Q.もし咲が鷲巣巌と邂逅したら?   作:ヤメロイド

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随分お待たせしましたが、何とか完成です。
オリキャラの見た目ですが、これは僕と友人の厳正な審査を経て決定しました。
友「どんな感じの女の子がいいんだ?取り敢えず言ってみ?」
ヤメ「まず黒髪だろ」
友「ふむ」
ヤメ「次にロングヘアーだろ」
友「まあ、それならいるんじゃないか」
ヤメ「貧乳だろ」
友「おう。ちょっと待てや」
ヤメ「咲と同い年くらいの年齢で咲とのツーショットが似合う感じで身長はあまり高すぎずクールビューティーな感じで……」
「お前咲ハーレム作りたいだけだろ!?」


結果
ヤメ「川澄舞ちゃんがいい!」
友人「いや2015アニメ枠どうした!?その条件にはまるの渋谷凛だけだろうが!」
「タカミと名前被る!」
「名前変えるから関係無いだろ!?」
という醜い争いがありましたが何とか決まりました。
僕がじゃんけんに負けて……


本当は皆城乙姫という選択肢もあったんですが……
乙姫「あなたは咲をどう祝福する?」
淡「え……?」

ざわ……ざわ……


になりかねないので却下。



もう一つの邂逅

長く張り詰めた時間が遂に終わりを告げた。もうこれで終わりです。これ以上はありません。弛緩した空気はそう語りかけるようだった。

アナウンサーが何かシャウトするように何が起こったのか必死に解説しようとしている。

だが、そんな言葉が淡達の耳に入ることは無かった。宮永咲。自分達の信頼と希望と運命、その総てを託して大将戦に送り出した彼女達のジョーカーは、その才能をいかんなく発揮し、開局前誰もが予想だにしなかった奇跡の逆転劇を演じきった。

「か…勝っちゃった……」

咲が初めて見せた才能の刃。淡が見てきたのはその刃が如何に鋭いかということで、どれほど切れるのかまでは知らなかった。

スクリーンの中に映る咲の相貌は、さっきまでの狂気じみた麻雀を打ったものとは思えないほどに澄んでいて、とても綺麗だった。

清澄の待合室を出る。途中久が救急隊員に担架で担がれていくのが見えたが、無視して走る。淡が探しているのは、咲の麻雀で度々心臓を強制終了させられかけた久ではなくて……

「サキ……」

そして、曲がり角を曲がった先に咲は居た。ここはどこだろう、コイントスの裏表で帰る道を選ぼうかという顔をしていたが、淡の顔を見るなり「淡ちゃん!」と駆け寄ってきた。

「サキ!お帰り!」

「うん。ただいま」

ピシッという音がするほどに抱き合う二人。イィィヤッホォォォオ!淡咲最高ぉぉおおお!

咲の方が少しだけ身長が高いので淡の息がうなじにかかる。

「あ、淡ちゃん……」

「ん~?」

すりすりと頬を寄せる淡。

「ちょっと…その……くすぐったいかなって……」

「ナニが?」

真っ赤になる咲をニヤニヤしながら愛でる淡。こやつ……遂にS気まで発現させおったわ……

その時、廊下の向こうからドタバタと足音が聞こえてきた。恐らく野次馬プラス記者達だろう。

「あーそっか。あんな麻雀魅せられたら誰だって咲に一目会いたいと思うよね」

目の前できょとんとした顔をする咲を見てしみじみする。全くもってその通りで、もはやそのまま一目惚れする勢いである。悪い女に引っかからないか心配で心配で……

「大丈夫!サキは私が守から!」

「へ?何の話?」

「どんな苦難が待ち受けていたって私と咲……二人なら出来るよ!」

そう。淡なら出来る。なぜなら、淡は人生の宝物を見つけたのだから。

「さあ、いこう。世界は美しく、そして人生はかくも素晴らしい」

It's a wonderful life……っておい馬鹿止めろ!

