お前もニフってる?   作:HLNF会長

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第三話 愛に生きる伊達男・ロミオ

 俺ってば、名前はロミオになったらしい。

 とある日の朝ハリーが意気揚々と俺に告げてきた。それってあの、ロミオとジュリエットの?

 俺のどこにシェイクスピア的な要素を見出したのかは分からないが、俺はロミオになったらしい。まあいっか、愛に生きる伊達男みたいでカッコいいし。

 

 時は移り替わり、俺らは今ホグワーツ特急の中にいる。ハリーと俺と、それにロンもいる。ロンはさっきコンパートメントの中に入ってきたんだ。彼の家もニフラーは飼ったことがなかったらしく、俺の背中を撫でては「スキャバーズと大違いだ」なんて言っていた。

 そりゃそうだろ、逃亡犯と身だしなみを気にする優雅な俺とじゃ月とスッポンよ。

 

「車内販売はいかが?」

 

 車内販売のおばさんがコンパートメントを覗き込んだ。ロンは「サンドイッチがある」と口をもごもごさせていたので、ハリーだけ俺を持って通路に出る。

 ハリーとしては魔法界のお菓子を一個たりとも食べ損ねたくないらしく、少しずつ買う算段らしい。

 晩御飯多分豪勢だから、お腹は空かせとけよー。

 

「なんかほしいものある?」

 

 ハリーが俺に話しかけた。んー、全部甘ったるそうだな。

 少しばかり考えた後、俺は蛙チョコ二つとカボチャパイ一つを買ってもらうことにした。

 

「全部で十二シックルと五クヌートよ」

 

 それを聞いたハリーが手を差し出し、俺が瞬時に袋からぴったりの小銭を取り出し乗せた。夏休みに練習した芸だ。生きた財布としてはこれ以上ないくらい便利だろ?

 

「すっげー」

 

 席に戻ったハリーに、ロンは目をキラキラさせながら話しかける。

 

「ロミオ、ニフラーにしちゃ相当賢いぜ」

「うん、それハグリッド———魔法生物に詳しい人にも言われた」

 

 ハリーとロンが向かい合って喋っている横で、戻った俺は彼らに背を向けてハリーの薬草学の教科書を途中から読み始めた。まったくこの本はニフラー向きじゃないサイズなので、ページを捲るのに手こずる。読みづらいったらありゃしないが、魔法が使えないと分かった以上、こういうところで頑張ったほうがいいだろう。

 

 あと運動もしないとなあ。このゆるふわボディでも俊敏には俊敏なのだが、最近お菓子の食べ過ぎで太ってきた気がする。

 早死にはよろしくない。俺が目指すは完全な健康体ライフだ。

 

 視界の端で蛙チョコを逃がしているハリーを横目に、俺は蛙チョコの包装を開けた瞬間、動く間もなくチョコをばくりと食べてしまった。おー、と二人が歓声を上げる。

 

「流石本職は違うな」

 

 おいおい、俺はカモノハシとは違うんだぜ。蛙なんて食うかよ。俺はフンと鼻を鳴らして、やれやれとばかりに首をすくめた。

 「アレ、完全に人間入ってないか?」なんてロンが言ってるけど、完全にブーメランだからな。お前の胸ポケットにいるネズミを見ろ。

 

 ちなみに二つの蛙チョコから出てきたカードはロウェナ・レイブンクローとアグリッパだった。アグリッパをまだ持ってないロンに交換を懇願されたので、仕方なくダンブルドアと交換してやったぜ。俺は優しいからな。

 

 

 

 さて、あれから色々あった。

 ハーマイオニーとかネビルとかスリザリンの連中とかがコンパートメントに来たらしいが、あいにく俺は寝こけていたので覚えていない。つまり俺にとっては何も無かったってことだ。

 

 汽車が完全に停車したあと、ハリーとロンはローブに着替えて夜のホグズミードの駅に降り立った。ランタンを持ち先導するハグリッドに一年生がワラワラと集まってくる。ハグリッド曰くペットの魔法生物は車掌に預ける手筈だったらしいが、俺はふつーにハリーの頭に乗っていた。

 別にそんなこといちいち目くじら立てるヤツいないって。大丈夫大丈夫。

 

 結構長い道のりを歩き、一年生たちはホグワーツ城に辿り着いた。運動不足のやつはゼェゼェ言っていたが、俺はハリーの上に乗っていたので一ミリも歩いていない。楽ちんだ。

 しかし重い重いと散々ハリーに苦情を言われたので、成長してからは厳しいかもな。ハリーの首を鍛えねば。

 

 よくわからんが大広間に通され、のんびりとしているうちに組み分けは終わった。つーか人間じゃない俺にとってはどれも関係ないイベントだ。特に言うことはない。

 

 ただ、寮のテーブルに用意されたご馳走は凄かったと言っておこう。俺はフライドチキンとかマッシュポテトとか、とにかく考えられる限りの贅を尽くした。

 だってあのペットショップから貰ったフードはお煎餅みたいなやつとドライフルーツしか無かったしさ。ダーズリーの家では俺はいないことになってるからろくなもん食べらんねえし。

 いや〜食った食った。

 

 宴も終わり寮に戻ると、ハリーは机に向かって日記を書き始めた。8月終盤くらいになって急に始めたんだよなこいつ。大丈夫か〜? 三日坊主しない? ハリーは真面目だけど、たまにサボる癖あるからな。

 

 ちなみに俺はハリーのベッドの横に置かれたケージで先に寝てるぜ。このケージよ、すげえことに見た目はただのミニトランクなのに、魔法で深さが六メートルくらいになってて、中がニフラーの巣と同じ構造になってるらしい。スキャマンダーのトランクのニフラーバージョンみたいなもんだな。

