はい!こちら『愛に溢れる探偵事務所』です!   作:枯華院 清日

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春・イズ・オーバー

 

 

 

 

 

 

 勇気を振り絞る。

 

「あ、あの!!」

「どうかしたかな、レイリー・ケイス転校生」

 

 初対面の人と話す時、その緊張感はいつだって変わってくれない。無茶であろう要望を通そうという場合なら尚更。

 

 忘れないでほしい。私レイリー・ケイスは表情や動きに出ないだけで、緊張自体はします。

 

「わ…私も付いていきます!」

 

 上擦った声、これを聞かれるだけでも恥ずかしい。

 でも、今言わなきゃダメだと思った。

 

 少しだけ、嫌な予感がしたから。

 

 

 

 

 

 

 

 かすかに開けた車の窓と、縁取られた景色から見る木々の緑が目立つ時期。

 いつも歩く時も同じで、空気に混じる土と植物の匂い、それと排気ガスの臭いがある。

 

「あの…」

「酔いましたか」

 

 いえ、乗り物酔いはしない方です。

 何だったら船も平気です、鍛えてますから。

 

 淡々と話す人は、この車の運転手さん。名前は知らないけど、揺れないように、速度も出し過ぎないように運転してくれているのはわかる。

 

「ご迷惑をおかけして…すみません…」

 

 私が言い出した純然たるワガママ。

 彼について行きたい。

 

 うんうん、これだけならいい感じにヒロイン感があるよね。あの瞬間の最大風速だけなら地球規模でヒロインだったよ私。

 ただし、間違い無く危険な場所についていく、というお荷物系ヒロインのそれなのがよろしく無いかもしれない。でも護身術なら覚えがあるから、酷評は避けられそうでしょう。

 

 それはそれとして、現在進行系で迷惑をかけている運転手さんには頭を下げるべきだと思った訳ですね。私は意外と慎み深いんですよ。

 

「お気になさらず、宮河さんも気にしていないと思いますよ。本当に駄目ならその場で断っているはずですし…こちらも無茶振りには慣れてますからね…はは…」

「そう…なんですか?」

 

 そのまま、そうなんです。と言って苦笑いを浮かべる運転手さん。さっきまでの淡々とした様子はどこかに消えて、今は凄い哀愁を感じますね。

 そういえばこの人の名前は何と言うんだろう、いつまでも運転手さん呼ぶのも妙な心地がして落ち着かない。

 

「あのぅ…運転手さんのお名前は…」

「あぁ…先に言っておきますが、偽名です。こちら八木と申します、よろしくお願いします、レイリーさん」

 

 偽名…!? 

 しかも事前に言うの!? 

 

「万一にも親族に累が及ぶ事の無いように。という事で、仕事中は本名も明かせませんし、何なら職業を家族にも話せないんですよ…」

「それは、大変ですね…ご家族にもって…」

「いや本当に大変なんですよ! 最近娘がね。

 パパ、お仕事してないの? 

 って言ってくるんですよ!? 妻には警察みたいな仕事だから、機密性が高くて教えられないって言えるんですけどね。娘はまだ幼稚園児なので、仕事の内容をちゃんと言えない父親がまるで働いてないように見えるみたいで、お父さんは悲しくて哀しくて…」

 

 変なスイッチが入っちゃった。

 事務的な態度が雲散霧消して、感情爆発。ちょっと面倒な事になっちゃったかな…。

 

「お子さん、まだ小さいのに賢いんですね…」

 

 こういう時の処世術。

 とりあえず褒める。

 

 こういった親バ……子煩悩な人は、何はともあれ子供を褒めておけば間違いない。

 

 例えば、赤ちゃんを見た時。どう見ても男の子だとしても、女の子ですか? と言っておけば正解。

 男の子なんですよ、と訂正されても。可愛くって女の子だと思っちゃいました、とか言えば丸く納まるってお父さんが教えてくれました。

 

「そうなんですよぉ~、まだ小学校にも行ってないのに足し算引き算も出来て漢字も書けちゃうんですから。もしや我が子は天才なのでは? なんてよく妻と話しちゃったり…最近なんて、寝る前に絵本を読み聞かせようとしたら自分がやるなんて言い出して…。実はウチの娘って天才で天使だったりするんですかね?」

「それは…凄いですね…」

「でしょお〜!?」

 

 本当に凄いですね、何がとは言いませんけど。

 

「でね? つい一昨日も…」

「……」

 

 まだ続くの!? 

