お前もニフってる?   作:HLNF会長

10 / 33
第十話 フィルチとスネイプとそれから私①

 

 

 タイトルを見てわかる通り、俺はいま性格がひん曲がりに曲がった陰険な奴らと、若干の交友がある。というか、最近交友が出来たところだ。

 二人とも俺の主人であるハリーを邪険に扱うどころかすべての生徒たちに平等に嫌われまくっているので(スリザリン生の一部を除く)、この名前の隣に俺を並べてほしくないんだけどな。俺は類まれなるハッポービジンの才能があるので。みんな違ってみんな良いどころの騒ぎじゃねえってんだ。

 

 この二人と俺の関係を話すためには、まず十月三十一日———ハロウィーンの日まで時間を戻さなければならないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハロウィーンというのは素晴らしい一面と、とんでもなく悪い一面がある。

 素晴らしい一面というのは、ジャックオーランタンの浮いた大広間の夜空が綺麗で、お菓子がいっぱい食えて、晩御飯がひときわ豪華なところ。

 とんでもなく悪い一面というのは、ハリーの両親の命日で、死ぬほど悪いイベントが沢山起こるところ。

 んー、マイナスのほうがちょっと大きい。

 

 ロンとハーマイオニーは多分今日の呪文学の授業で決定的に仲が悪くなるんだろう。“うぃんがーでぃあむれびおーさー”ってやつ。あなたのはレビオサー!

 

 で、俺が今何をやってるかっていうと、睡眠パウダー作り。トロール討伐はハリー達にやってもらうとしても、なんかあってトロールをシバき損なったらコトだろ?

 だからトロールやヴォルデモートでも一瞬でコックリの睡眠パウダーを用意しておいて、もしもの時に振りまくってワケ。……最初から出しとけよって思われるかな。

 マ、細かいことは考えないでおこ! 柔軟性と適応力が俺の長所だしな。なんか言われたらニフラー特有のプリティフェイスで誤魔化せばいっか。

 

 今は丁度生徒たちが授業を受けている時間で、俺は人気のない裏庭の石の丸テーブルの上に大鍋をセッティングしていた。今回はパウダーだけあってあんま液体をじっくりコトコトって訳にはいかないんだが、豆を炒る工程が一回だけあるんだよな。

 

 てか、あれだな。めっちゃ気になるな。さっきから背後で俺のことをチラチラと見てる奴。一昨日昨日と魔法薬学の練習をするときに姿を現すからもう誰かは分かってるんだけどさ。俺が観念して後ろを振り向き、ちょいちょいと手招きをすると、柱の後ろに隠れて居た男———アーガス・フィルチが顔を出した。

 最初は得体も知れないニフラーの見張りに来ていると思っていたのだが、どうも違うらしい。もしかして魔法薬学に興味あったりするぅ? 学友は全然歓迎するけど。一人……一匹でやってんのも寂しいから、興味あるならこの活動に引き摺りこみたいまである。こいつが俺と仲良くなったら、ハリーへのアタリも弱くなるかもだし。ご主人様の住環境の改善が俺の目下の課題なわけだし。闇の帝王くん含め。

 

 おそるおそる近づいてきたフィルチをテーブル脇にあった長椅子に座らせると、俺はすり鉢を取り出して、その中にケシの実をばらばらと入れた。取り敢えずこれ潰せ。俺はその間ギリギリ豆を炒っておくから。

 俺が教科書の文を指さして指示すると、フィルチはしばらく怪訝そうな顔をしたあと、ケシの実をおもむろにすり潰し始めた。

 

 俺は腹の袋から鉄製の小物入れを引っ張り出して、大鍋の横に置いた。大鍋ってなかなか背が高いから俺には使いづらい。スプラウトの時は近くにあった適当な木片で何とかしていたが、今思えば火気周辺に可燃物置くもんじゃないよな。

 良い感じの背丈のものをホグワーツで探し回った結果、空き教室に置かれてた古そうなコレを採用したってワケ。誰も使ってなさそうだったし。

 

 俺はマッチ棒を擦って火をつけると、アルコールランプに点火し、それを大鍋の下に差し込んだ。そのまま小物入れの上に飛び乗って、大鍋を見下ろす。麻袋から取り出したギリギリ豆を鍋に投げ込む。ギリギリと歯ぎしりするような音が豆から鳴り始めた。厨房から貰って来た木製のヘラで適当に豆を動かす。

 

 そういえばみんなは寝る時って歯ぎしりする派?

