はい!こちら『愛に溢れる探偵事務所』です! 作:枯華院 清日
まんがまつり的な物なので二本立てです。
どうでもいいことですが、私に夏休みはありません。
都庁にはいくつかの食堂が併設されている。
一般的な定食を出す所から、カレーが売りの食堂に蕎麦屋、とんかつ屋もある。ただし、場所はバラけているので移動しなきゃダメだぞ。
さっきまで案内してくれていた職員さんに代わって、千々石さん達が案内してくれたってワケ。押しかけた俺が言うのも如何なものかと思うが、暇なのか…?
「わぁ…本当に食べていいの!?」
「たくさん食べてください、タダですし。おかわりもオッケーらしいですよ」
「おかわりも!?」
「どんどん食べてください…!」
毒ガス訓練はしないよ!
「これは…壮観ですね…」
「お恥ずかしい…」
「いただきまーす!」
フォンセルランドさんは慄き、颯は少し恥ずかしそうにしている。
何にって?
「もっもっ…」
「…凄いわねぇ」
「メディックではなくフードファイターでしたか」
「見ててお腹が膨れる気がするね…?」
「本当にお恥ずかしい…!」
「爽快感があって素敵だと思うぜ!」
「もっ…?」
頬を膨らませて小首かしげる天使、愛らしさではリスに負けてないな。むしろ勝ってる、ダブルスコアはつけてるね。
こころさんの目の前に並べられているのは、日替わり定食(大盛り)。今日の丼もの(牛丼大盛り)。牛すじ甘辛黒カレー温玉添え(大盛り)。塩野菜タンメン(大盛り)。北海道名物エスカロップ(大盛り)。かしわ天そば(大盛り)。ポルチーニ茸とベーコンのクリームパスタ(大盛り)。
わんぱくだぁ…。合計何キロかな。
これを全部一度に食べるって言うんだから、そりゃあ驚きもする。他のお客さん等も二度見して行くが、まぁだろうな。俺も初めて知った時は困惑したもん。
「ちゅるちゅるちゅるちゅる…」
あっ、塩タンメンとそばが消えたっ。
「いただきます!」
これは俺も負けてらんねぇな!
嘘です…俺が頼んだのはイワシの磯辺揚げ日替わり定食(大盛り)と追加の小鉢です…。
健康な男子高校生の食欲程度では太刀打ち出来ない。というか、同じテーブルに居る全員分より多く食べてるんじゃないか。
淋代家の食費ってどうなってるんだろうな。
…いっぱい食べる君が好き!!
「このカレー美味しい! おかわりしてくるね!」
「アッハイ」
男に二言は無いぜ!
いっぱい食べる君が好き…!
そんなこんなで目の前から大量の食べ物が消失していく怪現象を眺めつつ、穏やかなランチタイムは終わった。これはまさか…新手の都市伝説じゃねぇか!?
それは見なかったことにして…。
美味いな、イワシの磯辺揚げ。
中々やるな、都庁の食堂。
レシピでも探してみて、レパートリーに加えよう。いいよなイワシ、お手頃価格で美味。
「ごちそうさまでした!」
「普通に美味かったですね。今回はタダですけど、書いてあった値段もリーズナブルでしたし」
「牛すじもとろとろで美味しくて、エスカロップ…? も、初めて食べたけど美味しかったよ!」
「こころさんはかわいいなぁ!」
「えぇ!?」
「チッ…」
舌打ち聞こえてんぞ呪殺人形。
いいじゃん、満面の笑みだぜ?
カレーの他にも色々と何回か…何回もおかわりしてたけど、それは置いといて。笑顔でご飯を食べる人って素敵だよな。
「颯くん、お姉さんって普段から…」
「はい…姉専用の炊飯器もあります…」
「それはその…凄いね…?」
「壮絶ですね」
「オゥ…モンスター…」
「放っておいたら、他の物も全部食べきるんじゃないかしらぁ…」
うん、三者三様で戦慄してる。
言っておくが、こころさんも普段は控えめだぞ。
以前コンビニで会った時はおにぎり全種にカップサラダとデカいカップ麺だけだったし。
つまりは、だ。
いっぱい食べるキャラクターっているじゃん? ピンク色の玉とか緑のドラゴンとか。あいつらってかわいいじゃん、だからいっぱい食べるイコールかわいい。
で、こころさんもかわいい。更に沢山食べるからもっとかわいい。
無敵のかわいいモンスターだな!