 

 ハリーが調べたところによると、俺らは普通は巣に住んでるらしいぜ。妙に居心地がいいのはそのせいか。エドワードのおっさん、ハリーにって張り切ってあの店の一番高級なケージ持ってきたな。

 

 巣の中はめちゃめちゃ居心地が良くなってる。簡易的とはいえ魔法で自動で綺麗にされるトイレもついてるし、いちばん大きな寝床にはふわふわの毛布が敷き詰められている。たまに洗うために上に持っていかないといけないらしいけどな。

 

 俺はとても疲れたので、その日は早めに寝た。

 だってそれが一番いいだろ? 寝る子は育つって言うし、俺はこれでもまだ生後三ヶ月の成長期だ。

 まさか翌朝いくら声を掛けても起きない俺をハリーが置いていくとは思ってなかったがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初回の変身術の授業が終わりヘトヘトのところ、ハリー・ポッターはペットのロミオに引っ張られマクゴナガルのいる教壇へ来ていた。何か知らないがぷりぷりと怒っている。朝彼を起こさずに置いてきたからだろうか?

 

 「なんですか、ミスター・ポッター」

 

 マクゴナガルは片方の眉をぴくりと上げて、ハリーと教壇によじ登るロミオを見た。

 

 「すみません、ロミオが先生に用があるようで……」

 

 変なことやらないでくれよ、とハリーは心の中で頼みながら彼の小さなニフラーを見た。

 ロミオは教壇の上に置いてある置時計を指差し、次に彼自身を指さした。そして腕を上下にして何かを縮めるようなそぶりをしている。

 

「何か伝えようとしていますね」

 

 マクゴナガルは少しばかり興味が出てきたのか、ロミオをじっと見つめた。

 ロミオは次に横たわって、寝ているような———何を言おうとしてるか分かったぞ。

 

「多分、目覚まし時計が欲しいんです。この子サイズの」

「目覚まし時計?」

「今日ケージの中でまったく起きなかったんで寮に置いていったのを腹に据えかねてるみたいです」

 

 その通り! とでも言うようにロミオは起き上がると、キュウキュウとハリーへの文句を鳴き始めた。腰に手を当てて完全にご立腹モードだ。正直かわいいだけなのでやめてほしい。

 

「しかしなぜ私に———ああ、なるほど、時計に収縮呪文をかけてほしいが、ポッターはそれを習っていないと」

 

 ロミオはブンブンと頭を振ってマクゴナガルに肯定の意を示した。

 「いいでしょう」とマクゴナガルが微笑む。なんだかハリーはすごく嫌な予感がした。

 マクゴナガルが脇に置いてあった変身術の教科書を手に取った。ハリーはものすごく嫌な予感がした。

 

 マクゴナガルがパラパラとページを捲っている。マクゴナガルの肩に乗っていたロミオも身を乗り出して見ている。お前、いつの間にそこに。

 

「教科書百二十二頁に収縮呪文“ディミヌエンド”についての記述がありますから、隅々までよく読み込んでおいてください。明日の放課後にこの教室で実際に呪文を使ってみましょう。十六時でいいですね?」

 

 いいですね? と言われても。ハリーははいと答えるしかないのだ。例え先程のマッチ棒を針に変える授業で、ハリーのマッチ棒が一ミリの変化もみられていなかったとしても。

 

 「いいですね?」とマクゴナガルのイントネーションの真似をするようにロミオも神妙な顔で鳴いている。

 この野郎、という目でハリーがロミオを睨むと、ロミオは身の危険を感じたのか瞬時にマクゴナガルから駆け下りて、すたこらさっさと逃げて行った。

 

 

 

「まったく、ロミオのやつ……」

 

 翌朝、変身術の教科書を一人だけ別箇所予習する羽目になったハリーは、今度は朝食に出遅れていないロミオに溜息を吐いた。主人に似ず随分と勉強熱心な彼は、今日は魔法薬学の教科書を読み込んでいる。

 

 テーブルの上で、小さな体の全部を使って大きな教科書のページを捲っている。時折指で文章をなぞっているので、恐らく内容も理解しているのだろう。飼い主よりも頭がいいかもしれない。

 

「何見てんの、ロミオ」

 

 試しにハリーも教科書を覗き込んでみた。するとロミオはびくりと身体を跳ねさせると、本の上で走って急いでページを戻し始めた。走っている後ろ足で器用にページが戻っていく。

 

「なに、僕には見せてくれないの?」

 

 少しむっとしたハリーに、ロミオはお目当てのページが見つかったのかキュウキュウ鳴く。ここ覚えといたほうがいいぞ、と指をさしていた。

 

「なになに、“ベゾアール石はヤギの胃からとれる”……これを覚えておけって?」

 

 ブンブンと素早く頷くロミオに、ハリーは素直に頷いた。

 ロミオとしてはスネイプによる詰問で唯一覚えていた問題をハリーに教えたまでだったが、お留守番していたロミオは魔法薬学から戻ってきた顔色の悪い主人を見て驚いた表情を見せた。

 

 なにやら聞くところによると、ハリーが中途半端に答えてしまったせいであちらさんにブーストが掛かり、コテンパンにしてやられたそうだ。

 ウワー、可哀想。ロミオは若干引きながら死んだ顔のハリーに撫でられていた。主人の心のケアもペットの役目である。




初期ブーストで即日投稿ですが、本当は亀更新です。

ロミオを「手癖の悪いドラえもん」と表現されている方がいて、深く頷いてしまいました。多分手癖の悪さは今後多々出てくると思います。

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切実に燃料をください。エタる確率が低くなります。
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