「てへぺろ」

……とまあ、そんなコントしてる暇は無いわけで。

「逃げるよ、淡ちゃん!」という咲の言葉で、あの感動思い出して軽い鬱状態になっていた淡も走り出した。

 

 

 

さて、煩い野次馬根性丸出しの人だかりの会場をなんとか抜け出して街中のカラオケボックスでいちゃこらする淡と咲。しかし、咲の闘牌はあまりに破壊的過ぎて、一緒に戦った三人は悲惨な状況に陥っていた。

最初から最後まで咲の手の平で踊らされていた龍門渕の天江衣。

最初から最後まで徹底して勝負に一切絡めなかった風越の池田華菜。池田ァ!不可避。

銀行代わりにされたばかりか、二十万近くあった点棒をごっそり持って行かれた鶴賀の部長、加治木ゆみ。

『ワハ……ハ…』

 

もそりと池田が虫の息を上げる。それは枯れる前の花が最後の力を振り絞って種を蒔くようだった。

「あ……あたしも楽しかったし……」

衣が驚いたように泣き顔を上げる。

「お前が…楽しめた…?マジで?」

「ん?おかしいか?」

うん。割と。

「なにごともそーやって前向きに楽しんでいくのだよ!」

原作通りのセリフで無理やり良い話風に終わらせようとする池田。しかし最後の「でないとやってられないし……」は余計だった。

何でそんなこと言った!言え!と突っ込むまである。

ゆみが何か台本を読むような口調で喋る。

「確かに……。………。……………うん。まあ…ワタシモタノシメタヨ」

「うわー凄い棒読み」

そのセリフを言うまでの葛藤が手に取るように解る。

「まだまだここで牌を触っていたい。できれば何局でもここで続きを……すまんやっぱ無理」

無理だった。しかし、彼女達は負けたが代わりに得た物もある。それは経験……宮永咲という天才と打てたことは彼女達にとって得難い何かとなった。ゆみは三年でもう引退だが、今日の麻雀は無駄ではなかった。それだけを胸に、彼女達は名残惜しい試合室を去る。

 

 

 

 

訳がなかった。

「にゃああああああ!にゃんじゃあの麻雀はぁ!」

「よくも人を銀行代わりにしてくれたな……!」

「コノウラミハラサデオクベキカ……」

そう言えばここに揃った面子の中に黙って終わりそうな女子高生がいなかった。特に衣の表情が般若みたいになっていてマジで怖い。

三人は顔を見合わせるとそれぞれの、『打倒宮永咲!絶対にこのままでは終わらない!』という全く同じ気持ちを吐き出した。もはや主人公が誰か解ったもんじゃない。

 

 

 

 

決勝の卓で誓いを交わしあった三人は、今度こそ試合室を去っていった。部屋から出る間際、池田はふとその背中を見る。三年生のゆみと、仲間からの圧倒的な信頼を背負って卓に着いた衣の背中、それは泣いているように見えた。自分とは違う。自分は来年があるし、チームの信頼も言うほど厚くない。何か慰めの言葉をかけるべきだったか……

「いや……カナちゃんには関係無いし……あいつらの事情なんて……」

だって、

「池田ァ……覚悟は出来てんだろうな……?」

(一番ヤバいのはカナちゃんの方だから……)

最終的にプラス収支で終わらせたのにこの様である。

しかし、彼女達にも解らないことがたった一つあった。それは……

 

 

 

 

 

県予選が終わって二週間が経った頃、ミンミン蝉が鳴く大阪で

「あかん……さっぱりですわ」

とある女子校にて、目にどす黒い隈を作った女子高生が唸った。北大阪代表の千里山女子。その副将であり参謀と貴重なメガネ枠を担う船久保浩子。通称船Q。

今、彼女は長野の試合を録画したビデオの山を前に一人うねっていた。そんな船Qに「頑張ってるな~」とおっとりした声がかけられた。振り返った先に居たのは三年生の清水谷竜華と園城寺怜の、先鋒大将コンビだった。

