お前もニフってる?   作:HLNF会長

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第五話 名前を言ってはいけないあのニフラー

 

 

 眠れるニフラーを起こすべからず。

 

 ホグワーツ1992年度標語

 

 

 

 

 

 

 

 始業式から数日後、大広間にて。

 その日の昼休み、スリザリン寮の長テーブルは異様な緊張感に包まれていた。ホグワーツに入学して数日の新入生たちもその気配を敏感に感じ取っており、ひそひそと小声で囁きあう上級生たちの近くに行って、出来るだけ耳を傍立てたりしていた。特にスリザリンの監督生やその他寮の中心人物と思われる六年生、七年生が真剣に顔を突き合わせて会合をしているのを見ると、よっぽどの事態に見える。

 

「諸君、すこしいいかな」

 

 その会合の中から、特段身体が大きくて腕っぷしの強そうな上級生が一年生や二年生の座るエリアにやってきて、数人で談笑していた一年生のグループに声をかけた。クィディッチのチェイサーの一人である。張りのある低い声に、一年生たちはビクリと肩を跳ねさせた。

 

「もしかして、昨日、ハリー・ポッターの飼っているニフラーに、悪戯をしたかな? 君たちだっていう目撃証言が上がっているんだけど」

 

 なるべく優しい口調で上級生が問いかけた。

 静かに聞き耳を立てていたのか、スリザリンの隣のテーブル、ハッフルパフの席でざわめきが広がる。その予想外の反応にスリザリンの一年生たちは動揺して目を忙しなく動かすと、その反応を肯定ととらえたその上級生は、元居た場所で話し合っていた監督生たちに頷いた。爆弾解体並みの緊張が走る。

 

 大半の一年生たちは何が何だか分からず呆然と座っていたが、上級生に知り合いを持つ者や、二年生以上の学年の生徒が各々一斉に立ち上がって席を移動した。

 ちなみに、一番近くに座っていたドラコ・マルフォイはすでにひっそりと席を立って移動していた。くぐってきた修羅場の数が違うのである。

 多くの生徒が席移動をしたおかげでまばらになった席に、先ほど話しかけた上級生と何人かの監督生が、件の一年生たちを囲むように腰を下ろした。

 

「ここで集まらない方がいいんじゃないか」

「いや、彼のことだ、既に調べが付いているだろう。隠そうとすればかえって怒りを煽ることになる」

 

 七年生の監督生が静かに言った。彼は伏し目がちに、手を重ねて顎付近で握っている。まるで何かに祈るようなそれを見て、ようやく一年生はどうやらとんでもないことに手を出したのだと気が付いた。

 

「わたしたちは始業式当日の夜に新入生に教えるべきだったのだ。考えが甘かった。防げたことだ……マーカス・フリントの地獄の一カ月を忘れていたわけじゃなかったのに」

 

 どうやら昨年も被害者がいたらしい。しかもその被害者というのは、クィディッチでブイブイ言わせている名家出身のマーカス・フリントである。一年生たちはバッと振り返ってフリントの方を見たが、そこにはスプーンですくっていたスープをぼたぼたと零しながら青い顔で笑っている男がいるだけだった。PTSDであることは明らかである。

 

「フリントは階段の上から彼を蹴り飛ばそうとしたから……それに比べたら、まだ君たちの悪戯は怪我の危険がなかっただけ期間が短くなるかもしれない。いまは神に祈るしかないのだ。彼の怒りが収まることを」

 

 そう言うと、監督生は胸元からロザリオを引っ張り出してぶつぶつと何かを唱え始めた。癖が強い。一方で、七年生のもう一人の女の監督生が立ち上がって、まばらになった周辺の席と、遠くに席を移動した生徒たちを睨んだ。

 

「スリザリン寮の信条は何? 同胞を護ることよ。『まことの友を得る』……それがスリザリンの美徳だったじゃない!」

 

 彼女は声高に叫んだ。そしてさらに言葉を続ける。

 

「いいこと。私はスネイプ先生に今回のことを話します。スリザリン生の安全が脅かされているのよ、きっと助けに入ってくれるわ。先生や私たちがロミ……“例のニフラー”が報復をしている証拠を見つけるまで、交代交代で彼らを警護しましょう。一年生よ、身を護るすべを知らないもの」

