お前もニフってる?   作:HLNF会長

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第二十話 犯人はロミオ?①

 

 

「ロミオ……大丈夫?」

 

 ぼんやりと物思いにふけっていた俺は、その声ではっと我に返った。

 目の前では、ルーナが心配そうにこちらを覗き込んでいる。

 

 今は一月だ。

 クリスマス休暇が明け、新学期に再び生徒たちが阿鼻叫喚している今日この頃。

 暇を持て余した俺は、丁度二階の部屋でルーナの魔法薬学の勉強を見ているところだった。

 図書館から借りてきた本が何冊も机いっぱいに広げられており、ルーナの手元の書きかけの羊皮紙には途中まで右上がりの文字が並んでいる。

 

 俺はくちばしに掛けていた半月型の眼鏡をちょいと押し上げると、「大丈夫」という意味を込めてサムズアップした。ルーナは「本当に?」という顔をしたあと、また本のページを捲り始めた。

 ちなみに、この半月型の眼鏡はダンブルドアからのお下がりだったりする。

 

 ぼーっとしていた理由は、多分お前らも予想がついている通りナギニのことだ。

 ……何か前もこんなことあったよな? 今年は注意力が散漫になってるような気がするぜ。

 でも、ナギニなんていうイレギュラーが放り込まれて来たんだ、どれだけ考えても用心のし過ぎなんてことはないだろう。

 

 ……いや、やっぱりナギニのこと、考えすぎかな。

 

 うん、恋とかじゃないよ? 別に。勿論。

 そもそも後々はヴォルデモートのところに戻っていくんだし、あんま親しくなるべきじゃねーと思うし。

 

 でもなー、ぶっちゃけ滅茶苦茶美人なんだよな、あの子。だからまあはい、うーん、はずいけど気になってはいる。恋愛とかではなく。あくまで存在としてね? おいそこ、にやにやしてんじゃねーぞお前。

 

 考えてもみてくれよ、俺いままでずーっと、ほとんど十歳前半の子供たちと接してるんだぜ? それが突然数十歳年上のおねーさん……数十歳年上のおねーさん? いや、深く考えないでおこう。そんな年上の美人と二人で話したりデートするのは、流石に心臓ドキドキしちゃうって。これは俺がおかしいワケじゃない。

 

 抱き上げる時変なところ触らないように毎回ちょっと気ぃ使うしな。

 同じ人として接する前に、女の子ってフィルターを通しちゃってさ。お前らが気付いてるかはわかんねーけど、澄ました態度とってる間中、俺ずーっと心の中でアタフタしてるから。マジで。

 あの運び方、そのうち張り手でも飛んできそうな気がするよな。まあ……そんな度胸はなさそうだけど。

 

 一応言っておくけど、俺がナギニをこんなに気になってる一番の理由はそこじゃない。

 多分、境遇が似てるからだ。人間になりたい動物同士、シンパシーを感じるっつーか?

 ナギニにも「あなたって私に似てるのかもね」って言われたしな。

 あの子は俺がニフラーだなんて知らないはずなのに。なんでそう思ったんだろう。不思議だ。

 

 話を戻すけど、彼女を魔法の絨毯で外へ連れ出したのは正解だったと思う。

 

 記憶喪失……というより、あれは記憶混濁って言うべきなのかな。その辺は専門じゃないからよく分かんねーけど、認知症の本に「昔を追体験すると記憶の想起を助けることがある」って書いてあったんだよね。

 だから試してみたんだ。

 ナギニといえば、クリーデンスだろ?

 恋人だったのか、友達だったのか、それとももっと別の関係だったのかは分からないけど。でも、人間だった頃、最後に心を許していた相手なんじゃないかと思ってさ。あいつ空飛んでたような気がするし、誘導しやすいかなーと思ってさ。絨毯で飛ぶことにしたんだよ。

 だからとりあえずロンドンへ行ってみたんだ。

 あの街並みを見れば何か思い出すかもなーと思って。流石にパリまで飛ぶ勇気は出なかったわ。

 