 俺はねー、イビキかく派。こないだ久しぶりにハリーと添い寝したら教えてもらった……というか、叩き起こされて伝えられた。あんまりにも「グガガガガガ」とか「ギギギギ」とかいうもんだから、もう一緒に寝らんないって。ぐすん。まあ一緒に寝ちゃうとハリーが徹夜コースになりそうだから仕方ないか。

 ちなみに偶に夢の国のアヒルみたいにグワグワ言っている時もあるらしいぜ。

 

 そんなことを考えていると、ギリギリ豆の歯ぎしりがすっかりやんできた。もうオッケーそうだ。フィルチの方のケシの実の様子も見てみる。お、良い感じにすり潰せてんじゃん。

 試しに指で粉をすくって、ペロリと舐めてみる。

 

 

 

 俺は思わず目を見開いた。天国だ。天使がラッパを吹いている。悪魔も羽をパタパタさせながらサムズアップしている。

 あ、お空綺麗。雲から光が差し込んできた。お花が降ってくる……。

 

 

 バチン、という大きな音で俺はハッと我に返った。フィルチが放心した俺を見かねて耳元で手を叩いたらしい。じーんと音が残った頭を整理する。どうしたんだ俺……そうか、ケシの実。そういえば少量ながらもアヘン成分が入っていたはず。モルヒネ的な。

 

 つまり俺は、アカンめな粉でハレルヤしかかっていた……?

 確かに料理の隠し味はめちゃめちゃ分かるし、人間よりは舌の感覚が鋭いのだろう。それかニフラーだから成分の効き目がすごかったとか?

 

 俺はなんとか正気を取り戻して、炒ったギリギリ豆をフィルチのすり鉢に入れた。フィルチにすりつぶせと指示をして、俺は次にチョウモクセイを取り出す。チョウモクセイってのは、金木犀っぽい花のこと。めっちゃ金色の花粉が出る。スプラウトから貰ったそれを細長い瓶にさかさまに差し込んでひと思いにシェイクする。

 

 時折瓶の縁のところから花粉が漏れるんだが、俺はその花粉の拡散力を見誤っていたらしく、まもなくここら辺が金色の煙に包まれた。くしゃみをしながら俺とフィルチがゴホゴホとやっていると、すぐに煙は晴れた。拡散力は凄いが、その分散っていく速度も速いらしい。

 俺とフィルチは目を真っ赤にしながらズルズル鼻水を啜っていた。こんど俺用のガスマスクでも作ってもらおう。

 

 この後にも数段階工程を踏むんだが、それについて言及するのは割愛させてもらう。てかフィルチまったく喋んねーのな。まあニフラー相手だから当たり前か。逆にペラペラ喋りかけてきたらメルヘン過ぎるぜ。

 俺がニンゲンだったら積極的に話題提供してやるんだけどな。ご趣味は? とか。好きな食べ物は? とか。お見合いか!

 

 俺のノリツッコミが微妙にキマらなかったところで、睡眠パウダーは無事に出来上がった。丁度ケシの実をつつきに来ていた小鳥にこのパウダーをパッとふりかけてみると、一瞬でおねんねしている。

 

 俺が満足げに頷いていたその瞬間。黒い影がテーブルを横切り、小鳥を奪っていった。視線を向けると、そこには颯爽と走り去っていくミセス・ノリス。

 あ……となんとも言えない雰囲気が俺たちの間には漂った。あの可哀想な小鳥さんはミセス・ノリスの昼食になるらしい。弱肉強食ゥ……。

 

 俺たちは結局何も言葉を交わすことはなく解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 次にフィルチに会った時、俺はトロールの頭の上にいた。トロールを倒したのでトロールの上で寝そべってました、とかそういうやつではない。絶賛戦闘中である。俺のご主人様は現在片足をトロールに引っ掴まれ、もう一方の手でぶん回される棍棒をなんとか抜群の運動神経で避けているところだ。

 ロンはトロールに石を投げまくっているし、杖が弾き飛ばされたらしいハーマイオニーは洗面器の下に隠れて悲鳴をあげている。カオス!

