お前もニフってる?   作:HLNF会長

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この小説は、小説版と映画版の要素が組み合わさっているので、あしからず。


第二十四話 紫色のターバンの男

 

 

 超イージーモードとかいうダンブルドアに煽り散らかされた舐めプのチェスを終え、クィレルにボコボコにされた哀れなマッチポンプ・トロールの横を通りすぎ、俺は遂にスネイプの試練までたどり着いた。ここまでの大冒険はニフラー界きっての快挙かもしれない。あとで子分ニフラーたちに自慢しよーっと。

 

 さて、スネイプの試練は、みなさんご存じ小難しいパズルだ。ぶっちゃけ最近になるまで存在忘れてたぜ。地味なんだもの。

 スネイプの試練の部屋に入って、部屋の中央にあったテーブルの上によじ登ってみると、七つ並べられた瓶と、一枚の紙が置いてあった。途端に前方の扉の前を黒い炎、後方の扉の前を紫の炎が覆い、俺は立ち往生する。うむ、予定通りだ。

 俺このためにわざわざペンとメモ帳を持ってきたの。準備万端ってわけだ。

 

 ひとまず、ぱぱっと書き出して考えてみる。んーと、イラクサ酒の隣が……えー、つまりこの中身が同じなわけで……毒入りがこれこれこーだから……。

 あ、自分もナゾトキ参加したいよーって人は、『ハリー・ポッターと賢者の石』ぜひ買ってみてくれよな。俺も印税欲しい。本でも書いてみようかな。それで最近目をつけてる13カラットのルビーを買うんだ。

 

 考えること二分くらい。俺は、一番小さな瓶を手に取った。これが前進するための薬のはずだ。

 あ、いまお前ら、「こいつ解くの早くね?」って思った? 俺、ナゾトキ系は大の大得意なんだぜ。人間だったころのことは覚えてねーけど、多分ニフラーになって頭が柔らかくなったんだ。ほら、頭の肉もこーんなにのびるし。

 俺は頭のぜい肉をぐにょーんと引き延ばした。太っててもプリティーな俺。謎のファンクラブから贈られてくるお菓子をたんまり食っているので、BMIが心配な今日この頃である。

 

 て、そんなことはどうでもよくて。ハーマイオニー来ちゃうからさ、フザケてると。まあ、まさか数分でマクゴナガルのチェスが攻略できるわけがないんだけど。ロン今頃頑張ってるかなー。

 俺は瓶の中に入っている液体をゴクリと飲むと、目の前の黒い炎に突進した。

 

 お、無事に通過できたみたいだぜ。こうやってみると熱くない炎って面白いな。今度スネイプに仕組み……スネイプに……………………フィルチと一緒に調べよーかな。

 俺は目の前の扉を開けた。この先に紫のターバンとみぞの鏡の前でお話ししているクィレルがいるはずだ。

 しかし、部屋に顔を出した途端。

 ぐわし! と俺は何者かによって頭をしっかり掴まれていた。

 

「先ほどの爆発音は君かね? ロミオ君」

 

 なんと、びっくりのキャラ変を遂げたクィレルが俺を睨んでいた。

 

 

 

 

 

 人語が喋れないので「まったくの濡れ衣です。ダンブルドアにハメられました」なんて弁解も出来ずに、俺はクィレルに引っ掴まれたまま、みぞの鏡の前にドナドナされてしまった。クィレルは俺のことを魔法も使えないただのニフラーだと思っているらしく、まったく警戒していない。ダンブルドアが置いた最後の試練、みぞの鏡をねめつけながら、手に持った杖で鏡の表面を撫でている。もう片方の手は俺のうなじを掴んでぶらーんとさせたままだ。

 

「ダンブルドアの考えそうなことだ……『石』を手に持つ私が……ご主人様にそれを差し出している私が見える……しかし石はどこだ? それが分からない」

 

 クィレルはぶつぶつ独り言を言っている。

 無駄だぜ。たしか、みぞの鏡の試練って、賢者の石を使いたい人間には手に入れられない感じのやつだったはずだ。「手に入れたい」だけ、という極めて自律心のある者にしか、みぞの鏡から賢者の石は取り出せないのだ。

 

 つまり、俺みたいな心の綺麗な生き物を選別するための試練と言えよう。ダンブルドアもつくづく頭がいい。ゲスのクィレルを追ってきたスーパーヒーローの俺に賢者の石を手に入れてほしいってことだろ?

