お前もニフってる?   作:HLNF会長

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第二話 魅惑のキャラメル・ジェラート

 「あ、こいつめ。戻ってきたな」

 

 あれからグリンゴッツを出て、俺は魔法動物ペットショップに舞い戻っていた。ハリーの頭の上でふんぞり返っている俺を見て、店主のエドワードが飛んでくる。

 ぬはは、ブァカめ、俺はもう買われたんだよ。正確にはまだだけど。

 

「すみません、この子、脱走して僕についてきちゃったみたいで……」

「いえいえ、大丈夫です。このニフラーが自分で脱走したことはこちらも見ておりましたから」

 

 エドワードのおっさんがニコニコと両手を擦りながらハリーに話しかけた。変わり身の早いやつだ。ニフラーの檻を見ると、俺以外の兄弟は全員捕まえられたらしい。

 

「この子、僕買いたいんです。いいですか?」

「勿論ですとも、カウンターへどうぞ。おいボブ! ニフラー飼育に必要なものを取り揃えてくれ! ホグワーツの方ですよね? ボブ! 一年分だ!」

 

 エドワードが店の奥の方へと声を張り上げる。ボブが俺用のケージと、フードやらなにやらを持ってきた。

 

「この子が百二十ガリオン、ケースなどと合わせて百四十ガリオンです」

 

 おいおい、たっけえな。いや、高くないのか? 一年分だもんな。ハグリッドが何も言わないから正規価格なんだろうけども。

 よーし、待ってろハリー。俺が値下げしてやろう。

 

 ハリーの髪にしがみついていた俺は、ハリーの頭をかき分けて、前髪を掴んだ。

 

「え、ちょ、な」

 

 ハリーが焦ったように声を出しているが、一旦無視だ。俺がちょいちょいとエドワードにハリーのおでこを指さすと、エドワードの顔がみるみるうちに驚きに染まる。

 

「ま、まさか……あなたはハリー・ポッターさん!?」

 

 俺はふふんと鼻を鳴らす。エドワードは顔を紅潮させて、カウンターをまわってきてハリーと握手を始めた。店主の大きな声になんだなんだと人だかりができる。

 お前生き残った男の子だなんだってこれから大変な有名税払わなきゃなんねーんだから、これくらい割引きしてもらったってバチは当たらねーってモンだぜ。

 

「まさか……ポッターさんがこの店に来るなんて。この子もきっと、ポッターさんの有望性を見込んで脱走したんでしょう。嬉しいことです。お代は結構。私の母はあなたのお父様に命を救われたのです……」

 

 お、マジ? 良かったじゃん、今言えて! 命の恩人ってやつか。

 目を白黒させるハリーに、エドワードはボブに言いつけて沢山の品物と、それを入れる検知不可能拡大呪文付きのバッグまで用意した。

 

 っぱ、この世代ってみんなハリーに恩があるんだな。そりゃそうか。誰も止められなかった恐怖政治を命を懸けて止めた両親の息子だもんな。恩返ししなきゃだわな。

 

 オホンオホン。

 

 周囲の人だかりにハリーがしきりに握手を求められていると、ハグリッドがとても大きな咳払いをした。音が大きすぎて耳を塞ぎたいくらいだった。

 

「すまねぇな、ハリーはこのあとちょっくら行かなきゃいけねぇところがあるんだ。通してやってくれ」

 

 名残惜しそうにハリーを見るご婦人が身を引いていき、店の出口までモーゼのように人が避けていく。

 「また来てくださいね!」とエドワードは後ろから声を掛けていた。

 

 入り口近くまで来て、俺はこの三か月間いた檻を見下ろした。兄弟たちはみんな俺を見上げている。寂しいなぁ。もう家族とお別れかぁ。二度と会うことはねぇんだろーなぁ。

 なんだか涙が溢れてくる。歳を食うと涙もろくなるからいけねぇや。特に転生するとボロ泣きだぜ。いっぺん死んでるからな。

 

 ハリーの肩から滑り降りて、袋からこの店で貰った光物たちを檻越しに兄弟たちに分けてやる。キュウキュウと仲の良かったやつらが鳴いている。全部店主が骨董品店で安く手に入れたものだったが、俺たちにとっては宝物だった。

 