 帰ってきたあとのナギニは、見違えるくらい落ち着いていた。

 俺が紅茶を淹れている間も、周囲を過敏に警戒する様子はなかったし。

 結局、今回も紅茶に混ぜ込んだ真実薬はちゃんと効いていたみたいで、あのあとは驚くほど素直に話してくれた。最近の記憶はやっぱりちょっとおぼろげみたいで、ホグワーツに来てからのことは覚えてないっぽいけど、ヴォルデモートとアルバニアの森にいたときのことは思い出してきたらしい。ひとまず安心だ。

 

 あ、もちろん、いきなり問い詰めたりはしてないぜ。真実薬のことがバレると関係性がまた一からやり直しになっちゃうからな。自分から話したくなるように、会話の流れだけはかなり気を付けたつもりだ。

 

 それで、聞いた感じによると、ナギニは“ロミオ(おれ)”を狙っていたらしい。

 

 それを聞いた時の俺の心情はまさに一言。

 

 マズくない? である。

 

 いや、ガチで。

 ナギニは俺=ロミオだってことを知らないから、なんで闇の帝王が変なニフラーごときを殺すために自分を動かしたのか、わけがわからず頭をひねっていたけれど。ハリーに関しては、闇の帝王に「出来そうなら殺っちゃって」と頼まれていたらしい。バイトみたいな使い方すんじゃん……。

 

 きっと去年ペティグリューとクィレルのアレで騒ぎすぎて、あの蛇面に目を付けられたんだ。クィディッチの試合であいつの顔にドロップキックしたからかな。それとも雪玉何個か投げつけたから? それとも賢者の石を……うーん、思い当たる節がありすぎるぜ。

 

 でも、これで分かったことがある。

 思ってたよりもずっと、俺はヴォルデモートに警戒されているらしい。

 人間よりは確実にニフラー(おれ)の方が抹殺しやすいし、後々面倒なことになる前に、俺の息の根を止めておいておきたかったんだろう。

 チッチッチ、甘いぜ。俺はただのニフラーなんじゃなくて、ホグワーツの誇るスーパー・ニフラーなんだからなあ! 殺そうなんて一億万年早いんだよォ!

 

 あと言い忘れてたけど、ナギニってまだ分霊箱じゃないっぽいよ。そういった覚えはないらしい、ってだけだけど。

 それで思い出したんだけど、ハリーが四年生のとき、トム・リドル(父)の屋敷で、庭師っぽいおじさんが殺されてたよな? もしかしてナギニが分霊箱になるのってその時?

 お前らはもしかしたらすでに知ってたのかな。何で俺に教えてくれないの?

 

「ロミオ」

 

 はいはい、なんですか。

 呼ばれたんで視線を寄こすと、ルーナは羊皮紙を指さした。

 

「ここがよく分からないの」

 

 どれどれ。

 

 俺は机いっぱいに広がった教科書の間を、ひょこひょこと飛び越えていく。分厚い『トロールでもわかる魔法薬学入門』の上へ着地し、首を九十度くらい傾けて羊皮紙を覗き込んだ。

 

 ……ああ。

 

 これは確かに分かりにくい。しかも去年も授業内でロクに触れてなかったところだ。

 スネイプって、たまに知ってる前提で説明飛ばすんだよな。こんなんじゃ、あの「埃が出なくなるまで叩いて、それからさらに叩いてぺちゃんこにしてやるぜ」みたいな採点魔から満点をもぎ取るのは難しい。

 

 しかし、あの男の赤ペンを何度もくぐり抜けてきたおれさまに死角はない。

 俺は机の端に置いてあったタイプライターを、前脚でよいしょ、と引き寄せる。そういえばこれもダンブルドアからのプレゼントだよな。俺ってなんだかんだあいつから貢がれてる?

 

 カチャカチャカチャカチャ。

 

 金属音が静かな談話室へ小気味よく響いた。

 ルーナは打ち出されていく紙を覗き込みながら、目を丸くした。

 

「ああ、そういうことだったんだ」

 

 ぱっと表情が明るくなった。

 

「ロミオ、あったまいい」

 

 えへへ。もっと褒めてもいいぞ。

 

 俺は得意げに胸を張った。

 ルーナは早速羽根ペンを走らせ始める。さらさらと羊皮紙へ文字が並んでいく。

 よしよし、その調子だぜ。

 

 ———さて、一方。

 俺は気付かれないように、ちらっと部屋の入口へ目を向ける。

 扉がほんの少しだけ開いている。

 その隙間から、上から順番に、ロン、ハーマイオニー、ハリー、三人の顔が綺麗に縦一列に並んでいた。バレないと思っているのか、こちらを執念深くジーッと覗いている。

 

 

 ……お前らマジでなにやってんの?

