お前もニフってる?   作:HLNF会長

9 / 33
第九話 デキるニフラーの一日②

 

 

 

 

 

 

 

ステップ3 デキるニフラーはバリバリと仕事をすべし。

 

 

 

 

 

 

「では皆さん、これから実習に入っていきます。ロミオ、耳当てを配って」

 

 スプラウトが後ろにいた俺へ振り向いた。イエスマム! 俺は俺よりも何倍も大きい箱を持ち上げながら生徒たちのテーブルをまわっていき、生徒たちは箱から一つずつ耳当てを取っていった。

 

 そう、今はマンドレイクを扱った薬草学の授業中。俺はポモーナ・スプラウトの助手として、二年生の授業に潜り込んでいるのだ。

 生徒たちの前には大き目な鉢がひとつ置かれており、今からスプラウトがマンドレイクの鉢替えを実践してみせるところだった。

 

 マンドレイクはどえらい泣き声をあげることで知られている魔法植物だ。勿論俺も耳をつぶされない様に耳当てをしているし、なんだか最近用意されていたスプラウトと同じデザインのエプロンと手袋もしている。

 

「じゃあ耳当てをしなさい! 絶対に聞こえないように! 耳の穴をしっかりと覆って!」

 

 スプラウトは自分のつけている耳当てをバフバフと叩きながら叫んだ。

 

「よーし、皆さんつけましたね? 正しくつけていたなら、この言葉は聞こえないはずです」

 

 スプラウトは俺の方をちらりと見た。

 俺はスプラウトの机の下からカンペを取り出し、生徒に掲げる。

 

 “マンドレイクの鉢替えをします。まずこの鉢替えにおいて一番大事なことは、耳の保護です。何故なら、マンドレイクは土から引き抜かれた際、人間であれば死に値するほどの鳴き声を放つからです。”

 

 またぺらりとめくる。

 

 “今回はまだ苗の状態なので、声を聴いても生命に関わるようなことにはなりません。ですが、数時間ほど気絶する可能性があります。”

 

 “では実践です。”

 

 スプラウトが一気にマンドレイクを引っこ抜いた。耳当てをしていても鼓膜を震えさせるような甲高い悲鳴が聞こえる。

 

 あ、生徒が一人倒れた。

 

 俺がその生徒に近づいて頬を強くぺしぺしと叩くも、返事がない。完全にノックアウトされている。

 スプラウトが頷いたので、隣の生徒と一緒にその生徒を保健室に連れて行った。うーん、重労働だぜ。まあこれも薬草の為だ……。動く階段のアップダウンにぜえぜえ言いながら、俺は生徒を保健室に誘導した。

 

 

 一時間半の薬草学の労働を終わり、俺はスプラウトの温室の隅でいそいそと大鍋を取り出した。話を通して、スプラウト監修の下この中で大鍋を使うことを許されたんだ。

 色々と道具を用意していく。アルコールランプとか、秤とか。

 でもやっぱ魔法薬学の教室よりは快適さは劣るかもな。

 

 ひとしきり授業の後始末が終わったスプラウトは手袋をはずすと、後ろで俺の動きを眺め始めた。

 

 先生に見ててもらえるならもうちょいむずかしめな薬に挑戦すればよかったかな。薬草学はやはり魔法薬学に通ずるところが多いのか、スプラウトもなかなかの魔法薬学の使い手と聞いた。

 

 ん? 俺の腕前はどうかって?

 まあ少なくとも教科書を何回も読み返してるから一年生みたいなヘマはしねぇと思う。

 

 あと、俺ってば料理得意だからよ。マジ前世の記憶か何なのか知らねーけど、滅茶苦茶料理が上手い。包丁の手さばきとか調味料の混ぜ具合とかのスムーズさが完全にロミオの美味しいレストランだもん。

 俺の作るナポリタンはホグワーツの屋敷しもべ妖精にも負けねーってもっぱらのウワサだぜ。

 

 だからって訳でもねーが、多分俺魔法薬学は得意なんじゃないか? だってあれほとんど材料切って鍋かき混ぜてるだけだろ?