 青いニセモノのサファイアの付いた指輪だけ袋の中に残して、他は全部兄弟にやった。

 奥の方で寝そべる母親に一言別れを告げると、俺は再びハリーの肩に乗り、兄弟たちに生涯の別れを告げ手を振る。アディオスだな、お前ら。

 多分何の意味か分かっていないが、兄弟たちも同じように手を振り始めた。俺はこの檻の中でもニフラーを世話してきた兄貴分だったからな。みんな俺の真似をするんだ。

 

 キュウキュウと悲しそうな声で鳴くニフラーたちを背に、とてつもなく罪悪感を感じ重い表情のハリーと、ニフラーの家族愛に大声でむせび泣く動物狂いハグリッド、タイタニック観た後ぐらいぼろぼろ泣く俺は店を出た。

 

 動物たちの感動物語ってけっこう泣けるよな。

 その後魔法動物ペットショップでは俺たちの家族愛に心を打たれた人間が続出。俺ら兄弟は割と早めにホグワーツで再会を果たすこととなる。

 

 

 

「あのね、僕、“生き残った男の子”だってあまり言いふらすつもりじゃないんだ。英雄みたいなものだからって割引してほしいわけじゃないからね。分かった?」

 

 場所は変わってフローリアン・フォーテスキュー・アイスクリーム・パーラー前のテラス席。チョコレートとバニラのアイスクリームを舐めるハリーが、キャラメル味のジェラートを舐める俺に諭すように言った。

 

 ちなみに俺はこう見えて雑食だ。親戚っぽいカモノハシはエビとか魚介系を食べるらしいんだけど(まあ川に住んでるから当たり前だわな)、俺は体調に気をつければこういういろんなものを食べていいらしい。雑食ってやつだ。

 動物にかける情熱はスキャマンダーとどっこいどっこいのハグリッドが言ってるんだから間違いないだろう。

 

「ちょっと、聞いてる?」

 

 聞いてる聞いてる。ジェラートを舐めながらウンウンと頷く俺に、ハリーはため息を吐いた。でもさぁ、そんな顔してるけど奥さん、俺を撫でる手は止まってませんよ。

 

 ハリーはツンデレってやつなのかな。

 まあ俺はあの店で一番いい毛並みをしてたし? お手入れとかもちゃあんとしてたし? 可愛いので撫でたくなるのは必然だろう。

 

 さっき店で貰った……というか押し付けられたニフラー用の首輪も、ハリーはものすごい選別してたし。ちなみに今俺は赤い蝶ネクタイの首輪をしてる。薄いグレーに黒い斑の毛並みの俺にとってはめちゃめちゃ色が映えてて気に入ってる。

 若干フォーマルでカッコよく見えるしな。

 

 さっきハグリッドに体中を撫でくり弄くり回されて、「オスだな、こいつ」と言われたとき、ハリーも「なんか知ってた」って言ってたけど。それは俺が可愛さとカッコよさ、どちらも兼ね備えていたからだろ?

 

「でもなハリー、あの店主はお前さんじゃなくてお前さんのお父さん、ジェームズにも感謝してたんだ。立派な親父さんだ、それは誇るべきだぞ」

「……うん、そうだね」

 

 ハリーは俯いて、少し誇らしげな顔をしながらアイスクリームを舐めた。ハグリッドも俺もニコニコとハリーを眺めている。ウムウム、カロリーを摂取して大きくなれよ、少年。

 

「ハリー、この後は教科書やらなんやらを買うぞ。ニフラーがなんかしてもいけねぇから、ちゃーんと見ちょれよ」

「わかった」

 

 アイスを食べ終わった後、ハリー達は教科書やら大鍋やらを買い始めた。正直俺には関係なかったし、ジェラートを食べて眠かったのでハリーのシャツの胸ポケットで丸まって寝ていた。ハリーが一緒にドライフルーツやアーモンドを入れてくれていたので時々起きて食ってたけど。

 まあ、なんかやらかされるより静かなほうがいいと思ったんだろ。ビンゴだぜブラザー。食っちゃ寝食っちゃ寝……サイコーだな!

 

 そんなこんなでうつらうつらしてたら、ハリーがものすごい勢いでハグリッドにお礼を言っている声で目が覚めた。

 なんだなんだと顔を出してみると、どうやら誕生日プレゼントにヘドウィグを貰ったらしい。良かったなハリー。

 

 んで、ヘドウィグさんよ。ハリーのペット同士ヨロシクやろうぜ。

 籠の中で寝ている真っ白な梟を見ているとぱちりと目を開けたので、俺はひらひらと手を振っておいた。ヘドウィグって鼠とか食べんだっけ。

 流石に俺は食わねぇよな……食わねぇよな?

