はい!こちら『愛に溢れる探偵事務所』です! 作:枯華院 清日
と思ったら題を付け忘れていました、恥ずかし…恥ずかし…。
気合を入れて何を探すのか、というとだ。
今の日本ってのを調べて行くうちに違和感をありありと放つ連中、自平党。その本拠地…は流石に難しいので、周囲の支援者団体や現在使われなくなった自平党云々派が入っていた建物。将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、ってコトね!
どうだ! 賢そうだろう!?
そうでもない?
そこは嘘でも賢いって言ってくれよな。
「っつー訳で、千々石さんは何か知らないっすか?」
「えっ、どういう訳だい…?」
流石にあれか、かくかくしかじか、といった圧縮言語は通用しないか。まあいいんだけどね、本人の口から確認したい事もあったし。
因みに時間は昼過ぎ、場所は都庁の四十四階。国会図書館とか結構早く開いてるんだぜ、皆も見識を広めよう! 書を捨てるな、街に出よう!! 何か違うな。
バイト先にさっさと向かわずに街をブラ付いているのも、今日は本当は学校を含めて全休の筈だからさッ!
じゃあ何でバイト先に行くのかって? それはその…テスト前だから誰も遊べないんだよ、これは決して俺がボッチマンとかそういう訳ではないんだ。わかってくれるな。勉強会とかも参加してないしな、確か颯辺りがやってるんじゃないか。レイリーもそっちに野上と一緒に参加してるハズ。野上は成績がね…ちょっとね…。
「オタクの上層部はさぁ…何か悪い事してんじゃあ無いのかって話ですよォ…えぇ? ネタはあがってるんだぜぇ…!? 正直にゲロっちまいなよッ」
「け、刑事さん…! そんな、僕達は何も悪いことなんてしてないですよ!」
「おぉん? いいのかァそんな口利いてよう、オタクの金髪のお嬢さんがどうなっても知らねえぞォ?」
「か、彼女に手は出さないでくれ…!
…じゃあなくてさ、本当に何の話だい?」
千々石さんは結構ノリがいいぞ。こういう唐突なアホ丸出し系寸劇に付き合ってくれないのは、タマさんぐらいなもんだ。やあねぇ、男子のお馬鹿なノリってのをわかった上で無視するんだから。誰が馬鹿だッ!?
で、何で千々石さんの所こと『機関』の本拠地に居るかというと。単純な話、公務員の方々に瑕疵が無いか確認したいってコト。千々石さんが変な事や悪い事に関わってる訳も無いが、それこそ一般の方々よりも身内の話だから詳しく知っているだろう。
そうそう機関所属の他の人達はどうやら出払ってるらしい。いいのか、一応千々石さんがリーダーだろ!? あ、そうか。千々石さんだからこそ出られないのか、何でもかんでもぶっ飛ばせば済む物でもないし。
「真面目に話すと、千々石さんって公務員じゃないっすか。だから自平党の変な話とか知らねえかなって」
「ああ、そういう事かぁ。それならあんまり話せないなぁ…」
「えっ、何でです?」
「僕らはあくまで外部の独立機関なんだ、要請があれば動くけど、本当にそれだけ。消防とか救急みたいな扱いなんだよ、だから詳しくは知らないんだ。投票の権利はあるけど、特定の政党や個人に肩入れしないように。そういう話だね」
「はー…なるほど」
千々石さんは、確かにとんでもない暴力装置だ。もしも軽く地面に反物質エネルギーをぶつけた場合、良くて更地、最悪マントルまで届く。だって太陽系を破壊出来るんだぜ? その気になってしまえば、北海道どころかオーストラリアも地図から消せるだろうさ。
そんな核よりヤバイ個人がのほほんと過ごせているだけで、ある種の奇跡だな。
そう、個人なんだよ。つまるところ、この人が平和主義じゃなくて選民思想に染まってたらどうなるか…だ。本当に中立公平じゃなくとも、無闇に力を奮うヤツだったら? そりゃあもう、月並みな言葉だけどとても危ない、マジで。
故にアンタッチャブルってヤツなんだろう。知らない間に彼が終末思想に感化されてました、なので世界が滅びます。なんて笑えない事態になるもんな。
だったら探偵事務所に置いておくより、国家公務員として好待遇で飼い殺しにする方がいいって物だ。終末時計そのものを個人が握ってるのは変わらないけどさ。
「そういう話ならフォンセルランドさんとか…あっ、たぶん服部さんも詳しいんじゃないかな、あの人が喋ってくれるかは…怪しいけど…!」
「まぁそうっすねぇ、気が進まねえなぁ…」
「…ねえ、太陽くん。何となく思うんだけど、危ない事をしようって考えてない?」
「えっ? いや、まさかぁ。ちょっと気になる事が出来たってだけですよ、本当本当、マジマジ」
危ない事かどうかは、まあ実情次第じゃんね。好き好んで危ない事に首突っ込むヤツなんざ居ないよ、それが普通ってモンだろ。
「…前から僕も言ってるし、皆も言ってると思うけど、一人で抱え込んじゃダメだよ。君は独りじゃない。手伝える事があったら言ってほしいし、相談だってしてほしいんだ…いいね?」
「…ありがとうございます」
とっくにそうしてますよ。本当、良い人が周りに多くて助かるよ、まったく。
頼みの綱の当てが一本ハズレた所で大本命、そして可能なら相談したくなかった人の所に。それは誰かって…もちろんこの人。
「こんちわー」
「おやぁ〜? うら若き少年が、テスト前だっていうのに何しに来たんですか? 一人が寂し過ぎてお姉さんに会いたくなったとか? ああっダメですよ太陽くん、私達は姉弟で…!」
「………」
フルスロットルゥ〜!