 

 

 俺は半目になりながら、この状況をどうしようかと悩んでいた。

 

 

 

 

 

 ———遡ること、十二月。クリスマス休暇にも入っていないころ。

 

 深夜のグリフィンドール談話室には、暖炉の火だけが静かに揺れていた。

 赤々と燃える薪がぱちり、と小さく爆ぜる。

 丸い窓の外には、冬の夜空が広がっていた。黒い湖は月明かりを映し、遠くでは風が城壁を撫でる音がかすかに聞こえる。

 人気のなくなった談話室の中央。

 一見すると誰もいないように見えるソファから、不意に小さな声がした。

 

「……シリウスが来るったって、どこに来るんだよ?」

 

 ロンの声だった。

 

「もしかして、ホグワーツに忍び込む気じゃないだろうね? やっとアズカバンから逃げ出せたのに、そんなことしたらまた不審者扱いだぜ」

「まさか。ホグワーツには簡単には入れないわ。特に寮なんて、肖像画の合言葉がなければ絶対に入れないもの」

 

 一つ飛ばして隣にいたハーマイオニーが落ち着いた声で答えた。

 ロンとハーマイオニーの視線が共通のお隣さん、ハリーに向く。

 

「シリウスは他に何か言ってなかった?」

「いや、特には……」

 

 ハリーのくぐもった声が返ってくる。

 

「それより、暑い!」

 

 次の瞬間、ハリーは頭から被っていた透明マントを勢いよく払いのけた。

 何もなかったはずのソファに、三人が一斉に姿を現す。

 暖炉の熱が思いのほかこもっていたらしく、ハリーの頬は真っ赤だった。額の汗を袖で拭いながら、じろりとハーマイオニーを睨んでいる。

 

「静かにして」

 

 ハーマイオニーはすぐさま人差し指を口元に当てた。

 

「誰か起きてきたらどうするのよ」

「いや、だからって……待つだけなのに透明マントまで使う必要ないだろ」

 

 ハリーは小声ながらも不満を隠さない。

 

「これじゃ『僕たち今から怪しいことをします』って言ってるようなものじゃないか」

「十分怪しいことでしょう」

 

 ハーマイオニーはきっぱりと言った。

 ロンは二人を交互に見比べ、小さく肩を竦める。そしてパジャマのズボンのポケットからおもむろにチョコレートバーを取り出した。

 

「どっちでもいいから、早くシリウス来てくれないかな……お腹すいちゃったよ」

 

 ロンがそう呟いたとき、暖炉の奥で薪が音もなく崩れた。

 三人の意識が自然と暖炉に吸い寄せられる。

 赤く熾った炭火がゆっくりと沈んで、その隙間から黒い灰がふわりと舞い上がる。

 

 次の瞬間、灰が意思を持つように舞い上がった。

 暖炉の底に積もっていた煤や燃え残った薪が、何かに引き寄せられるように少しずつ動いている。

 ごとごとと木炭が擦れ合う低い音が響いた。煤が集まり、薪が重なり、灰が貼り付いていく。

 まるで暖炉そのものが一つの顔を作り上げているように、輪郭ができ、頬が盛り上がる。

 

 やがて、黒く焼け焦げた薪でできた男の顔が、炎の底からゆっくりと浮かび上がる。

 口が開くと、その内側だけは炎と同じ灼けるような深紅だった。

 ふう、と息を吐くたび、赤い火の粉が口元からぱらぱらと零れ落ちている。

 

「うわっ!」

 

 ロンが思わず飛び退いた。

 ハリーも息を呑み、ソファから腰を浮かせる。

 暖炉の中から三人を見つめ返していたのは、相変わらずムカつくほどハンサムな顔立ちの男———シリウス・ブラックだった。

 

「シリウス!」

 

 ハリーが思わず声を上げる。

 

「驚いた……」

「これ、フルーパウダーだわ」

 

