お前もニフってる?   作:HLNF会長

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第五話 裏切りのカムカムキャンデー

「あなたという人は……! なぜシリウス・ブラックに殺されたと嘘をついて、ロナルド・ウィーズリーの下に潜んでいたのですか!!」

 

 マクゴナガルが額に血管を浮き上がらせ、見た事もないような剣幕で怒号をあげている。まあそらそうだわな。

 

 俺がスキャバーズをダンブルドアに献上したあと、睡眠薬の効果が切れ今にも死にそうな顔をしているスキャバーズをマクゴナガルがインカーセラスで縛り、ダンブルドアがレベリオで動物もどきの魔法を解いた。

 

 慌てて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん。案の定現れたのはみすぼらしい身なりのピーター・ペティグリュー。

 

 マジでさあ、場って凍るものなのな。初めて見たぜ俺。マクゴナガルもダンブルドアも絶句してたもん。

 スキャバーズってパーシーが一年生の時からずっと飼われてたからマクゴナガルも知ってたわけ。つまりこの不審者はず~っとウィーズリー家をだまし、いたいけな子供たちの近くにいたってわけになる。

 文章に直すとめちゃくちゃ犯罪チックじゃねーか。ペティグリューもうちょい潜伏先どうにかなんなかった?

 

 凍り付いたのはダンブルドアとマクゴナガルだけじゃなかった。校長室の壁にかけられていた歴代校長の肖像画たちも俺たちの会話を聞いていたのか、ペティグリューが出てきたと同時にみな悲鳴を上げた。いまはマクゴナガルと一緒に罵声を浴びせている。

 

 ダンブルドアが今魔法省から役人を呼んでいるところだ。ウィーズリー家にもダンブルドアの守護霊が行ったそうだし。

 ピーター・ペティグリューが自分の死を偽装して逃げおおせていたということは、十二人のマグル殺害及びポッター夫妻の殺害幇助でぶち込まれていたシリウス・ブラックの冤罪も考えられる。

 多分ここまで一瞬で考えたんだろーな。っぱスゲー頭いいぜこの爺さん。

 

「ま、マクゴナガル先生……私はシリウスに殺されそうになったのです。信じてください。私は逃げたあと、い、今の今まで記憶喪失で……」

「だまらっしゃい! 憂いの篩を使えば分かることです!」

 

 マクゴナガルがぴしゃりと言い放った。確かにな。憂いの篩を使えばイッパツだわ。んで提案なんだけど、それルシウス・マルフォイにも使ってみない?

 

 まあいいや、取り敢えず十数分したら魔法省の人は橋のところに姿現ししてくるってよ。俺見たい。スーパーエリートたちが苦も無く一斉に姿現ししてくるの。カッコよくない? 見ちゃダメ? ここにいろって? はいよ。

 

 俺はもう一つ気になったことがあって、マクゴナガルのもとに走って彼女のガウンをくいくい引っ張った。

 

「はい!!!!」

 

 マクゴナガルが怒りそのままにこっちに顔を向ける。俺だと分かると少しは落ち着いたようだったが、髪は振り乱しているし息もままならないのか肩が上下している。そんなに怒るとあんたの身体に毒だぜ。

 

 俺は腹の袋から先程のミニ眼鏡と赤毛のヅラを取り出し校長室の扉を指さした。

 

「……ポッターと、ウィーズリーを呼んでくると?」

 

 俺は頷く。マクゴナガルは少し考えて、口を開いた。

 

「この件は大人だけで片付けます。彼らに()()を見せるのは……」

 

 あ、遂にペティグリューをコレ呼びし始めた。話してるうちに彼女はペティグリューが完全に黒だと確信したんだろう。

 

 マクゴナガルはハリー達をこの場に呼ぶつもりはないらしい。でもよお、後であの子たちに話すとしても絶対拗れるぜ? 目の前で見せちゃった方が早いって。多分シリウスも釈放されるし。

 

 俺はダンブルドアの方を見た。ダンブルドアは魔法省に連絡した後、ずっと執務机の椅子に座って険しい顔で考え事をしている。おーい、ダンブルドアはどう思うー?