何だこの人、全力全開過ぎるぞ。ブレーキでもイカレてんのかポンコツめ。そもそも俺に家族は居ないって言ってんだろがい。
「コホン、で、どうしたんですか? 今日は休みでしょう。テスト勉強でもしに来たんですか?」
冷たい視線に耐えきれなくなったと見えるぜ。フォンセルランドさんは無視に弱いぞ、でもやり過ぎると拗ねるぞ。何物にも限度があるって事だな。
「いやまさか、テスト勉強なら完璧ですよ。報告書作りも、この前の迷い犬探しの一件だけで、それも終わってるから今の所何もないですしィ」
「じゃあ本当に何で職場に…? まさか太陽くんの身体に流れる熱い情熱が、社の畜、つまり社畜に目覚めさせてしまったんですか」
「社畜じゃねえよ!」
「そうですね…バイトの畜ならバ畜ですよね…ふむ、そうすると馬産に携わる方々に失礼なのでは?」
「いや畜産は関係ねえだろ…」
「ところで何度もチクチク言ってると、色んなチクが思い出されますね。そう、例えば乳首とか」
「話飛んでない? そろそろマトモな所に着地しねえと事故りそうなんだけど、放送事故的なヤツ」
「乳首は真面目な話でしょうがっ!!!」
「逆ギレ…!?」
「大体ですねぇ。人間の乳首に対する情熱の傾け方は変態…大変並々ならぬ物がありますよ。あら、そうなると変態でも合ってますね、うふふ」
「……」
困ったな。話が二転三転して、下ネタか、あるいは普通の話か。なんとも判断し難い所にボールが行っちまったぞ。下手に口を挟むと口内に潜り込まれるから注意しろ…妖怪かな? 妖怪みたいな存在だったな。
「ところで太陽くんがお好きな乳首は如何ですか? あぁ仰らないで、そうですよね、乳輪のサイズも併せて話さなくちゃフェアとは言い難いですよね。
大きい事はいい事だと言いますし、やっぱり大きい方がお好きですか? 結構、ならば乳輪も8ミリCDサイズが適切ですね」
「ねえ俺何も言ってないんですけど。っていうか、8ミリCDって何です…?」
「大いなる
「無視かよ。いつまでその話すんのォ…?」
「人が
「怒られるからやめとけって!」
「は? 何ですか?? 私はあくまで一般的な哺乳瓶に付ける、赤ちゃんが咥えるあの場所についての話をしているだけであって、怒られる理由は無いんですけど?」
「ここに赤ん坊は居ねえだろ!?」
「作りますか?」
「嫌だよ! っつーか無理だろ!」
「子作りとかけまして、未知への挑戦と解きます…子作り…? かける…!?」
「自問自答っていうか自家中毒みたいになってんじゃん」
「その心は、ヤッてみなければわか」
「上手くでもねえよ! やめろォ!」
基本的に話好きなんだよね、この人。でもそろそろ話題を切り替えるんじゃなくて、頭とか取り替えた方がいいんじゃねえかな…。色んなところっていうか関係各所に怒られる前に。
「それで、本当に何しに来たんですか? 所長達は出払っていますよ」
「や…やっと本題だよ…」
何かどっと疲れたな、何でだろうな。心当たりが多過ぎて逆にわからなくなってきたぜ。
そして何より、今から聞こうとしてることも、大変面倒な事になりそうだ。所長達が居ないってのはラッキーかも知れないけど気が重いなァ!
