はい!こちら『愛に溢れる探偵事務所』です!   作:枯華院 清日

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ゴールデンなにがしなので二個目です。
私には関係ありませんでしたが。


学校生活 たのしいひとたち2

 

 

 

 

 

 

春の浮ついた空気はそのままに、高校デビューや新学期デビューが知り合いとか同級生にからかわれて落ち着く頃。

どこか浮足立ったクラスの雰囲気ってのも少しは落ち着いた空気になってくる。まぁね、とんでもない問題児でも居ればクラス変えがあったりするのかもしれないけどね。

そんなヤツは居ないのであっという間に平常運転。いわゆるゴールデンウィークの後には試験もあるから、いつまでも腑抜けたまんまじゃいられないのもあるんじゃないか。

 

「今日は身体測定と体力測定があるから、総合と体育の連続だぞーさっさと着替えとけよー」

「えー…」

「えーじゃなくて返事はハイだ。んじゃ号令」

 

そういえば今日はそんな日だったか…。

普通の体育と思ってたが、朝から測定があるとは忘れてたぜ。これは去年の雪辱を果たすチャンスだ、せめて一種目くらいはクラスで一番になりたい。

うん、無理そうかな…まぁいいか。着替えよう。

 

学校の身体測定の類は、今の日本でも昔と大差は無い。視力聴力身長体重、あと座高とか。実に一般的だと思う。

視力と聴力は人より良くて、身長もまぁ普通の百七十ちょっと。体重は…まぁその…結構重い。

体型自体は普通なんだけどな、諸事情ってヤツだから気にしてない。

 

「おっす當真、身長どうだった?」

「一センチ伸びてた。お前は?」

「………」

「ごめんて、悪かったって」

 

人の測定表を覗き込んで勝手に絶望したコイツは土屋大輔。ほら穴住まいのツチヤッティことホビットになっちまったヤツだ。

意外と知られてないが、ホビットの方々は手先が器用で目が良い。しかも投石とか弓も得意なので、土屋は野球部のエースピッチャーだ。

 

下から投げ込まれる訳のわからない豪速球と異常なコントロールの良さから、一年生のころからずっとうちの野球部の秘密兵器として扱われている。

身体能力高めの俺があんまり体育で目立てない理由その一でもある。

 

「ボクは百八十の大台に載ったぞ?」

「空気読めよ!」

「…く、悔しくないぞ…チクショウ…!」

「森山くんサイテー! ツッチー泣いてるじゃーん!」

「滅べエルフッ…!!」

「あれぇ…? ごめん…」

「なんだよスラッとしやがって…!」

 

土屋になんの気無しに燃料を叩き込んだのは森山、囃し立てたのは俺。だが俺は謝らない。

 

森山はエルフで文芸部、見た目こそスラリとした身長にサラリとした銀髪碧眼の見た目こそイケメン野郎だが。基本的に空気が読めない、あと運動が得意なのに苦手。走るのは速かったりするが、何もない所で足を挫いたり、ボールを投げれば肩を痛め、受ければ突き指を毎度のようにする。

 

付いたあだ名は、その見事な怪我っぷりからスペ森というのと、その見た目と中身の違いからガッカリエルフ、下の名前は琉希なのに誰も呼ばない。

 

土屋と森山は仲が良いのでデコボココンビと言われる、でも身体測定の時はコンビ解散の危機だ。

理由? 無自覚な言葉の暴力が土屋を襲うからじゃねぇかな。

 

「おう男子、そんなところで騒ぐ前に、終わったら校庭に出て女子と交代だ」

「キャー! アイ先生のすけべ!!」

「當真はあれか、反省文とか書きたい気分か」

「校庭行きまぁす!」

「おう、土屋と森山もさっさと行けよー」

「はーい」

「はーい…その前に真中先生」

「なんだ?」

「真中先生ってすけべなんですか…?」

「森山ァ!!!!!」

 

うぉ、すげぇ声…。アイ先生キレ過ぎだろ。

森山がまた何か怒らせたんだろう、ツッコんだら負けだな。

 

 

 

 

 

 

 

神はいないだの、神は死んだだのはよく聞くセリフだ。しかしこの日本には居る、ちなみに転生してきたってヤツも結構いる。

 

でもなぁ、万能じゃないんだよなぁ。大抵の神様ってヤツらは多神教よろしく限定的な能力で、おおよその転生者はダンジョン攻略に勤しんでる。

確かにそいつらがダンジョンから金銀財宝を持って帰って来たってのは聞くが。この世の中をしっちゃかめっちゃかにしてくれた噂そのものをどうにかしてくれた事はない。

 

知識チートが通用しないって叫ぶ奴もいるらしいが、そりゃ宇宙人いるもん。せめてUFOを作ってくれ。

自称友好的な善良宇宙人は民間人を乗せてくれないんだよ、ケチだよな。悪の侵略宇宙人はご老人が病院行く時とかに乗せてるのに。

 

それで、なんでこんな愚痴っぽい話になってるかっていうと。

 

「真中せんせー、体育館が焦げて穴空いてまーす」

「またか…」

 

こういう事だ。

うちのクラスの女子に一人、転生者がいる。ついでに自称女神様もだ。

連中が喧嘩しだすと規模がデカくなりがちでロクなことにならない、巻き込まれるこっちの身にもなってほしい。またなんかやっちゃいましたか? じゃねぇよ、器物損壊罪だよ。未成年でも捕まるからな?