「あ、先輩方。お疲れさんです」

「お疲れ様なのは船Qの方やろ」

笑いながらコンビニで買ってきたジュースとだんごを差し出す。

「すいません」と言って受け取る。そしてストローをさしてジュースを流し込んで

「ごばらぁ!」

一気に吐き出した。

「何ですかコレ!?」

「どろり濃厚ビーチ味や」

「クソ暑い夏にそんなもん飲まさんで下さい!」

「なに言うてんねん!夏だからこそ飲むんや!」

「くっ……やはり先輩にAIRなんて渡すんやなかった……」

さて、なんとかどろり濃厚ビーチ味を処理しきったところで、竜華が垂れ流しされているビデオに目を向けた。

「そのビデオ……」

くいっとメガネを指で持ち上げる。

「ええ。最近噂になっとる大星淡と宮永咲っちゅうルーキーコンビの麻雀ですわ」

そう言って船Qはビデオの山から一本取った。

「今流しているのは個人戦の動画ですけど、大星の方は兎も角、宮永の牌譜に関してははっきりいって見る価値は殆ど無いです」

「と言うと?」

「個人戦のビデオを見て貰ったら早いんですが……あの一年、意図的に手作りを失敗させとるんですわ」

そう言って、船Qはビデオを巻き戻す。そこに映ったのは……

 

 

 

「サキ……可愛いよ……サキ……」

「淡ちゃ……んん……ダメ……」

「ごめん。我慢で」

 

 

 

 

ブチッ

「間違いました。こっです」

「ちょい待て。なんや今の」

 

 

 

ざわ……ざわ……

 

 

 

改めて船Qがエンターキーを押す。そこに映ったのは……

 

 

 

「ロン!1800」

「あらら……高めツモを狙ったんですけどね」

「ツモ!1300.2600」「あらら。鳴いたら牌がそっちに行っちゃいましたね」

「クク……ロン。リーピン一発、純チャンリャンペーコー」

「にゃああああああ!?」

 

 

 

「と、このように比較的ロスの大きい打ち回しが多いんですわ」

「今一瞬誰か飛ばしてなかったか?」

さらっと出番が消えていく池田。

しかし船Qの言うとおりで、個人戦での咲の打ち方ははっきりいって下手だった。やる気の無い麻雀。しかしその中で、一度だけ咲が本気を見せた試合があった。それは……

 

 

 

個人戦二日目。この日から東南戦になるのだが、会場の目はある一試合に釘付けになっていた。彼等が注目しているのは、

「ツモですわ!400.700」

龍門渕透華ではなくて、

「ツモです。1000.2000」

宮永咲である。あと卓に座るのは、

「あー!フリテンリーチしちゃいました!」

「ワハハ。かおりん、そういうのは言っちゃ駄目だぞ」

かおりとワハハ。なんだか被害担当役が決まったような面子だが、東3でのそれぞれの点棒は平らだった。

「宮永咲……この龍門渕透華を差し置いて目立ちまくりで……許せませんわ!」

一人加熱している人物もいるが、場は平らである。

 

 

 

「なんかさ……あれ本当に清澄の大将?何て言うか……」「やる気が無い?」

 

 

 

彼女達を映し出すスクリーンの前には大勢の人集りが出来ていた。しかし、どの顔も不満そうな顔をしている。

彼らが見たいのは宮永咲の魅せる麻雀で、平凡ありきたりな麻雀などに期待しているわけではない。最も、同席する人からすれば大人しくしていてくれた方が有り難いのだが……

(本当にこの人が宮永さん……?)

首を捻る佳織。その直後、

「ツモですわ!リーチ一発メンピン三色!親っ跳ねです!」

「はわわ……」

「あたた。この面子を相手に6000の出費は厳しいな……」

そうこうしている内に、透華に和了られてしまう。実力で言えば、透華はこの中でも咲に次いで高い。もし、団体戦みたく冷えることがあれば……

(おっと……集中、集中……)

しかし、今一番怖いのは咲である。あれだけの実力を持つ咲が、昨日からずっと良いところ無しなのである。そろそろ……

「ふう……」

その時、ワハハの下家に座る咲が少し長いため息を吐いた。

「ん?どうしたんだ?」

その溜め息に、何かヤバい気配を感じて咲に話しかけるワハハ。

「いえ……なかなか思い通りにいかないものだと思って」

そう言って八ワンを切る。

「本当は大将戦での染谷先輩……ああ、私達の副将なんですけどね。先輩の仇を取ろうと思っていたんですけど……中々思い通りに行かなくて」

そう言って咲は点棒を確認する。

(ワハハ……宮永にも調子の悪い時があるのか?)

