はい!こちら『愛に溢れる探偵事務所』です!   作:枯華院 清日

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迷宮に人(の首)

 

 

 

 いつだって傍観者では事態は好転しない。

 耐え忍ぶ事の重要性が説かれる昨今ですが。相手が飽きるまで待つことや、口を開いて上を向いているだけでぼた餅は舌の上に落ちてこないこと。その単純さに気付いたのは、彼に助けられた後のこと。まぁ、ここではいいでしょう。

 

 とにかく。上を向いて歩いてもいいけれど、ただ座して待つだけなら埃しか口に入ってこない。それだけ。

 じゃあ何をするのかって? 

 女も度胸です。つまりそういうこと。

 

「……えいっ」

「ウワーッ!? レイリーお前、自分からトラブルに突っ込むなよォ!!」

「レイリーさんは意外な程大胆ですね」

「えっ何が? 何の話? おじさんわかんないんだけど」

 

 なんだ、太陽くんとオークさんは気づいてたんだ。

 

 さて。あなたは普通の女子高生です。ここは危険極まりないダンジョンで、目の前に中身の見えない不審なゴミ袋があります。どうする? 

 

 一、通報する。

 警察も消防もここにいません。

 

 二、見て見ぬふりをする。

 無し、次。

 

 三、中身を確認して対応する。

 やりました、とりあえずナイフで切って。

 

「ひゅ…こほっ…」

「………これは、ちょっと」

 

 開けてびっくり玉手箱…なんて生温い。

 

「ヒトの頭…というか」

「生きてるゥ!?」

「え、おじさんついていけてないんだけど?」

 

 咳き込むように動く頭部、ヒトの頭というのは間違いない。ただし、およそ目にした全員が停止してしまうような状態のもの。

 

「あなや…いのちばかりは、などかいきぎらん…ともうしますが…よもや…」

「…人って生首だけで喋れるんだね」

「人間とは凄まじい生命力を持っているのですね」

「喋れねぇよ!? 普通は死んでんだよ正気に戻れッ!」

「えぇーどゆことぉ? んー…やっぱり買おうかなメガネ、最近ピントが合い難くってさぁ」

 

 人が、首と頭だけで喋っていれば。

 誰でも混乱するでしょう。

 

「ウワー! 首が喋ってるぅー!?」

 

 ワンテンポ遅いよ竹塚さん。

 

 

 

 

 

 

 さて。

 摩訶不思議、奇々怪々、驚天動地…他にも並べればありそうな驚きを表す言葉。どれもが正解、どれかが該当する、そんな状況。

 

「えっと…お名前は…?」

「えっ普通に話しかけんの? マジで?」

「もうしわけなし…おぼえたらぬなり…」

「普通に喋れんの? っていうか古語??」

「太陽くん、ちょっとうるさい」

「俺が悪いの!?」

「こちたし…」

「アンタ今うるさいって言ったか!?」

 

 流石見た目と違って成績優秀者、古文もいけるんだね。私はちょっと無理かな。そもそもの話、古語かどうかもわからなかったよ。

 

「あぁー…えっとォ、今めかしき言の葉にて、うちいずべしや?」

「ええ…できます…」

「じゃあ最初からそうしてくれよ!?」

 

 あっ、現代語。よかった…一瞬で頭が真っ白でしたよ、元から白いけどね、髪色。

 

「いやぁちょっと…おじさん古典苦手でさぁ。ヤマカンが当たらないと高得点取れなかったんだよ。活用形とか無理でしょ、そもそも英語の文法とかもさぁ…」

「チヒロ、静かに」

 

 大人たちは現実逃避を図ってらっしゃる? あっ、オークさんはこの異常事態に際して油断無く槍を構えてますね、出来る大人。竹塚さんは見習ってね。

 

「じゃあ自己紹介…って、名前覚えてないって言ってたよな。どうするよ?」

「お好きに…お呼び下されば…」

「そう言われてもさァ…」

「何か普通に話してるけど、あれかい? 最近の高校生は植木鉢に人の頭とか埋め込む趣味があるのかい?」

「無えよ!?」

「呼び名ですか…二人称で呼ぶには確かに不便、しかし私には人間式の名付けはわかりかねます、三人は何かアイデアがありますか?」

 

 人に名前を…付ける…? 

