お前もニフってる?   作:HLNF会長

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第八話 デキるニフラーの一日①

 

 

 本日はインタビューをお受けして下さりありがとうございます。アメリカからの道のりはどうでしたか?

 

 ———ヨーロッパはニフラーの群生地が多数ありますから、研究がてら汽車を乗り継いできましたよ。アルビノの個体にも何体か遭遇しまして、データを取ってきたところです。

 

 アルビノ? それは凄いですね。野生下ではほとんど見られませんから。最初に確認された個体は、ニュート・スキャマンダー氏が育てていた1975年のスウェーデン種のニフラーと言われていますし。

 

 ———詳しいですね(笑)

 

 失礼しました、この出版社に勤めてから、書いているのはニフラーの記事ばかりだったもので……。

 

 ———私も何回かあなたの記事は読んだことありますよ。

 

 本当ですか? いやはや、嬉しいですね。 (中略) では今月のテーマ、“デキる魔法生物特集”ということで、アメリカのバークリー魔法生物研究所からお越しいただいた、ニフラー研究家のジャクソン・サモンド氏にお話を伺っていきたいと思います。よろしくお願いします。

 

 ———よろしくお願いします。

 

 早速ですが、サモンド氏にとっての“デキるニフラー”とはどんなものなんでしょうか?

 

 ———難しい質問ですね。魔法生物学論で言うところの、所謂(いわゆる)“優能種”というものでしょうか。

 

 優能種、ですか?

 

 ———ニフラーには俊敏性が優れていたり、腹部の蒐集袋が検知不可能なほどまで広がっていたりする個体が稀に存在するんですね。特に純金を見分ける特性を持つニフラーはすでに人為的な繁殖が試みられており、エジプトの金商人の間でよく飼われています。

 

 なるほど、先程おっしゃっていたアルビノ個体もそうですか?

 

 ———本当によくご存じですね(笑) その通りです。染色体の関係などから見た目が違う種も優能種に分類されています。また、巻き毛か直毛か、というような分類方法も近年では研究されています。過去の文献を見ていると、巻き毛で毛色が明るいニフラーがマジョリティーだったわけですが、何百何千年もの間に生態系が変化し、今現在主流と思われている直毛で暗い毛色のニフラーが生まれたのだと言われています。

 

 つまり、暗い色で直毛のニフラーの方が優性遺伝子を持っていると?

 

 ———その通りです。去年学会で物議を醸したパフスケイン問題と同様ですね。しかし今回この誌では、ニフラーの身体的な特性ではなく、彼らの内面部分に注目して話したいと思います。

 

 ニフラーの内面部分、ですか?

 

 ———皆さんご存じの通り、ニフラーは頭がよく、活発で、ユーモアがあり、光物が大好きな魔法生物です。そして他の数多くの魔法生物と一線を画する部分が、“趣味がある”という点です。

 

 確かに、趣味がある魔法生物はあまり見ませんね。

 

 ———その趣味というのも非常に多岐に(わた)り、人間に飼われているニフラーは人間の趣味を真似したりすることがあります。事実うちの研究所でも、休日にはサウス・ビーチに行って日光浴するニフラーがいます。あくまで頭の良い個体ですがね。

 

 日光浴ですか(笑)

 

 ———ええ。だからもし、“デキるニフラー”というものを私が想像するとしたら、“デキる人間”と同じような基準で考えてしまうでしょうね。例えばそう、朝早くに起床し、経済紙片手にコーヒーを飲むような……

 

 

 『月刊ファンタスティックな隣人たち 十月号』より抜粋

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステップ1 デキるニフラーは朝早くにシャワーをし、身だしなみを整えるべし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ババンババンバンバン。ア~ビバノンノン。

 グリフィンドール寮、ハリーのベッド下のケージ、バスルームにて。

 俺はシャンプーハットを被りながら、あわあわが溢れるバスタブで鼻歌を歌っていた。現在時刻は六時半。普段の俺なら絶対に起床するはずのない時間帯である。人間用の歯ブラシで背中や足裏をゴシゴシと擦り、汚れを落とす。

 

 シャンプーなんだかボディソープなんだかよく分からない石鹸で体を洗い、リンスをした後、俺はバスルームの扉付近にあった大型のドライヤーで身体を乾かした。ぶるぶると身体を震わせて水気をきる。

