はい!こちら『愛に溢れる探偵事務所』です!   作:枯華院 清日

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文化祭・オブ・ザ・デッド 準備号

 

 

 

 

 

 

 

 文化祭の出し物をどうするか、なんて考えはしたが、いざとなると俺が特段何かすることもない。

 

 一通りの案は出揃って、さて挙手制の投票形式で文化祭の出し物を決めるってヤツ。よくあるよくある。

 さしたる不公平感も不満も出ないから良いんじゃないかと思う、下手に実行委員の薊に注目すると、また大変なことになるしな。

 我らがクラス担任であるアイちゃん先生も目を閉じつつ、ゆっくりと静かに頷いて…。

 

「………………」

 

 違う、あの人寝てるわ。頷いてるんじゃなくて、頭がゆっくり前後してるだけだわ。

 

 ちょっと男子ィ〜真面目にやんなよォ〜!

 いや、あの人身体は女性だし、そもそも教員じゃねぇか、どうなってんだこのクラスはよォ。マトモなのは俺だけか!?

 

「うん、最多票は…おばけ屋敷だな。薊さん、これで決ま…薊さん…!?」

「あぁっ薊が白目剥いてる!」

「挙手の時の緊張感に耐えられなかったか…!」

 

 うちのクラスの文化祭実行委員はメンタルがマンボウ並だな! 実はマンボウが死に易いってのはただの噂で、本当はそんなに繊細でもないらしい。

 だがここは日本、この国の水族館にいるマンボウは『噂』パワーによってガラスのボディと、濡らした紙みたいなメンタルになっている。

 薊にぴったりだな。陸に打ち上げられた悲しきマンボウメンタルの持ち主…。普段どうやって生活してるんだろうな…。

 

「お、おば、お、おばけ屋敷なんですか…!?」

「多数決ならそうなる訳だが…やっぱり無しにして、第二候補の男女全員メイドの煉獄冥土喫茶にするか?」

「い、いやでもぅ! たすっ多数決ですから!」

「民主主義的にはその通りだ、だが、本当に嫌がる相手に強要しようなんて非道な輩は居ないさ」

「で、でもっ!」

「でもは無しだ、薊さん」

「しかしぃ!」

「しかしも無し」

「ハウエバー!」

「しかしながら…!?」

 

 薊がまたイヤイヤ期に入ったかと思ったら、ちょっと楽しんでない? どんだけ反論の語彙を備えてんだ。

 しかしこのままじゃ埒が明かねぇ、仕方ないからちょっと中断させて…。

 

 お?

 

「…あー、薊はおばけ屋敷でいいのか? 本当に嫌だったら今のうちに言っておけよ、そうと決まったらひっくり返せないぞ」

 

 窓辺でゆらゆら船を漕いでいたアイちゃん先生が、タイミングよく確認の為にフォローを入れる、優しいね。というか話聞いてたんだな、俺はてっきり寝てるかと思ってたぜ。

 

「はひぃっ…ど、どうにかなると思いますっ」

「じゃあ決定だな、全員あんまり変な事しようと思うなよ。問題が起きたらおれも悲しいし、お前らも謹慎か反省文だ。全員損するだけでいい事ナシだぞ」

 

 今のは薊の言葉は返事なのか、それとも悲鳴なのか、意見の分かれそうなところだ。いくら薊の恐怖耐性が貧弱でも、驚かす側なら平気なのかもしれない。

 先生も念入りに釘刺してるから危険な事は…多分しないよな? ヤバい事しようとしてるヤツがいたら、俺を含めて誰かしら止めるか注意するだろうし、楽しい文化祭なんだ、安心安全なおばけ屋敷を目指そうぜ!

 いや安心するおばけ屋敷って本末転倒な気もするな。

 おばけ屋敷でホッとしちゃダメじゃない?

 おばけ屋敷はヒッとなるべきなんじゃない?

 

「今回はここまで、次は具体的にどうすっか決めるぞ」

「はひゃいっ」

 

 薊の返事はやっぱり悲鳴じゃない?

 

「あ、忘れてた…今回の文化祭も入校チケットが無いと入れないから、誰に渡すか考えとけよ。配布数は一人に三枚綴りのやつ一個だからな」

「ひぃぃ!」

 

 かなり悲鳴だよこれ。

 

 どこでそんなにビビってんだ…?