しかし、直ぐに思い知らされる。咲の言葉の真意を。

透華が7ワンを切ったその瞬間、

「ロン」

遂に咲の口から処刑宣言が漏れた。

「えーと……タンヤオ対々でしょうか……?」

佳織の呑気な言葉が卓を舐める。しかし、ワハハと振った透華本人はそんな呑気なことを言ってられなかった。

 

 

222m555m888m444s7m

 

 

「「四暗刻単騎!?」」

 

唖然として固まる二人を睥睨しながら咲が言う。

「私が倒したいのはあっちの龍門渕さんなんですよね……中々冷えてくれないから役満を当ててみましたけど、これで冷えてくれないと本当に跳ばしてしまいますよ?」

(ワハ……この狂人がっ……!)

これで咲が自分からラスボスのスキルアップを手伝うのは何度目か……

透華が冷えたのは、この直後の事である。

 

 

 

 

なんやこれ……

ビデオの再生が終わり、独特のツーンという音が流れる部屋に、竜華の信じられないと言った声が通った。

「驚くのも無理無いですわ。自ら冷やし透華を起こしに行く選手なんておりませんでしたから」

西東京代表の臨海女子、メガン・ダヴァンが冷えた透華を恐れて他校の生徒を跳ばしてしまったのはその筋では有名な話だが、咲がやったのは全く逆の行動だった。冷えぬなら冷やしてみせよう龍門渕。

「しかし、ほんまに恐ろしいのはこの後ですわ」

「後?」

「ええ。龍門渕透華の実力は全くの未知ですが、ダヴァンが恐れたあたり本物でしょう。しかしあの一年は卓に座っていた選手三人を纏めて吹き飛ばしたんですわ」

は……?という呼吸が口から漏れた。

 

 

 

 

「チー」

咲、打2ワン。

(ワハハ……冷やし透華がいる卓では鳴けないって、確かかおりんが言ってたっけか……)

(なんなのこの人……)

「ロンです。タンヤオ三色ドラドラで8000お願いします」

「……」

透華がいる卓では鳴けない。それは嘘ではない。確かに、佳織は門前で跳ね満聴牌したし、ワハハに至っては鳴ける牌が一枚もない。しかし

 

 

 

567p5555667s

 

チー567m

 

 

((何で鳴けるんだ(です)!?))

 

 

絶望一色に染まった顔。しかし、咲からすれば既に通った道を歩いているだけのこと。

(鷲巣お爺ちゃんがいる卓じゃ鳴くどころか有効牌が来ないことなんてザラだったからね……)

しみじみと思い出す、勝てなかった日々の麻雀を。どうやったら鷲巣に勝てるのか。考えて考えて考えた末に辿り着いた答えが、

 

 

「そうだ!お爺ちゃんと同じことをすればいいんだ!」

 

 

 

という、マホちゃんもびっくりの発想だった。

それ以後、多少条件は付くものの、咲も鷲巣と全く同じ超豪運麻雀が出来るようになりましたとさ。めでたしめでたし。

「ワハハ……何もめでたくないぞ」

 

咲 81000

透華 6400

ワハハ 6200

佳織 6400

 

 

卓は悲惨な光景だった。他三人は鳴けないのに、咲は鷲巣力でカンドラなどを手牌に絡めて四巡くらいで満貫や跳ね満を聴牌してしまう。心なしか透華の目が完全に死にきっていた。

(うーん。取り敢えずこれで先輩の仇は取ったことになるのかな?)