 

 きっぱりと言い切った見事な演説だったが、賛同者は少なかった。遠くの方に座っていた一年生の一人が上級生の方をちらりとみると、察したのか小声で囁いた。

 

「フリントのときは、目撃者がいなかったばかりか、ロ……“例のニフラー”の痕跡すら見つからなかったんだ」

 

 その上級生はさらに言葉を続ける。

 

「しかも今年から、ホグワーツに変な秘密結社が出来たって噂になってる。確かな情報源はないけど……“例のニフラー”をはじめとするニフラーたちの保護団体らしい。どいつが所属しているか分からないから、油断ならない。このスリザリンにもすでにスパイが潜り込んでいるかもしれない。敵に回すのはやめておいた方がいい。我が寮の長所、“狡猾さ”を持っているならね」

 

 それを聞いていた一年生は力強く頷き、分かりましたと答えた。金縁の眼鏡を押し上げて、一年生にしては聡明そうな顔だちをしている。優秀な新入生が入ってきたらしい。そうして上級生が満足して違う方向を向くと、その新入生はローブの下のシャツに触れて、胸元についていた“HLNF”というピンバッジを外し、大事そうに自分のズボンのポケットに仕舞い入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロミオ……“例のニフラー”に腐った牛乳をかけて走り去るという蛮行をした一年生は三人。主犯は、ハーパーという少年である。

 

 純血貴族の中でも末席に位置するような格の家の出である彼は、入学初手でスリザリンからの評価が最悪のハリー・ポッターのペットを虐めれば上級生から好かれるのではないか、というゲスい考えで悪戯を提案し、実行してしまった。

 結果として最悪の事態を招き、本来取り入らなければならなかった上級生の手を煩わせているわけだが。

 

 しかし、思わぬつながりが出来たことも確かである。特にスリザリン寮寮監、セブルス・スネイプ。

 監督生から聞いた話によると、どうやら“例のニフラー”をホグワーツから追放せんと血眼になってかの者の悪行を調べているらしい。そういえば、始業式で大窓を破って飛んできた“例のニフラー”を詰めていたような気がする。聞くところによるとあれで“例のニフラー”になんの罰もないらしく、その調子では“例のニフラー”をホグワーツから追放できる事由なんてイギリスを海に沈めたくらいしか思いつかない。

 

 件の七年生の女監督生に連れられてスネイプに顔合わせにいったハーパーだったが、覚悟とは裏腹にかなりの歓迎を受けた。そもそもスリザリン生には甘い節のあるゴリゴリ依怙贔屓教師である。スネイプにしては珍しいらんらんと輝く瞳には、へまをした生徒に対する呆れや失望なども混じっていたが、概ね「ついに尻尾を掴める」という期待や嬉しさが宿っていた。

 

「もし、なにか“例のニフラー”に危害を加えられたらすぐに言うことだ。授業中であれば早退しても構わん」

 

 仄暗い喜びのこもった、ねっとりした声でスネイプは言った。

 スネイプの研究室の一角には、警察のオフィスにありそうな精巧につくられたボードがあった。ボードには禁じられた森の一角の地図や、ホグワーツのどこかの部屋の見取り図などが張り付けられ、その破壊状況について非常に細かく調べているようだった。ただ、張り付けられている紙には大きく赤いペンでバツ印が付けられている。どうやら捜査が難航しているらしい。

 スネイプの研究室からの帰り道、「あんな機嫌がいいスネイプ先生は初めて見た」と監督生がぼやいていた。どうやら“例のニフラー”はスネイプの仇敵らしい。ハーパーはいよいよ眩暈がしてきた。先生を相手取ってなお今まで逃げおおせているニフラーである。ハーパーには荷が重いことは自明であった。

 

 

 それから一カ月が過ぎた。

 ハーパーは“例のニフラー”を随分と警戒していたが、不思議なことにその期間中、顔を合わせることが一度もなかった。不気味なくらいである。廊下で小さな生き物を見るたびに模様を確認したが、薄いグレーに黒いブチのニフラーは現れなかった。マーカス・フリントのときは初日から目も当てられないほど悲惨な状態だったらしい。それを考えるとハーパーの現在の状況はだいぶ良い方である。せいぜい数日たったぐらいのころにバナナに足を滑らせたくらいだ。