 

 つーか普通にこの巣、性能良すぎるだろ。なんだよ、備え付けのドライヤーって。レベルの高いシルバニアファミリーやってるみたいな感覚。

 どうやら調べたところによると、このケージはアメリカで発売されていた富裕層向けのニフラー育成ケージらしい。エドワードのおっさんほんとにもってけドロボーしたんだな。帰省するときなんか持って行ってやろーっと。

 

 俺はぼわぼわした毛並みを櫛で整えつつ、ジョージ・ウィーズリーの瓶から拝借したヘアー・ワックスで頭の毛を撫でつける。俺の頭頂部には若干つむじのようなうずまきがあるので、沿うように、だ。ここポイントな。

 

 俺は次に衣裳部屋に向かった。スリザリンの貴族のやつに貰った高級そうなデザインの靴の空箱を開けて、中に入った首輪を物色する。俺は悩んだ挙句、黒いリボンのついた首輪をはめた。鏡の前で軽くポージングする。

 ハリーってばこのケージの内装は知らねえんだけどよ、多分俺はこのホグワーツで誰よりも豪勢な生活を送ってるよな。個室だし。

 

 俺はひとしきり身支度を整えると、寝室にある毛布類を持って巣から顔を出した。今のところハリーの寮部屋の人間はまだ起きていないらしい。もうすぐで朝ごはんの時間だっつーのに、仕方ねえやつらだ。

 

 俺は毛布をずりずりと引き摺って男子寮の階段を降りた。既に起きていたハーマイオニーが、談話室のカウチに座って本を読んでいる。俺がよっと手をあげると、ハーマイオニーが俺の頭を撫でた。まだハリーやロンと仲良くなってないっぽいんだよな。

 なんだっけ、トロールの時? 仲良くなんの。

 

 俺は談話室の隅に置いてあったバスケットに毛布を入れた。

 ここに置いておくとさ、綺麗になって返ってくんの。屋敷しもべ妖精がめちゃくちゃいい匂いにしてくれんだよな。“ろみお”と名前の書かれた毛布を何枚かバスケットに投げ込む。

 

 身軽になった俺はそのまま寮の部屋に戻って、ハリーを起こすことに決めた。隣のロンのベッドの天蓋によじ登って、上からハリーの心臓辺りを狙って飛び降りる。

 

 

 お、すごい声。ハリーが悶絶し始めた。

 

 勿論安全に配慮してるぜ。ハリーは特殊な訓練を受けてるからな。身体が小さかった入学式の時からほぼ毎朝やってるもん。

 

「……ロ、ロミオ……」

 

 ハリーが薄目を開けて俺を睨んだ。もうすぐ朝ごはんだぜ。

 ハリーは俺を引き寄せて、俺のお腹に顔を埋める。

 

「いいにおいがする……お風呂入った?」

 

 怖いってお前。なんでわかるんだよ。

 

()()、ロンにもやってあげて」

 

 ゴシュジンサマがそう言ったので、俺は仕方なくロンにもダイブをかましてあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステップ2 デキるニフラーは朝食も優雅にとるべし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を食べる時間になった。

 俺とハリーとロンは、グリフィンドール寮の端の方に座った。二人は寝ぼけまなこを擦りながらカトラリーを取っている。俺はパーシーからブラックコーヒーのボトルを受け取って、グラスにちょびっと入れてみた。

 

「あれ、ロミオって苦いもの食べられるの?」

 

 あ、気付いたぁ? ロンが驚いた顔をしている。「確か無理だったはずだけど」とハリーは返した。

 俺はな、今日もう一回試してみようと思うんだ。カッコイイ大人ってだいたいブラックコーヒー飲んでるだろ?

 

 俺が、くちばしに触れるか触れないかのところまでグラスを傾ける。

 

 

 まっっっっず!!!!!!!!!

 

 

 俺は思わずペッと吐き出した。こんなのドブだドブ。飲み物なわけがねえ。

 俺はパーシーをバケモノのように見ると、コーヒーが底に薄く張っているグラスにミルクをなみなみと注いだ。ガムシロップも勢いよく入れる。カフェオレで我慢しておこう。

 あ、パンケーキにもメープルシロップかけよっと。

 

「ロミオ、それ最早コーヒーじゃないよ。甘い牛乳だよ」

 

 マドラーで氷をガラガラとやっている俺にロンが茶々を入れた。だまらっしゃい!