鷲巣力で透華がワハハの河に触れられないようにしつつ、咲は牌をツモる。

(攻め一辺倒になっちゃうから使いどころが難しいんだけど、自分から牌を鳴けないように縛ってくれるなら問題無いかな)

衣戦の時もそうなのだが、咲の恐ろしい点は相手の能力を完全に無効にしてしまわないことにある。やるにしても一部だけだったり、逆に利用してしまう麻雀を得意とする。その点、ある意味冷やし透華の能力は絶好のカモだった。

「うん……カン」

そして毎度同じく嶺山牌を掴む。

「ツモ。嶺山開花、タンヤオドラ4の四本場。皆さんの跳びで終了ですね」

 

 

 

 

 

 

「これが個人戦での一部始終です。決勝戦は別ブロックから上がってきた大星淡との一騎打ちになるかと思ったんですが、福路美穂子に差し込んでの三位抜けで終わりましたわ」

船Qが見る価値が無いと断言した通り、決勝卓は咲も淡も暴れずの静かな卓だった。その上できっちり勝つあたり、本当に実力の高さを窺わせる。

「何て言うか……えげつないわ」

「ホンマや。うち、生きて帰って来れるんやろうか?」

千里山の大将は竜華である。生きるって辛いわ……

「それで何か解ったことはあるん?」

団体戦での派手な和了は聞いている。それと合わせれば何らかの方向性は見えてくる筈である。しかし、結論は冒頭に戻る。

「それがさっぱりなんですわ」

「マジで言うとるん……?」

嫌なことを聞いたような顔をする竜華。しかし、船Qは至って真面目に話す。

「大将戦オーラス。三局目の七本場で見せた和了は何とか説明がつきますわ……でも」

でも?と二人が口を揃える。

「オーラスのあの和了だけは全く解りません。あの天江衣が振り込んだこともそうですが、なぜ宮永はあんな待ちを選んだのか……オカルト能力だとしても説明がつかないんですわ」

船Qが説明する。あのとき、少なくとも咲は衣の手に2ワンがあること。衣が2ワンを切ることを解っていないといけなかった。

「怜みたいに数巡先を見る能力とちゃうのか?」

一番あり得そうな能力を言ってみる。

「まあ、それなら一応説明がつきますが……それだと十巡先が見えてることになりますが」

「……ごめん。やっぱ却下で」

手牌が丸裸だと言っているも同然である。

「あかん……本気で勝てる気がせえへん」

がくりと背もたれに体を預ける。視界がぶれて竜華の目に入ってきたのは小柄な可愛らしい少女だった。

「……なあ、船Q」

「なんですか?」

「直接聞いてみれば案外あっさり教えてくれるとちゃうの?」

ははは、まさか。と笑う船Q。その直後、

「船Q、船Q」

と怜が声をかけた。

「これと違うんか?」

ポチッとテレビの電源をつける。そこにいたのは、さっきまで怜が「あの子の太ももええな~」と思っていた少女で、

 

 

『え?大将戦オーラスの和了ですか?別にいいですけど』

 

 

 

船Qの夜なべの努力を全くの無駄にする映像が映っていた。

 

 

 

さて、テレビで咲が自分の和了について解説する前に、衣がなぜ振り込んだのか当たりを付けることが出来た人物が三人いる。

一人は、

「流石ハルちゃん!」

「赤土先生凄いです!にしても、よくあんな麻雀打てるなあ……」

「そんなオカルトあり得ません……」

「おもち力たったの30か……」

「この子の麻雀温かくない……」

阿知賀の監督、赤土晴江である。最も、千里山や姫松の監督との共同作業で何とか答えにたどり着いたのだが……

「ど……どんな…もんよ……」

かゆうまと言い出しかねないグロッキーな顔で力尽きるレジェンド。

もう一人は、

「宮永さんちょー凄いよー」

「対戦するの豊音だからね……」

「ちょー帰りたいよ……」

「だる……」

「にしてもよく解りましたね、熊倉先生……」

「コノヒトモ、センセイモ、スゴイ!」

熊倉トシ。急遽岩手の監督をやることになった敏腕監督。どの位敏腕かというと、山奥の村から豊音を引っ張り出してくるくらい敏腕。監督としても選手としてもその腕は確かなおばちゃんなのだが、流石に咲のとんでも麻雀を理解するのは老骨に響いたようである。豊音に肩を揉んで貰いながら

「イタタ!豊音、力が強すぎるよ……」

「あわわ!じゃあこう?」

 