 

 それから車内にいる間中、隙間無くねじ込まれる八木さんの親バカトークに、メンタル的な何かを削りに削られて限界を目前にした時。

 

「それで、おゆうぎ会の振り付けを家で練習して…。あっ着きましたね、宮河さん達が乗ってた車も止まってますし…そうそう振り付けといえば」

「ありがとうございました、太陽くん達は先に行ってるんですよね?」

「…えっ? えぇ、そのはずですよ」

 

 我ながら冷たく早口で、親馬鹿マシンガンを遮ってしまった。ちょっと落ち込んじゃったかな?

 少しだけ声のトーンが下がった気がします。

 

 でも、流石にこれ以上は辛いので許してほしい。初対面の人から繰り出される子供自慢は、体力や精神を削ぎ落とす一種の武器ですよ。

 

「まだ娘のカワイイエピソードが…」

 

 恐ろしくバリエーション豊富ですね、聞かなかった事にします。というわけで、恐怖の一方的カワイイトークから逃げるように車から飛び出た訳ですが。

 

「…どこだろ…」

 

 彼らの所在を聞いてませんでしたとさ、これが片手落ちってものですよ。

 

 ポツンと一人は慣れたもの、けれども、この場合は話が違う。どうしようかな…。

 

 とにかく探す…にしても、入れ違いになったら間抜け過ぎる。八木さんの所に戻れば何らかの連絡手段があるかもしれないけど、やっぱりそれはナシで。

 

 困ったな…とりあえず入り口で待っていても仕方ないか。広い方へ向かってみよう。

 

 上野公園。

 

 いつもは昼夜問わず人の往来から観光客の皆さんが引っ切り無しに押し寄せて賑わう場所。

 単純に観光スポットといえばそう。近くに博物館とか美術館もあるから、歩くのが好きじゃなくても時間は幾らでも消えていく。

 

 花の見頃であれば、人の多さは尚の事。

 花見が禁止されていても、抜け道を見つけてどうにかしようとするのが人の業ってものかもしれない。

 

 ソメイヨシノはすっかり瑞々しい黄緑色で、他の品種の桜は花がちらほら残っていて。視線を落とせばツツジも健気に咲いている。

 

 人の気配が無い、なんとも不思議な状態の上野公園では。植物の色とりどりな生命賛歌が聞こえるだけ。

 

 こういった、人が一切見えない時。堂々と道の真ん中を歩くかどうかで、その人の陰だのパーリーピーポーだのの適正が見える気がする。

 私はもちろん、端っこを歩きます。それが何か? 

 

「…ん」

 

 しゃらしゃらと柔らかい葉が擦れる音。

 髪型を崩さない程度に優しい風が吹いてる。

 

 散歩にちょうどいい季節と気候。

 目的は散歩じゃないんですけどね、ふと疲れた時に道端へ目をやった時、一輪でも花が咲いていたら心が和むでしょう。同じです、同じ。

 

 そう、きらきら光る、私よりよっぽど大きな木の若い葉っぱ。背の低い木の、小さくて濃い緑の葉っぱ。

 

 もっと奥に視線を移すと、陰になって更に濃くなる木々の色と、倒れている人の肌色が補色になって…。

 

「…!?」

 

 いい感じに流すところだった。人が倒れてる。

 

 ちょっと日常生活においてはパンチが効きすぎてませんか。サスペンスとかホラーの導入じゃないんだから。公園内に転がるゴミみたいに、そう簡単に人が倒れているのは変な事なんですよ。

 

 うわぁ…どうしよう…。出来れば近付きたくないなぁ…。怪我人にしろ病人にしろ、一般的な人の立ち入りを禁止している場所で倒れているなんて、絶対ロクなものじゃないよ。

 

「う…」

 

 あっ! う、呻いてる!? 

 えっと…えっと…。こ、こういう時は声掛けだよね? 