 ハーマイオニーが暖炉へ視線を向けたまま、興奮気味に言った。

 

「煙突飛行ネットワークを使ってるの。暖炉同士を繋ぐ魔法で、こうして姿だけ映して話すこともできるって、本で読んだわ」

 

 炎の中で、シリウスが少しだけ口元を緩めた。

 

「相変わらず物知りだね、ハーマイオニー。正確にはそれの応用だ」

 

 シリウスが口を開くたび、火の粉が一つ、また一つと舞い上がる。ハーマイオニーはにっこりと微笑んだ。

 

「会えて嬉しいよ、三人とも」

 

 シリウスは三人をゆっくり見回し、どこか安堵したように微笑んだ。

 暖炉の炎が静かに揺れる。灰色の瞳がハリーへ向いた。

 

「本題に入る前に、一つ聞いてもいいか? 今年のクリスマス休暇についてだが……」

 

 ハリーは一瞬だけ言葉に詰まって、隣のロンとハーマイオニーと顔を見合わせた。ポリジュース薬が出来上がるのは、丁度クリスマスあたりだ。

 

「ごめん。今年は帰れそうにないんだ。やらなきゃいけないことがあって」

「そうか……」

 

 シリウスはちょっとだけ気落ちした様子だ。ただ、ハリーに気負わせないためかすぐに表情を戻した。真剣な眼差しに切り替わって、三人は無意識に居住まいを正す。

 

「誰かに見つかる前に済ませたい。早急に本題に入ろう。ハリーと、それから私が会った———別人、もとい別妖精でなければだが———屋敷しもべ妖精、ドビーについて」

 

 ハリーは横にいる二人をちらりと見た。事前に事情を知らせていたので、二人は訳知ったりと言う顔で頷いている。

 

 「まず、わたしは屋敷しもべ妖精転勤室の名簿を調べてみた。あそこはすこぶる退屈な場所でね。魔法省の端も端にあるんだが、正直何のために存在しているのか分からないような部署だ。……たまには役に立つこともあるんだな」

 

 シリウスが片方の口角を上げた。

 

「結果から言えば、"ドビー"という名前は名簿になかった」

「なかった?」

 

 ハリーが眉をひそめる。

 

「登録されていないってこと?」

「そういうことだ。部署の人間によると、旧家や、位の高い貴族、やましいことをしている家、魔法省に情報なんて渡したくない、なんて家によくあることらしい」

 

 シリウスは頷いた。

 

「そこで今度は、信用できる闇祓いや魔法省の知人たちにドビーという屋敷しもべ妖精に心当たりはないか、片っ端から聞いて回ってみた」

 

 そこで視線がロンへ向く。

 

「すると、一人だけ知っている人物がいた」

 

 ロンが目を瞬かせる。

 

「誰?」

「アーサー・ウィーズリー……君のお父さんだ、ロン」

「父さんが?」

 

 ロンは驚いて目を丸くする。

 

「アーサーによれば、魔法省がある屋敷へ大規模な立ち入り調査をした際、その屋敷にいた屋敷しもべ妖精の名前として耳にしたらしい」

 

 暖炉の薪が静かに崩れた。

 シリウスは三人の顔を順番に見回した。

 

「さて……そのドビーが、誰に仕えていたと思う?」

 

 少しだけ試すような口調になる。

 三人は揃って考え込んだ。

 ロンはシリウスのにやにや顔を見て、何かを思い出したように「あっ」と声を漏らした。

 

「……もしかして」

 

 恐る恐る口を開く。

 

「いや、まさかとは思うけど……」

 

 シリウスは黙って続きを促した。

 

「……マルフォイ?」

 

 炎の中で、シリウスが静かに頷いた。

 

「その通りだ」

 

 一瞬、三人は動きを止めた。

 

「おっどろきー……」

 

 ロンはぽかんと口を開けたまま、呆れたように頭をかいた。

 

「じゃあ、あいつん家の屋敷しもべ妖精だったの」

「ああ。ほんとに、おっどろきーだよ、まったく……」

 

 シリウスも半ば呆れ気味にため息をついている。

 

「ということは……つまり、マルフォイの仕業ってこと?」

「そう考えるのは少し早計かもしれない」

 