「フォンセルランドさんに聞きたい事があるんですよ」
「はい? …ああ、ピンク色ですよ」
「うん多分ね、想定してる質問が間違ってるんすよ」
「えっ!?」
「俺がそんなトンチキハレンチ野郎だと思ってんのォ?」
「……?」
「何を当たり前の事を、って感じの心底不思議そうな顔しねえでくれるかな…」
どうやらフォンセルランドさんの中で俺はとんでもないクレイジースケベ野郎扱いをされているようだ。知らなくてもいい事を知る度に、一つ大人になっていく。そんな気がしてくる。新たな学びを得たな。活かせる場面が一切来なさそうだけどさ。
「ちなみにピンク色なのは口の中の話ですけど」
「でしょうねえ!!」
なるほどね…これがミスリードってヤツか。こいつは一本取られ…てねえよ、どうせそんな事だろうと思ってたわ。
「はぁ…まだるっこしいんで単刀直入に。フォンセルランドさんは自平党って知ってます?」
「それは勿論。あっ、モロち」
「言い換えなくていいんだよ。っていうかこっちは真面目な話してんですよ、わかる?」
「チッ」
「聞こえてんぞォ!」
本当に隙あらばって人だな。上手く軌道修正していこう、さもなくば一時間は馬鹿話で持っていかれる。
「…自平党、ですか。一般的には普通の与党ですね。強いて言うなら、特色としては私達のような存在に有利な法案を提出する党ですが」
「そっすよねえ。ま、そんなもんか」
「しかし、これは変と言えば変です。だって、いくら不思議な方々が増えたとしてもですよ? 票田としては後から出て来た私達のような連中よりも、既存の人間を相手にする方が楽な筈です。
いっそ排斥した方が融和政策による軋轢を考えなくてもいいんですから、というより絶対にトラブルが増えますからね」
「…確かに?」
そりゃそうだ。実は最初から居たなんて連中を引き込むのは、難民移民をいくらでも受け入れるってのも同じだ。必ずどこかでガタが来る。だって俺達とはルールが違うんだから。
例えば見た目が人間そっくり、というかハッキリ言うとただの美人にしか見えないフォンセルランドさんは受け入れやすい方だろう。でも、おやっさんはどうだ。他人の目を気にして包帯グルグル巻きで、更に念入りに表には出ないようにしている。
釈先輩だって、そのとんでもねえ身長で怖がられやすい。オークさんもそうだ、見慣れてなければ異様なイノシシ人間だろう。
オークさんと言えば命名則も違うしな。けれども、こっちのルールに合わせてくれるのなら何とかなる。竹塚さんもそれが出来るから組んでるんだろうし。結局は互いに敬意を払うとか、尊重するってのが大事なんだろうさ。
でも見た目で判断するのも人間だ。俺だってこの頭で色々言われてるしさ。そういえばレイリーも最初はチンピラ扱いしてきたよな…?
「だから、私達のような存在からすれば有り難い、けれど人間からすれば変な党だと言えるでしょうね。私の所見はそんなものです」
「ほえー…」
フォンセルランドさんはボケ倒すタイプの人なのは間違いないが、その思考まではボケちゃいない。というか実際は頭が回る人だ、物理的にじゃないぞ。たぶん物理的にグルングルン回せるけど。
「それで、本題は何ですか?
一足先に千々石くんから連絡が来ていましたよ。太陽くんが、本当は何か気になる事がありそうな質問をしに来たって」
「オイオイ、ホットライン繋いでんのかよ…俺って意外と信用されてないんすかね」
「逆ですよ、信頼してるからこそです。滅法、というか無闇矢鱈に回る思考を考慮してるんです」
フォンセルランドさん、何かちょっと怒ってない?
言葉の端々に棘が隠れてない??