 

「あの…大丈夫ですか…」

「う…う…」

 

 声、小さ過ぎたかな…。

 頑張れ私、もっと近付いて、ワンモアセイ。

 

「あの……っ!?」

『生きてる、生き。し、死ね』

 

 返答が死ねってどうなんでしょうね。

 

 さっきまで唸っていたのは罠だったと、言うまでもなく元気一杯に飛びかかってくる人。

 …遅いかな。

 

「………」

 

 多少驚いた。でも動きが緩慢かつ直線的過ぎる。

 のんちゃんなら、スロー過ぎてアクビが出るのんって言う速度。本気を出した太陽くんの十分の一以下、私にとっても遅すぎる。

 

 一歩跳び引いて避けるのに十二分。

 人みたいな何かはそのまま地面を抉り壊した。

 

『千切って、殺る、千切る』

「これが…」

 

 ちょっとショッキング映像だ。

 物騒な事しか言わない何者か、その全体は、およそ半分欠けている。四肢の中で、下肢が足りていない。

 

 これが『てけてけ』…。

 

 本来上半身と下半身を結んでいる筈の脊椎らしき何かが、ぶらりぶらりと揺れている。こちらを見据える目は血走って、焦点も定かではない。

 人がぶつけてくる敵意や殺意のそれではなく、獣じみた本能が私に向けられていた。

 

 なんとなく、今日は付いていかなきゃいけないと思った予感。その正体がこちらを睨んでくる。

 

 手を、懐に忍ばせる。

 もう一度、来る。

 

『し、死…!?』

「……」

 

 ──パンッ!! 

 

『ぎぃ!? いぃぃ!?』

「……ふぅ」

 

 新緑を上書きする火薬の臭い。

 木々のざわめきを塗り潰す銃声。

 撃ち落とされた怪物。

 

 スイッチガンってご存知でしょうか。

 展開前はちょっと大き目のカードケース型銃器で.22口径の弾を五発装填可能な護身に最適な優れもの。

 

 いわゆる抜き撃ちだったので、外さないか不安もあったけれど。肩に命中させられました。普段の練習の賜物か、それとも放物線を描いて飛び込むしかない相手だからか…まぁ前者のお陰かな。

 

 ありがとう、お母さん。やっぱり護身術って凄いね。

 ちなみにゴム弾なので安心してね。滅茶苦茶痛いし、骨も折れかねないだけだよ。というか狙ったから、鎖骨は折れてるんじゃないかな。腕が動いてないもん。

 

 ……自分の事だけれども、案外冷静です。

 恐らくは痛みにもんどり打っている『てけてけ』、うぅん…とりあえず、縛っておこうかな。テグスで後ろ手に。うん…『噂』で変わってしまっても、痛覚ってあるんだなぁ…。

 

「おい!! 何かすげぇ音が聞こえ……レイリー…?」

「あっ…」

「えっ」

「あちゃあ…」

 

 何という事でしょう。万が一見られたらまずい現場を見られてしまいました。

 具体的に言うと、元気よく暴れる上半身だけの怪物を縛り上げている最中の現場です。

 

 決して勘違いしないでほしいんですが、これは私個人の趣味じゃなくて、必要に迫られてやっているだけなんです。人気が無いとはいえ、公の場で緊縛を楽しむような倒錯的趣味を持ち合わせているんじゃなくて。

 

「お前…そういう趣味が…?」

「…違くて…」

 

 ほらぁ! 

 やっぱり変な勘違いされてるー!! 

 

 違う、違うんですよ。私は至って健全な一般的女子高生であって。見てください、縛っているのも両手を後ろ手にギッチリ縛り上げているだけで、邪な感じとか、ほんのり猥褻な感じがしないじゃないですか。もう具体名を言ってしまえば、亀甲縛りとかじゃないんだからセーフ、たぶんセーフ。

 

「…あと、その銃…銃だよな?」

「あっ」

 

 し、しまい忘れてたー!? 

 

 ど、ど、どうしようか。落ち着いて私、冷静になって。ここは一つ、客観的に見てみよう。

 

 女子高生(私)の直ぐ側で、拘束された何か(怪物)、その傍らには銃っぽくない銃。しかも硝煙反応とか出るくらい撃ちたてほやほや。

 

 どう考えても事件です。

 しかもバッチリ探偵事務所務めの人に見られてます。

 これは…ダメじゃないかな!? 

