お前もニフってる? 作:HLNF会長
若干四話、入学式から一週間経たずして、この物語の重要人物がおさらばしようとしている件。え、誰がって? そんなのタイトルみりゃ分かるだろ、スキャバーズだよスキャバーズ。
元々こいつの対処については考えていたところではあったんだ。いつまでも野放しにしてちゃあロンが可哀想じゃないか。思春期に中身が(いろんな意味で)汚いおっさんと過ごしたくないだろ。昨日なんて枕元で一緒に寝てたし。俺だったらトラウマもんだぜ。
え? 原作ブレイク? 俺とダンブルドアいたら大抵何とかなるって。いけるいける。なるべくいたいけな少年のショックは小さくしてあげたいと思うのが優しさってモンだぜ。
しかしなぁ、俺はスキャバーズ、もといピーター・ペティグリューも可哀想な奴だと思うんだ。アイツも一種の被害者ってやつ。
だって自分の命と親友の命を天秤に掛けた時、自分の命を差し出すなんて当たり前にできる事じゃねえだろ? そりゃ自己犠牲は高潔だしシリウス・ブラックもカッコいいけどよ、俺はペティグリューを否定しきることはできないんじゃないかって思うんだ。
そう考えた俺は、ハリーが飛行術でマダム・フーチにしごかれている間、図書室の日刊予言者新聞をまとめた書庫に行ってシリウス・ブラックとピーター・ペティグリューの記事を見てみた。ペティグリュー、自爆するときにマグル十二人殺してた。はい、アウトー!!!!!!
俺ってば隠れて図書室に入ってきたのに叫びそうになったぜ。
なるほどなあ、俺ァあんま原作に詳しくないんだけどよ、シリウス・ブラックってポッター夫妻の殺害幇助とマグル十二人の殺害でアズカバンにぶち込まれてたんだな。ペティグリュー、血も涙もねぇ野郎だぜ。そもそも論、エンザイで捕まってる奴がいるんだから警察に突き出さんとアカンわな。うんうん。
そんなこんなで手のひらドリルをしながら俺はスクラップされていた例の事件の新聞をはぎ取り、自分の袋の中に押し込んだ。
その日の深夜、鳥もネズミも寝静まるころに俺はそっとケージから抜け出した。このところ忘れてたけど、この学校今ヴォルデモートいるし、慎重に動いたほうがいいと思ったんだ。
それにしてもとんでもねぇことだぜ、闇の帝王が闇の魔術に対する防衛術を教えてんだもん。正確に言うと教えてる方とは
コンコン、と目の前の扉を叩く。レディの部屋に入る時はノックをしないとな。
中から怪訝そうな顔をしたマクゴナガルが出てきた。周りを見渡しても誰もいないことに不思議そうな顔をするマクゴナガルの足先をツンツンつつく。
マクゴナガルが下を向いた。
「まあ、ポッターの」
そうです、ポッターんちのロミオです。
てっきりフィルチが罰則破りの生徒を連れてきたかとでも思ったマクゴナガルは、足元で彼女を見上げる俺を見るとにっこりと微笑んだ。
「どうしたんです?」
俺はマクゴナガルからちょっと離れて、こっちに来てくれと手招きをした。
まあ、とマクゴナガルは口に手をあてて驚いたあと、「ちょっと待ってください」と言って部屋から薄いガウンを持ってきて俺の方に駆け寄ってきた。
一定の距離を置きつつ、俺はマクゴナガルを案内する。杖の先を光らせて、時々壁にかけられた絵画の連中に明るいと文句を言われているものの、マクゴナガルの顔は依然わくわくとしていた。
ああ、あれだな。俺にも経験がある。路上で猫について行っている時の顔だ。
ミネルバ・マクゴナガル。ホグワーツの教師を始めて数十年。学生時代を含めると、彼女は人生の大半をこの城で過ごしている。この謎多きホグワーツで幾度も不可思議な目にあった彼女だったが、流石にニフラーに深夜の散歩に連れ出されるとは思っていなかった。
ロミオと言ったか。
彼がとても賢いニフラーだという事は時折話に聞いていた。今年はペットにニフラーを連れてくる生徒が多かったが、そのニフラーたちの親分であるというのはミネルバに親しい女子生徒からの話だ。確かに昼休み、十何匹ものニフラーを連れて校内を駆けている姿をよく見る。