 オークさん? 普通の女子高生は名付けという一大イベントに早々遭遇しないんですよ。ペットでも飼っていれば、ままある事かもしれませんけれど。我が家にペットは居ない。

 

「ワン!」

 

 キミじゃなくてね、というかそもそもキミは他の飼い主さんがいるでしょう。迷ってダンジョンに入り込むなんて悪い子なんだから。

 そういえば見つけた時に頑張って吠えていたけれど、ダンジョンオオドクガからゴミ袋…じゃなくて、この女性を守っていたのだろうか。そうだとしたら良い子だね、グッボーイ。次は迷子になっちゃダメだよ。

 

「…どうします?」

「おじさんにネーミングセンスを求めちゃいけないよ、妹の方が得意だったんだよね…こういうの」

「俺もちょっと自信が…」

「オーク式ならば人間・生首、といった名になりますが」

「却下だそんなもん!」

 

 全滅! 

 じゃあ何ですか「アレ」とか「ソレ」とか呼ぶって言うんですか、それは不憫どころの話じゃないでしょうが。人間なんですよ相手は、首から上しかありませんけれども。歴とした…にん…人間…ですよ、たぶん…。

 

「うーんと…よ、よぉしわかった、ここはフェアに行こうじゃないか。何かこちらの…あー生首の…お嬢さん? に因んだ名前といこう。好きな物とかそういうの。それで恨みっこ無しだぁ、いい考えだろぉ」

「それだッ!」

 

 えっ、それでいいの? 

 

「わたくしの…好きな…もの…?」

 

 ダメそうですよ? 

 

「いやもう何でも大丈夫、大丈夫だから! 本名を思い出すまでの間だから! 何ならもうカレーさんだって(仮)ならペンネームみたいでセーフだって!」

「はて、かれえ…ぺん…ねえむ?」

「…これダメそうじゃ」

「言うなレイリー…!」

 

 自ら死地に突っ込む気合、なるほどこれが大和魂? 

 たぶん違う気がしてきた。でも選択肢がこれしかないとあればやるしかない、そんな気もしますね。つまりは消極的賛成というものか。ひとまずインタビューと行きましょう。

 

「好きな食べ物は」

「…あの、あてなるもの…です…」

「あて…?」

「…けずりひにあまずらいれて、あたらしきかなまりにいれたるもの…」

「枕草子かァ? 何か甘いシロップをかけたかき氷の事だろ? 何だって一々古めかしいんだ」

 

 すっと枕草子の中身が出て来るとか、来年は受験生という意識があり過ぎますね。ひょっとして古文の単語や本文とか丸暗記してるタイプ? 

 今度教えてもらおう…古文と漢文。二人っきりになる口実も出来るし一石二鳥だね。

 

「受験勉強思い出して、おじさん体調悪くなりそう…」

「これが日本の古語というものですか、ふむ…?」

 

 まるで頼りにならない、あのオークさんまでも…! 

 本来はいわゆる言語体系が違うであろうオークさんはまだしも、受験勉強の記憶をふっ飛ばしている大人はいいんですかそれで。大人になったら学校の勉強なんて使わない、とかのたまうタイプですか。

 

「シロップがけかき氷ってのは…うーん…」

「申し訳…ありません…」

「いや、別にアンタが悪いってんじゃないから気にすることはねぇけど…。ああ、うん。むしろ意外な一面発見だろ、食べ物とか食べられるんだなって」

 

 頭と首だけですもんね。心臓の弱い方はご注意くださいって書かれてもおかしくない見た目をしているこの…人? 

 言葉遣いが異様に古めかしい以外に、素性を推理するヒントもある。かといって名探偵ではないので、全貌は無理。あくまで端々の枝葉末節のみ。

 

「んー…ってことは、元は身体があったのか? まさか最初からその状態じゃ無いだろ」

「はい…何故かこのような状態に…」

「後でちょっと試すか…ま、それはいいや」

「あっ! はーい! おじさんにねぇ、ナイスアイデアな質問がありまーす!」

「自分でナイスアイデアって言うんですね」

「あれっ、レイリーちゃん冷たい…!?」

「いいから進めてはどうです?」

「なんだぁオーク野郎ぅ?」

「早く話してください」

「アッハイ…」

 

 トホホ〜最近の若者は冷たいよぉ〜…なんて小芝居をうっている中年男性はほどほどにあしらいつつ。竹塚さんのナイスアイデアとは何か聞かせてもらいましょう。内容次第ではそこで大人しくイノシシの骨に齧り付いているわんこをけしかけますよ、骨にはしっかり火を通してあるからご心配なく。

 