 

 ハーパーがスリザリン寮に戻ると、何人かの新入生が揃って談話室のテーブルで羊皮紙に書き込んでいた。

 

「ああ、宿題やってんの?」

 

 ハーパーが羊皮紙を覗き込むと、学友たちは溜息を吐きながらハーパーを見上げた。

 

「マクゴナガルとスネイプとフリットウィックの重めの宿題が重なったろ? 兄さんによると、ここが最初の関門らしいけど。提出期限を破ったら評定下がるって言うし、おかげで休日も碌に休めないよ。ハーパーは終わったの?」

「いや、まったく。まだ数行しか」

 

 ハーパーはへらへらと笑った。学友の一人———確か名前はロベルト———がニヤッと笑った。

「あの……“例のニフラー”に追いかけられてるんだっけ」と茶化すように言った。

 

「いや。追いかけられてない。むしろ不気味なくらい避けられているような気がする。飽きたのかな? それか、スネイプ先生に怖気づいたか」

「それはない」

 

 急に声が挟まれた。ハーパーが振り向くと、顔色の悪いマーカス・フリントがこちらを見つめている。

 

「ホグワーツ、特にスリザリンには、ハリー・ポッターをよく思ってないやつなんて山ほどいる」

 

 フリントは唐突に話を切り出した。

 

「“例のニフラー”もそうだ。フィルチのミセス・ノリスみたいに、一度は蹴り飛ばしてやりたいと考える人間は大勢いる。問題ばかり起こすしな。……だが実際、俺の一件があったあと、“例のニフラー”やそのほかのニフラーに対する生徒たちのかかわり方は変わった。“例のニフラー”やその周辺に危害を加えることを皆が恐れ始めた。俺は見せしめだったんだ。“例のニフラー”に手を出すとこうなるぞ、と全員に示すためのな」

 

 ハーパーはごくりと唾を飲んだ。もし———もし、この空白の一か月間が、自分に対する復讐を練る期間だったとしたら? ハーパーの脳裏に、得体のしれないニフラーの後ろ姿が浮かび上がった。い、いや、腐った牛乳ごときで、そんな恨みを募らせることがあるか?

 急に気が遠くなり始めたハーパーを見て、フリントがギュッと眉根を寄せた。

 

「実はな、もう一つ考えていることがあるんだ……もしかしたら」

「あ!! ハーパーの鞄、穴空いてる!!」

 

 フリントのその先の言葉は、ロベルトの出した大きな声にかき消された。

 ハーパーが自分の持っていた鞄に目をやると、鞄の底に小さな穴が開いていて、丸めてあった羊皮紙が外に滑り落ちそうになっていた。「あぶな」と言いながら、ハーパーは羊皮紙を抜き取る。丁度先ほどの話にあった重い課題の一つ、マクゴナガルのレポートだった。

 

「大丈夫? それ」

「マクゴナガルの宿題のやつだった……うん、全部あるから落としてはないみたい。よかった、書きかけのもので。完成したやつだったら危なかったよ」

 

 ハーパーの言葉を聞いて、ロベルトは眼鏡越しに疑っている様子で目を細めた。

 

「ねえ……その穴、前からあったやつ?」

「え? なんで?」

「それ……ロミオにつけられたものじゃない?」

 

 ハーパーの顔が瞬く間に真っ青になった。背中を丸めて、鞄を見分し始める。触ったり、じっくり見て確かめたりもしたが、それが(ニフ)為的なものかは判別がつかなかった。

 

「いや、前からあったものだよ。多分。だってほら、ここ……ナイフで切ったとかなら、もう少し切り口がきれいなはずだろ」

 

 冷や汗を垂らしながら、ハーパーは自分に言い聞かせるようにそう言った。

 レポート、完成したやつだったら危なかった。落としたなんてシャレにならない。

 ショックで肩を落としているハーパーを見かねて、ロベルトが新しい巾着をくれた。検知不可能拡大呪文のかかった代物らしい。

 

「宿題はずっとその中に入れときなよ。少なくとも鞄に入れているよりはロミオもどうこうしづらいんじゃない?」

「ありがとう、ロベルト……」

 

