お前もニフってる? 作:HLNF会長
ハリーのペットになった転生ニフラーのロミオは、ホグワーツ入学早々大忙し!
ピーター・ペティグリューを告発して一躍人気者になったけど、普通にみんな(ダンブルドア)に疑いの目を向けられているよ!
その影響でシリウスは釈放されたけど、冬休みにペティグリューの獄中死の知らせを聞いて捜査に乗り出すと、あら大変! 闇の帝王がアズカバンまで出張してきていたみたい!
一年生が終わるまであと半年、ハリーは賢者の石について何も勘付いていないし、クィレルとルシウス・マルフォイは怪し動きをしているしで大ピンチだ!
短いような長いような、いややっぱり短い年末が過ぎ、冬休みが終わった。
新学期が始まる前日、俺とハリーはホグワーツへ戻る汽車に揺られていた。なんだか冬休みが九か月くらいあったような気がしないでもない。気のせいか?
ハリーやハーマイオニーが休暇中のことを話している横で、俺は車窓から外の風景を眺めていた。すっきりとした青空に、イギリスの自然が広がる大地。まだ冬も真っ盛りのこの季節、温まった車内でぬくぬくとしていた俺は期待に胸を膨らませていた。
ダンブルドアがくれたタイプライターで、出来ることがさらに増えたぞ。マクゴナガルやスプラウト、フィルチなんかと交流する手段が増えたのはいいことだ。闇の帝王関係でちょこーっとイヤなことは起こるかもしれないけれど、ハリーも無事クリスマスに透明マントを手に入れたみたいだし。
さあ新学期! 年を超えた俺は強い!
きっと希望に満ち溢れた日々が俺を待っているはずだ!
はい、お前今フラグ立てたよなって思った人。正直に手を挙げなさい。
うん、あのね、正解。その勘、正解。
橙色の光がご馳走を照らす大広間に、パチパチパチパチパチパチという音が途切れることなくメロディーを奏でている。暖炉の炎がはじける音? 違う。フレッドとジョージが花火を鳴らしている音? 違う。フリットウィックが合唱団の歌に拍手してる音? 違う。
俺がセブルス・スネイプに出された膨大な宿題を消化している音? 正解。
クソッタレ!
ウィンターホリデーの間、「ロミオは文字が書けないから宿題はナシね~」みたいにしれっとスルーされてた宿題のことだよ。
新学期、魔法薬学の初日にニコニコしながらタイプライターを持って行った俺の前に、怒髪天を衝いたセブルス・スネイプが仁王立ちして言った。
「ポッターのペットは文字が打てるということを隠し、我輩を騙し、あわよくば宿題が免除されると目論んでいたのだな。非常に悪質極まりない! グリフィンドールに三十点の減点、ポッターのペットは九月から出されていた魔法薬学のすべての宿題を提出すること。一月が終わるまでにだ!」
正気を失い、去り行くスネイプの背中に中指を立てて飛びかかろうとした俺を何とか止めてくれたハーマイオニーには感謝している。
てかスネイプ、コイツ結構マジメに俺の教師やるつもりじゃねえか! ツンデレめ。
そういう経緯で、俺はいま絶賛忙殺されているんだ。大広間で大好きなご飯を前にして、視線をタイプライターのキーと教科書の間で行ったり来たりさせなければならないほどにはな。プラテンノブを回してものすごい勢いで羊皮紙を動かし、大量の文字をタイプする俺の横で、ハリーやロンが物音を立てず居心地悪げにもそもそとご飯を食べていた。
「あの、ロミオ、もし良かったらご飯取り分けておこ―――」
見かねたハリーが口を開いた。
ハリーが口を動かし終わる前に、俺は瞬時にその場から消えた。のちにシェーマス・フィネガンは語る。「残像が見えた」と。
俺は遠くの席にあった皿を取ってすばやく戻ってくると、口をあんぐりと開いたハリーに顔もむけず、タイプしながら左手をサムズアップして応えた。今のサムズアップは、「自分で取ってきたから大丈夫」という意味だ。ご主人様の手を煩わせるペットになるのはいただけないからな。
心配には及ばねーぜ兄貴。俺は必ずやこの宿題を終わらせてみせる。期限までに提出しないとさらにグリフィンドールの点数が引かれる上、ハリーに罰則が課され、俺はこれ幸いと魔法薬学の教室を追い出されるだろう。
スネイプがそう脅したのかって? いいや、近い未来アイツの機嫌が一番
俺は目を若干血走らせながらダカダカと文字を打っていく。
「あれだけ食にこだわりを持ってたロミオが……蒸しエビを殻つきのまま……!?」
「これじゃあただのカモノハシと変わらないじゃないか!」
文明が退化してる!