おい誰だ、俺の女神をモンスターって言った奴。
殴るぞ。
強いて問題があるとすれば、気軽に食事とかに誘えないって所かな。割り勘でも財布が寒くなるっていうか大寒波が襲うのは確実、地球温暖化はどこ行った。
奢りなんて言ったらATMに直行だ。
食べ放題? 店側が泣いてデート中断だな。
「気を取り直して、ロボそのものを案内するよ」
「千々石さん他に仕事あるんじゃないですか?」
「うんまぁ…あるにはあるけど、急ぎじゃないから…」
「ほとんど判子押すだけだものねぇ」
「かといって、室長がフロントラインに出るのも…オォ、テリブル。イタズラに被害をヒュージにしますね」
ひょっとして、マジで暇なのか千々石さん?
大量破壊兵器も出番が無いに越したことはないのは確かだけれど、完全に閑職に押し込められてるのかね。
ん〜…見方を変えれば日本は平和ってことかな。自称悪の侵略宇宙人とかいるけど。
「暇なんですね?」
「うっ…」
「フォンセルランドさん!?」
い…言いやがったコイツ!
オブラートとか持ってらっしゃらない感じ?
この質問はやめておこう。ゴムなら持ってますが。とか言われるのが目に見えてる。
暇といえば、だ。
「与田さんと安房さんも着いてくるんですね」
「あらぁ…イヤだったかしら?」
「今日のところの、およそのワークが終わってね。イコール…まぁ言ってしまうと私達は暇なんだよ、太陽少年」
「ぶっちゃけますね…」
いいのかそれで…?
千々石さんが取り回し効き難いタイプのパゥワーがあるのはわかるけれども、その分二人にお鉢が回ったりしないもんか。
どんな人たちなのかすら知らないんだがな!
「ポリスもワークが無い方がピースフルでソウグッド、そうだろう?」
「あたしたちは警察じゃないけどね。千々石ちゃんと違って普段から病院とかに出向してるのよ」
「そりゃまた忙しそうな気もしますけどね」
嫌味とかじゃなくて、本音だよ。
医療従事者って事もなさそうだし、何でなんだかね。
「私が必要な場合は少ないからな、室長から聞いているが『口裂け女』のケースでは私と少年はニアミスしていたようだ」
「えっ、ズル〜い! そんな楽しそうな話、マリちゃん何で言ってくれないのぉ!」
「少年の何かがデンジャーだからですが?」
謎の不満をぶち撒ける与田さんを切り捨てる安房さん。仲いい…よな、うん。たぶん、きっと、メイビー。
口裂け女の時にこころさんが言っていた、政府の関係者が協力してくれた。っていうのは、安房さんの事だったのか。ということは、何かしら人を落ち着かせる能力とか噂がついてるのか?
「おっと少年、それ以上はストップだ。女はミステリアスな方がチャーミングなんだろう? ついでに、私のことはマリーさんと呼びなさい」
「ん? さっきの名刺には伊万里さんって…」
「いいから」
「ッス…」
なんだこのプレッシャーは…!? 待ってくれ、名前は『安房 伊万里』って純日本人だよねこの人。見た目は金髪で青い目、所々英語混じりっていうかルー語だけど…あれ…?
「あたしのことは、つばささんって呼んでね。これから末永くよろしくね太陽クン…んー…太陽ちゃん?」
「わかりました…?」
なんか有耶無耶にされそうな…いやされてんな。
まぁ…いいか…ッ!
俺は一途な男だけれども、キレイなお姉さんは大歓迎だぜ!
「じゃあ今夜空いてる? 大人の遊び方をあたしが…」
「室長ー! 与田さんが有給減らしていいそうです!!」
「待った、待って! ジョークよ!!」
…やっぱ撤回『真っ当』で、キレイなお姉さんなら大歓迎だ。
俺は一途な男さ…!
「あまり遊んでいてはバッドか…ゲストである太陽少年の大切なプリンセスが機嫌を損ねてはいけないしな」
あ、遊ばれてたのか。悪い人たちだぜ! この責任は部署の中で一番偉いであろう千々石さんにとってもらうか。
具体的には…うーん…いつか飯でも奢ってもらうとか…? 我ながらまるで思い浮かばねぇな…。
「どうかしたの三人とも、早くロボの色々見たくないの…?」
「千々石ちゃんは恋バナしたくないの?」
「えっ!? 僕は別に…」
「室長はそこらでフラグをブレイクする側ですからね」
「いや知らないよ!?」
「無自覚なのもソウバッドですね、先日も…」
呼びかけられて何事かと近寄ってきた子羊が渦中に引きずり込まれて行った。哀れっていうか、かわいそうに…。
たぶん普段からこんな感じだろうから、あんまり気にしないようにしておこう。それより、現在詰られ中の千々石さんの言うとおりだ。
目的は都庁ロボとデート!
こう言うとロボットとデートするみたいだな?
