Q.もし咲が鷲巣巌と邂逅したら?   作:ヤメロイド

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まこ「キングクリムゾン!」


斜陽(4/15修正)

先鋒戦が終わった後のこと。

「たららいま~」

ドアの向こうから泥酔者のように千鳥足な声が聞こえてきた。一体何者と振り返る久達だが、

「らんとかトップにゅけ~」

入ってきたのは疲労困憊で今にもぶっ倒れそうな淡だった。おぼつかない足取りで向かってくる。

「ちょ、ちょっと!大丈夫なの!?」

慌てて久が声をかける。

「らいじょーぶらいじょーぶ」

とは言うものの、呂律が回っていない。ふらふらになりながら久に受け止められる。その姿はまるで末期の病院患者のようで、さっきの闘牌が如何に過酷なものだったかを物語って

「ありがと、ムー○ン」

「ん゛?」

「あはは!マコーワカ○が頭の上に乗ってるよ!」

「表へ出ろやこの泥酔者が」

どう考えても意識朦朧にかこつけて喧嘩売ってるようにしか思えないのは気のせいだろうか。

「はあ……咲、パス」

手に余ると淡をペイっと放り出す久。向かった先は咲の腕の中で、

「あ、サキだー」

「なんで咲の顔はしっかり判別出来るんじゃ……」

愛ですよ、愛。

まるで元の鞘に収まったかのように大人しくなる淡。ゆっくり咲をソファーに押し倒すと馬乗りになり

「……って全然落ち着いてないじゃない!」

「こいつほんまに酔っとるのか?」

今にでも薄い本が出来上がりそうな展開に、慌てて淡を引きはがそうとする二人。しかし、

「あれ……ちょっと待って」

咲の怪訝そうな声で制せられた。

「淡ちゃん、もしかして風邪ひいてる?」

ほとんどされるがままになりながら、淡の額にぴったり自分の額を押し付ける。途中、何やらムラムラする声が聞こえたような気がしたがキコエナイ。そして、

「うん、やっぱり少し熱いね」

そう言った。試しに自分の額に手を当ててみるが、淡ほどは熱くない。

「あはっサキの顔が近くにある」

語尾に音符でもつきそうな勢いで咲に抱きつく淡。それを小さな体で必死に受け止めながら、咲は近くに休める場所は無いかと久に聞いた。

「今休んでおけば閉会式には出られるかもしれませんし」

その言葉に、少し考えるように首を傾げる久。

(そんな場所あったかしら?)

頭を捻って捻って、ふと西館の一室が思い浮かんだ。

「あ、それなら確か西館の奥に仮眠室があった筈だけど……いいの?病院に連れて行かなくて」

子供が出来たら親バカになりそうな咲のことだ。淡が風邪をひいたと判断した時点で、てっきり病院に行かせるものだと思っていたが……咲は苦笑しながら首を振った。

「多分七度後半も無いですから大丈夫ですよ」

それにと、咲は少しはにかみながら続ける。

「淡ちゃんには近くで見て欲しいかなって……私が麻雀を打つところを……」

最後は消え入るような声で、少しだけ顔を赤くしながら答えた。

「ふーん……」

「な、なんですか?」

「別に」

何やらニヤニヤしながら咲と淡を見比べる久。

「っ!じ、じゃあ私はこれで!」

急に恥ずかしくなって、咲は逃げるように淡の手を引いて控え室を出た。そんな二人の背を見ながら

「青春ね」

そっと、久は呟いた。自分はもう三年で青春を送るには年を取りすぎた。だから、せめて二人には後悔の無い夏を送って欲しいと思い

「人の心を捏造するのやめてくれない?」

……とは特に想うことなく、そう言えば風越の先鋒の子どっかで見たなと物思いに耽っていた。

「え?風越の先鋒?覚えてないな……」

ドンマイ、美穂子。

ところで、部屋を後にした咲はというと……

 

 

「ここどこ……?」

 

がっつり迷子になっていた。お約束。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、次鋒戦が白熱し咲が涙目で会場内を歩き回っているころ。

「どうしましょう……」

ズーンという擬音語を頭の上に置いたら似合いそうな美穂子がいた。

「ズーン……」

いや口で言わなくていいですよ。

しかし、それでも何か言わずにはやってられない。まさにそんな気分だった。先鋒戦の最終スコアは

 

 

風越 100600

龍門渕 93100

鶴賀 89900

清澄 116400

 

 

となった。一応は原点で帰ってきたのだが、それは当初期待されていた結果ではなかった。

本当は三ペコトップで終わらせたかった。しかし結果は一万以上離されての二位。思わず泣きたくなるような結果で視界がかすれ、部屋に戻れずにいた。

「ごめんなさい……みんな……」

いくら悔いても悔やみきれない。美穂子が咲と出会ったのは、そんな折だった。

「っ!何これ!?」

それは、曲がり角を曲がろうとした途端、突如現れた。

(なに、この感覚!?)

