お前もニフってる?   作:HLNF会長

16 / 33
第十六話 メリー・クリスマス・メリー④

 

 

 

 聖夜の宴も終わり、子どもは寝る時間になった。酒に酔いまくってダイニングのテーブルで死んでいる大人はとりあえず置いておいて、俺とハリーは二階にあるハリーの部屋に向かう。ダーズリー家とは違い、この家の上等な部屋が用意されている。昔シリウスの叔父さんが使っていた部屋らしい。アルフォートみたいな名前の人。シリウスが幼い頃ずいぶん世話になった人だそうだ。

 

「あー、疲れた」

 

 ご馳走を食べすぎたハリーは、部屋の奥の方にあるベッドに勢いよく身体を投げ出した。うつ伏せのまま靴の踵部分を片方の足で引っ掛けて、床にスニーカーを放り投げる。ホグワーツでも見たことがないほどリラックスしているみたいだ。環境が変わると心が休まらないかと思っていたが、こりゃ心配なさそうだな。俺なんて枕が変わったら寝られないのによ。

 

 ずっとこのままがいいな、とハリーは呟いて、そのまま寝落ちてしまった。

 ここのところずっとドカ食い気絶部みたいなことをやっているので、冬休み明けはかなり体重が増えていることだろう。いっそこのまま体重を増やしまくってフィジカルを強くさせるのもいいかもしれない。魔法よりも腹筋の方が得意です、みたいな。アバダ・ケダブラは余裕で避けられます、みたいな。あら、なにそれ素敵。

 誰にも知られず俺の中で巨大な野望が生まれたところで、部屋の扉のところから小さな咳払いが聞こえた。シリウスだ。生き返ったらしい。

 

 「ロミオ……話がある」

 

 まだ赤い顔をしたシリウスが、俺を手招きして呼び寄せる。さっきの酔っ払いようとは打って変わって少し真剣な表情だ。ハリーの背中に毛布をかけた後、俺はシリウスの後についてまたダイニングへと戻った。テーブルの上には、俺がダンブルドアに貰ったにっくきタイプライター。俺、ダンブルドアの前にシリウスともお話ししなきゃなの?

 

 妙に顔がげっそりしたニフラーと赤ら顔の魔法使いが向かい合って席についた。

 

「ダメだな……頭がクラクラする」

 

 シリウスは据わった目のままそう呟いて、懐から紫色の液体の入った小瓶を取り出し、中身を一気に煽った。なにそれ。顔でそう訴えると、シリウスが「軽微な毒だ」となんでもないように返事をした。

 

「ハツカネズミの肝で作った毒でね。舌が数十分は使い物にならなくなるが酔い覚ましには一番効く。学生時代に出来た最大にして最も有用な発明さ」

 

 前々から薄々勘付いてはいたんだが、シリウスってやっぱりザンネンなおじさんだよな。

 シリウスは少し黙ると、なに考えてるかわかんない表情で俺を見つめた。

 

「クリスマスにこんな話をするのもなんだが、ペティグリューが死んだ」

 

 

 ……‘'どうして?‘’

 

 いや、いやいや。急な話すぎるだろ。

 急いで引き寄せたタイプライターで文字を打つ。シリウスは神妙な顔で俺の打った文字を身を乗り出して読むと、「衰弱死。五日前だ。闇祓い局には一昨日に情報が入ってきた」と答えた。

 

「そもそもあれほど臆病な男だ。寧ろあの性で今までアズカバンで生き延びていたことが信じられん」

‘'そう‘’

「しかし……これは私の私情が入っているのかも知れないが、アイツがここでくたばるとは思えないのも事実だ」

 

 不機嫌そうに鼻を鳴らしてシリウスが言った。

 絶対に言いたくないんだろーが、おそらく旧友としての勘だろうな。もしくは宿敵への一種の信頼か。

 勿論俺だってペティグリューが衰弱でくたばったなんて信じてないぜ。きっとスネイプだ。リリーの仇敵を殺す為ならアズカバンでも地獄でも乗り込んでいきそうだしな。

 