 

 俺は早速作業に取り掛かり始めた。

 

 まず、蛇の牙をごりごりすりつぶし、秤で重さをはかる。

 蛇の牙は俺自身で調達しようと思ったんだが、野生の蛇って滅茶苦茶つよいのな。禁じられた森で一進一退みたいな攻防を二十分ぐらい繰り返す羽目になったから、素直にハグリッドに貰いに行った。

 こんなとこで生命の危機を感じてる場合じゃない。

 

 んで、鍋で熱する。次に入れるのは角ナメクジなんだけど、キャベツを角ナメクジに荒らされていたらしいハグリッドの手伝いをして六匹もらった。

 

 鍋を一旦火からおろす。んで、ヤマアラシの針を入れるんだ。

 ネビルは多分これを火からおろす前にヤマアラシの針を入れちまったんだろーな。ヤマアラシの針っていうのは沸騰した水の水泡に触れると急激に効果が強くなってしまう性質があるから、それで大ごとになったんだろう。

 教科書の後の方の材料一覧みたいなとこの効能にのってた。

 

 ちなみにこのヤマアラシの針はスプラウトからのものだ。こうやって見てみると色んな人から貰った材料ばっかだなホント。

 無人島に村作ってる奴らみたいに至極のラーメン作るわけじゃねーんだからよお。一人一人材料を貰いに行くなんてとんだ一苦労なんだわ。この針をどんだけ探し回ったことか……。

 

 俺が鍋をかき混ぜていると、マクゴナガルもいつの間にかこの温室に来ていたようで、スプラウトと一緒に「ああ、後もうちょっとかき混ぜる!」だの「左にあと一回転半!」だの後ろでゴチャゴチャ野次を飛ばしている。

 

 じゃ、じゃかあしい!

 俺は額に光る汗を二の腕で拭いながら鍋をかき混ぜた。最後に干しイラクサを入れて完成だ。

 ピンク色の煙がもくもくと上がったので、恐らく成功だと思う。

 

「成功ですね。少し乱雑さは見られますが、なかなかいいセンスをしているのでは?」

「そうね、手際が良かったわ」

「ニフラーが魔法薬学を学ぶとは、私も想像していませんでしたよ」

 

 机にぐでーんと伸びている俺の横で、魔法薬学O優を取った天空人二人がなんか言っていた。

 

「しかし、ここでずっとやらせるのも厳しいでしょう。セブルスに言って魔法薬学の教室を使わせてもらうというのは……」

 

 マクゴナガルがそう零したので、俺はすぐさま起き上がってブンブンと首を振った。藪蛇だ。絶対ロクなことにならないに決まってる。そしてしわ寄せがハリーにいってハリーも死ぬ。

 

 「そ、そうですか?」と不思議がっている二人に深く頷いて、俺は片づけを始めた。もしここが使えないときは裏庭でやろう。それか厨房を貸してもらうんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステップ4 デキるニフラーは群れのボスとして縄張りを見回るべし。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、もう行くの?」

 

 ハリーがチキンのトマト煮をナイフで切りながら俺に言った。昼食の時間だ。

 俺はスモークサーモン・サンドイッチをもぐもぐと食みながらグッと親指を立てる。薬草学のアシスタントが終わり、魔法薬を作り終わった後、俺が次に向かうべきはニフラー軍団を率いての探索だった。

 

 グリフィンドールの長机を皿を避けながら縦断し、大広間の扉の方に向かうと、既に他のニフラーが集合していた。副ボスである頭のよさそうな黒色の毛並みのニフラーが身体を低くすると、他のニフラーもそれに続く。尊敬の礼だ。

 うむうむ、くるしゅうない。手をひらひらと振りながら近づく。

 

 今日はホグワーツ城の旧水道管を伝っての探索だ。

 元々ナワバリ意識というものが強いニフラーの群れだが、俺らは禁じられた森の日の当たるところから、ホグワーツ城、裏庭、城前の橋、黒い湖くらいまでを自分たちのナワバリとしている。けっこー広い。

 生後一年にも満たない若いニフラーが大多数を占めているので、経験作りと安全確保のために俺が帯同して全員で見回っているのだ。

 まあこんな感じでしっかりやるのは初めてで、今までは厨房で盗み食いとか適当なことしかしてなかったんだけど。

 

 マグル学の近くの壊れたフタから旧水道管に入る。旧水道管っていうのは、もう使われなくなった水道管のことな。なんも流れてない空っぽの管だ。城のあらゆるところに繋がってるから、今まで行けてなかった場所に行けるかもしれない。

 

 俺は小手調べとして、地上階を一通り回ってみることにした。

 途中で行ったことのない部屋に着いた。

 

 なんかよう分からんけど頭が三つのでっかい犬がいた。

 

 

 

 アカーーーーーン!!!!!!

 

 退避だ! 退避退避!!!!!!!

 

 そっか! 四階だっけ! 行っちゃいけない部屋! 見た事ないって? そりゃそうだわな! 封鎖されてるもん!