 薊のビビり散らかし方は無視して。文化祭といえば誰も彼もが来そうなイメージがあるかもしれないが、うちの学校は不審者対策として入場券みたいなのが必要なんだよね。

 数は三枚、両親と兄弟や他校の友達だの付き合ってる人だのですぐに捌ける数だ。

 

「帰りの号令だけやって解散するぞ、薊と淋代は席戻れ」

 

 三枚…三枚かぁ…どうすっかな…。

 

「きりーつ! れーい! 着席!」

 

 号令のままに身体を動かしつつ、ふと考える。

 こういう行事って、一般的にはやっぱり両親とか呼ぶんだろうな。颯も毎度両親とこころさんに渡してるし、森山とか土屋もだいたいそんな感じだ。

 うちのクラスのスケベ第一人者…第一ニンジャ、風間は去年実家に送ったって言ってたかな。

 

「スケベ野郎…じゃなくて…風間、チケットどうするよ」

「當真殿? 某の鉄の心も傷は付くでござるよ?」

「ははは、ジョークジョーク」

「冗句でござるか…えっまことにぃ?」

 

 中々鋭いな、スケベ野郎。

 でも侮蔑とかじゃないぜ、男子はだいたいスケベな事は好きだ。それを大っぴらにするかしないかだけ。オープンスケベ野郎の風間なんて尊敬に値するね。

 

「おうよまことまこと。で、風間は今年のチケットどうすんの?」

「うぅむ、某は家族のいる滋賀と相模…神奈川のどちらに送るか迷っているでござる。昨年は父母に送り申したが、それを聞きつけて父方の祖父母も来てみたいと漏らしていたらしく…」

「へー…どっちにも分けて送ればいいんでない?」

「さすれば争いの火種となりかねんのでござるよ。皆、里から離れて都会を楽しんでみたいのでござる。姫から賜ったネズミーランドの一日券を送った時など、それはもう聞くも涙語るも涙の血みどろの闘争が起きたのでござる…」

 

 ネズミーのワンデーパスポートで骨肉の争いは凄いな…風間の一族も癖が強くていらっしゃる。普通に旅行にでも来ればいいのに。

 

「颯はいつも通りだろ?」

「まぁそうだな、もしも一枚余分にあれば…笹川さんに送ろうと考えていたが」

「マジで? その人って前に探偵事務所に来た人だよな」

「あぁ」

 

 あらやだァ! 颯っちってば年上のヒトが好みなのォ!? ちょっと詳しく聞かせなさいよ!!

 

「ン、先に言っておくが他意は無いぞ。いつもお世話になっている人だから恩返しの一環としてだ、何せ相手は社会人、送っても来てくれるとは限らないしな」

「チッ…」

「何故舌打ちを?」

 

 つまんねー! こいつつまんねー!

 何だその社交辞令的なヤツ!

 

 美青年とバリキャリ系OLの物語とか少女漫画的で面白そうなのに、俺の親友はなんて不甲斐ない男なんだ。俺は悲しいぜ、もっとこう…青春しろよな!

 

 俺? 俺はいいんだよ…そういった甘酸っぱいのはこころさんに捧げてるから…。今に見てろよ…! 希望の未来にレディーゴーしてやるからな!

 

 それにしても、俺の席の前後にいる男子ズにはさらっと聞いてみたが、女子たちはどうなんだろうか。直接聞くのはちょっと恥ずかしいよね、そう、俺はいわゆるシャイボーイ。

 よーし、聞き耳立てるか!

 

「伊奈帆はどうするー?」

「知り合いに渡す…葵は?」

「せっかくだから売っちゃおうかな、うちの文化祭入場券って実は意外と高値で取引されてるんだよ。ついでにコネも出来てお得!」

 

 えっそうなの?

 それにしても公然と売り払う話をするのはマナーとか、何らかのルールに抵触しないか。転生者はルール無用の無法者かな。アイちゃん先生、これは…って居ねぇ…どうやらさっさと職員室に行ったらしい。

 

「のんちゃんはどうするの」

「ん〜…親は二人とも来れないだろうから、誰か欲しい人にあげるのん。レイリーちゃんは」

「はい! はい! 私にちょーだい!」

「善意を売るような奴には渡さないのん」

「なんでぇ…」

「私服を肥やしても贅肉が増えるの、心の。申し訳ないけれど、人が豚さんになるのは忍びないのん」

「心の!? 豚!?」

 

 豚になるかどうかはさておき。常識的に考えて、貰った物を平然と売ろうとする奴には誰も渡したくないんじゃねぇかな。

 