 まったく照れるが、正義の味方、光の戦士としての使命だ。守ってやらんこともない。

 俺はクィレルと同じように、みぞの鏡に目を向けた。

 

 光り輝く賢者の石をべろべろと舐めまわす俺。

 

 ん?

 見間違いかな。

 俺は目を擦って、もう一度鏡に目を向けた。

 

 色とりどりの宝石をディスプレイした棚のひときわ目立つ場所に賢者の石を据え、それを見ながら優雅にワイングラスを揺らしている俺。

 

 ……。

 うーむ、ダンブルドアの魔法は非常に優秀みたいだ。俺には手も足も出ない。

 クィレルに若干同情する。一緒にこの試練攻略しようぜ。

 

「何が見える?」

 

 クィレルが俺に聞いた。うーん、まあ、なんて言ったらいいんだろう。俺はクィレルの手を優しく撫でた。手に入れてはいる。俺。分かりやすく言えば、お前と同じ状態。

 クィレルは俺が返答することを期待してもいないのか、鏡の中を見つめて、そのまま話を続けた。

 

「君は私のご主人様のことは理解しているのかな。いや、理解しているだろう……。君がはじめにペティグリューの正体を暴いたときから、私たちは君のことを疑っていた。かの者と同じようにね……しかしどうやら()()()ニフラーらしい」

 

 クィレルが杖を振った。青白い光が杖先からほとばしって、俺を包んだ。しかし何の変化も起こらない。痛くも痒くもない。この光……多分レベリオ、変身を解いたりする呪文だ。ペティグリューんとき見たぜ。

 

 「より忌々しい」

 

 クィレルは眉をひそめて、心底憎たらしいです、という顔になった。

 

「君のお馬鹿な飼い主、ポッターは私の目論見の一端さえ気が付かなかったというのに……君とスネイプは、私を疑い、ちょろちょろと周りをうろついた。クィディッチの試合中、私がポッターを殺そうとしたとき、君は私を妨害した……まさか気が付いていないとでも思っていたのかね。私にとって一番屈辱的な方法で、君は私の目を、ポッターから逸らさせた」

 

 クィレルは自身のターバンを恐る恐る撫でた。冷徹な表情を映し出していた顔には、恐怖が入り混じっている。

 ああ、そういえばそんなことあったな。クィレルの後頭部にドロップキックしたんだっけ。後頭部ってことは、そういうことなので……クィレル、可哀想なやつ。多分ヴォルデモートにブチギレられたんだろうな。つくづくやな上司を持ったもんだぜ。

 

「君とスネイプの関係性に気が付いたのは年が明けてからだ。廊下で私たちは会っただろう。私は君に近づこうとしたが、スネイプは君を逃がした。君とチェスを始めたときも、スネイプは私から目を離さなかった。朝食なんて食べに来ないときの方が多かったのに、だ。分かりやすいものよ」

 

 ……多分、お前と同じく要注意ニフ物扱いされてるからだと思うんだけどな。俺を見守っているというより、劇薬同士が混ざり合わないようにだと思うんだけど、うん。

 俺も前、「こんなに人畜無害な生き物なのに、俺から目を離したらホグワーツ城がハジケ飛ぶとでも思っているのか、俺の一挙手一投足を常に監視してくる疑り深いやつだ」って説明したと思うんだけど、クィレルとチェスをするようになってからは、より一層監視が強くなったような気がする。ここ数日間は本当に重大犯罪者でも見ているかのような目で俺を監視していた。

 別に俺クィレルほど劇薬じゃないと思うけどな。失礼しちゃうはなしだ。

 

 兎にも角にも。クィレルがぶつぶつ話している間に、どうにかしてハリーと一緒にこっから逃げる方法を考えなくちゃならん。ハリーは母親リリー・ポッターによる愛の魔法だかなんだかで守られてるから、ヴォルデモートは指一本傷つけられないはずだけど。それはそれとして俺はか弱い命だからな。

 

「ハリー・ポッター!」

 

 クィレルは唐突に叫んだ。俺はビクッとした。クィレルがゆっくりと後ろを振り向く。

 