「だからここ二日間、ヤツの周りを調べてみた。昔の顔見知りやアズカバンの看守までな……だが、()()情報が出てこないんだ。当日看守を担当していた人間にも尋問したが、一向にボロを出さない。同僚にはこの件から手を引けと言われる始末だ。みなペティグリューは衰弱死だと思っている。特にマッド-アイがうるさくてな。私を監視せんと気が済まんらしい。ヴォルデモートが消えて引退していたくせに、私が出所したと思ったら素知らぬ顔で闇祓い局に出戻りしやがって……」

 

 なるほどお? シリウスはどっちかっつーと()が嘘だと思ってるわけだな。ありえなくもない話だ。

 “ヴォルデモート?”とカチカチタイピングする。

 

「ん? ……まあ、そうだな。動物もどきだと知られている上でアズカバンから脱獄するのは至難の業だろう。ヴォルデモートが一枚噛んでいるのかもしれない」

 

 シリウスは残りの毒をぐいっと煽った。

 

「……よし、行こう。アズカバン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんて????????????

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや、あのさ。いざ鎌倉みたいなノリで言われてもさ。いつの間にか用意されてた馬車に言われるがまま乗り込んだ俺も俺だけどよ。クリスマスなんだぜ?

 もうちょっとメルヘンチックな夜でもよくない? なんで俺今、雪の降りしきる荒波の海岸にいるわけ? 津軽海峡冬景色でも歌えばいい?

 

「そう拗ねるな。マッド-アイは今夜は三本の箒で呑んですぐ寝るらしいからな。邪魔も入らないだろうし、明日からはまたフランスに連れて行かれるし、今日ぐらいしか調べられる日がなかったんだよ」

 

 まっどあいさんへ。もう少ししりうすをちゃんと監視してください。ろみおより。

 俺の耳に入ってくるのはジングルベルの美しい音色などではなく、ザッパーンと激しく岩の背に打ち付けられる波の音だけだ。なんでハリーの可愛い寝顔を見た後にこんな無情な現場に来なきゃならないのか。これが保護者としての責務?

 風がさみぃしよぉ。雪降ってるしよぉ。俺泣いちゃう。

 

 俺がシリウスの肩の上でぐずぐずと文句を垂れている間に、シリウスは守護霊の呪文を唱えて、おおいぬを召喚していた。守護霊と動物もどきの姿は一緒になるみたいだ。

 俺も守護霊の呪文使いたかったなあ。

 

「ペティグリューの独房の階には他の囚人はいないんだろう? じゃあ君はエレベーターで待っててくれ。私は現場を見てくる。……もう一度言っておくが、これは闇払いとしての極秘の捜査だ。一切の口外を禁じる。いいな?」

 

 エレベーターを降りると、シリウスが同伴していた新人らしき看守に念押しをする様に語尾を強めて指示した。ガクガクと何度も首を振る彼の様子に満足したのか、シリウスは頷いてくるりと身体を翻す。

 と思ったら、少し離れた先で「全く、とって食おうってわけじゃないのに……」とぶつぶつ小声で俺に文句を言ってきた。どうやら冤罪の容疑が晴れた今でも人に恐れられているらしい。

 

 まあ十年アズカバンにいて衰弱してるのにすぐ復活して闇祓い局に就職しているあたり、シラフのやつでも怖いわな。自分を受け入れることで魔法省が和解の空気に持って行こうとしたのを利用したんだ、と以前シリウスは語っていたが、十分バケモンだと思う。

 

 で、なにやるわけ? 捜査向きの魔法でもあるの?

 俺は全然詳しいことを教えてくれないシリウスを見上げた。

 

「今から魔法と生命の痕跡を辿る。何かあったら教えてくれ」

 

 なんか知らんけどすごそう。とりあえずシリウスの肩からは降りておこう。どうしよ、スネイプの顔がドアップで浮かび上がったりしたら。俺流石に笑っちゃうよ。

 

 

アパレ・ヴェスティジウム(足跡 現れよ)

 

 

 シリウスは呪文(スペル)を唱えると、中腰になって、周りの地面に振り撒くように金色の煙を口から吐き出した。

 キラキラと金色の輝く煙があたり一帯を包み込み、今だけこのアズカバンがクリスマス仕様になったみたいだ。目がチカチカする。お宝の匂いだ! もしかしてこれって本物の金!?