 

「仕方ないからシャトルランとか長座体前屈も外でやるぞ。ほら、手ぇ空いてる奴は器材運び出せ、それと倉庫行ってライン引き持ってこい」

「横暴だー!」

「何で俺らがー!」

「神は死んだ!」

「喚くな喚くな、測定とか含めて全部さっさと終わったら自由時間にしていいから…」

「マジかよ!」

「天使かな? アイちゃん先生だったわ…」

「神はいた!」

 

サンキュー転生者と自称女神様これからもどんどん転生なりなんなりしてくれ。よく考えたらそう何度も転生しちゃダメだな。まぁ、なんか…幸せになってくれ!

 

よーしこれで合法的に授業が潰れ…。いや待てよ、これアイ先生は元からそのつもりだったんじゃねぇか?

 

「當真もぼーっとしてないで手伝ってやれよー」

「うーす」

 

くっ…健全な男子高校生を手玉に取るとは…。恐るべしアイ先生、しかし自由時間の誘惑の前には流石の俺も屈するしかない…!

 

 

 

「あッ!」

「森山!?」

「せんせー森山が何もない所で転びましたー」

「水で洗ってこい」

 

そんな。

 

「指がッ!」

「森山!?」

「せんせー森山が遠投で突き指しましたー」

「どうやってだよ、保健室で冷やしてこい」

 

こんなで。

 

「片付けたら今日は終わりな。出来なかった種目は後日やるから、森山は安静にしてろよ」

 

アイ先生の一声と共に身体測定と体力測定は無事に終わった。いや…一人無事じゃなかったけど、よくあることだからいいか。そんなことより!

 

「ドッヂやろうぜ!!」

「おっし、ボール持ってこい」

「線は?」

「足でやっちまおう」

「チーム分けっか」

 

俺好きなんだよね、ドッヂボール。

多少は怪我人も出るかもしれないけど、そんなにあからさまな格差みたいなのが無いじゃん?

狙われても避けりゃ良いんだし、当てても当たっても最後はノーサイド。健全なスポーツだよ。

 

「モテぐ…淋代チームとその他俺らな」

「當真? 何か妙な言葉が聞こえたんだが」

「デュエル開始ィィィ!」

 

俺好きなんだよね、ドッヂボール。

他意は無いよ? 健全なスポーツだよ?

…ゴングを鳴らせっ! 戦闘開始だっ!

 

「そのキレイな顔をふっ飛ばしてやるッ!」

「スポーツマンシップはどうした!?」

「こちとら帰宅部だぜ!」

「やっちまえー!!」

「こいつら最低だ!」

 

俺はスポーツマンじゃない、なので正々堂々なんてお題目もない。まず狙うは颯だ、こいつだけは最初から狙わないとどうにもならない。

大丈夫、顔面セーフってあるじゃん? それをアウトな顔面にしてやるってだけだから。

 

「前が見えねぇようにしてやらぁ!」

「フッ…!」

 

あっムカつくゥ~!

なにそのクールな回避、空中で身を捩って俺が投げたボールを事も無げに避けやがった。冷や汗一つかいてないじゃん、おのれハイスペック野郎。

 

「返すぞ!」

「イケメンの球なぞ当たるかボケぇ!」

 

颯は外野の連中から投げ込まれた球を片手で回収してから、意趣返しに俺を狙ってくる。

ただ顔が良いだけじゃない奴はこれだから困るぜ。他の連中は手足の付け根を狙えば割かしどうにでもなるんだが、コイツは避けるし受けるし反撃するしで滅法強い。

でも俺も負けたくないからちょっと全力で飛んだり跳ねたりする。誇張じゃなくて少し飛ぶよ、三メートル程度だがな。

 

「こういう時でもなければ、本気を出さないのも相変わらずだな!」

「じゃあ本気に免じてやられてくれよな!」

「無用な怪我は御免被る!」

 

避ける、受ける。当てる、当てられる。

俺のチームも颯のチームも、ついでとばかりに外野行きが増える。

 

実際のところ、特別憎いからって理由でイケメン&彼女持ち対俺らって分け方をした訳じゃない。戦力的な偏りを無くすためにやってるのが大きい。

ドッヂボールを率先してやったのも同じ理由だ。野球を選んだ日には、土屋が本気で投げたらほとんどワンサイドゲームになる。

他の大人数でできる競技も同じ、誰かしら本気を出して隕石でも降らせたら男子全員で反省文と説教が待っている。

その点ドッヂボールは手加減しやすいうえに、屋外なら何も壊す心配が無くて良いってワケ。

 

「お前らー、そろそろ片付けろよー!」

「あれ、マジか。そんな時間経った?」

「終了五分前といったところか」

 

ジャージ姿のアイ先生が声掛けしてくる。思った以上に熱中してたみたいだ。

いいよなドッヂボール、童心に帰るってのはこういう事を言うんじゃねぇかな。俺ら高校生だけどな。たまにはこういう、ギャーギャー喚きながら身体を動かすのも、楽しい学校生活の一部だと思う。

 

 

 

全力で動くとその分疲れる。それは当たり前の事で、ついでに腹も減るのはご愛敬。昼休みまではまだ遠い中休み、じゃあどうするか。

 

「購買行くかぁ」

「オレも行こう」

 

そうだね、購買だね。弁当といった手札しかなければ別に補充をするのだ。これもまぁ普通だな。

颯も腹が減ったのかついてくるみたいだ。

 

「二人とも購買行くのん? じゃあ惣菜パン買ってきて」

「あたし甘いの〜」

「おにぎり二つ」

「炭酸もよろしく」

 

うわぁ急に面倒になってきたぞ。クラスの半数近くが自分の食べたい物と飲み物を頼んでくる、全員自分で買いに行きなさいよ。頼みすぎだろ、流石に二人でも持ち切れねぇよ、まぁいいけどさ。

 

いい感じの疲労感と春の陽気、この後の授業と午後からの授業も寝ないようにしないとな。それと買った分の徴収も忘れないぜ。

 

 

 

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