株式会社デモニックヒーローズ   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第6話『君はどんな能力を願うのか』

アーサーに不穏なモノを感じつつも、俺はいよいよ異世界へ旅立つべく準備を始めていた。

 

とは言ってもそれほど難しい事は無い。

 

まず冷凍カプセルに入り、意識を複製体に移すだけだ。

 

しかし、その意識を移す間に重要な事がある。

 

そう。異世界に行く上で何かしらの超絶能力が設定できるのだ。

 

昔は何でもかんでも付けたい放題出来たのだが、最近は異世界保護団体が騒いでいるせいで一つだけになったという話だが。

 

正直個人的には一つを悩む方が楽しい。

 

色々付けたって全部使える訳でも無いしな。

 

という訳で、俺たちは意識だけの空間で、意識の移行作業を待ちながら、どういう能力を付けるか話し合っていた。

 

『んで? 今回はどうする?』

 

『どうすると言われましても、いつも通りで良いのではないですか? 私は無限の魔力、チャーリーは無限の体力、アーサーは光の加護で直接戦闘以外の妨害無効、タツヤは索敵範囲拡大で』

 

『面白くねぇんだって! たまには別の能力で行こうぜ! 別に俺らならどんな能力でも何とかなるんだからさ!』

 

『それは確かに』

 

『俺は! モテたい! 異世界で、モテモテになりたいんだ』

 

『いや、それ! 物語に関係ありませんよね!?』

 

『まぁ確かに』

 

『良いだろ! どうせ異世界に行けば一年以上は向こうで活動するんだからよ! 少しくらい良い思いしたって! 別にそれで仕事に支障が出る訳じゃないんだ。無限の体力? 舐めんな。俺は元々体力無くなった事なんかねぇよ! 元の体でもな』

 

『しかし』

 

『まぁ、良いんじゃない? 別に全員が全員遊ぶ訳じゃないんだし。それに、複製体を作る時にある程度は体のスペックを上げて貰ってる訳だしさ。出来ない事は無いでしょ』

 

『流石タツヤだぜ! 話が分かるな!』

 

『タツヤ! そうやってチャーリーを甘やかすから!』

 

『いや。僕もタツヤの意見に賛成だ』

 

『アーサー! 貴方まで!』

 

『僕も一度で良いから、戦闘以外の能力を持って異世界へ行ってみたかった』

 

『へー。アーサーもそんな風に考える事があったんだ』

 

『当然だよ。僕だっていつもとは違う旅がしてみたいと思う事くらいあるさ』

 

『そうなんだ。じゃあ、アーサーはどんな能力が欲しいんだ? 内容によっては出来ると思うけど』

 

『ふふ。僕かい? 僕はね……』

 

引っ張るアーサーに全員の注目が集まる。

 

とは言っても、真っ白な空間に声だけが響いている状態だから、何となくイメージでしか無いけれど。

 

『ズバリ! カレー粉を生み出す能力だ!』

 

『さて。じゃあ、各々の能力をどうするか話そうか。チャーリーはモテたいって言ってたけど、具体的にこういう能力が良いっていうのはあるの?』

 

『あれ!? タツヤ?』

 

『んー。コレっていうのはねぇんだよな。ただモテたいという気持ちだけが先走っている』

 

『なら他者を惹きつける能力とかはどうでしょうか? それなら、魔王軍と戦う際にも役に立ちますよ』

 

『チャーリー? ハリー? 聞こえているかい? おーい』

 

『おまっ! 役に立つって、俺を囮にするって事じゃねぇだろうな!』

 

『戦士なのですから、問題ないでしょう』

 

『問題大ありだ!?』

 

『まぁまぁ、チャーリーが囮として最適かどうかは、一度置いておくとして』

 

『置いておくな! 大事な事だろうが!』

 

『みんなー? 無視しないでくれー』

 

『じゃあなんだ。チャーリー。洗脳能力でも欲しいのか? 言っておくが、俺は純愛過激派だからな。女の子の感情を捻じ曲げる様な能力を君が使ったら、酷く軽蔑するぞ』

 

『いや流石にそこまで外道じゃねぇよ。伝わんねぇかなぁー。おかしな事してモテたい訳じゃねぇのよ。ごく普通に、自然にモテたいんだよ』

 

『じゃあ大人の社交場にでも行けば良いだろう。現地で金を稼いで、経済を回してくれ。後は、少しだけチャーリーを女の子受けする見た目にしよう。それで完璧だ。君はさぞかしモテる事だろう。ただしアーサーは連れて行くなよ。全員奪われる』

 

『確かにな。現実的な所で考えると、そんな所か。何とも納得出来ない話ではあるが』

 

『良い能力を思いつかないチャーリーが悪い。こんな土壇場で言い出す事じゃないんだよ』

 