 ハリーが険しい表情で尋ねると、シリウスは慎重に首を振った。

 

「だが、何らかの形でマルフォイ家が関わっていると考えるのが自然だろう。少なくとも、ドビーが何の情報もなしに勝手に動いていたとは思えない」

 

 三人は黙り込んだ。

 しばらく暖炉の薪が爆ぜる音だけが響く。

 やがてハリーが、どこか言いづらそうに口を開いた。

 

「……実はさ」

「うん?」

「僕たちも、マルフォイから直接話を聞き出そうと思ってたんだ」

 

 シリウスの眉がぴくりと動く。

 

「どうやって?」

「ポリジュース薬を使って、マルフォイの取り巻きになり替わろうって……」

「……ポリジュース薬?」

 

 シリウスが目を瞬かせる。

 

「そんな材料、どこで手に入れたんだ?」

「ロミオにもらったんだ」

「言ってくれれば送ったのに……」

 

 シリウスが本当に残念そうに言ったので、ハリーはバツが悪そうに苦笑した。

 

「最初はスネイプ先生の研究室から盗もうと思ったんだけど……失敗しちゃって」

 

 時が止まる。

 一瞬顔が固まった後、シリウスは腹を抱えて笑い出した。

 

「あっはははは!」

 

 暖炉いっぱいに笑い声が響き渡る。

 口を開くたび、真っ赤な口の奥から火の粉が勢いよく噴き出し、灰がぼふぼふと談話室へ舞い散る。

 

「げほっ!」

「けほっ、けほっ!」

「シ、シリウス!」

 

 三人は慌てて顔を背ける。

 ロンは袖で顔を覆い、ハーマイオニーは咳き込みながら手で仰いで灰を払った。

 ハリーは涙目になって抗議する。

 

「やめてよ、シリウス!」

「静かにしないと、誰かが起きてきちゃうわ」

「いやっ……、すまない……!」

 

 シリウスは笑いを堪えようとするものの、顔を震わせ続けている。

 

「ははっ……君は間違いなくポッターの血を引いているよ」

 

 ようやく息を整えながら、楽しそうに笑った。

 

「スネイプの研究室から盗もうとするなんて……やるじゃないか、ハリー。私ものんびりしてはいられないな」

「勝とうとしないでください、シリウスさん」

 

 ロンが即座に突っ込む。

 シリウスは「それもそうだ」と肩をすくめて笑った。

 

「とにかく、君たちがそんな大胆な計画を立てていたと知って、私は安心した」

 

 笑みを残したまま、真面目な口調に戻る。三人はきょとんとした。

 

「無茶は困るが、ただ怯えているだけじゃなく、自分たちで考え動こうとしている。それは立派なことだ。正直“秘密の部屋”の話で君たちが怖がっているんじゃないかと心配していたんだ……うん、マルフォイの詮索は君たちに任せよう。決行はいつだ?」

「クリスマス休暇の頃です」

 

 ハーマイオニーが答えた。

 なるほど、とシリウスは納得したように頷いた。

 

「そのためにホグワーツに残るわけか」

 

 ハリーは少し気まずそうに微笑んだ。

 

「その作戦が終わったら、またこうして話そう。朗報を期待している」

 

 シリウスが悪戯っぽくウィンクをすると、次の瞬間、暖炉の炎がぼうっと一際高く燃え上がった。

 赤い火の粉がぱっと舞い散り、談話室の壁を一瞬だけ明るく照らす。

 そして、炎は風に吹き消された蝋燭のように、ひゅっと細く縮み、そのまま静かに消えた。

 

 談話室に残ったのは、しんとした静寂だけだった。

 三人は顔を見合わせると、そろって暖炉の縁へ身を乗り出した。中を覗き込んでも、そこにあるのは白く冷めた灰と、黒く燻った薪だけ。

 もう、シリウスの姿はどこにもなかった。




炎のゴブレットの暖炉のシリウスの顔の演出が良すぎたので、原作のフルーパウダ―の原理とは違うと思いますが映画版を採用しています。
ちなみに、このまま順調にいけば、おそらく二章完結まで十話切っています。

犯人は毛利ロミ郎!

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切実に燃料をください。エタる確率が低くなります。沢山の感想ありがとうございます。感想をください。私の主食です。
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