言葉を話せない彼は何かを意図して自分を連れ出したのだろう、と彼女は読んでいた。当たりである。ロミオはミネルバを先導して、動く階段を上った。
ある廊下に出ると、ミネルバは彼が何処に自分を連れて行こうとしているのか気が付いた。
「いけません、ダンブルドアはいまおやすみ中ですよ」
小声でミネルバが囁く。
廊下の先には夜の闇に佇むガーゴイル像がうっすらと見える。
手を招いても一向に足を進めようとしないミネルバに痺れを切らしたロミオは、一人でさっさとガーゴイル像の隙間から中に入ってしまった。しぶしぶミネルバも歩き始める。合言葉を口にしないと階段は動かないのに……。
ミネルバが近づくと、案の定行き止まりをくらっていたロミオがガーゴイル像の頭の横から顔を出した。「はやく」とでも言うようにロミオはガーゴイル像の羽根をパシパシ叩いてミネルバを急かす。
「……ストロベリー・マシュマロ」
ガーゴイル像が重い音をたてて回った。この物音で既にダンブルドアは目が覚めてしまっているかもしれない。満足げにロミオは鼻を鳴らし駆け足で階段を上って行った。
もしなにかくだらない用事だったらダンブルドアにどう言おうか……。なんだかミネルバはハリーの気持ちが分かったような気がした。まだロミオへの信用は皆無らしい。
ミネルバが校長室の扉を叩くより早く、中から扉が開かれた。
「どうしたのじゃ?」
落ち着いた声だった。薄い紫色の寝間着を着たダンブルドアが目をぱちぱちと瞬かせてミネルバを見た。
口ごもったミネルバは、ここに連れてきた張本人———張本ニフラーを目で探した。足元にはいない。顔を左に向けると、ふわふわとした体毛が頬に当たってミネルバは狼狽えた。肩に乗っていたらしい。い、いつの間に。
「ふむ、どうやら彼はわしに用があるようじゃの」
ロミオは大げさにぶんぶんと頷く。ニフラーの小さな手がミネルバの首筋に触れ、彼女は固まったように動かなくなってしまった。
「ひとまず中で話そうかの」
固まった友人を見かねたダンブルドアはミネルバの肩の方に手を差し出し、ロミオを自分の手の中に乗せると部屋の中に入っていった。
俺です。いえ~い。
現在俺はダンブルドアの手の上にのって校長室を移動してる。すごくね? ダンブルドアの手に乗ってんだぜ。どんな魔法使いも出来ない偉業だ。そりゃそうか。
少しして、俺はゆっくりとダンブルドアの執務机に下ろされた。隣には不死鳥の……名前なんだっけ。しゃんくす? 燃えるように赤い鳥がいる。机を挟んで向かい合うダンブルドアとマクゴナガルが、俺をじっと見た。月の光が上の方にある窓から差し込んでいる。
ん~、どっから話そうかな。俺ニンゲンの言葉話せないからよォ、いろいろ小道具作ってきたんだぜ。
まず俺は、袋の中に仕舞っていた新聞を机に引っ張り出した。マクゴナガルが手に取りダンブルドアに渡した。
「シリウス・ブラックとピーター・ペティグリューの事件ですか。いったいこれをどこで……」
「おそらく図書室の書庫じゃろう。昔の新聞を揃えているのはあそこぐらいだからの」
流石ダンブルドア、あたまいいじゃん。
俺はその新聞の、“ピーター・ペティグリュー”という文字を指さし、さらに指をピースにして自分の目とこの文字を行き来させた。
何か伝えようとしているということが分かったらしい。ダンブルドアとマクゴナガルはうーんと唸った後、ダンブルドアが先に口を開いた。
「ピーター・ペティグリューを見た、と?」
お、ピンポーン! 大正解。俺は頭の上で大きなマルを作る。
「ピーター・ペティグリューを!? どこで見たっていうんです。彼は十年前に死んだんですよ」
まあ待てって。今説明してやるから。
俺は次に、針金で作ったミニ眼鏡もどきと赤茶色の毛糸で作った雑なヅラを取り出した。