 

 フィルチは一年生三人とトロールのこんな状態に目をシロクロさせた後、先生を呼びに行こうと一瞬背を向け躊躇して、ごくりと喉を鳴らし、傍に立てかけられていた大きなモップを手に持ってトロールに向き直った。いや、無理じゃて! モップは蛮勇じゃて!

 

 フィルチは瞬時にトロールの首元にしがみついている俺に目を留めた。ちなみに俺は今、袋に手を突っ込んで全速力で睡眠パウダーの入った胡椒入れを探している。

 いやあ、分かりやすい場所に置いてあったんですけどお……さっきトロールが壁殴った衝撃で、俺が袋の中でギネス記録を密かに狙っていたコインタワーが崩れちゃって……俺の袋の中がとんでもないことになっているのだ。

 

 コレモチガウ、アレモチガウと俺の袋の中から変なものがいっぱい投げられる。金色のフライパン、ビーズのネックレス、斧、パクチーの小袋、テレビのリモコン、水色のボールペン、グラニングズ社の機密資料、カマキリの卵、大量のガリオン金貨。

 ハリーは、果たしてトロールの容赦ない攻撃か、俺の容赦ないお財布大公開か、どっちに悲鳴をあげているのか分からないほど目をシロクロさせていた。

 

「おい! パウダーを出せ!」

 

 フィルチがしゃがれた声で叫んだ。分かってるっつーんだよバカ!

 

「ロン、ピューンヒョイよ!」

 

 ハーマイオニーが勇敢にも叫んだ。

 間髪を容れずロンが叫ぶ。

 

「ウィンガーディアム・レビオーサ!」

 

 あ、コレまずくね?

 俺は何かを察する前に首元からトロールの背中側に隠れると、ゴンッと鈍い音を立ててトロールの頭に棍棒が落ち、俺のすぐそばを通り過ぎていった。ひええ、怖。

 

 足を離されたハリーは床に転がると、急いで後ずさりフィルチの後ろに隠れた。トロールは呻きながらゆっくりとうつ伏せに倒れていく。ズシン、という衝撃が床に響いた。

 

 あっ! 遂に見つけたぞ! 睡眠パウダー!

 

 袋の中を未だ探っていた俺は、確かな感触に驚いた。

 今更見つけたそれを掲げていると、トロールを唖然と見つめていた四人の視線がトロールの背中に立っている俺に集まった。フィルチの視線がなんか痛い。

 

 ゴ、ゴホン。まあ一応ね? トロール起きちゃうといけないし———まあ十中八九ノックアウトされてるだろうけど———パウダーを振っておこう。

 俺は誤魔化すように素早くトロールの背中を登って、ヤツの顔に胡椒入れに入った睡眠パウダーをシャカシャカ大量に振り始めた。ちゃあんと役に立ってますよ、という顔をしながら。

 

 多分ハリー達にもこの粉の正体についてはバレているはずだ。だって一年生の教科書の最初に出てきたやつだし。色特徴的だし。多分授業でもやっていると思う。

 

 後ろにいたハーマイオニーが洗面器の下から出てきて、先程俺が袋からほっぽった、地面に深く突き刺さっている大きな斧を無言で引き抜いた。俯いているから顔が見えない。ハリー達もそれに目線を移した。ロンの目が死んでいる。

 

 俺ってば、この場に流れる空気が、妙にしっかり読めた気がした。

 

 “お前、これ(睡眠薬/斧)使えばすぐに倒せたやろ”———という空気が。

 

 い、いやほら、斧については頭カチ割っちゃうとスプラッタでアール15指定くらいにはなっちゃうかもしれないし。こ、子供の前で仮にもヒトガタの魔法生物の頭をパッカーンしちゃうのは倫理的にどうなのってカンジっていうか……。

 

 

 俺は数秒の静寂ののち、出来得る限りの可愛い表情でテヘペロと舌を出し頭を搔いて———そのまま白目をむいて倒れた。

 催眠パウダーを至近距離であんなにまぶしてたらそうなるわなという、至極残当な結果である。




GW最後のログボです。

このニフラー、自分は胃痛ポジだなんだとか言っていますがこいつも大概です。

お気に入り登録・感想・評価を頂けると喜びます。
切実に燃料をください。エタる確率が低くなります。沢山の感想ありがとうございます。

ー追記ー
いま朝六時前ですよね???なんでそんなにチェックしに来るのが早いんですか????
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。