 

「……」

「……」

『がぁぁぁ! ぎぎぎぎ!!』

 

 …答えは沈黙! 

 

 やだ…太陽くんってば、そんなに熱心に見つめないで。見つめ合うと素直にお喋り出来ないって言うじゃないですか。私もほら、緊張しちゃうから。

 

「………」

 

 そ、そんな。無言で近付かないで。これはひょっとしてアレですか、お前の秘密をバラされたくなければ、ちょっとえっちな感じのお願いとか聞いてもらおう的な話ですか。私はアリですけれども、そういうのは時間と場所を弁えて、そもそもお付き合いをしてから手順とかムードとかを考えて…。

 

『ぎぃぃ、死』

「うるせえ!!」

『ぬわぁー!?』

「えっ」

 

 あ、あれ、違ったの? 

 身動き出来ない『てけてけ』に、彼の拳が叩き込まれると。下半身の無い何かは、風に吹かれる塵みたいに掻き消えた。残ったのは縛っていたはずのテグスと、命中したゴム弾のみ。

 

 メリーさんから聞いていたけれど。本当に彼が力を込めて殴ると、怪物でも何でもどうにか出来ちゃうんだ…。嫌な予感がして付いてきたのに、ひょっとして手助けは要らなかったりしたのかな。

 

 探偵事務所のアルバイトって凄い、私はそう思った。そういう事にしておきます、落ち込んじゃいそうなので。

 

「…まぁ、なんだ。たぶん正当防衛なんだろ? …だよな?」

「あ、うん」

「じゃあそれで…うん、良いんじゃねえかな…。とりあえず今は薬莢とか色々拾って帰ろうぜ、会長は事務所まで送ってくれねぇってさ。マジで面倒な人だよな…アフターケアくらいしてくれってのに。学校で会ったら文句の一つも言わねぇとな…危ない目に遭わせやがって」

 

 いいんだ…。確実に銃刀法違反の現場を見逃すとは懐が広いね、太陽くん。次からは証拠が残らないようにするから安心してね。

 

「追求されなくて良かったって感じの顔してるけどさァ…色々聞きたいんだからな、マジで。機会があったらヴァイスさんとか店長さんに聞くからな?」

「…あっ、ツツジが咲いてるよ」

「誤魔化すのヘタクソか??」

 

 嘘がつけないタイプなんです、褒めていいよ。

 

 

 それから、普通に事務所に帰りました。

 彼が言っていた通り、車がないので徒歩と電車で。

 

 

 急な用事の連絡も無いし、ちょっとだけゆっくりと。

 彼はチェーン展開している珈琲屋さんで一杯奢ってくれたりして。理由は、さっき助かったからだって。本当かな? 

 それで、ベンチで休んだり、電車に揺られたり。

 

 これってひょっとして…デートなのでは? 

 

「昼過ぎちまったけど、腹は減ってねぇか? ついでにドーナツでも買って戻ったりしちゃう?」

「いいの?」

「いいんだよ、お土産買っておけばフォンセルランドさんもとやかく言わねぇって。あ、もしかしてドーナツ苦手だったか? コーヒーに砂糖とか入れないし、甘いのがそもそも好きじゃなかったりする?」

「コーヒーは両親の影響、甘いのは平気だよ」

「…そっか…ご両親の、ね…。

 ……あー、そんじゃあドーナツ屋寄って行こうぜ! レイリーも普段の昼飯ってパンじゃん? ドーナツはパンに入りますか!? 原材料的に十割パンだからセーフだよな!」

「…うん、行こう」

 

 …ちょっと地雷踏んじゃったかな。誤魔化すようにとりわけ元気に話してくるんだもん。

 気をつけよう、うん。

 

 それにしても私の珈琲の好みとか、普段のお昼ご飯とか覚えてるんだ。珈琲を奢ってくれた理由もそうだけど見た目のヤンチャな感じとは裏腹に、やっぱりマメな人だね。そういう所もいいよね、いい、グッド。

 

 

 

 春一番よりはずっと弱い、日陰に入れば冷える春風の中。ゆっくり目に歩いていても、いつしか目的地には着くもので。

 

 後ろ髪を陽気に引かれる思いで、事務所に着きました。彼なりにゆっくり歩いていたのはわかりますけどね、私の歩幅に合わせてくれていたんだから。でも、もう少し遅くてもバチは当たらないと思うよ。

 

 仕事中だからダメ? 