俺にちょっと特殊な趣味は無ぇよ。
それからすっかり日も落ち込んで、ロボの全体を堪能したってワケ。
特に武器庫は凄かった、ミサイルとか砲弾とかが横に整列して、選挙剣が立て掛けられてんの。すげー浪漫が満載だよな。
「一般公開できるのはここまでかな。司令部と動力部、それと操縦席は国家機密だから見せられないんだ」
「はぇ~…」
操縦席も出来れば座ってみたかったが無理らしい、一番の浪漫ってそこにあるよなぁ!?
まぁ無理な物は無理か。それでも詳しい解説付きで一通り見終わっちゃって大満足、解説役は千々石さんだ。
さては千々石さん、ロボット好きだな?
案内の人から引き継いだのもこれが目当てだったんじゃないのか、そこはかとない公私混同を感じる。
「とにかくダイナミック! って感じでしたね」
「各部マニピュレータとアクチュエータユニットが独立していて、ロボとしての起動時のみ同期接続されるとは思いませんでしたね」
「動いてても中はあんまり揺れないんだね〜、周りの空間と繋がって無かったりするのかな?」
「材質はコンクリートと鉄筋のままの筈なのに、これで空も飛べるんだろう? 噂の力は凄いな…」
あっ、待って!
俺一人の感想と語彙力がダメな感じだ!
何かこう…いい感じの発言で俺の頭脳明晰アピールをしたい。唸れ、俺の灰色脳細胞!
「本当に詳しく知りたかったら、都庁勤めになるか。それか、あたしのペ」
「ちなみに都庁ロボの司令は都知事です、これは皆さんご存知ですね。エマージェンシーの際は政府へ確認のプロセスをしてから起動コールを発令します」
「ちょっとぉ!」
口出す暇が無いじゃん。今日のところはこの位で勘弁してやるぜ…! べ、別に何も思いつかなかった訳じゃないんだからねっ!
それにしてもマリーさんとつばささんは漫才コンビみたいだな、日常的に千々石さんが振り回されてるのが目に浮かぶ。さっきも見たしな。
事務所にいた頃はフォンセルランドさんからのセクハラに見舞われたり、タマさんからパシられてたもんな。まだ他の方々についてはよく知らないけど、実はあんまり変わらなかったりしない? 一応偉い立場なんだよな…?
「そろそろ最後のアレが始まるから、展望台レストランに行こうか」
「ディナーで終わりでは無いんですか?」
「フ…少年たちよ、最高のお楽しみタイムはラストにこそ相応しいのです。アンダスタン?」
ちょっとだけ、このルー語使いのマリーさんにも慣れてきた。つまり何かしらのサプライズが俺たちをウェイトしてるってことだな。
「成人組はお酒も飲んじゃいましょ、夜景を見ながらのアルコールはオトナの特権よ。せっかくだし経費で…」
「与田さん」
「あら、千々石ちゃんも飲む?」
「まだ勤務時間内ですし、経費では落としませんよ」
「…ケチ! これだから色々小さな男はダメよね」
「いや普通ですって。子供も見てますし、僕より社会人歴長いんですからしっかりしてください」
「レディの年齢に触れるなんてサイテー!」
千々石さんはしっかりしてるなぁ…。さっきの周りに振り回されてるなんて考えは杞憂だったかね。
それにしても、つばささんって歳いくつなんだ?
んん…千々石さんより歳上って事は…。
「太陽少年」
「はい?」
「死にたくなければ、そこまでにしておけ」
えっ、怖い…。
マリーさんから謎の警告を受けてから、ちょっと移動しただけでそこはある種の非現実的な空間。
眼下に広がる人々の営みが闇を払う、夜景が綺麗な展望台、グランドピアノと小洒落たダイニングバーもあって、まぁなんてロマンチックなんでしょう。
ふと正気に戻ったけどおかしいよな。本当はこころさんと二人っきりで、この景色を二人占めしてた筈なんだけど。
「メニューのここからここまで。それとコースメニューを一通りお願いします」
「えっ」
「姉さん…店員さんが引いてる…」
ちょっとロマンチックなのは無理だったかもしれん。
現実は厳しいな。
「フォークとナイフは外側からでしたっけ…?」
「あらぁ、太陽ちゃんはこういう所ハジメテなの? お姉さんが手取り足取り、テーブルマナーだけじゃなくて、この後のベッドの上のマナーも腰取り…」
「フォンセルランドさーん!!」
「合ってますよ」
危ねぇ、何かは知らんけど危ねぇ。人前だと良識派の皮を着込んで、キグルミドールなフォンセルランドさんがこうも頼りになるとは。
俺は硬派な男なんですよ。
「ガードが硬いわね…硬いのはアソ」
「与田さん、ワーク中です」
「ちぇー」
唇尖らせてるけど、何を言おうとしたんだつばささん。いや聞かなくても何となくわかるけど、ナイスなインターセプト、サンキューマリーさん!