 

「ハリー達もこの場にいた方がいいじゃろうな。特にハリーは……シリウスの件がある」

 

 俺らの視線に気が付いたのか、ダンブルドアが口を開いた。

 マクゴナガルはまだ迷っていたみたいだったが、俺がマクゴナガルのガウンを引っ張ると、しぶしぶついてきた。

 

 ペティグリューの横を通る時、あいつは俺のことを呆気にとられたように目で追っていた。ぽろぽろと涙を流している。その涙の意味は分からなかったが、俺は瞳の奥に、ジェームズの親友としてのアイツの片鱗を見た。

 

 ゴメンな……でもしゃーねーだろ。

 お前がハリーの両親に引導を渡しちまったんだからさ……。

 

 俺はあいつから目をそらして、マクゴナガルと共にハリーを呼びに行った。

 

 まあアズカバンに行っても、ハリーに隠れて俺が差し入れしてやるよ。甘いものとか。ちゃんと罪を償うんだぜ。

 

 

 深夜だというのに、廊下の絵画たちは皆ひそひそと話し合っていて、俺たちの姿を認めると「ミネルバ、ほんとか!?」などと話しかけたりしてきた。勿論マクゴナガルはフル無視だったけど。TPO弁えてくれよな、まったく、やれやれだぜ。

 

 途中人でも殺しそうな眼をした早足のセブルス・スネイプや、焦った顔で話し合っている駆け足の闇払い集団とすれ違った。

 闇払いの中で一番偉そうなやつはマクゴナガルと一言二言話していて、どうやら魔法大臣のコーネリウス・ファッジも飛び起きてダンブルドアの守護霊と事実確認を行っているらしい。魔法界に走ってるなー、激震。俺ここまで大ごとになるとは考えてなかったぜ。

 みんなマクゴナガルの肩にいる俺にハテナマークしてたけど、俺この件の立役者だぜ?

 

 グリフィンドール寮の入口に行くと、どうやら寮の合言葉を忘れてしまったらしいネビルが太ったレディの肖像画の前で寝ていた。マクゴナガルは寝ぼけたネビルを叩き起こして、寮の中に入る。

 

 談話室にはハーマイオニーがカウチに寝ていた。おいおいなんでこんなに生徒が落ちてるんだ。こんなとこで寝てちゃ風邪ひくぜー。

 こちらもマクゴナガルが素早く叩き起こしていたが。素晴らしく寝起きの良かったハーマイオニーはマクゴナガルにどもりながら謝って、女子寮の方に逃げて行った。

 

 マクゴナガルは男子寮に入ると、妙に寝起きの良かったハリーとロンをすばやく連れ出した。二人とも自分たちが何かやらかしたのかと顔が強張っていたが、罰則じゃないと知ると肩の力を抜いていた。安心するにはまだ早いぜ……特にロンの方。

 

 

 俺あんまシリアス好きじゃないんだよな。だから校長室にハリー達が入ったときのぴんと張り詰めた空気で疲れちゃった。

 さっきマクゴナガルと話してた偉そうな闇払い、名前スクリムジョールっていうらしいぜ。たしかファッジの後の魔法省大臣じゃねえか! その隣にはキングズリーいるし! スネイプもいるしオールスターだ! サイン貰いたい。

 

 

 ダンブルドアがハリー達にはじめから状況説明をしている。その後闇払い達も含めてペティグリューのことも話すんだろう。

 俺はハリーの肩の上で、さっき寮から取ってきたティッシュをせっせと良い感じの大きさに丸めていた。え、なんでそうしてるかって? ペティグリューが見苦しいこと言い始めたらハリーとロンの耳を塞がなきゃだろ?

 

 ハリーとロンの様子を見てみると、ハリーは呆然、ロンは絶望って感じだ。まあ話されている内容なんて今の今まで知らなかったことばっかだもんなぁ。ロンのパジャマから覗く手には鳥肌が立っている。

 話している途中でロンの両親のアーサーとモリーが静かに入ってきて、モリーはペティグリューを一目見た瞬間飛びかかろうとしてアーサーに止められていた。

 

 

 アカン、シリアスが重すぎる。俺ァ明るいパーティーの方が好きなんだぜ……。頭使わなくても楽しめそうなビンゴ大会とかやろうよ……。

 

