お前もニフってる?   作:HLNF会長

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第十三話 メリー・クリスマス・メリー①

 十二月に入った。

 朝のホグワーツ城では廊下に吹く冷たい風が寝ぼけた生徒たちの頬を叩いており、マフラーを巻く者が後を絶たない。最近は太く量のあるマフラーが女子生徒の間で流行っているらしく、目元だけを出してくふくふと楽しそうに談笑する姿がそこかしこで見られた。

 体力自慢の人間の何名かは果敢にも防寒具ゼロで過ごし、無事マダム・ポンフリーの世話になったらしいが。まったくばかなやつらだ。冬のイギリスは舐めてると痛い目を見る。山あいに位置するホグワーツなんかは特にだ。

 

 雪やこんこんとばかりに城の外は雪が降っている。俺たちニフラーは秋ごろから遅くても十一月下旬には換毛期が終わり、みな既に体毛が冬毛に生え変わっている。

 ニフラーの冬毛モードはかなり毛が密集しており、雪に頭からダイブしても凍えることはない。精々身体がひんやりする程度だ。ニフラー軍団で雪遊びをした後は十五匹のニフラーで大広間の暖炉前を陣取り、皆で身体を温めたものだ。

 

 このあいだフレッドとジョージがクィレルの後頭部にポンポンポンポン雪玉をぶつけていたのは別の意味で心臓が凍りそうになったが、いい機会だったのでバレない様に俺も数発ぶつけておいた。

 クィディッチの試合でクィレルの後頭部に飛び蹴りをかましてから、妙にアイツは俺のことを警戒しているみたいだ。俺の姿を見た途端に———無意識にか分からないが———後頭部をサッと庇うように手をやるようになった。ざまーみろってんだ。

 

 ただクィレル、もといヴォルデモートの手にかかれば俺なんてちょちょいのちょいで殺されちゃうので、最近はクィレルの授業の空コマを割り出し、その時間はマクゴナガルやフリットウィックの手伝いをして自分の安全を確保している。

 特に最近はクリスマスが近いんで、大広間の大きなもみの木に付けるオーナメントの設置などを手伝ったりしてお菓子を貰ったりとか?

 どっちも忙しいときとかは教卓の上に座って授業の見学をしたりしている。特等席もいいところだぜ。

 

 

 ん? ハリーがクリスマス休暇どうするのかって?

 ぐりもーるど・ぷれいす、だっけ。シリウスんちに行くらしい。ダンブルドアから聞いた。

 既にハリーの荷物はそのぐりもーるど・ぷれいすに運び込んであるらしく、その旨の手紙を貰った時のハリーったら飛び上がってその日の夜は眠れなかったらしい。朝、目を真っ赤に充血させてベッドに横たわっている主人を目撃した俺の気持ちを考えろよ。

 俺としては、ハリーの少ない荷物を取りに行った時のダーズリー家とシリウスの会話を想像しただけでも悪寒が走るけど。

 

 クリスマス休暇にシリウスのもとに帰ることが出来ると分かった後のハリーの勢いは凄かった。スネイプの嫌味は一切ハリーのハートに刺さらなかったし、家族がいないことをよく嘲っていたドラコ・マルフォイは悔しそうにハリーを睨んでいたが、気にも留めていないようだった。

 

 そんなわけで、俺とハリー、そしてハーマイオニーはホグワーツ特急に乗り、キングズ・クロス駅に向かってるってわけだ。ロンを一人置いて。

 まあウィーズリー一家は全員残るっぽいし、是非とも特殊な一家団欒をしてほしいものだぜ。最後までハリーとハーマイオニーのこと引き止めてたな、あいつ。

 

「ねえ、ハリー……」

 

 俺が窓際で外の風景を見ながら時間を潰していると、ハーマイオニーが口を開いた。俺が振り返ると、彼女はハリーを伏し目がちに見ながら、どこか言いづらそうに口をもごもごとさせている。

 

「やっぱり私、スネイプのこと、シリウスに言うべきだと思うわ」

 

 ハリーもその言葉を聞いて、難しそうな顔をしている。スネイプのこと、というのは例のクィディッチでの一件だ。

 俺なんにもしーらない、と俺は前を向いて再び窓の外に視線をやる。耳は勿論傾けたまんまだ。

 