そう叫びながら、一心不乱にバリバリとエビを嘴で貪る俺にハリーとロンは衝撃を受けたように固まっていた。
よく分からないが、俺はいまおおきな大広間にいるらしい。めのまえにはダンブルドアとか、マクゴナガルとか、コーネリウス・ファッジとか、シリウスとか、ハリーとかがいる。
『それでは発表していただきましょう!』
どこからか声が聞こえる。金色の空気につつまれたこの空間に、俺はとんでもなく高い台にのっていた。はっぴょうってなんだ?
よく見てみると、俺の手にはボードが握られていた。ああ、このことか。さっきのこえ思い出したぞ、まくごながるの声だ。あれ、じゃああのまくごながるは一体?
『ロミオさんの好きな惣菜はなんと!!!』
“ジェラートの姿煮”と書かれたボードを持ち上げる。途端に大広間は拍手喝采につつまれた。ダンブルドアやフィルチ、スネイプが泣きながら手をたたいている。絶賛というやつだ。俺がどや顔をしていると、群衆から一人キノコがにょきっと生えてきて、ヴォルデモートに変身し、「ジェラートはイチゴ味!」と叫びながらおれにアバダケタブラを撃ってきた。
……久々にパンチのある悪夢だった。ぜえぜえと起き上がった俺はあたりを見渡す。埃の溜まった棚、汚れで曇った窓、古い木製の長テーブル。夜の闇に静まり返った空き教室だ。
どうやらスネイプに出された宿題を捌いている間に眠りこんでしまっていたらしい。タイプライターの音がうるさいってマダム・ピンスに図書館から追い出されてしまった俺は、ここ一週間くらいずっとこの古ーい空き教室に籠って魔法薬学のレポートを書くことに専念していた。先ほどのわけわからん悪夢も、最近ろくなものを食べられていないから見たのだろう。いくらジェラートが好きだからって、姿煮はカンベンしてほしいけどな。
それにしてもやっちまったなあ、もう消灯時間は過ぎてるはずだ。夜は絶対グリフィンドール寮の自分の巣に帰ることにしているので、今頃ハリーは俺の安否を心配しているかもしれない。早く戻らなければ。
俺が腹の中から取り出した金色の懐中時計を見るに、時刻は深夜の十一時ごろ。周りに散らばった羊皮紙の束やタイプライターをいそいそと腹の中にしまい、俺は石膏で作られた廊下に飛び出て、ところどころ松明で照らされた冷たい床をぺたぺたと歩き始めた。
「押すなよ! ハリー!」
フッ、やれやれだぜ。疲れすぎてついにロンの声の幻聴が聞こえてきやがる。俺は早急に暖かいベッドで獣のように眠らなければならないようだ。そう思うだろ? ボブ。もちろん俺は元から獣なんだけどな! ハッハッハ。
アメリカンジョークがあんまり決まらないな。イギリスだからかな。
「多分この角を曲がったところさ」
……うん、幻聴じゃねえな。ハリーの声もするぜ。でもここら辺に彼らの姿は見えない。イギリスの古畑任三郎と呼ばれた俺の灰色の脳細胞で考えたんだが、多分彼らは透明マントを使っているんだろう。このまま逃がすと何かやらかしそうだな。俺も仲間に入れてもらお。
適当に廊下を反復横跳びして、彼らに何とか存在を気付いてもらえるように頑張る。
「ロミオ!」
廊下に突如ハリーの生首が現れた。
俺に気づいたらしいハリーは、首だけの状態でずんずんとこちらに近づいてくる。怖いよ。
なんでお前ここにいるんだ? 消灯すぎてるから教師に見つかったら罰則だぜ。
首をかしげると、ようやく最近俺のボディランゲージを習得してきたハリーが、俺の言わんとしていることを察した。
「ネビルが寮の部屋にいないんだ。また合言葉を忘れたのかなって廊下を探してもいないし。そしたら通りかかったピーブズが、ネビルは血みどろ男爵に驚いて走ってどっか逃げて行っちゃったって」
ハリーの隣から、ロンもひょこっと首だけ出した。
「消灯後に生徒が校内を出歩くととんでもなく減点されるってフレッドが言ってたんだ。だから姿の見えない僕たちでネビルを探して、マクゴナガルに見つかる前に寮に連れて帰ろうってワケ」
なるほど? それにしては随分と目が輝いてらっしゃいますけどロナルドさん。滅茶苦茶ワクワクしてんじゃねーの。
でもいいことを聞いたな。もしかしたらこのまま流れでハリーとロンを例の三頭犬の部屋まで連れていけるかもしれねえ。まだこいつら例の部屋すら知らないんだぜ?