 立神が突っ込んで中断されてるけど、ミニマムホワイト転校生のレイリーは誰を呼ぶんだろうか。転校してすぐだから、知り合いとかはまだ少ないだろうけど。

 

「……」

「だいたい葵はいつも馬鹿なことしてるのん、無駄に生き急いでるようにしか見えないの」

「そうかなぁ? 別に誰にも迷惑かけてないから、大丈夫だと思うけどなぁ〜」

「………」

「巡り巡って厄介事になるの、禍福は糾える縄の如し、因果応報、悪因悪果、悪い芽が生える前にそもそも種を撒かない方がいいのん」

 

 おお…野上が真っ当な事を言ってる…。普段は遅刻スレスレの時に全力疾走して人を撥ねそうになってるのに。

 ところでレイリーがずっと黙ってるけどいいのか。友達がそのまた別の友達と仲良く話をしてるから、空気を読んで自分が空気そのものになってるぞ。君って空気みたいな存在だったんだね…!

 

 しょうがねぇなぁ、ここは空気を読まずにエントリーするか。シャイボーイじゃないのかって? シャリは品切れだよお客さん。

 

「よっ、レイリー」

「太陽くん」

「クラス代表のバカが来たのん」

「太陽くんは成績良いけどアホだよね」

「酷くね??」

 

 急にお説教をブチかましてたヤツとお説教されてたヤツの暴言が襲ってきたんだけど。共通の敵が居たら手を取り合うタイプなの? タイトルにVSとか付いてても最後に共闘する展開なのか? いや敵じゃなくて普通のクラスメイトじゃん、身替り光速すぎんだろ…。

 

「レイリーちゃん、コイツに簡単に気を許しちゃいけないのん。一部の派手な女誑しほどじゃないけど、當真も地味に女誑しなの」

「そうなんだ」

「マジかよ! 初耳だぞオイ、俺に隠れファンとかいるの? 何で隠れてんの? もっと堂々とアピールしてくれていいのにィ! そんで毎年バレンタインにチョコとか貰ってさ、いやぁ困っちゃうなこんなに持ちきれねぇよなんて言ってみてぇよなぁ!?」

「そうやってすぐ調子に乗ったり、変に茶化したりするからダメなんじゃないのー?」

「駄目ぇ…?」

 

 熱いダメ出しして来るじゃねぇか。

 も、もう少しこう…手心というか…。なんというか…。無理そうだな、この二人は俺への優しさが足りない。

 

「ていうか、太陽くんはいつの間にレイリーちゃんのこと呼び捨てに? 変なことしたんだ!」

「してねぇよ! なんで断定してんだ、ちょっとばかし転校初日に話しただけだわ」

「ふーん…」

 

 耳聡いというか何というか、気付くの早いな立神。そこはスルーしてくれてよかったのに。そんな細かい事気付くなら、レイリーが野上のことアダ名で呼んでるのも囃し立ててろよな。

 そもそも偶然二回も助けて、何か流れでそうなったってだけだから、特に疚しい事は何もないんだが。

 これは藪蛇だったかな、まぁ面倒なお説教の空気も霧散したっぽいから帰ろうかね。痛くない腹を探られるのも業腹だ。

 

「立神が怖いから退散しまぁす、バイトもあるしィ!」

「何か用があるんじゃないの?」

「急ぎじゃ無いから気にしなくていいぜ! じゃあなー」

「気になる…」

 

 引き止めないでレイリーさァん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あっさり終わった帰りのショートホームルーム兼文化祭の出し物決め。さてさて、文化祭入場券三枚はどうするかとぼんやり考えつつ。いつもの仕事先、探偵事務所の扉を開ける。

 

「こんちわー」

「こんにちは、太陽くん」

 

 相変わらず中にはおやっさんとタマさん…じゃなくて、所長と所長代理の姿はなし。パソコンの画面も暗転してるから所長は完全に席を外してるようだ。

 キリキリ鳴らして首だけこちらに向ける無表情のフォンセルランドさんしかいない。季節が移ろいかけていても普段どおりだな、実家のような安心感だ。

 人間と同じ大きさの人形が首だけ動かして声を掛けてきたら怖い? 確かに…。

 

「そろそろですね?」

「えっ、何がっすか」

 

 フォンセルランドさんにそろそろって言われても、名詞が足りねぇから何の話かわからん。さつまいもの旬だから焼き芋とか買ってこいって話かな、うまいよね焼き芋。

 