「好きな花とかどうだい!? 食べ物飲み物よりは良さそうじゃないかい、えっダメ?」

「…まあ、良いんじゃないですか」

「やったぜ好感触、やっぱり女の子は花だよ花!」

「花は詳しくないっすよ、俺は」

「當真くぅん。それじゃモテないぞぅ、贈り物で無難なのは花だよぉ。バッグだアクセサリだってなると、後で売られるって事もあるんだから」

「花は…食べ物では…!?」

「オーク野郎は静かにしてなさいよぉ! おじさんの苦労話が漏れる所だったんだから、まったくぅ。脱線を止めてくれてありがとう!」

 

 脱線しかけの自覚はあったんですね。

 花…なるほど花、贈り物としてもよくある物で、ふと視線を落とせば可憐な花弁が心を和らげる。きっと誰しもそんな経験がある優美この上ない物。

 竹塚さんの不純な話はオークさんのナイスセーブで遮られて、うちの太陽くんに薄汚れた感じの話を浴びせないで済みました。えぇウチの子ですよ。何か? 

 

「花…ですか…」

「そうそう花、見たことはあるでしょ? なぁんか見た目が好きとか、花言葉が気に入ってるとか、匂いが一番好みとか…」

「…でしたら…瑞香が…好ましゅうございます…遠い昔…生け垣にあったような…沈丁花とも呼ばれますが…」

「おー! 沈丁花ね! 香木でも有名なやつだ!」

「竹塚サン、マジで花に詳しいんすか?」

「はっはっは、任せなさいよぉ。人に贈るタイプの花じゃないけど、おじさんデザイナーだよ? 花の一つや二つ造詣深くなきゃやってらんないよぉ!」

「へーぇ」

「…似合わな」

「シッ…やめろレイリー…!」

「聞こえてるからねキッズども!?」

 

 胸に秘めねばならないような思ってしまった事が、ついつい口から滑り出ました、失礼。

 でもね、竹塚さんの容姿が悪い面もあると思うんです。ブロッコリーみたいになりかけた伸ばしっぱなしの天然パーマ、服はヨレヨレ、無精髭がちらほら。これで花に詳しいとか詐欺じゃないですか、決して世の中の外見主義に迎合したい訳ではないですけど。

 

 そういう事を言い出したら私も見た目詐欺度合いが強いですからね、眼以外は真っ白の外国人ですから。なのに英語もドイツ語も出来ない、はい、周囲の期待を裏切る事に定評があります。ピザやチーズよりご飯とお味噌汁が好きです、はい。

 

「うーん沈丁花かぁ…ジンチョウゲ…あー…小分けにしてみるとか…んー…」

「ジンさんはマズいっすね、何かこう…名探偵が関わるタイプの名前になっちまう」

「じゃあチョウさん?」

「それも何かさ、色々とダメじゃん…!」

「ゲさん?」

「お前今までの話が人に名前を付ける為って忘れてねぇよな? ゲさんはかなりダメだろ」

「だよね」

「わかってて言ったのか!?」

 

 流石に本気じゃないです。日本的にゲさん何て名前を付けたらネーミングセンス壊滅の誹りを免れないどころか、後ろから刺されても文句は言えない。仮名だとしても名前って大事だからね。

 

「あっ! 別名でいこう!」

「ほう…学名や分類名ですか?」

「違う違う、そんな色気の無いもんじゃない。沈丁花は瑞香とも言うってこの人? が言ってたじゃない、まだ別名があるんだよ。やー思い出した思い出した」

「別名…?」

「ヒマワリがニチリンソウとも言うってのと同じです?」

「そうそうそれそれ。沈丁花はねぇ一里塚とかの距離の千里に、香りって書いて千里香。もしくは千里に香りを届ける花で、千里花って名前があるんだよね。

 だからセンリさんとか音読みにしてチリさんチサトさん…下の方を取ってリカさんってのでどうだい?」

「やっと真っ当な感じになってきたっすね」

「さようで…」

 

 生首さんもこれには同意。ゲさんよりはいいよね。そう、まるで上流階級を一度味わうと、その味が忘れられずにいつか身持ちを崩すみたいな感じの…これは例として適切じゃない気がする。

 

「じゃあ挙手制で決選投票といこうじゃないか、日本は民主主義に則ってるからね。本音と建前は大事だぞぉ」

 

 本音と建前の云々は迷宮の片隅に放置しておいて。

 結果だけ話すと、彼女? の仮の名前はリカさんに決まりました。必要かわからないけれど、名字を含めてチサト・リカさん。

 いつか本当の名前を思い出すまでの間、そう呼ぶことに決まりました。よろしくねリカさん、漢字で書けば里香さんだね。良かった…ゲさんじゃなくて…! 