「そこに隠れているのは分かっている。出て来い!」

 

 どうやらハリーは、先に到着した俺の様子がおかしいことに気が付いていたらしい。柱の奥から、姿勢を低くしたままのハリーが慎重に出てきた。顔には驚きや怒りのようなものが映っている。

 

「あなたがあのトロールを、倒したんですね」

 

 クィレルはニヒルな笑みを浮かべて頷いた。

 

「トロールで、ロミオ以外の誰かがいると分かったんだね?」

「ロミオなら……あんなことしません。睡眠パウダーを使って傷付けずに通り抜けるはずです」

 

 クィレルは白々しく肩をすくめた。

 

「しかしおおかた、ロミオを追ってここに来たのだろう。怪盗チックなニフラーを見ただけで真相を暴いた気になるのは、少し詰めが甘いと言わざるを得ないな」

「……賢者の石はどこへやったんですか」

 

 クィレルの表情が一瞬陰ったが、すぐに元の表情に戻った。

 

「それが問題だ。君はここまでの部屋を通って分かっているだろうが、賢者の石は先生方が色々な方法で守っている。最後はダンブルドアのこの鏡だけだ」

「それで、解けてないんですね?」

 

 確認するようにそう言って、ハリーはクィレルを睨みつけながら口角を上げた。不愉快そうにクィレルが杖を振って、ハリーを縛り付けようとしたが、ハリーは杖を振ってそれを防いだ。

 何が起きたのか一瞬分からなかったが、どうやらハリーは突然現れた縄を切りつけることでほどいたらしい。

 

切り裂き呪文(ディフィンド)か」

 

 クィレルは目を見開いて感心したように言った。

 

「私は君にそれを教えた覚えはないが」

「シリウスに教えて貰いました。先生、なんであなたがこんなことするんです?」

 

 シリウスか。そういや冬休み二人でなんかやってたな。魔法省にも秘密のお家で脱法魔法練習だ。

 

「なるほど、筋がいい。シリウス・ブラック。魔法省での彼の活躍ぶりはよく聞いているよ」

 

 クィレルはハリーの問いを無視して、杖を握りなおした。どうやら魔法もろくに撃てない小童という認識を改めたらしい。ついでに俺を掴む手の力も強くなった。うーむ、ニフ質にするつもりのようだぜ。

 ハリーが俺ををちらりと盗み見た。「どういうこと」って視線が語ってる。

 

「どうして賢者の石が欲しいんですか?」

 

 クィレルはバカにするような、呆れたような顔をした。

 

「ポッター、先ほどから質問ばかりだね、君は。ここまで来てもまだ気が付いていないのかい? 君のペットのニフラーにでも聞いてみたらどうかね」

 

 ハリーがこちらを見た。俺はおでこをチョイチョイと指さした。ハリーはびっくりした顔でクィレルを見つめた。

 

「先生がヴォルデモート?」

 

 クィレルはぎょっとしたような顔をした。そして、自分を落ち着かせるためか首元に垂らしてあるターバンをおもむろに直しはじめた。ハリーがヴォルデモートの本名を……いや、本名でもねえな。活動名? クィレルのやつ、ハリーが“例のあの人”とか“闇の帝王”とかそこらへんの婉曲表現使わなかったからか、ちょっとビビったらしい。

 

「そ、そんなわけないだろう」

 

 どもりが復活した声色でクィレルが言った。

 

「このニフラーは、私があの方にお仕えする者だと言っているのだよ」

「お仕えする者? ヴォルデモートと先生が繋がってるってことですか?」

 

 まじで初歩的な質問すぎるな。ごめんなハリー、俺がフラグを全部折ってしまったばっかりに。

 それからクィレルは事のあらましを説明し始めた。クィレルとヴォルデモート、通称ヴォルちゃんが出会ったところから、グリンゴッツ襲撃が失敗したところとか、ハグリッドからフラッフィーの情報を盗み出したところとか……。

 

「ハリー・ポッター……」

 

 俺はハッと目覚めた。どうやら暇すぎて寝ていたらしい。気が付いたらハリーが縄で縛られて、俺の隣に立たされていた。なんなら俺も縄で縛られて鏡の前に置かれていた。

 なんか今の声、クィレルと違う声だったな。鏡を見てみると、後ろを向いたクィレルの後頭部に張り付いていたヴォルデモートが、こちらを見て不敵に笑っていた。

 