 感動しきった表情で、ハーパーはすぐに荷物をそこに突っ込んだ。

 

「そういえば、今さっきなにを言いかけてたんですか?」

 

 ハーパーがフリントの方を向くと、フリントの顔は固まっていた。「先輩?」と話しかけると、フリントがハッとしたように動き出す。

 

「いや……なんでもない」

 

 衝撃を受けたような顔で、どこか気の抜けた返事のままフリントは立ち去った。

 

「……なんだったんだろう」

 

 ハーパーはその後姿を見ながら、疑念をしまい込んで談話室を出る。出たところに丁度、金髪をオールバックにした少年が、壁にもたれて黒皮のカバーの本を捲っていた。後ろには二人の大柄な少年を引き連れている。人の気配を感じ取ると、紙面を眺めて伏せていた顔を上げ、ハーパーをちらりと見た。ハーパーは緊張した。彼は、純血貴族の中でも有数の名家、マルフォイ家の嫡男である。最近はどうも、クィディッチのシーカーに就任したらしい。ドラコ・マルフォイとハーパーとでは、どうしたって埋められない格の差というものがあった。

 

「一応、同寮の()()()で忠告しておこう。君はあまり頭がよくないみたいだからね」

 

 ドラコ・マルフォイは気取った感じで、すらりと言った。「スリザリンにこれ以上バカは十分だ」と微妙に後ろに視線を彷徨わせた。

 

「真実を見誤らない方がいい。一見みかけはそう見えても、実際は全く違う……なんてことは、よくある話だ」

 

 ドラコ・マルフォイは、持っていた本を懐に収めながらハーパーを見据えた。少し同情したような顔をしている。まるで、ハーパーが次の犠牲者とでも言うみたいに。

 

「僕なら“アレ”には手を出さない」

 

 そう言い残して、ドラコ・マルフォイは手下を引き連れて去っていった。

 

 

 

 

 

 それから数日経って、朝食時のことである。

 ハーパーは大広間への扉を通り抜ける際、丁度ハリー・ポッターらとすれ違った。ハーパーのドキドキとは裏腹に、ハリーらが話している内容は彼を驚かせるものだった。

 

「ねえ、ロミオったら最近どうして姿を見ないの?」

「なんか、ずっと鍋をいじってるんだよ。考え事をしてるみたいで、僕にもめったに顔を見せないんだ」

 

 訝るハーマイオニー・グレンジャー———ハーパーはロミオを警戒するあまり、最近ハリー・ポッターの友達について詳しくなった———に、ハリー・ポッターは肩をすくめてこたえた。

 もしかして、これは自分が考えているよりも、もっと壮大な計画を立てているのか?

 ハーパーの心臓は嫌な音を立てていた。

 

 ハーパーがスリザリンのいつも座っている場所に腰を落ち着けると、仲間たちの会話が耳に入ってきた。

 

「例の三課題、死ぬほど大変だったよなー!」

「普通に昨日は徹夜だった。ハーパーもそうだったよな?」

 

 仲間たちの目がハーパーに向く。

 

「うん。溜めてたから、ここ三日間はほとんど寝てない」

 

 ハーパーの目の下に隈がくっきりと表れている。

 

「あ、そういえば、この前眠気覚ましの魔法薬買ってなかった? あれ使えば」

 

 ロベルトがヨーグルトを食べながらそう言った。「確かに」と呟きながらハーパーはローブのポケットから巾着袋を取り出す。ロベルトが硬直した。

 

「……なあ」

「なに?」

「俺のあげた巾着って、青色だったよな?」

 

 その言葉に、ハーパーは手に持ったきんちゃく袋を見下ろして、息をのんだ。……紫色だ。

 どうやらまずいことになったと近くにいて会話を聞いていた仲間も気が付いた。

 

「出せ、早くレポートを袋から出せ!」

 

 焦った顔でロベルトが急かす。震える手でハーパーは巾着袋を漁った。

 羊皮紙が三巻き、ハーパーの記憶通りのものが出てくる。

 

「間に合った……のか?」

「これが“例のニフラー”の復讐? 巾着袋を入れ替えることが?」

 

 仲間たちは口々に言いあった。しかし、その羊皮紙を伸ばしたハーパーの顔色がドンドンと青ざめていく。

 