 

 そうして便宜上のお名前を決めるまで長々と掛かった訳ですが、この異常事態に向き合うのはこれからが本番。迷宮に袋詰めされて捨てられた理由や、元の素性のヒント等々。覚えていないという理由以外で可能な限り答えてほしいものだ。

 

 よくある自己紹介はさっと済ませたところ、さあ本題です。何が出るかな? 

 

「じゃあチサトさん、本名は覚えてないらしいけど。何かしら覚えてることはあるか?」

「どうにも…あまり…」

「何でそんな状態で生きていられるうえに、話せるのかは心当たりがありますか?」

「いえ…」

「それでは…そうですね。あの袋の中で何故動けたのですか? 普通は死んでいるはず、というのは今は気にせず。どのようにして、何をしていたのかをどうか御教え願えませんか?」

「中の…空気が薄く…僅かに起きてはまた眠るように…その最中…また蚊ほどに呻き、蟻が如き動きしか…出来ませんでした…ゆえに…れいりい様、此度の仕儀…まこと有り難く…」

 

 ぽつぽつゆっくりと喋る人だ。そしてわかった事もぽつぽつとだけ。恐らく酸欠で意識を失っては覚醒してを繰り返して、ほとんど動けない所を私が助けた。それだけ。

 

 はっきり言って何もわかっていないに等しい。死体遺棄なのか、それともリカさんはこういう生態の何かなのか。それさえわからない。謎が謎を呼ぶどころじゃなくて、少なくとも事件性の有無は確かめたいですね。感謝の言葉はありがたく受け取っておきますけれどね。

 

「…八方塞がりですね」

「覚えてない…ねぇ」

「…申し開きもなく…」

 

 本当に何も覚えていないのか、それも判別しづらい。なんたって初対面、嘘をつくメリットの有無から、その時の癖がわかるわけでもない。

 

 何となく勘が働くこととして、悪意は感じないこと。そして怯えていること。この二つはなんとなくわかる。根拠は女の勘ってモノではなく…それも含むとしても、昔の経験からです。

 人の視線に怯えていた経験が長くなれば、そういったものに敏感にもなろうというだけ。

 

 結局、この人の処遇については決めかねる。関わった私からして、見捨てるという選択肢は選びたくない。でも連れて帰るのは…難しいだろう。愛玩動物じゃなくて生首ですからね、これは通報待った無し。

 警察等の然るべき公的機関に明け渡しても、取り調べどころの騒ぎで済まないのも明白。女子高生が生首を持って出頭というのはセンセーショナル過ぎる、明日の新聞の一面は私が独り占めだ。

 

 当然だが『噂』も回避したい。万が一にも私が猟奇的な首切りの犯人だという話が出回れば、いくら無実を主張したとしても危険極まりない猟奇殺人犯になってしまう。ここで普通の高校生活に別れを告げるにはまだ早い、何が悲しくてシリアルキラーにならなきゃいけないのか。

 

「なぁチサトサン、ちょっといいか」

「は…如何に…?」

 

 ここで太陽くんのインターセプト。あれですか『俺バカだからよくわかんねぇけどよぉ』的な一言と共に、問題の核心を突く閃きを見せてくれるんですか。

 そうは言っても彼はおバカキャラでも無いですが。成績だけで判断すれば学年トップクラスだし、むしろ私の方が並も並、中の上程度です。

 

「元は人型で五体満足…だよな?」

「ええ…左様で…」

「オッケー、じゃあちょっと向こう試したい事があるから持って……連れて行くぜ!」

「おいおい太陽キッズぅ、無体な事はしちゃダメだぞぉ。リカちゃんを見なさいよ、ちょっと震えて怖がってるじゃないのぉ。男の子はね、紳士的なくらいがちょうどいいんだぞぉ?」

「呼びましたか」

「お前ぇの名前じゃねーよ!?」

「ま、ま、悪いようにはしないっつうか…治療みたいなモンなんで。この後の話をスムーズにしたいからって事でちょっと飲み込んでくださいよ」

「…変な事しちゃダメだよ」

「しないってのォ!! じゃ、ちょっと失礼して…」

 

 まさかとは思うが…本当にまさかとは思いますが。太陽くんの性の癖が乱れに乱れていたとしたら。具体的に言うと、ちょっとスナッフに両足どころか頭部全体突っ込んでいる類の趣味だったらどうしよう。

 人の目の届かない所でR−18にGが付くタイプの行為に及ぼうとしていたら、後ろから撃ったほうが良いのではないだろうか。

 

 ──待ちなさい暴走しやすい私! 

