株式会社デモニックヒーローズ   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第5話『救済会議』

男は良いね!!

 

俺、男が好きになってきちゃったよ!

 

なんて、朝から誤解を招きそうなテンションだが、仕方がない。

 

何故なら俺はあれからアラミージさんの紹介で、王道ファンタジーの派遣演出企画に参加しているからだ。

 

既に異世界へも二回行っているが、何も問題が無いどころか最高の日々だ。

 

前職を退職し、新しい仕事をしようという気持ちになったのも、彼らのお陰だ。

 

そう。今俺が参加している企画は、全員が男なのだ。

 

楽々である。

 

何も緊張しねぇ。むしろ安らぐ。

 

やっぱ自分だけが異質な存在っていうのは、体に良くないよ。

 

「さて。前回会議の結果を上に伝えた所……問題ないと承認を貰った。というワケで、僕達は勇者パーティの先輩パーティとして、魔王軍と戦い、勇者パーティでは対処できない敵を倒す事になる」

 

パーティのリーダーポジションの別世界では勇者と呼ばれていたアーサーが、相変わらずのキラキライケメンスマイルで笑う。

 

「いやー良かった良かった。これでまだ若い彼らの安全が確保できましたね。ギリギリの戦いが見たいと言われた時はどうなるかと思いましたが。その辺りは魔王で上手く調整しましょう」

 

「勇者の使命を受けて立ち上がった子も、その幼馴染の女の子も、まだ13歳の子供だからな。怖い思いはしない方が良い。これで良かったって訳だな」

 

魔法使いのハリーと戦士のチャーリーもアーサーの言葉に頷きながら、今回の決定が上手く行ったと笑う。

 

しかし、問題はまだ残されていた。

 

「そうなると、どうやって我々があの世界から撤退するか。それが重要になるな。撤退の仕方次第では、子供の心に大きな傷が残るかもしれん」

 

「そうだね。タツヤの言う通りだ。まだ議題は残っている。スポンサーは多分、傷が残る方が喜ぶけど、そんな展開を僕は許せないんだ」

 

「当然ですね」

 

「あぁ」

 

「まぁ、でも最良はやっぱり、俺たちのパーティが先に魔王城へ入って、勇者君達が魔王の間に来てから、アーサーが勇者君を庇って魔王の攻撃を受け止めるのが最適じゃない? 俺らは先に死んでるけど、アーサーが目の前で死ぬのなら、意識は全部アーサーに持っていかれるし、アーサーが少年の勇気を振り絞れば、立ち上がれるでしょ」

 

「うーん」

 

「俺は賛成だぜ。やっぱ男は意思を受け継いで立ち上がるモンよ!」

 

「いやいや。お二人とも待ってください。確かに立ち上がれるかもしれませんが、傷は残るでしょう。それに幼馴染の女の子はどうするんですか。間違いなく傷が残りますよ? 世界が平和になってもその事が心の陰として残りますよ!?」

 

「うーむ」

 

「そこは愛の力で乗り越えられるでしょ。どうやっても親しい人間が死ぬって時点で傷は残るから無理だって。それなら、少ない方向に導く方が良いよ」

 

「いっそ普通に別世界へ旅立ったという事にすれば良いのではないですか?」

 

「前にそれをやった所は、スポンサーからの介入を受けて、全員無残に殺されたらしいぞ。現地魔法少女の前でな」

 

「人の心。未実装か? スポンサー」

 

「一応第二期という扱いにして、その子の傷を癒す為のプロジェクトは立ち上がったが、結局大人になっても悪夢でうなされる事があったらしいからな。まったく傷を残さないというのは不可能だ」

 

「うーん」

 

「それなら……こう、深手は負ったが、生きているみたいな展開にして、勇者君達が居ない所で旅に出るというのはどうでしょうか?」

 

「悪くはないと思うけど、スポンサーが絡んでくるかもしれないのが厄介かな。ヌルイ展開だ! 面白くない! もっと過激にしよう! みたいなさ」

 

「あり得る」

 

俺とチャーリーは今回の会議において、おおよそ同じ意見だ。

 

勇者君達がメインで戦う以上、俺たちはどこかで戦えない状態になる必要があり、それならば最後の最後、魔王に傷を残す所までやってからの撤退。意思を受け継ぐ事で勇者君を奮い立たせ、傷を覆い隠す。

 

そして幼馴染の女の子は勇者君と支え合う事で傷を癒して貰おうという話だ。

 

ハリーはそもそも傷が付くことが良くないと考えている。

 

まぁ、言いたい事は分かるけど、スポンサーがスポンサーなので、多分最悪の結果になりかねないと俺たちは言っている訳だな。

 

アーサーはさっきからずっと唸ってる。

 