 ハリー達のなかで、あの一件は既に“スネイプがハリーを殺そうとした”というファイナルアンサーが出ているらしい。うーん、日ごろの行いのせいだな。あわれスネイプ。

 ハーマイオニーはシリウスにそのことを相談すべきだ、と言っているのだが、シリウスと頻繁にコンタクトを取っていたハリーなら既に察しがついている。そんなことを言ったが最後、シリウスが校長室に乗り込んでいく場面が目に浮かぶようだ。

 

 勿論ハリーは親が乗り込んでもおかしくないレベルでスネイプから虐められている。でも、なんてんだろな、いち生徒を殺すような人間じゃない、ともハリーは思っている。

 それはある意味ホグワーツに対する信頼でもあり、殺すまでの理由がないとハリーが感じているからでもある。もしハリーを殺そうってんならとっくにやってるはずだし。

 

 しかもハリーはあのダーズリー家で酷い扱いを受けてきた人間だ。他の人間に自分の受けてきたことを告げ口して、もしヘマした場合、さらに相手がヒートアップすることを恐れているのか———もしかしたら、問題を大きくしたくないという意識があるのかもしれない。

 

「そうだね……シリウスに相談してみる」

 

 ハリーは頷きながら言った。ただその言葉に真剣みが感じられないのをハーマイオニーは気が付いたのか、それ以上言及するつもりはないらしい。ただ心配げな視線を漂わせていた。

 

 まあ安心したまえ、ハーマイオニー。こいつは俺が面倒見てやるからよ。

 勿論スネイプを天使みたいな性格に変えることは無理だが、俺がハリーのミスをカバーすることで怒られることもなくなってきたし、ドラコも言いがかりをつけるネタがなくなってきたみたいだし、フィルチに至ってはハリーに良い感情を持ってるみたいだからな。

 

 俺たちペットは、ありあまるモフモフと愛嬌でご主人様のQOLを上げるのが仕事みたいなもんだ。

 ハリーは今まで受けてきた仕打ちと、これから受ける仕打ちが酷すぎると俺は思うからよ。出来るだけ俺が手助けしてやらなくちゃな。最近のハリーは最初に比べると、ロンやハーマイオニーのおかげで随分明るい性格になってきたと思うし。

 子供が過酷な運命なんて背負うもんじゃないぜ、まったく。

 

 

 

 

 

 

 キングズ・クロスに着くと、上品なコートを着たシリウスがハリーを出迎えた。

 

「ハリー!」

「シリウス!」

 

 走って胸に飛び込んだハリーをシリウスが固く抱きしめる。二言三言二人で話し合っていると、ハリーにおいてかれてトコトコ歩いてきた———というか空気を読んですこし歩みを遅くしていた———俺に、シリウスは目を留めた。

 

「あー、ゴホン。ロミオ」

 

 シリウスがかしこまった様子で手招いたので、俺はハリーの肩に登ってシリウスを見上げた。

 

「お前のことを完全に信用しきった訳じゃないが、家に招かないというのは無礼だ。まあ———よろしく」

 

 なにツンデレみたいなこと言ってんだよ、怖いな。まあスキャバーズ関連でヘマった俺も俺だからな。仲良くしてやらんこともない。

 俺とシリウスはお互いつんとした表情でぎこちなく握手をした。

 

「そうだ、コイツを紹介してやらなければな。ハリーには少し話しただろう? クリーチャーだ。クリーチャー! 出てこい!」

 

 シリウスが先程と打って変わって厳しい声で声を張り上げた。ハリーと俺が目を丸くしながら待っていると、駅のホームの煉瓦調の柱の陰から一人……一匹? の屋敷しもべ妖精が現れた。目が灰色に濁っていて、ホグワーツにいるやつらよりも随分と年老いた屋敷しもべ妖精だ。

 かろうじて覚えてるぜ。シリウスの弟と仲良かったやつだろ。

 

「クリーチャー、ここは屋敷の外だ。わたしがいいというまでその口を閉じていろよ。余計なことを言ったらただじゃ済まさないからな」

「ええ、勿論ですとも。こんな混血の入り混じった野獣どもの———「だ・ま・れ、と言ったんだ!」

 