こないだ恐怖の突撃隣のアズカバンがあったからさぁ、なるべくクィレルには一年の段階で砂になっててほしいんだよな。今年賢者の石が壊されないとなんかガバ起きそうだし。
しかし俺はこの時、あることを失念していた。
本来いるはずのハーマイオニーがいないことを。そして、本来であればこなしていただろうイベントを、いろいろすっ飛ばしていたことを。
カンカンカン! と音が鳴る。
ここはホグワーツのとある空き教室。三人の生徒が一列に座らされ、目の前の一匹のニフラーが肩を怒らせ指示棒を黒板に叩きつけているのを眺めていた。黒板にチョークで書いてある文字は歪で、もはや文字のていを成していない。おそらく初見の人間には意味がサッパリ通じないだろう。
「あー、ロミオ。つまり、この三十分の説明を要約すると、昨日僕とロンが行った部屋の床下に扉があったんだよね?」
ハリーが困惑気味に言った。黒板の前で興奮気味にふんふんと鼻呼吸しているニフラー、ことロミオは「そのとおり!」と言う風に頷く。
「それで、その下にはジャガイモに似た財宝が眠っているというのね?」
ハーマイオニーのその言葉に、不服そうにロミオは頷いた。黒板にはしっかり賢者の石のイラストが描かれており、きちんと説明したはずなのだが、どうやらハーマイオニーたちには腐ったジャガイモにしか見えていなかったらしい。
「で、そのジャガイモが? なんだって?」
ロミオの被っていたモルタルボードがズリッとずれた。
「盗まれそうになってるって言いたいんだよ、たぶん」
「でもあんな化け物がいる部屋なんて誰も通れないと思うけどな」
「私たち生徒がなにか出来るわけじゃないし、もしロミオが不安だったら先生方に言ってみればいいんじゃないかしら」
じゃあこの後授業あるから。ごめんね。
予鈴が鳴り、立ち去って行ったハリー、ロン、ハーマイオニー。空き教室に一匹取り残されたロミオはしばし固まった後、頭を抱えてウンウン唸りはじめた。
あいつらマジでなにも知らなすぎねえか? どうしよう、何の情報をあげれば「ヴォルデモートが学校にいて、賢者の石とかいう激やばチートアイテムを盗み出そうとしている」って気が付いてくれるんだ? 普通の学生生活をおくっていたらまず知りえない情報だし、字面だけ見ても冗談きつい。
ただでさえ俺はピーター・ペティグリューの件で怪しまれてるのに、ヴォルデモートのことまで言い当て始めたら、知らないうちにスネイプあたりに自白剤でも一服盛られそうだ。
うーむ、タイプライターで賢者の石についてそれとなーく打ったものを見せてみるか。イヤ、賢者の石について何で知ってるんだって話になっちゃうかあ。
何気に前回のダンブルドアとシリウスの三者面談がトラウマになっているので、下手なこと言いたかねえんだよなあ。
そのとき、モルタルボードを被ったロミオの頭の豆電球が、カチッと光った。
そうだ、俺が賢者の石を盗めばいいんじゃねーか?
次回! 「盗賊王に俺はなる」!
なお次回がいつになるかはギャンブル。
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切実に燃料をください。エタる確率が低くなります。沢山の感想ありがとうございます。感想をください。私の主食です。
P.S.好きな総菜ドラゴン、エタっている間に旬すぎちゃって悲しい……。