 カリカリのベーコンとスクランブルエッグをハリーが皿にのせてくれたので、ありがたくいただく。成長期なのか何なのか知らねーけど、めちゃくちゃ身体が大きくなってきたんだよな、ここんところ。

 ペットボトル出してみろよ。

 俺、それと大体身長一緒だから。

 ハリーと会った時は文庫本くらいの大きさしかなかったんだけどな。

 

 食べ終わると、俺は最近読み込んでいた魔法薬学の本をいそいそと取り出した。最近薬草学の温室に入り浸りスプラウトの手伝いをしたり、ハグリッドに交渉したりしたおかげもあって、やっと昨日“おできを治す薬”の材料がすべてそろったのだ。今日作ろうかなって思ってる。

 

 “おできを治す薬”っつーのはハリー達が最初にスネイプに教わったやつな。

 ホント、ハリー達は材料があらかじめ用意されていることをもうちょっとありがたがるべきだと思うんだぜ。俺ここまでに二週間以上かかってるし。

 え? スネイプのところから盗めって? お前本当にニンゲンか?

 

 ちなみに俺はもうこの教科書を三回は読み込んでいる。薬草学に至っては五回も読み返した。寝る前の読書とかでな。俺ハリーよりもはるかにできる事がすくねーし、使える時間も多いから、その分一点集中になるんだよな。

 そのせいでスプラウトにはめちゃめちゃ()()()ニフラーだと思われてるけど。

 ハリーからは「ロミオの飼い主だからと期待をされるけど、正直カンベンしてほしい」と苦情を貰った。ハリーに宿題を教える日も遠くねえかもしれねえ。

 

 そんなことを俺が考えていると、大広間の上の部分にある窓からフクロウたちが一斉に飛び込んできた。朝の配達の時間だ。

 俺は日刊予言者新聞のフクロウに袋から小銭を取り出してお駄賃をやると、新聞を一本貰った。

 ハリーも最初は俺が勝手に金を払っていることに険しい顔をしたが、俺が金を使うのは『月刊ファンタスティックな隣人たち』と日刊予言者新聞、通販で買った本ぐらいしかないので、今では大目に見ている。いい飼い主だぜ、まったくよォ。

 

 俺はカフェオレ飲みながら、ニュース欄を見ていく。そーいえばさ、九月の初め頃? かな? に、クィレルがグリンゴッツに盗みに入った事件があったじゃんか。賢者の石目的で。

 あの記事ハリーは見たっぽいぜ、ハグリッドの小屋で。ハリーはシリウスに手紙を書くべきか結構悩んでたっぽいけど、結局やめたみたいだ。

 

 お、アメリカカンザス州でサンダーバードの被害多数だって。タイヘンだな。

 

 シリウスの冤罪問題もすっかりブームが過ぎ去ったらしく、日刊予言者新聞が大人しい記事ばかり書いている。つまりは魔法界は平和ってこった。

 

「シリウス!」

 

 ハリーが唐突に叫んだ。あのなハリー、ここにはシリウスはいねーんだぞ。会いたい気持ちが高じて遂に幻覚でも見るようになったのか?

 あの日から欠かさず週三で手紙を送りあってるもんな。高頻度過ぎて怖いよ俺。

 

 ハリーが手に持っていた手紙を俺とロンに見せる。

 

「シリウス、闇祓いになるって!」

 

 

 ふーん……ふーん!?!?!?!?!?!?

 

 俺は飲んでいたカフェオレを吹き出した。




おまけのはずが二部構成になってしまった。

「トムとジェリーみたい」という感想が散見されますが、“ロミオ”という名前が思いつく前は“ジェリー”だったので、感想を見たときは心当たりがあり過ぎてドキドキしました。
トムジェリのノリで見ていただくのが正解だと思います。

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切実に燃料をください。エタる確率が低くなります。沢山の感想ありがとうございます。
いつまでもこんな更新頻度が続くと思うな!(訳:忙しいので更新が遅くなります)
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