やる気はあるし、格好も良いし、いざという時は誰よりも率先して走り出すのだが、こういう会議ではいつも悩んでいて意見を出せない事が多いのだ。

 

「……いっそ、生まれ変わってみる?」

 

「なんて?」

 

「どうしたアーサー。遂におかしくなったか」

 

「いや、別に混乱している訳じゃなくて、ただ死ぬだけだと、勇者君たちは気になる訳だろう? なら、僕達は生まれ変わったという事にすれば良いんじゃないかって。女神課の誰かに頼んで、僕達の勇姿を称えるみたいな感じで、生まれ変わる事になりました。的な事を勇者君達に伝えれば良いんじゃないかな」

 

「悪くは無いけど。大丈夫? 勇者君達俺たちの生まれ変わりを探さないかね? 居ないけど。もうその世界に」

 

「うーむ」

 

「あーなら。別の世界に転生したという事にすればどうでしょうか? 天国の様な幸せな場所へ行ったんですよ。的な」

 

「それはもう死んでいるのと同じ意味なのでは?」

 

「それなら、記憶は失われるって事で解決だろ! 同じ世界に生まれ変わったが、記憶はないから本人かどうか分からないぜ。みたいな感じで」

 

「おー! チャーリー! お前天才か」

 

「流石はチャーリーだ」

 

「まぁ、そうですね。では全体の方針としては、魔王との戦いに先んじて向かっていた我々は魔王にダメージを与える事に成功したが、瀕死の重傷を負い、アーサー以外は戦闘不能。辛うじて生きてる。そして、アーサーは勇者君を庇い、戦闘不能なダメージを受けるが、勇気を託し、勇者君と幼馴染の女の子は二人で魔王を倒す。その後、我々は、ここまでの功績で生まれ変わる事が出来るが、記憶を失う為、これからの世界を任せても良いか? と勇者君にもう一度想いを託し、笑顔でお別れ。最後は勇者君の凛々しい顔で、エンドクレジット! そして、最後にエピローグ的に、勇者君たちのその後を映して終わり。どうでしょう!」

 

「素晴らしい! 流石はハリーだ」

 

「良いと思うぜ」

 

「俺も異論なし。後はスポンサーが余計な茶々を入れない事を祈ろう」

 

「そうですね。本当に」

 

かくして、俺たちは企画会議を終わらせ、この最終案をアーサーに頼んで上に提出してもらった。

 

会議の後は、全員で焼肉に行き、くだらない話で盛り上がる。

 

「女神課かぁ。メリアちゃん来ないかなぁ」

 

「それは難しいと思いますよ。メリアさんは花の女神ですし。女性が中心の物語で忙しいですしね」

 

「女神課は人手不足だからね。しょうがないよ」

 

「となると、またマザーが来るのかな」

 

「……マザーか」

 

チャーリーは苦虫を嚙み潰したような顔でマザーの名を呟いた。

 

まぁ、気持ちは分らなくもない。

 

マザーはベテランの女神様で、チャーリーが望む様な若くて可愛い女神では無いからだ。

 

しいて言うなら、西の大都市のおばちゃんというか。

 

新世界から来た新感覚アイドルというか。

 

面倒見が良くて、距離感が親子以上に近いというだけだ。

 

「俺は嫌いじゃ無いけどね」

 

「タツヤ! お前はどうしてそうなんだ! どうせなら可愛い女の子の方が良いだろう!」

 

「……以前までの俺ならお前の意見にも頷いただろう。だが、今の俺は違う。そう。天国は怖い所だからな」

 

「はぁ?」

 

「タツヤも色々あるという事ですよ。チャーリー」

 

「そういうお前はどうなんだ。ハリー。メリアちゃんと、マザー。どっちが良いんだ」

 

「私はベテランのマザーさんの方が助かります。特に今回は仕事を確実にこなしていただかなくてはいけませんからね。子供の将来がかかっていますし」

 

「カァー! 真面目だねぇ! アーサー! お前はどうなんだ! この前、メリアちゃんと話をしてただろ! てか、前からよく二人で話をしてるよな!? 実はそういう仲なのか!? ハッキリ言ってくれ!」

 

「いや、彼女とは同郷だからよく話すだけだ。それに……」

 

不意にアーサーの視線がこちらに向けられる。

 

そして何か言い難そうにした後、再びチャーリーを見た。

 

なんだ? なんだ、その意味深な感じは。

 

「まぁ、ちょっと厄介な話があっただけさ。気にしなくて良い。特にタツヤ」

 

「は?」

 

おいおい! おいおいおいおい!!

 

その言い方で気にならない奴が居ると思ったのか!?

 

アーサー!!

 

目を逸らすな!!

 

アーサー!!!

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