まず眼鏡をかけ、おでこに稲妻マークをかくふりをする。
「ハリーですね」
連想ゲームみたいにマクゴナガルは言った。てか普段はファーストネームで呼んでるのな。地味に俺にバレたぜ。
次に、その隣にぴょんと飛び、赤茶色のヅラを頭にのせる。
「ロナルド・ウィーズリーですね。ハリーの友人です」
お、優秀。やっぱ生徒をしっかり見てるマクゴナガルを連れてきて正解だったぜ。
んで、俺は次に厨房から屋敷しもべ妖精に貰ってきたチーズを取り出し、チューチュー言いながら食べ始めた。これキツイかなぁ。
「ネズミ……?」
ブンブン首を振って肯定する。ちゃっかりチーズを食べ終わった後、俺は次に袋の中からアーガス・フィルチの部屋から盗んできたミセス・ノリスの写真たてを引っ張り出した。
これにはマクゴナガルも頭を抱えている。
「アーガスがウィーズリー双子を詰問していたのはそういうわけだったんですね……後で返してきなさい」
俺は次にマクゴナガルを指さす。
「私は返しませんよ?」
ちげーってば先生。ダンブルドア、気付いてくれよ。マクゴナガルとミセス・ノリスを交互に指さす。
「まさか、動物もどきのことかの……?」
優秀!!! マーリン勲章!!! 飛び跳ねながらマルをつくる。
もう一回やってみればわかりそうだな。ヅラを被る。
「ロナルド・ウィーズリー」
チーズ……は食っちまったから、チューチュー鳴きまねをする。
「ネズミ」
ミセス・ノリスを指さす。
「動物もどき」
次に新聞だ。顔を見る感じ、ダンブルドアは気付いたみてーだな。
「……ピーター・ペティグリュー」
んで? 繋げてみると?
「ウィーズリーのネズミはピーター・ペティグリューの動物もどきの姿、ということかね」
そゆこと。どや顔でパチンと指を鳴らしてダンブルドアを指さす。マクゴナガルは驚きで声も出ないようだった。
「ミネルバ、ピーターが動物もどきというのは?」
「初耳です。彼になるすべを教えたこともありませんし……アルバス、新聞を見せてください。“ピーター・ペティグリューは小指を残し跡形もなく———”……確かに動物もどきになって逃げたというのなら在り得る話です」
まあお二人さんで存分に話し合っててくれたまえ。俺ァこのことを伝えるために慣れねー図画工作を四時間したんだぜ。特にハリーの眼鏡をつくるために何個の針金が犠牲になったか……俺の巣の中に出来損ないの針金が大量生産されてるからな。俺の中のワクワクさんが針金はもう一年は見たくないって言ってる。
「ロミオ。ちょっと来てください」
しばらくして、遠くの方のテーブルに置いてあったカムカムキャンデーと俺が決死の格闘していると、マクゴナガルからお声がかかった。話し終えたみてーだな。取り敢えず助けてくれねぇか?
マクゴナガルは転げまわる俺に近寄って、呆れた表情でカムカムキャンデーを一つずつ俺から剥がした。カムカムキャンデーが動き回っているということ以外は、子供の服に張り付いたひっつき虫を取る母親みたいだった。ふう、たいへんなメにあったぜ……。
で、結論は?
俺が二人を交互に見上げると、ダンブルドアが口を開いた。
「ひとまず、そのネズミを見てみないことにはどうにもならん。明日になったらわしとミネルバが寮に行くでの」
お、マジ? それなら朗報があるぜ。
俺は袋の中を探って、スキャバーズが入っている虫かごを取り出した。
いやー、こんなこともあろうかと睡眠薬飲ませて捕まえておいたんだよな。俺ってばなーんて有能なニフラー。キューピー三分クッキングもビックリ。
俺は目を丸くしている二人にキラーンとキメポーズをしてみせた。
次回! ペティグリュー死す! デュエルスタンバイ!
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切実に燃料をください。エタる確率が低くなります。