ落ち、苦しそうに床に倒れこんでいるヒナヤクさんの前に立った。

 

「そちらの方。危ないですよ」

 

「はぁ……はぁ……た、つや?」

 

涙を流し、苦しそうな顔をしているヒナヤクさんから視線を外し、この世界の英雄であろう人に俺は振り返った。

 

「申し訳ございませんが、このくらいで終わりに出来ませんか?」

 

「タツヤ!?」

 

「……!」

 

「何を言っているんだ。ヒナヤクが君に何をしたか。知っているだろう!」

 

「あぁ、まぁ……な。でも被害を受けたのは俺だけだし」

 

それに、メリア様が悲しむ顔は見たくないんだ俺は。

 

「ま。私はこのまま皆さんがこの世界から消えてくれるのなら、いう事は何も無いですよ。その女の力は全て消しましたし。被害もない。後はそちらで決めてください」

 

女性はそう言うと、再び姿を消した。

 

どうやってるのか。気配すら追えない。

 

そして、俺は呆然と俺を見上げているヒナヤクさん……いや、母さんに言葉を掛けるのだった。

 

「話を、しよう。母さん」

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