 

ポキン♪

 

 

病院に担ぎ込まれたとさ。その日から、宮守の学校に「トヨネは悪くない……トヨネは悪くない……」という呪詛が聞こえるようになり、鹿児島パワーでお祓いして貰うのだが、それはまた別のお話。

ここまでで、咲の麻雀を理解出来たものは学生の中にはいなかった。しかし、世の中に天才は少なくても秀を極めてそこに行き着く事が出来る人間が僅かながらいる。

「うん……こんなところですね」

常勝白糸台。今年の白糸台の大将に抜擢されたのはそう言う人間だった。

「それ……本気なのか……?」

信じられないという風に菫が、今年度の白糸台の大将、和美の語った咲の麻雀を思い返す。

『あんまり能力とか気にしたらダメだと思う……思います。包み込むように考えれば、咲ちゃんの麻雀はそれほど奇をてらったわけではないです』

遠慮がちに自分の見解を電話で述べる和美。和美は今喫茶店にいるのだが、どうしてもと言う菫達に押し切られて種明かしをしていた。

電話口から照の声が聞こえる。

『じゃあ、咲の麻雀は極めてデジタルなものだって言うこと?』

「デジタルというよりはアナログだと思いますけど……デジタルにしては無駄が在りすぎですし、かといってオカルトでもないですから」

つまり何でもやりかねないということです。という一言は先輩方の精神の為に引っ込めた。照以外の人間が倒れかねない。

しかし、気を使うのはいい加減にしないといけなかった。

「そ、それから……」という誠子の声を押し留める。

「すいません。今人と会ってて……」

申し訳無さそうに頭を下げる和美。すると電話は「す、すまなかった!」と慌ただしく切られてしまった。

ツーツーとなる電話。それを流れるようにしまい、今まで待たせていた人物に謝る。

「ご、ごめんなさい。宮永さん……わざわざ東京まで来てもらったのに……」

また頭を下げる和美。彼女の対面、テーブルの向こう側に座るのは宮永咲だった。

「気にしなくて大丈夫だよ。個人戦も終わってるから、一週間後の合宿に間に合うように動けばいいだけだから。それと、宮永じゃなくて咲って呼んで」

お姉ちゃんと被っちゃうからと付け加える。しかし、随分と慌ただしい日程である。

咲の優しげな声と物腰に安心感を覚える和美。紅茶が運ばれてくる。ブラウン色のお茶に、テラスから入る陽が眩しい。

和美は何から話そうかと考えて、咲は和美が口を開くのを待って、シンシンとした時間が流れた。

そんな時間が十分ほど流れて、先に口を開いたのは咲だった。

「姉は……お姉ちゃんは元気?」

「あ……宮永先輩よね?うん。元気にお菓子を食べてるよ」

おい、麻雀しろよ。

相変わらずだな。と、懐かしむように咲が表情を崩す。そんな咲を見て、和美も意を決したように口を開いた。

「私……一度、宮な--咲さんと会ってみたかったの。卓を囲む前に……」

長野の大会で咲を一目見てから、何とか卓以外の場所で会いたいと思った和美は手紙を送った。東京行きの列車のチケットを添えて。

ところが、そこに書かれていた文章は、「あなたに会いたい」という不器用にも程があると突っ込み待ち状態だった。本来、咲はそんな手紙を真に受けてわざわざ東京に行く必要なんて無かった。道に迷ってダウジングをしながら待ち合わせの喫茶店を探す必要など無かった。しかし、咲は来た。なぜなら……

「差出人が差出人だったからね。この名前を見せられたら来ないわけには行かないよ」

そう言うと咲は和美の名前、裏麻雀界において最も有名な苗字を告げた。

 

 

 

-天-

 

 

 

「天……天和美。第一次東西戦で最強の座を手にした天貴史の一人娘。私も興味が湧いたから」

これが、両雄が邂逅した最初の瞬間だった。

 




この作品は基本的に原作に忠実です。

咲、点棒をゼロにされて追い詰められる。
そこから奇跡の逆転を決める。


間違ったことは書いていません。多分!
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