 

「待て、ロミオ」

 

 金の匂いがたっぷり染み込んだ誰かの足跡を嗅いでいた俺に、シリウスが鋭い声で命令した。

 

「見ろ」

 

 シリウスが俺の背後を顎でしゃくっている。囁くような声だった。

 

 俺の背後では、六匹ほどのディメンターの痕跡の金色の残骸が、何かをペティグリューの独房から運び出しているところだった。ペティグリューか? いや、違う。女の人だ。ディメンターの隙間からレディースのパンプスを履いた足が見える。ええ、グロい。

 まるで天国へ誘う迎えのような神聖な光景だ。あんなにディメンターは不気味なのにな。金色の煙が彼女たちを覆っていた。

 

「ルシウス・マルフォイだ」

 

 シリウスは歯をギリギリと鳴らしながら唸った。ディメンターたちから視線を移す。

 ディメンターが去った後、残ったのは二人の男だった。呆然としたような表情のルシウス・マルフォイと―――あれは看守か? ルシウス・マルフォイの腕を引いている。顔もどこか不気味な男だった。汚職も甚だしいな。

 生命に関する魔法の効果が切れたらしく、強く風が吹いた瞬間、彼らの姿はかき消えてしまった。すごい魔法なだけに効果は短いらしい。

 

「気が付いたか?」

 

 なにが?

 

「マルフォイの手に、ネズミが握られていた」

 

 ほーん、面白いことになってんじゃん。ほーん。やばくね?

 

「足跡を辿ると、エレベーターに繋がってるわけだな」

 

 シリウスはいつの間にか俺らの床に着いていた、おそらくルシウス・マルフォイたちの足跡を分析していた。

 足跡も消えかかっているが、俺らが来たエレベーターへの道へと繋がって―――待てよ?

 

 俺はクンクンと鼻を床に押し付けて、警察犬さながらの嗅覚を駆使して足跡を追いかけ始めた。きんぴかへの匂いは敏感なんだ。

 エレベーターに行ったっちゃ行ったんだが、もう一人はこっちだな……エレベーターを過ぎた先だ。廊下の角を曲がってしばらくすると、匂いが止まったので視線を上げた。目の前には、壁。足跡はここで止まっている。壁をすり抜けたのか? キングズクロス駅じゃあるまいし。

 いや、違う。俺目線だと壁ってだけで、人間目線だと手すりだ。手すりを乗り越えたのか。

 

「こっちに来たのは、マルフォイか?」

 

 違うな。首を横に振る。

 

「じゃあ、看守の方か?」

 

 そうだな。首を縦に振る。

 

 シリウスが手すりの向こう側を呆然と見つめていたので、低いところからしか見れない俺はシリウスの背によじ登った。

 

「アズカバンを取り巻く悪天候の中での箒の使用は不可能か。ボロを出さないわけだ……」

 

 俺は呆然とした。

 手すりの先は、なにも無かった。アズカバンの壁の先は、海面から何百メートルも離れた空だけだ。

 

「覚えておけ、ロミオ。魔法使いの中で―――勿論ダンブルドアも含めて―――箒を使わずに飛行する術を会得しているのは、このイギリスに一人しかいない―――ヴォルデモートだ……」

 

「この件は私とダンブルドアが預かる。ロミオ、ハリーには教えるな」

 

 シリウスは神妙な面持ちで言った。

 

 

 

 一方その頃、俺はといえば、かなりドン引きしていた。

 ええ、ということは、その、つまり……クィレル先生出張編ってこと……?

 

 

 




キリがいいので短め。シリウスの魔法はファンタビのアレです。
映画ではなく原作小説準拠で、死喰い人も騎士団員も箒使わない飛行術出来ません。

いつになったら!!!1年生が終わるんだ!!!
まだハリー三頭犬も見つけてないぞ!!!どうすんだ!!!

お気に入り登録・感想・評価を頂けると喜びます。
切実に燃料をください。エタる確率が低くなります。沢山の感想ありがとうございます。感想をください。私の主食です。

ハーメルンが落ちて危機感を覚えたので、一応作者Twitterを貼ります。
@ Etehameln_pixiv です。
(2024/06/17)
↑進捗報告と本編に入れられなかった小噺とか次のネタとか適当に呟くだけで、全然フォローする必要ないです。進捗報告も八割嘘です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。