 確かにそうですね。

 

 

 

「ただいまっすー」

「戻りました」

「…意外に早いですね、おかえりなさい」

「普通じゃないっすか?」

 

 出迎えの言葉はメリーさんからのみ。

 所長さん達はまだ戻っていないのだろうか? 

 

 代理の座席はその持ち主が居ないから日差しを受けているし、所長さんの席に置いてあるパソコンは電源が落ちていて、これもまた光を反射しているだけ。

 

「うら若き二人が白昼堂々と出掛ける口実を得たというのにも関わらず、ご休憩も無しにちょっと寄り道程度で戻ってくるとはどういう了見ですか!? 花は咲き誇っていて、猫は発情期で盛っているのに!! 太陽くんは枯れてるんですか!?」

「あっ、ドーナツっす」

「ありがとうございますぅっ!」

 

 メリーさんは絶好調ですね。春だからかな? 

 …たぶん関係ないですね。

 

「んもー、お姉ちゃんは心配ですよ。可愛い弟が折角のチャンスを見過して、見逃しの三振ばかりの打率ゼロ。コールドゲームで冷凍チェリーになってしまうんじゃないかと、気が気じゃないです」

 

 受け取ったドーナツを一つ一つ、愛おしむようにパクつきながら放たれる暴投スレスレの話題提供。

 内容に目を瞑って、その所作だけ見れば凄く絵になるんだけどなぁ…。

 

「気が気じゃないんじゃなくて、気が触れてる発言だよ。世間様が休みって時の昼下がりの言葉じゃねぇだろ、何でそんな下世話な話題になるんだよ」

「太陽くんの股間のバットが不甲斐ないという話ですが」

「オメーの頭で野球してやろうか!?」

 

 かっ飛ばしてますね。野球だけに。

 

 メリーさんの結構アレな話の振り方は、割とすぐ慣れたよ。郷に入っては郷に従えって言うもんね。これは慣れちゃいけないって言われたら、否定出来ないのが辛いところです。

 

「夜の運動会の種目はさておき…」

「まだ昼だって!」

「夜に関係のある事柄について、連絡がありましたよ」

「それってシモい方じゃないよね? レイリーもいるんだぞ、わかるかい色ボケ人形さんよォ」

「真面目な話ですよ? 嫌ですね、太陽くんったら…二人きりだったら、いやらしい話をしたいだなんて…」

「コイツ…!」

 

 太陽くんが妙に苦労人気質な理由を垣間見た気がするね。ちなみに私は自分の席でドーナツを静かに食べてます、珈琲とよく合って美味しいね。

 

「つい最近、不可解な事件が起きているそうです。夜、道行く女性が連続して襲われてしまうとか。

 お二人はご存知ですか?」

「いえ」

「一介の高校生が知ってる訳無いでしょ、ただでさえニュースだのは制限されてんだから」

 

 報道は噂の拡散に繋がる。そういった理由で大半の情報は、私達のような学生の耳には入ってこない。

 

 主な情報源といえば精々が新聞くらいのもので、それも検閲を挟むから、一日か二日遅れの事を知るので精一杯。本当に最新の情報を得ているのは、政府とか公務員さんとか。それと、その方々に何らかのパイプがある人たちに限られている。

 

 だから、夜に女の人が襲われるなんていうのは初耳。連続して、というのは珍しいだろうけど。それにしても、たまたま連続しただけじゃないのかな? 

 

「…その被害者達から、血が抜かれているそうです。しかも、人によっては木乃伊になって発見されて…」

「フォンセルランドさん。それって、つまり…」

 

 血が抜かれて、人がミイラに。ミイラになるまで血が取られたのか、それとも違うのか。人によっては、ということは、助かった人もいる? 

 

 血やミイラ、そんな物騒な言葉が巡って。脳内から舌先に出力されて過ぎったのは、あまりにも有名な存在の名前。

 

「吸血鬼…とか?」

 

 吸血鬼、きっと誰もが知っている存在だ。

 

 

 






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