『そうですね。タツヤの言う通りです。次回の異世界行きまでに能力を考えておいてください』

 

『おう!』

 

さて。

 

一通り、チャーリーの話が終わった俺は、放置していたもう一つの問題へ目を向けた。

 

当然。アーサーである。

 

何がカレー粉だよ。無人島にサバイバルに行くんじゃないんだぞ。

 

『で? 一応聞いておくけど、アーサー?』

 

『おぉ。なんだ!? 聞こえているよ!』

 

『まぁ、俺たちも聞こえてはいたけど、先にチャーリーの話を終わらせたかったからね。とりあえず放置した。それで、何だっけ? カレー粉? なんでカレー粉』

 

『よくぞ聞いてくれました。それはね。前回の異世界行きで、旅の途中にカレーを食べたくなったからさ!』

 

『よぉーし! 却下だ! カレーが食いたかったら仕事が終わってから食えー』

 

『タツヤ!?』

 

『話は終わったみたいだ。みんな能力の調整は大丈夫かー?』

 

『はい。大丈夫ですよ』

 

『おーう。お前も気を付けろよ。タツヤ。持てない武器持って行っても、売る事しか出来ないぞ』

 

『わーかってるっての。今回はミスしないからさ』

 

『頼むぜ? 最初から武器屋でドタバタなんて、また笑っちまうからさ』

 

『そもそも疑問だったのですが、何故戦士でもないタツヤがハルバードを?』

 

『しょうがないだろ。ハルバードは男の子のロマンなんだよ。格好いいだろ? ハルバード』

 

『分かる。俺もデカい武器を振り回したいから戦士になったみたいなモンだしな』

 

『流石チャーリー。親友!』

 

『任せとけ! 相棒!』

 

『私にはまったく分からない感情ですよ。あー。えっと。アーサー? 準備は良いですか?』

 

『あぁ。完璧だ!』

 

こうして俺たちは、異世界へと旅立った。

 

 

 

現地に降り立った俺たちは、何もない平野に転移したのだが、まずは能力の確認と道具の確認、装備の確認だ。

 

ここでやっておかないと、スポンサーが見始めた時点で、現地の物しか使えなくなるからな。

 

早めの確認は大事。

 

異世界仕事はこれが鉄則である。

 

俺は持っている道具と、装備を確認すると、能力を使って近くの索敵を行う。

 

「おー。うようよ居るなぁ。モンスターが。いや、この世界じゃ魔物だったな」

 

「近くに町はありますか?」

 

「んー。ちょい待ち」

 

俺は索敵の距離を伸ばしながら範囲を狭めて、それを周囲にゆっくりと回しながら人が多くいる場所を探す。

 

そして、それはすぐに見つける事が出来た。

 

「見つけた。そんなに遠くないな。が、ちょっとヤバいな。魔物の群れが向かってる」

 

「なら、すぐに向かわないとだね」

 

「おう! 俺のデーモンクラッシュハイパーソードが唸るぜ!」

 

「チャーリー。もう少しどうにかならない? ネーミング。恥ずかしいんだけど」

 

「はぁ!? 格好いいだろうが!」

 

「センスを疑いますよ」

 

「ホント、それ」

 

「分かんねぇ奴らだな! まぁ良い。さっさと行こうぜ!」

 

「そうですね」

 

「オッケー。じゃあ道案内は任せろ!」

 

俺は誰よりも早く地面を蹴り、滑る様に走り出した。

 

元々の体では絶対に出来ない動きだが、この体はそうなるべくして作られた体だから自然と動くし、違和感もない。

 

うーん。弊社の技術力ヤバすぎ―。

 

色々な世界の天才が集まっているというのは伊達じゃないって事なんだが、こんな組織を作れる社長やスポンサーは一体何者なのか。

 

まぁ、考えても仕方がないし、今はこの楽しい仕事をこなすだけだ。

 

 

 

そして、疾風の様に駆け抜けた俺たちは、街を襲おうとしている魔物の群れを背後から襲い、大型の魔物も討ち取って、英雄として町に迎えられたのである。

 

滑り出しとしては完璧なのではないだろうか。

 

俺は無事を喜んでいる町の人たちを見ながら、そんな感想を抱いていた。

 

そして!

 

目撃してしまう。

 

我らがリーダー様のやらかしを。

 

「おぉ、英雄様。感謝の宴を開かせてください」

 

「ありがとうございます。あぁ、宴の準備ですが、私もいくつか味付けをしたい物がありまして」

 

「味付けでございますか……?」

 

「はい。カレーという人類史上最高の発明です」

 

「アーサー!!?」

 

そして俺は、ふざけた能力を持ちながら異世界へ来た至高のリーダー様の名を空に向かって放つのだった。

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