「この有り様を見ろ、ただの影と霞に過ぎない……」

 

 うんぬんかんぬん、ヴォルデモートが喋っている。その間、俺がダンブルドアと遊園地で遊んでいる夢から目覚めたことに気が付いたハリーが、俺をちらちらと見ていた。なんだか焦り気味だ。まあ、闇の帝王がムーンウォークしながら登場したっていうのに焦らない方が変な話かも。

 しかし、それ以上に、何かを伝えたい、という感じがしている。ハリーのポケットに賢者の石が入ってるんだっけ? この間にもヴォルデモートは饒舌にユニコーンの血について語っている。うーむ、同時にいろんなこと起こってると画面の前にいるみんなに説明しづらいのが難しいところだ。俺がハリウッド実写化すれば、みんなにも分かりやすくなるんだろーけど。

 

「さて……そのニフラーのポケットの中にある『石』をいただこうか」

 

 ハリーが俺を掴もうとする手と、クィレルの引き寄せ呪文(アクシオ)———早かったのはクィレルの方だった。クィレルははやばやと俺の身体にぐるぐるに巻き付けてあった紐をほどいて、俺のポケットの中に腕を突っ込んだ。

 

 キャー!!!! なにすんのよエッチ!!!!!

 

 しかしハリーも黙って見ているわけじゃなかった。わけわからんけど見るからに攻撃力高そうな光線を次々にクィレルに放ってきている。シリウスのことだ、ハリーを攻撃する人間の命なんて考えていないに違いない。クィレルはそれをギリギリで躱しながら、俺のポケットの中を荒らしまわっていた。

 クィレルが俺のギネス級のコインタワーを何個か崩したような音がした。今年の年末は忙しかったからさ、まだポケットの中の大掃除が終わってなくて……。俺のポケットの中はWi-Fiとか電波とか非対応にしてるから、アクシオも効かないらしい。俺のポケットから硬い素材のものを引っ張り出しては、違うと気が付いて床に乱暴に放っていく。おかげでそこらへんに宝石がザクザクだ。俺の最大のお宝、180カラットのダイヤモンドも転がっている。あれひとかけらであんたの生涯年収なんですからね! 丁重に扱え!

 

 そして苦節数十秒、ついにクィレルが俺のポケットの中から、古びた銀色の鍵を取り出した。クィレルは不思議そうな顔をして手を止めた。

 

「おい、どうしてこれがここにある」

 

 クィレルがハリーを振り返った。ハリーは「何を言い出したんだ?」と目を細めた。

 

「この鍵は、フリットウィックの試練の物だろう」

 

 クィレルの手の中にある銀色の鍵の側面には、虹色に煌めく羽がぱたぱたと羽ばたいている。

 ハリーは不思議そうな顔をした。

 

「フリットウィック先生の試練なんてなかったですけど」

 

 クィレルはその時になって、やっと俺のポケットの中から響く異音に気が付いたようだった。俺のポケットの中のはるか彼方から、段々と近づいてくる羽音が。

 クィレルがすべての状況を理解した後には遅かった。

 俺のポケットの中から飛び出した無数の金色の羽根つき鍵がクィレルを襲った。クィレルが苦し紛れに銀の鍵をほっぽり、周りをぶんぶん飛び回る金の鍵をすべて追い払い終えたときには、どさくさに紛れてクィレルの手から逃れた俺とハリーは、すでに柱の裏側に隠れ終えていた。

 

「そこにいるのは分かっている。馬鹿な真似はよせ!」

 

 クィレルが叫んでいる。ハリーはクィレルに警戒しながら、同じく柱に隠れている俺に視線を向けた。

 

「どうやってクィレルを倒す?」

 

 ハリーが囁く。どうやら作戦会議みたいだ。でもそこで俺は、はたと気が付いた。いや、()()()()()()と言うべきなのかもしれない。

 

 クィレルを倒すってことは、つまり、クィレルを殺すってことだろ?

 

 

 ———俺に、人間が殺せるのか?

 

 




次章のおおまかなプロットは考えました。あとは書くだけ。二年かかりそう。

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切実に燃料をください。エタる確率が低くなります。沢山の感想ありがとうございます。感想をください。私の主食です。
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