オカルトには耐性の無い美穂子でも感じることが出来た。一メートル先の曲がり角、そこを曲がった先に「何か」がいる。

(足が……指一本動かせないっ……!)

まるで首筋に刀が添えられているかのような感触だった。一歩でも動けば殺される。指一本、呼吸すら憚られる。そんな時間が永遠に続くかと思った。が、それは

 

 

「ここどこ……?」

 

「へ?」

そんな声で霧散してしまった。曲がり角の奥から現れたのは、清澄の制服を着た小柄な……小柄で可愛らしく、栗色の髪がなんとも言えない柔らかさと愛らしさを醸し出す美少女だった。控え目な胸は自己主張することなくそれ自体の美しさを保ちながら、咲のスレンダーな肢体を引き立てて

「ちょっとちょっと!?何この無駄に詳細な身体描写!?」

……引き立てており、手の中にすっぽり収まりそうな愛くるしさを一層引き立てていた。ここで注目すべきはその恐ろしいまでの調和性であり、肢体が胸を、胸が肢体をより魅力的にしており、咲をより高次元の存在へと(略)

更に特筆すべきは咲の白さと柔らかさを兼ね備えた太ももである。このことは幼咲の姿と合わせて考察するが(以下略)

 

 

 

 

 

一時間後、淡・咲・美穂子の三人は仮眠室にいた。

「一時間も咲について語りやがって……咲が真っ赤じゃん」

咲の柔らかい太ももを枕にしながら横たわる淡が口を尖らせる。

「淡ちゃん、寝てないと」「なんで私も混ぜてくれなかったの!?」「そう言う問題じゃないからね!?」

お元気そうでなにより。

「あ……もう駄目だ……サキ、最後のお願いだからキs」

「怒るよ」

「もう寝るからサキの番になったら起こしてね」

あわわと目を閉じる淡。逃げたとか言ってはいけない。

咲の太ももをあわあわしながら眠るあわあわ。それを確認すると、咲は何やら取り残されたような顔をする……具体的には「小柄で可愛らしく」の件から取り残された美穂子に向き直った。

「福路さん……ですよね?ここまで連れてきてくれてありがとうございます」

ぺこりと頭を下げる。そんな咲になぜか「い、いえこちらこそ」と頭を下げる美穂子。

「淡ちゃん風邪みたいで、ゆっくり出来る場所で休ませてあげたかったんですけど……私方向音痴ですからたどり着けなくて」

「風邪?本当に?」

「はい、おでこも熱くて」

「サキ可愛いよ可愛いよサキ」

……。寝言だった。圧倒的寝言だった。暫し無言が続いた。

「……確かに、(あなたに)お熱みたいね」

その言葉に少し照れ笑いを浮かべる咲。「それより福路さんはどうしてあそこに?」

それはと、その先を喉に詰まらせる。初対面の相手に「お宅の先鋒に凹まされて落ち込んでいました」と正直に言うわけにもいかず、

「少し頭が痛くて」と茶を濁した。

「風邪ですか?」

「あ、いえ、そう言う訳じゃなくて……」

「じゃあ」と咲がなんとなしに思う所を告げた。

 

 

 

「淡ちゃんに凹まされて後輩に合わせる顔が無くてああしてたんですか?」

 

 

 

その、一気に核心をつく答えに息を詰まらせる美穂子。

「なんで……?」

「淡ちゃんを真正面からみようとしていませんでしたから。それで、何となく……」

淡の髪を手で梳きながら話す咲。その目は美穂子に向けられていないにも関わらず、まるでその心中を見透かしているようだった。

「そんなに落ち込むことも無いと思いますけど。所見で淡ちゃんを相手に収支をプラスにするなんて、並大抵じゃないんですから」

それは本当の話だ。実際合宿でも、淡は格上の原田を追い詰めたことがあり

「勝ったらサキは貰うね」

という約束が無ければ勝っていたであろう試合も幾つか有った。孫離れできていないとか突っ込んではいかない。

「あれ?そう言えばおじいちゃん達は?」

世の中には知らない方が幸せなこともあります。まさか、第三次東西戦に参加しているなんて言うわけにもいかず、ましてや賭けているものが全国編で咲の麻雀を解説する権利だとは口が裂けても言うわけにもいかず、こうして誰にも知られないようにひっそり黙っているのだ。

「……今全部洗いざらい吐きましたよ?」

あ……

「全くおじいちゃん達は……」

頭が痛いと言わんばかりに溜め息を吐く咲。

「大会で遅くなるなら朝のうちに教えてくれないと困るよ……食事の都合とかあるのに」

そっち!?