…やっぱりメリーさんとマリーさんで似てるから普通に安房さんって呼ぼうかな…。
「太陽くん」
「ん…どうしました?」
一足先に運ばれた物を文字通り全滅させたこころさんが、小声で話しかけてくる。あれ、おかしいな、店側が気を使って個々人に個別で運んで来てくれてるとはいえ、俺はまだ二皿目なんだけど。
「今日は、ありがとうね。とっても楽しかったよ」
「…良かったです、ホッとしました。本当は二人で、もっとスマートにエスコート出来れば良かったんですけどね」
「ふふ、そうだね」
あぁ、安心した。
まさかの保護者同伴から始まったこの日、最後に見れた笑顔だけでお釣りが来る。
「また誘わせてください。次こそ二人で」
「うん、待ってるね」
何億ドルの夜景だかも霞む微笑み。
終わりよければ全てよし、だな。
「甘酸っぱいわぁー!」
「これはハニー・ビネガーのようで、健康にグッドですね」
「オレは応援しないぞ、むしろ諦めてくれると助かる」
「いいんですか千々石くん、都庁の風紀が乱れますよ」
「そっとしておきましょうよ!?」
外野がうるせぇー!!
いい感じだったじゃん! いい雰囲気だったじゃん!!
どうして静かに放置しておいてくれないんだよォ! 実の姉が口説かれてる状態の颯はまだしも、他のギャラリーは何なんだよ!
見せもんじゃねーぞ! 散れ散れ!
「プークスクス」
「こ、このドグサレ人形…!」
口元隠して笑ってんじゃないよ内弁慶!
そのりんごのタルトでも突いてろ!
最近の怪異はこれだから困る、もっと人に優しくなれねぇのか。元は呪いの人形だから無理なのか?
「私も、楽しかったですよ。ね、淋代くん?」
「まぁ…そうですね。二人っきりの邪魔をした事は謝らないが、賑やかで良かったんじゃないか」
「へっ、うっせぇや」
「素直じゃないですね」
「當真は前からこうですからね、前といえば昔の事ですが、中学校の帰りの時も…」
「やめろやめろォ! お前は俺の親戚かよ!」
「長い付き合いの親友だ、そうだろ?」
「何キメ顔してんだよ!」
割りかし事実なだけに扱いに困る、しかも発言が様になってるから尚の事タチが悪い。なんか負けた気分だよ、やたら顔の良い親友に乾杯。
お邪魔が成功してるから俺の完敗。
…はぁ。
「ほらみんな、外を見て!」
急に立ち上がってなんだよ千々石さん、テンション高ぇな。テーブルがちょっと揺れてるじゃん、大人になっても少年ハートが制御不能か?
あれ、違うな。
テーブルが揺れてるのは千々石さんのせいじゃない。
───豪ッ!
唸る空間、視界は白。
遮光効果のある硝子を貫いて閃光が奔る。
眼を眩ませ、空を灼く一筋の光。
そう、あの光線の名は。
「内閣総辞職ビームだ! スゲー!!」
おぉ見よ! あの兵装こそ都庁ロボの最終兵器!
その名も内閣総辞職ビーム!
都庁ツアーの最後の目玉はこれか!
あくまで蒼穹への空砲とはいえ、これを前にしては成人男性の興奮冷めやらぬも仕方ない。
ちなみに内閣総辞職ビームっていうのは、あくまで通称だよ。縁起悪いもんね。
「選挙剣・当確斬りもカッコイイと思うけど、やっぱりビームはひと味違って凄いよね…!」
「わかりますよ千々石さん、これは別格ですもん…!」
「発射口間近からは普通見られないからな、ありがとう當真。素晴らしい思い出が出来た!」
浪漫…ロマンチックじゃなくて、漢字で書いて浪漫だよ、これは。発射する人とかは叫んじゃうのかな、いいなぁ、いつかやってみたいぜ!
「男は一皮剥けば男子よねぇ」
「男子はフールですね」
「か、かわいいって思いますよ…?」
「正気ですか」
圧倒的に不評!?
女性陣冷たくない!?
女性の方々が俺たちに向ける目線が、およそ冷えに冷えてるか困惑なんですけど、ビームの熱で温まったりしませんか。
しない?
そっかぁ…。
御意見・御感想・御評価、質問疑問、誤字脱字等々ありましたら賜りたく存じます。
や、優しくしてね…!