 

 寿命が十年は縮んだぜ。特に俺なんかチビたちを守らねーとだから、いや、マジでえぐい。副ボスの黒ニフラーと二匹でゼイゼイと息を上がらせている。動けなくなったチビを間一髪で運び出した黒ニフラーはひたすら文句を言っていた。

 え? なんでこんな城にあんな犬がいるのかって? アハハ、なんでだろうなあ……。

 

 

 俺たちは地下に目標を変えた。

 そういえば全然扉が開かない地下牢の方にも行ってみよう的なことになってよ。今思えば、開かないんじゃなくて()()()()()()()()()()()の方が正しいのな。

 

 今度は万全を期して、俺と副ボスの黒ニフラーだけが部屋を覗いてみることになった。頭だけひょっこりと出してみる。

 

 

 なんかよう分からんけど棍棒を持ったトロールがいた。

 

 

 

 アカーーーーーン!!!!!!

 

 退避だ! 退避退避!!!!!!!

 

 そういえばハロウィーンまであと三日だもんね!!!!!! クィレルここに隠してたのかな!!!! 近くを探索した時何も聞こえてこなかったから防音魔法とかかけてるのかな!!!!

 

 俺たちはすぐ頭を引っ込めたが、その一秒後俺の頭があったはずのところに棍棒がズガン、と到底物から出たとは思えない音を立てて振り下ろされていた。

 俺と黒ニフラーはお互いを抱きしめながらガクガクと震えている。え、えれえ事じゃ……災厄じゃ……。

 

 今後絶対に旧水道管には入らないようにしような、と固く群れの中で決意しつつ、俺たちはさっさと帰るために地上を目指した。

 

 

 背中が粟立つような感覚があった。

 

 なんて言えばいいのかな。ニフラーの群れのボスとしての野生の勘? なにかとんでもない恐怖が俺たちに近付いているような感覚があって、俺はすぐさまニフラーたちを小さな管に隠れさせた。

 

 背中にチビたちを庇うようにして息を殺す。

 

 俺たちが通っていた大きな管を、ズルズルと鋭い鱗を持った巨大な生物が通った。シュルシュルと口元から音を立てていたような気がする。

 

 なんか、蛇みたいな.....。

 

 

 

 アカーーーーーン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハリー・ポッターが寮の自室のベッドに座り本を読んでいると、勢いよく音を立てて部屋の扉が開いた。どことなく乱雑さを感じるその音にハリーが目を向けると、彼のペットであるニフラーのロミオが肩をいからせズンズンと近付いてきている。

 

 どうしたんだろう? とハリーは思ったが、取り敢えず様子を見てみることにしたらしい。

 ロミオはハリーのベッド脇のクローゼットを開け、『月刊ファンタスティックな隣人たち 十月号』を取りだして、手に持ったそれをビリビリに破き始めた。

 

 丁度“デキるニフラー特集”をやっていた回で、ロミオも気に入り何度も読んでいた記事ののった雑誌だとハリーは思っていたが。

 

 ロミオはビリビリに破いた雑誌の上をジャンプして踏みつけた後、唾液を飛ばさんばかりに残骸を威嚇し、ぷりぷり怒ってケージの中に入り、これまた勢いよくバタンと蓋を閉めていった。

 

 ハリーは目を大きく開いて呆然とした後、ロミオの残していった雑誌の切れ端のひとつを拾い上げた。

 

“ステップ5 デキるニフラーはスポーツにも大いに励むべし。”

“ステップ6 デキるニフラーは友人とお茶を楽しむべし。”

 

 と書いてある。

 

 ハリーが見たあのロミオが、中庭でブラッジャーに追いかけられ、ハグリッドにロックケーキを振る舞われたあとだということをハリーが知るのは、翌日のことであった。




ロミオの好きな食べ物はジェラートとエビの入ったピラフです。
得意なことは水泳と料理、苦手なことは習字と地道な努力。
趣味は色々なことに手を出すこと。
薄いグレーに黒いぶちの体毛をしており、金色のタグのついた赤色の蝶ネクタイの首輪がお気に入りです。

色々な場所でハリポタ二次を書いていますが、ハーメルンでは『Elementary, my dear Harry.』『ヘスティアの灯火』を書いています。匿名投稿なのは各作品で名前と作風を変えたいからです。無事全てエタってます。

お気に入り登録・感想・評価を頂けると喜びます。
切実に燃料をください。エタる確率が低くなります。沢山の感想ありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。