 個人的にはいわゆるネットリ系の奴が好み。代理と所長は冷めにくいのが嫌だからホクホクしてる奴がいいらしい、フォンセルランドさんは小さくてホクホクしてるやつが好きだとか。

 なんか疎外感あるな…芋の食感一つで悲しくなれるんだから凄いよ。目玉焼きに何をかけるかとかも凄いよな、調味料一つで気軽に大戦争勃発だもん。

 

「もぉ〜…わかってるんですよ? はぐらかしてないで、早く出してください」

 

 何か上機嫌だなオイ、ちょっと怖くなってきたぞ。

 まさかこれはアレか、察してくれないと不機嫌になるタイプの女子が仕掛ける問答か。ふっ、甘いぜフォンセルランドさん、こちとらクラスの面倒な女子達で鍛えられてんだよ!

 

「しょうがないっすね…はい、マロングラッセ」

「わぁマロングラッセ、美味しいですし小さくてかわいいですよね…じゃなくて」

「ち、違いました?」

 

 空振りィー!

 

 マジか、てっきりいい感じに旬で美味そうな物でも強請ってきたのかと思ったのに。

 こっそり隠れて食べようと思って、購買で手に入れたマロングラッセの匂いを嗅ぎつけたわけじゃないとは。じゃあなんだろう、そろそろって言ってたから何かこの時期限定のモノだと思うんだが。

 

「んー…上野公園の銀杏が欲しいとか…?」

「ふざけてるんですか? ふざけてるんですね?」

「い、いや違いますよ。ちょっと真面目に思いつかないっす、この時期何かありましたっけ…」

「決まってるじゃないですか、貴方の学校の文化祭があるでしょう。そのチケットです」

「げっ」

「今、げっ、って言いました?」

 

 この時期にあるって覚えてたのかよォ!

 おのれイベント大好きメリーさんめ、どうやら人形ヘッドには記憶とかがキッチリ詰まってるみたいだな。

 

「さ、今の嫌そうな声は不問にしてあげますから。さっさと出す物出してもらいましょうか、まだ配られてないなら渡すという口約束だけでも可です」

「いやですゥ…」

「私が優しく言ってるうちに従う方が賢明ですよ」

「断固拒否しますゥ…ッ!」

 

 現物が配られるのはまだ先の話なんだけれど、それにしたってフォンセルランドさんは呼びたくない。

 

 まず第一に気恥ずかしい。親しい身内、それこそ姉みたいな人が学校に来るのってさ、何か知らないけど妙な気恥ずかしさがあるよね。

 いやほら、学校の時と仕事の時ってキャラ違うよね。ごめん、あんまり変わらないわ。

 

 第二に移動が遅い。フォンセルランドさんは速く歩いたり走ったりするのが難しいので、およそ介添人として時に背負ったり手を引いたりしなくちゃいけない。俺は結構体力あるから、これだけならあんまり気にしなくていいけどね。

 

 三つ目、ちょっと…いや、かなり面倒。フォンセルランドさんは、見た目だけは目も覚めるような美人。それこそ人外じみた綺麗な金髪の外国人さんにしか見えないだろう、中身の下ネタ加減さえ知らなければな。

 そんなんだから、どうしてもナンパとか声掛けとかの数が多いこと。本人は外出してる時には猫被ってるから、悪い虫を追っ払うのは俺。

 

 それぞれの理由が絡み合って、あんまり呼びたくないんですよぉ。せっかくの文化祭で保護者みたいな人とべったりくっついて、しかも人払いもセット。ちょっと気恥ずかしいし嫌じゃんね?

 

「はぁ〜…太陽くんの考えはわかりました。じゃんけんは私が不利なので、しりとりで勝負しましょう、いいですね、いいですよ」

「なんで??」

「ん、が付いたら負けですよ。ンジャメナとかで回避するのは無しです、ン・ダ○バ・ゼバもダメです」

「ガミオは!?」

「ダメです」

 

 さらっと自分が有利な土俵に持っていきやがった。しかも俺の同意とか無いんですけど、人の話とか聞かないタイプの妖怪か? 似たようなもんだったな…。

 しかしこっちもやられっぱなしじゃいられない。

 

「…下ネタ無しでならいいっすよ」

「いいですよ? それだけですか。制限時間は十秒、先手はお譲りします、さぁどうぞ」

 

 あれぇ、凄いあっさり承諾してくるじゃん?