 耳に入れようとしなくてもあまりにも重い話が続く。

 ハリーの肩から降りて、試しにスクリムジョールの方に行ってカムカムキャンデーの入った器を差し出してみた。厳格な顔のまま無言で断られた。俺はキングズリーたちのとこにも行ったけど、ふつーに断られてしまった。

 スネイプ? 俺まだ4ヶ月しか生きてない。命が惜しい。

 

 オーラーが駄目ならダンブルドアだ。俺はそそくさと床を走り、ダンブルドアのところまで行って、カムカムキャンデーの入った器を掲げた。

 ただ一人重厚な椅子に座っていたダンブルドアだったが、俺の方を見て少しばかり考えた後、器に手を突っ込んで数粒ばかし口に放り込んだ。カムカムキャンデーは大人しく食べられている。俺は二度見した。

 

 え、なんでお前ら噛まないの。俺には噛んできたじゃん。

 

 器の中にお行儀よく収まっているカムカムキャンデーを信じられないとでも言うように凝視していると、またカムカムキャンデーが俺に飛びかかってきた。

 あまりの痛さに転げまわっていると、今度は近くにいたスクリムジョールが俺を魔法で助けてくれた。

 お前いいヤツなのな。俺にこれ以上なんかさせない様にと杖腕じゃないほうで俺の首輪を持ってるから、俺のからだはぶらーんとしてるけど。

 

 

 話聞いてなかったから良く分からんけど、ペティグリューは魔法省に送られることになったらしい。なんでもシリウスの冤罪裁判と並行してこいつの裁判をするとか。

 

「ま、待ってくれ。なあハリー。君のお父さんとは親友だったんだ……ジェームズならこんなことはしない……仕方なかったんだ……たのむ……」

 

 お、しょーもないこと言い始めた。見苦しいぜオッサン。

 

 俺は身体を捻ってスクリムジョールの拘束から逃れると、腹の袋の中からでっかいハリセンを取り出した。そう、あのハリセン。紙のやつね。今日の晩飯の時に一人ケージに籠ってワクワクさんしてた時に作ったんだよこれ。

 

 助走をつけてハリセンで思い切りペティグリューの頭をはたく。

 

 ごおん。

 

 のっぺりとした長閑な金属音が部屋に響き渡った。

 念のためにこのハリセンに平べったい鉄板を仕込んだかいがあったぜ。ペティグリューはしっかりのびている。

 

 俺が勇者の剣を掲げるようにハリセンを持っていると、後ろからハリーが来た。

 

「ちょっと貸して」

 

 え、あ、はい。

 

 ハリーはこのハリセンを思いっきり振りかぶり、ペティグリューの頭に振り下ろした。

 

 あ〜、いい音したぜ今。今のはあとから響くやつだ。

 

「絶ッッッッ対に許さないからね」

 

 見上げてみると、ハリーの目が完全にキレていた。

 後ろからモリーも参戦しようとしていたが、アーサーと闇払い達に止められていた。あんたの腕力じゃたぶんペティグリュー死んじゃうのよ。スキャバーズの真実に絶句していたロンまでもがモリーを止めていた。

 

 そんなこんなでペティグリュー実は生きてました事件は終幕を迎えることになる。俺も当分シリアスに怯えることはなくなりそうだぜ……。

 

 シリウスがもし無罪になったら、ハリーに会いにホグワーツに顔を出すだろうということだ。

 

 ハリーの隣に立った俺は、とても満足げな顔をして頷いた。これでハリーにも家族が帰って来るんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が手をかけていたのは、いち力なき魔法生物が開けてはならない————パンドラの箱だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……やっぱ俺シリアス向いてねぇよな。慣れねぇことはするもんじゃねえ。やめだやめだ。蛙チョコ食べてこよ。




多分スネイプは誰かに表情を見られない様に、死ぬほど気配を消してます。
なぜって? 分かるでしょ。


来週のロミオさんは

・シリウス、シャバに出る
・ニフラー軍団の鍛錬
・ロミオ、捕まる

の三本です。


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切実に燃料をください。エタる確率が低くなります。沢山の感想ありがとうございます。
いつまでもこんな更新頻度が続くと思うな!(訳:忙しいので更新が遅くなります)
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