 

 そんなことを考えていた俺は、「じゃあ次はオリバンダーだ」というハグリッドの声に目をカッと開いた。

 魔法の杖かよ! いいなァ! 俺わくわくすっぜ!

 

 

 オリバンダーの店について、ハリーは早速白髪のご老人に絡まれ始めた。何を隠そう彼こそが天才杖職人、ギャリック・オリバンダーその人である。

 俺はハリー達にバレない様にそーっとポケットを滑り出て、オリバンダーが杖の箱を積み上げているカウンターに向かった。

 

 向かった理由? それは勿論、俺も魔法使えねぇかなあという思惑によるものである。

 だってよ、俺元人間だぜ? マグルだったけど。才能の片鱗とか見えてもおかしくないじゃんかよ。

 

 結果としては、駄目だった。よっこらせと持って振ってみたけどなーんも起こらん。その内気が付いたハリーにカウンターからつまみ出され、哀れに思ったのかオリバンダーが試作品の芯の入っていない小さくした杖をくれた。

 

 これで俺も魔法使いだぜ! と杖を持って決めポーズしてみたが、そのうち虚しくなってきて、俺はハリーのポケットの中でふて寝した。

 ケッ、なーにが魔法だよ。

 

 ……魔法薬学は出来るかなぁ。あと箒。

 

 

 俺の野望はまだ続く――――……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダーズリー一家が皆床につき静まり返ったプリベット通り四番地。

 ハリー・ポッターは新しく与えられたダドリーのおさがりの部屋のベッドに寝転び、魔法史の教科書をパラパラと捲っていた。

 

 静かな夏の夜だ。ヘドウィグは夜の散策に出ていて、開け放たれた窓からはじめっとしつつも涼やかな風が吹いてくる。今まででは考えられなかったことが、ハリーのここ最近では目まぐるしく巻き起こっていた。

 無論、階段下の物置部屋で育ったハリーからしてみれば、夜自分の部屋に風が吹いてくるなんてありえない話だったし、彼の寝そべっている柔らかなベッドだってそうだ。

 

 魔法という存在、“生き残った男の子”、ヴォルデモート……それらを知ってしまったいま、ハリーはダドリーのような()()()———ダドリーが普通かどうかは非常に議論の余地があるが———子供ではなくなってしまっていた。

 ペチュニアおばさんなんてハリーと口も利かない。

 いないもののように扱ってくれるのは楽だったが、段々ハリーも気が滅入って来ていた。

 

 しかし、ハリーの隣の、この生物にとってしてみればそうではなかったらしい。ハリーが左を見ると、仰向けになって無防備に寝ているニフラーの姿があった。スコー、と平和な寝息が聞こえてきそうだ。

 柔らかそうなピンク色のおなかを擦ると、少しばかりくすぐったそうに体をよじる。ハリーはその様子を見てクスクスと笑った。

 

 このニフラーは、この家で一人ぼっちになっているハリーをなんとか悲しませない様に頑張っているようだった。張本人であるハリーにもその頑張りようは伝わってくる。面白い踊りを踊ってくれたり、ハリーが暇をしている時は膝に乗ってきてわちゃわちゃと動くし、なんとこの前、やり方を教えたらチェスまでできることが分かった(流石に頭が良すぎではないかとハリーも驚いた)。

 

 そして、今ハリーが悩んでいるのはこのニフラーの名前である。ヘドウィグというのは比較的すぐ決まったが、このニフラーにカチッとはまる名前が思いつかないのだ。

 

 うーん、と唸りながらハリーが魔法史の教科書を捲っていると、とあるページが目に留まった。

 

「……ロミオ」

 

 ロミオ・アベッリ。中世に活躍したイタリアの愉快な吟遊詩人で、ハナミズキの杖の最初の所有者。様々な童話や詩を遺す。

 

 本には文化史のところに小さく名前が載っているだけだったが、ハリーはそれがいたく気に入った。

 

「ロミオ、……きみは今日からロミオだよ」

 

 隣で未だ眠りこけているニフラー改めロミオを見て、ハリーは微笑んだ。

 

 もし彼が人間だったら、とても驚いた顔をして、「ロミオって、あのロミオとジュリエットの?」とか聞いてくるんだろうか。




先々のことまで見据えるとエタるので行き当たりばったり。

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