はい!こちら『愛に溢れる探偵事務所』です!   作:枯華院 清日

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星に願いを

 

 

 

 

 

聞いたことが無い人の方が少ないお話。

 

流れ星に願い事をすると叶う。

 

西洋、東洋、日本でも信じられる噂話。

過去の日本や中国では地雷(つちいかづちと言う、近代兵器ではない)とされ凶兆でもあったが。

いつしか願いを叶える良い物とするようになった。

 

また、西洋の一部地域。バルト海沿岸から中部ヨーロッパでは人の命と共に流れ落ちる物とされてもいる。これは中国の三国志に明るければ馴染み深い話かもしれない。

 

それはさておき。

 

都心に位置する、とある病院の一室。若いうちから病を患う少女が一人、流れ星に呟く。

 

「みんなのお願いが叶いますように」

 

略称はALS、筋萎縮性側索硬化症と診断されている。徐々に体の末端から動かなくなり、筋肉は衰え、次第に全身へと症状が広がって呼吸不全に陥る。個人差はあれど、そういうものだと聞かされていた。

 

難病指定されている事は伊達ではなく、有効な根治治療は行なえない。投薬やリハビリを行えど、明日どうなるかもわからない。

 

病の魔手は既に少女の足を奪っていた。

 

「みんなの願いが叶いますように」

 

病魔が去ることを願ってはいない。

 

身体を病に蝕まれてから長く、十余年と少ない人生の大半を病室で過ごしていた。

 

彼女が星に乞い願うのは、狭まった自分の世界の住人達への優しさ。病院関係者と、ほんの数歳上の保護者。しかも遠縁であるのに助けてくれている男性。

 

両親は数年前に死別している。事故死であった。今思い出しても胸が締め付けられる気持ちがするが、それでも周囲に助けられて生きてきた。

 

いつか、もしも、この病気が治ったら。

 

学校に行って、友達を作って、両親のお墓に自分の足でお参りをして。助けてくれた親戚のお兄さんと手を繋いでお出掛けして。病院の先生や看護師さんたちに元気になったよってありがとうを伝えたい。

 

その願いはまだ叶わない。

だからこそ。

それでも。

「…みんなの願いが叶いますように」

 

三度の祈り。

ほんの少しの幸運でも良い、みんなに良いことがありますように。

 

 

 

 

 

そして、少女の願いは聞き届けられた。

 

 

 

足が動く、手は自在だ。

少女は走った。

 

奇跡が起きたと兄か親のような彼に告げるため。

驚いて固まる看護師達の静止を振り切って。朝早くだからまだ寝ているかもしれないけれど、関係ない。

この喜びを伝えたい。

 

 

その日、ある少女は息絶えた。

 

 

街ゆく人々はそんな事を覚えてはいない。

 

 

 

 

 

 

 

ある日、多くの日本人は奇妙な存在に出会す。

 

影のような面頬、揃えて誂えたようにしか見えない黒装束。背中には刀、胸元に覗き見える鎖帷子。足には足袋。電車と並走する異常な身軽さ。

現代では一切忍べていないその姿はつまり。

 

忍者である。それもかなりコテコテの。

 

人々は驚き、写真撮影を試みた。

ビルの合間を縫うように飛び交う忍者を撮り、我先に承認欲求を満たす為にSNSに投稿しようと。

 

その日から不思議なことは増えていった。

最初は都心にだけ見られた忍者が各都道府県、市区町村にて散見されるようになったのだ。

事態はそれだけに収まらない。

 

実は著明な物が忍者だったというだけで、忍者以前から奇怪な現象・存在は少しずつ増えていた。

 

何故か金髪美形で耳の長い人間になる者。

身長が160代の男性に限り身長が60センチ程縮み、穴倉で生活するようになった者。

ある回転寿司チェーンの各店舗に出来た地下室とそこで挙って働こうとする死んだ目をした河童の群れ。

 

しゃっくりを百回してしまえば人は死に。

耳と首に視神経が突然発生することで混乱を極める医学会。

入れば二度と出られぬ、生態系から外れた怪物や物理的に殴れる幽霊の闊歩する迷宮と化した新宿・渋谷・梅田駅。

 

北海道に入れば試練が課され。

群馬に住む日本人は見知らぬ部族の姿となり。

大阪府と川崎市は独立国家として認められた歴史が生えた。

 

極めつけに超大型独立変形ロボ、名もなき都庁ロボ(※都民による名称公募中)が空を飛ぶ!

 

強いぞ都庁ロボ(仮名)!速いぞ都庁ロボ(仮名)!

いつになったらまともな名前と©が付くんだ!?

味方はでっかいホッカイオー©!

追加戦士は攻強皇國機甲©のロボだ!

今日も日本の平和を守ってくれ!!

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

あまりに脈絡なく突飛、意味不明な魑魅魍魎が縦横無尽に跳梁跋扈する日本。

事態を重く見た政府は。これもまたいつの間にやら存在していた秘密裏諜報機関による調査を行い、原因を突き止めた。

 

噂。

 

その一点、ただ一つが現実のものとなる。

そう結論付けた。

 

人の口には戸が立てられぬ。市井を闊歩する人々の口は塞げない。では情報の拡散と噂はどう防ぐか。

 

至極単純な結末。

マスメディアは民間の手から取り上げられ、スマートフォンを始めとする情報端末は最低限の機能のみを持った物へと制限された。

従来の端末は一つ残らず忍者や政府諜報機関員の手により回収される運びとなった。

後に教科書に記載される『スマホ狩り』とされる出来事である。

 

ちなみに忍者出現や各地の異変が起きた日に固有名詞は付いていない。

これも政府の行動で、更なる異常事態を未然に防ぐためだ。

 

しかし先程も述べたように、人の口には戸が立てられない。そして人々の好奇心や自己顕示欲も抑えられはしない。

 

噂も決して、笑えるものばかりではない。

 

 

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