「……文字が……消えてる」

 

 そう言い終わるか終わらないうちに、ハーパーはまっさらになった羊皮紙の束を手一杯にかき集めて、大広間から飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……勿忘草の香り」

 

 眉をひそめたまま、スネイプは巾着袋と羊皮紙の香りを手で仰いで確かめていた。

 

「蓋し、“物体の記憶を消す薬”……七年生で扱う魔法薬か、それが気化したものがこの巾着の中に入っていたのだろう。それによって、この羊皮紙は、文字の書いてあった状態から新品の状態まで時が戻ったのだ」

 

 スネイプは短く舌打ちをした。

 

「これではそもそもの証拠の記憶すらも消されてしまっている」

「じゃ、じゃあ“例のニフラー”がやったっていう証拠は、ないんですか?」

 

 焦ったようにハーパーが言った。鬼気迫る表情に、スネイプは何かに気が付いた。

 

「この羊皮紙の中身は、課題か」

「そうです。スネイプ先生と、マクゴナガル先生とフリットウィック先生のものです。これって……元に戻せませんか?」

「七年生で扱う魔法薬なのだから、当然効果も高い。不可逆の魔法薬だ。復元するのは不可能だろう」

 

 スネイプは忌々しいものを見るように目を細めた。そしてすっかり憔悴しきったハーパーに目を向ける。

 

「すぐに課題の書き直しをしたまえ。我輩のものについては猶予を伸ばしてやろう。だが……マクゴナガル先生とフリットウィック先生の分は諦めたまえ。勿忘草の香りと、あのニフラーの一件で理由を説明するにはあまりにも根拠に乏しい。特にあの二人は難しいだろう」

 

 あのニフラーとは懇意の仲だ、とスネイプは吐き捨てた。そう言いながら忙しなく巾着をいじくっている。

 

「……これは誰に貰った?」

 

 スネイプは片眉を跳ね上げてハーパーに問いかけた。

 

「友達です。でも、色が違うんです。その子から貰ったのは青色のもので」

「……預かっておこう。なにか痕跡が見つかるかもしれん」

 

 気落ちをして去っていくハーパーの背中を見送った後、スネイプは巾着袋を青白い指で撫でた。

 かなり高級な素材で出来た巾着袋だ。……これを、まだ付き合いの浅い学友に渡すのか?

 スネイプは疑念を持ったまま、その巾着を研究室のデスクの棚に仕舞い入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう兄さん、調子どう?」

 

 同時刻、談話室。

 大広間からスリザリン寮の談話室に戻っていたロベルトは、隅のカウチに腰かけて写真を選別している男に声をかけた。七年生の兄だ。彼の膝には、一年前から飼っている黒い毛並みの神経質そうなニフラーが眠っている。

 

「調子? いいよ。そっちは上手くいったのかな?」

「まあね。()はスネイプのところへ行ったみたい」

 

 ロベルトは兄の目の前のカウチに座った。

 

「よかったよ。今年でHLNFの会長も僕もホグワーツを卒業するし。新設団体に後継者がいないとなったら笑いものだからね」

 

 そう言いながらロベルトの兄は写真を懐に仕舞った。おおよそ、血眼で集めたロミオのクリスマス限定ブロマイドを数えていたのだろう。

 “マーカス・フリントが()()()()に蛮行を働いた”ことをきっかけに作られた兄やその仲間の新設団体は、かなり採用水準を高めているのに、既に加入者が二十人を超えているらしい。何人か教師も参加しているとの噂だ。

 

「わたしの敬愛する()()お方の言葉を借りるなら———ニフってる、だったかな? そう言った行為をしているものとして、ニフラーに対して悪事を働く者は許せないのだよ。分かるね、ロベルト。そういう者たちは、あのお方の手を煩わせぬよう、我々人間で内々に対処しなければならない」

「はい、勿論」

 

 ロベルトはほほ笑んで、金縁の眼鏡をクイッと押し上げた。

 

 




HLNFは、全ニフラーを支持しています。
会員名簿はなし、全貌は不明。
どこにでもいて、どこにもいない。
ほら、我々はあなたのすぐ後ろに。

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切実に燃料をください。エタる確率が低くなります。沢山の感想ありがとうございます。感想をください。私の主食です。
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