……まあ、それはいいとして。

「相手が悪かっただけですから。あまり気にしちゃ駄目ですよ」

淡の髪を弄りつつ、そう諭す咲。実際のところ美穂子はよく耐え抜いたと言える。元ラスボスを相手に原点回帰するなど、そんじょそこらのキャラでは出来ないわけで……

「白糸台……準決勝……大将戦……うっ頭が……」

「どうしたの、淡ちゃん!?」

何やらうなされるように頭を抑える淡。何やら自分から傷口を切開しているが、悪い夢でも見たのだろうか。

「で、でも……!私は先鋒で!チームの為に勝つ必要が……」

「激戦区の先鋒戦を無傷で耐え抜いたエースを邪険にする人がいると思いますか?むしろ、今ここで落ち込んでいる方が後輩の足枷になると思いますけど」

エースの不在というのはそれだけで士気に影響する。今、良くも悪くも美穂子に出来る事は後に続く後輩達のバックアップだった。彼女が頑張れとか言えば、池田あたりは玉と砕けんばかりの勢いで当たって砕けるだろう。ただの玉砕じゃね?とか思ってもいってはいけない。

「……辛いことやどうにもならないことがあったら仲間を頼る。全てを抱え込むことがエースの仕事……っていう訳じゃないですよ」

その言葉は、意外な優しさに満ちていた。だから、それが受け入れられなくて、目の前の少女にらしからぬことを言ってしまった。

「そんな……そんな気休めで納得出来るわけ……」

「直ぐに納得する必要はないですよ」

しかし、咲はそれすらも暖かく受け入れた。

「これが私の……祝福だよ」

書き間違えた。こっちだ。

「少しでいい……誰かを信じる。それが本当の強さじゃないんですか?」

そう。それが咲が大将のポジションにいる理由、序盤に咲が出しゃばらない理由だった。他人を信じられない人間は自分を信じることが出来ない……そこには熟成した考えがあり、決してその場の勢いでオーダーを考えた訳ではない。

「信じる……華菜達を?」

「ええ」

「ハマれば強いけど大ボカしたら二度と再浮上出来ない、勝負の後には遺骨すら残さないから骨も拾ってあげられないパンドラの箱系女子の華菜を信じる?」

「………。…………………。ええ、まあ」

なんだ今の間は?

パンドラの箱……最後になんか希望が残ってればいいね。

「……ごめんなさい。私、こんな所で落ち込んでいる暇なんて無かったわ」

「……急いで戻って上げてください。手遅れにならないうちに」

その言葉に頷き、立ち去る美穂子。その目には、今までにはない強さが秘められていた。しかし、

「あ……名前」

聞きそびれてしまった。あの少女の名前……綺麗で可憐で優しくて、思慮深くて(略)嫁にしたくなるような少女から名前を聞きそびれてしまった。

(……いえ、今はいい。きっとまた会える。また会えたら、そのときに名前を聞いて……)

 

 

 

 

 

 

 

福路さん……元気出してくれたらいいな。そうしたら、大将戦は幾らか面白くなるかもしれない。美穂子が出て行ったドアをじっと見ながら、咲は今までの麻雀を思い出した。

(県予選は退屈だったな……漸く少しは骨がありそうな人達が出てくるかも)

それは間違いない。大将戦に出てくるのは、(パンドラの箱と)天江衣だ。淡を除けばこの大会、唯一咲を止められるかもしれない魔物。咲は魔物を欲し、魔物もまた友を欲している。邂逅の時は近い。二人は今から三時間後に出会い、ギリギリの死闘を演じることになる。

 

 

 

……ただし、その前に、会場の誰も……咲すらも予測しない事態が起こることになるが。控え室に戻った淡と咲を迎えたのは

 

 

 

鶴賀 170400

龍門渕 148000

風越 55800

清澄 25800

 

 

 

 

絶望だった。

 




完全に出落ちなタイトルでした。微妙な終わり方は、力尽きたあとの証拠品です。
私の力ではこれ以上文章を練ってもろくな事にはならないと、大胆なキンクリをしましたが、しても大して変わりませんでしたよ……
次回投稿と同時に以前告知させて頂いた「白糸台の代理メンバー」のアンケートをとる予定です。ラインナップはこんな感じ

① オリキャラ……何とか王者白糸台になります。一応、そこそこ強い感じです。

下馬評 優勝候補
② 高鴨穏乃 多分先鋒戦に出てきて、咲vs照になる予定。

下馬評 決勝進出は堅い

③ は、直前で発表します。ある意味大本命か?

下馬評 優勝間違いなし!

では、また次回。
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