 クリーチャーがなにか酷いことを言おうとしたのを、シリウスが遮った。「家にいる間はずっとこの調子なんだ」とシリウスは疲れたように乾いた笑いを漏らす。お前もタイヘンだな。

 

 クリーチャーが余計なことを言わないうちに、俺たちはクリーチャーの指パッチンによってブラック邸に瞬間移動した。所謂“姿現し”ってやつだ。こんな大人数で移動したのに全然気持ち悪くなんねー。やっぱ屋敷しもべ妖精はすげえや。

 

「わあ、すごいよシリウス! こんな豪邸だったなんて……絨毯もすごい高級そうだし、暖炉も大きい!」

 

 俺たちが通されたのはリビングだったらしい。ハリーが早口で興奮気味にまくしたてたので、シリウスは少し嬉しそうにはにかんだ。因縁のある実家だけど、褒められるのは悪くないらしい。

 

「カーテン裏に住み着いたドクシーの退治を一番最初にやったんだ。ガラスも埃まみれだったから磨かなければならなかったし……ほとんどクリーチャーにやらせたんだが、うちの母親の対処が厄介でね」

「シリウス、お母さんがこの家にいるの?」

 

 シリウスは苦い顔をしてハリーを見た。

 

「いるとも。生きてはいないが———ああ、いや。じきに会うことになる。()()()()()からな……また後でこれは話そう。いまは楽しい話題だけがいい」

 

 ハリーは納得していない様に頷いた。シリウスが話したくないのなら今は良いだろう……でも、()()()()()()って、一体?

 

「そうだな、ハリー。この家は秘密の守り人によって、わたしとダンブルドア、そして数少ない人間にのみ知られているとダンブルドアに聞いたね?」

「うん。僕の安全のためにって」

「そうだ。ダンブルドアは闇の帝王の野郎がいまも何処かに潜んでいると考えている。わたしも獄中で幾度となく考えた事だ———ヤツがあのまま終わるわけがない、とな。だからハリー、君のためにもこの休みの間はこの家から出すわけにはいけないんだ。すまない」

「ぜんぜん!」

 

 申し訳なさそうな顔をしたシリウスに、ハリーは慌てたように言った。

 

「シリウスと一緒に住めるだけでも嬉しいし、ダーズリー家にいた時だってどこかに遊びに行ったことはほとんどないんだ。だから、大丈夫! ロミオとシリウスがいるなら、今までで一番のクリスマスだよ!」

 

 シリウスはそうか、と相槌を打ちながら、ダーズリー家への精一杯の呪詛を心の中で吐いた後、一転笑顔を浮かべた。

 

「外に出られないままだと色々鬱憤がたまると思って、わたしが家にいるときはハリーに呪文を教えようと思うんだ。便利な呪文や、闇の魔術に有効な呪文、わたしときみのお父さん、ジェームズとで開発したやつとかな!」

「でも、シリウス。休暇中生徒は魔法を使えないんじゃないの?」

 

 ハリーがシリウスに怪訝そうに聞くと、シリウスは片眉を上げ、ニヤッと悪戯っぽく笑った。

 

「魔法省も検知できない家の中で未成年が魔法を使ったって、役人が気が付くと思うか?」

 

 ハリーとシリウスは顔を見合わせて笑った。

 

 

 一方蚊帳の外の俺は、空気を読んで『ホグワーツ熟練屋敷しもべ妖精が教える! クリスマス・ディナーのすゝめ ~これであなたもサンタクロース~』をソファに座って読んでいた。

 絶対に今年は七面鳥の丸焼きとパエリアを自力で作るんだ。それにフィルチや俺に良くしてくれてるやつらへのお返しも考えなきゃな。




次回はサンタ帽をかぶったニフラーが出てくるか、地獄みたいな展開が待っているかどっちかです。順番が前後するだけでどっちにしろ書きますが。

私がここまで連載を続けられているのも珍しいです。ひとえにみなさんのおかげです……完走したい……ロックハートと結託してホグワーツを滅茶苦茶にする話とか、ダンスパーティでDJしてる話とか書きたい……。絶対にロミオはロックハートを“おもしれ―男”と気に入る……。

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切実に燃料をください。エタる確率が低くなります。沢山の感想ありがとうございます。感想をください。私の主食です。
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