 もっと露骨に舌打ちでもしてくるかと思ってたんだけどな、もしかして単純に真面目にコミュニケーションとして、しりとりがしたかったのかな。いや油断するな俺、この人のことだ、絶対変な考えがあるぞ。

 

「じゃあ…しりとり」

「離婚調停」

 

 う、嘘だろ…!?

 初手でぶっ込んで来るには嫌過ぎる言葉じゃん、そこは普通にりんごとか…もっとこう…あるじゃん!

 落ち着け、焦るな俺。頭の中でツッコんでる場合じゃない、無難、無難に返していこう。

 

「井戸」

「ドメスティック・バイオレンス」

 

 …絶対わざとだコイツ! とにかく俺をげんなりアンド戦意喪失からそのまま勝とうって魂胆だ!!

 何でドメスティックバイオレンスなんだよ! あんたの好きなドーナツとか言えばいいじゃんか!?

 これはしりとりの名を借りた心を摘む戦いだったようだぜ、最悪〜。

 

「す…スカーフ…」

「不倫旅行」

「牛…」

「心中」

「…薄霧…!」

「離婚協議」

 

 もう大分嫌気が差してきたよ、おいどうすんだこの空気。なんかどんよりして来てないか、たかがしりとりで醸し出す雰囲気じゃねぇだろ。

 クソ…助けて所長! 代理でもいいから来てくれ! この重苦しい感じを壊して!!

 

「銀行!」

「鬱」

 

 こっちがなりそうだわ!

 

「疲れたにゃ〜…」

 

 代理! 代理じゃないっすか!

 気怠げな声と共に、人型でぬるりと入ってきたのは空気が読める素敵なお方。これぞ環所長代理!

 ちょうど猫の手も借りたいって思ってたところだぜ!

 

「ツナ。タイミングバッチリっすよ代理ィ!」

「…にゃにやってんだお前ら…ツニャ…?」

「ナチス。なんの変哲もないしりとりですよ」

「それは違う意味でセンシティブじゃね!? 水筒!」

「は? ただの政党名ですが。鬱病」

「うわ…碌でもにゃい感じ…」

「地味に嫌な感じするのわかります? この人ずっとこんな感じでメンタル追い詰めて来るんすよ。うがい」

「いやはや、なんの事やらわかりませんね。一族郎党皆殺し」

「知ってる限り嫌な感じの言葉を出してるにゃ…」

「内耳。そうなんすよ、メチャテンション下がる感じィ…」

「自殺未遂」

 

 嫌な感じどころか最早事件性さえ疑われそうな単語並べ過ぎじゃないですかね、もうちょっとどうにかなんない?

 

「稲光!」

「理由がわかにゃいんだけど、にゃんでしりとり?」

「リウマチ。太陽くんが文化祭のチケットを素直にくれないからです」

「チケットぉ…? あぁ、去年三枚配られてたアレか。また変にゃことやり始めたと思ってたけど、そっち…」

「知育…!」

 

 クッソ興味無さそうな顔で代理が見てくるよ。

 ちょっと泣きそう、いや、泣く。

 

「くだらねー…っていうか、元も子もにゃい事いうけど、さっさと渡せばいいじゃん?」

「苦渋」

 

 

 それは…そうなんですけども…! ハッキリ言ってくれるなぁ!

 キャットにはわかるまい。この思春期特有の、親とか兄弟みたいな人にちょっと素直になりたくない感じが!

 

 そうは思ってても、いざ所長と代理が文化祭に来たいって言ったら素直に渡すけどね。元から渡すつもりだし。義父である貞雄さんはそもそも学校の理事長だからチケットは必要ないんでね。

 つまりちょっとだけ特別扱い、これで納得してくんないかな…うん、無理か。

 

 

 

 

 それはそうと、この陰鬱系しりとりはだいたい十分程度続いた後。俺が普通に負けました。

 

 言葉責めに『る』攻めまで駆使して来るんだから大人って汚いね。人間不信になりそうだよ。フォンセルランドさんは人間じゃなくて人形だったな! クソが…!

 

 

 

 






御意見・御感想・御評価、質問疑問、誤字脱字等々ありましたら賜りたく存じます。

や、優しくしてね…!


追記

いつぞやかは大変申し訳無い事に存知上げませんが、御評価賜っておりまして嬉しく思います。
(歓喜で)泣きそうです。
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