恐らくこれ以上隠し立てしても無駄だろう、むしろ本当に怒らせてもおかしくない。色々とゲロった方が円滑に進むのは間違い無しだ。
「あー…その…。自平党が何か、胡散臭えっつうかね。最近変な所で目に付くんで、ちょっと調べたいんですよ。この前の千々石さんとの時には車に鷹のマークかと思いきや、実は鷲のマークのエンブレムがあったりして。
極々直近じゃあ、生首をゴミ袋に入れて迷宮に不法投棄した輩が鷲のマークを付けてたってね」
「…ふむ」
関わらなくてもいい。そう言われればそれまでだ。
でもさぁ、そう言われてわかりましたって引き下がるような性根はしてないんだなぁこれが。
社会の裏側であくどい事をする。なるほど、この程度ならいくらでも居るだろう。この前のスーツを着こなしてた都会派熊だって同じようなもんだ。でも、でもだよ。もしも自平党って連中が、俺の一件に関わってたとしたらどうだろうな。決してあり得ない話じゃないんじゃないか。
「自分の巻き込まれた事件について、関係があるのでは。そういう事ですね?」
「話が早くて助かりますよ。とは言っても? 今の所、どの大人に聞いても普通の話しか出て来やしねえんだから。ハズレっぽいよなぁとは思ってますがね」
目下の大ヒント。モンデンなんちゃらについてもわかってない事は多いし、こっちを警戒してなのか襲撃もしてこない。結局こっちから探っていって、か細い一縷の望みってのが結びついてくれればラッキー。それだけって事さ。
「はぁー…」
「えぇ? 何のため息です?」
「どうせ。党本部とか、その跡地か何かに突撃するつもりでしょう。一般でも近寄れる範囲で嗅ぎまわるのは誰であれ咎められませんからね」
「どうせって…言い方酷えな」
ははは。何だよバレてるじゃんね。
フォンセルランドさんはインターネットを使えても、俺は使えない。っていうか一般の方々は使えないんだけどね、滅茶苦茶厳しい免許制だし。
じゃあ普通の高校生が色々調べるにはどうすりゃ良いかっていうと、やっぱり図書館だ。判例だのを調べるだけなら市や区の図書館で事足りる。特に転生者云々の事件は有名だから、それを取材した記事なんてのも多い。
一方で国会議員の方々の登記に近しい情報や議員の皆さんの事務所が何処にあるとか何処ぞに移転したなんて事について、前者は厳しくとも後者の細かな事が載っている会報誌のバックナンバーが揃ってる所だったら国会図書館以外には早々無いからな。
「どうせで合ってるでしょう。止めても無駄でしょうし」
「へへへ…申し訳ねえです…」
「まったくもう…」
いや本当ね、申し訳無いとは思ってるんだけどね。それとこれとは話が別っていうかさ。
「…交換条件です」
「な、内容次第って訳には」
「ダメです。断るようなら全員で止めます、いっそ千々石くんに頼んで記憶を消してもらいますよ」
「脅迫じゃん!」
「脅迫で結構です」
この人に条件をつけられるのもな。ヤダ怖い…何かこう…世間にはお見せできない程恥ずかしいタイプの頼み事じゃなければいいんだけど。学校に行けなくなる感じの話じゃない事を願おう、せめてフォンセルランドさんに人の心がある事を信じて!
「まず一つ目。太陽くんが何をしようとしているかは全員に共有します。レイリーさんも含めてですよ」
「一つ目って言った? 何か多くね?」
「……」
うわ、滅茶苦茶睨んでくるじゃん。そんな時ばっかり器用に表情作らなくていいんだぜ、俺の小さなハートが萎縮したらどうしてくれんだ。
「二つ目。こちらの無線式イヤホンを貸しますから、夜中に探す時は、くれぐれも、必ず、付けてください。その上で私と通話をしつつ探すように。ナビゲーションもしてあげますから、嫌がらないように」
「ええぇプライバシー…」
「黙らっしゃい」
「黙らっしゃい!?」
「身の安全くらい確保させなさい、ということです。わかりましたか? 何かあったら跳んで行きますからね。比喩でなく、本当に跳びますよ」
「…はい」
「素直でよろしい…はぁ…」
何だよわざとらしくため息ついてさ。俺がそんな危ない目に進んで首を突っ込むように見えるのか? 見えるんだろうな、実際前科的な物ならあるし。
忘れようとも忘れられない…というか絶対に忘れちゃならない、あの夏の灯里の事。それとレイリーの事もそうだ、次は返り討ちで入院だけじゃ済まないかもしれない。
そう考えればこそ。出来るだけ、この優しい人たちを悲しませないようにしなくっちゃダメだよな。
「では、この話はここまでです。私の方でも調べてあげますから、無茶な事はしないように。わかりましたね」
「了解でーす」
「返事はしっかり」
「はァい!」
「よろしい」
結局は皆が笑顔ならそれでいいのさ。俺ってそこそこ単純だからな、願いだって小市民的だろ?