 アッ、冷静な私!? 

 

 ──彼は歳上趣味で、なおかつ五体満足どころかボンキュッバーンの全身大満足の弾ける果実なボディが好みと風間くんが言っていたじゃないですか! 

 冷静に勝率を下げてくるのやめてね。それって淋代くんのお姉さんか、メリーさんじゃない。

 

 おのれもう一人の私ならぬ、冷静な私め…今に見ていろ…! いつか身長170くらいで、お母さんのようなメリハリボディを手に入れてやるんですから。というか、両親の血が入っているなら何故私はこのような…その…愛されボディなのでしょうか。環境、環境なのか、それとも牛乳とか豆乳とかキャベツなのか。なんだか全てが許せなくなってきた、私より肥沃な丘陵地帯ならぬ山岳地帯をお持ちの方は今すぐ九相図みたいに腐敗して白骨化してほしい。なる早で。

 

「レイリーちゃん、大丈夫かい…?」

「ずっと思案してますね」

 

 第一ね、もっと盛れだのと太いのが正義だのと煩いんですよ。出土された土偶じゃないんですよ、そんなに土偶が好きなら土偶を抱き締めて土に還ればいいじゃないですか。肉欲って言うだけに肉がそんなに好きか、でも人間いつもボリューム満点の食事ばかりが続くと食傷ぎみになるって言うでしょうが。世の中ね、サッパリしたものも需要はあるんですよ。誰がサッパリだ。ここはやはり、風間くんを強請って太陽くんのいやらしブックを徐々に同い年の小柄なアルビノ系ヒロインモノに替えて……。

 

「ホギャー!?」

「わっ…」

「えっ何なに、なんか生まれた!?」

「…いえ、あれは…?」

「あれ…?」

 

 シュワちゃんも子供を産む時代ですからね、太陽くんが誰かを産んだとしてもおかしくはないでしょう。

 …いやおかしいですよ竹塚さん、そもそもホギャーって言ったのは太陽くんだ。流石に赤ん坊と高校生男子の声は聞き間違えない。

 

「竹塚サァーン!! 服! 服持ってない!?」

「服ぅ? 予備の一式ならあるはずだけど…?」

「レイリーに渡して持ってきてくれ! 早くゥ!!」

「んんー? ま、いいけど…オーク、あったよな?」

「ええ、背嚢に…はい、どうぞ」

「あっはい」

 

 ふわりと渡された白衣にシャツとズボンのセット。洗い立ての匂いはしないまでも、人のニオイが全くしない卸したてそのもの。これを運ぶ? 何で? 

 疑問と衣服一式を抱えつつ、悲鳴の主の所へ小走りで向かう。まさかラッキーイベントでしょうか、彼の服がこう、ビリビリバーンとしたトラブルならぬトゥ・ラブるな展開が? 気付かないうちに少年誌の限界に挑戦する機運が高まっていた…? 

 

「はい服、どうした…の…?」

 

 衝撃。

 

「あら…れいりい様…如何なされし…」

 

 ところで皆様ご存知でしょうか。水着のビキニってありますよね、そう、あのビキニです。肌を隠す面積というか布面積そのものが少なめで小さなやつ。

 あれは二十世紀半ばの頃。フランス人デザイナーが発表したもので、発表した数日前のビキニ環礁で行われた原爆実験にちなんで名付けられたそうですよ。

 結局、何故それで名前がビキニかと言うと、そのとんでもない小ささと常識を超えた破壊力からですって。

 えっ、そんな事はどうでもいいって? それは確かにそう。まああれです、あまりの超自然的パワーで私の思考が吹っ飛んだだけです。私の思考力を奪った原因は、というと。

 

「…? …あ、どうなされましたか…?」

「は…」

「早くそれ渡してくれよッ!」

「あの…れいりい様…?」

「裸だー!!」

 

 全裸かつ爆発物みたいな身体をした、チサトさんが五体満足で仁王立ちしていたからです。

 仁王立ちは言い過ぎだったかも。

 うん。後で太陽くんの記憶を消せないか、真剣に考える羽目になりました。

 

 

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