セミダイブ!   作:小沼高希

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Captain of Robbers 7

さて、オフ会の伝統といえばカラオケである。知ってますかねみなさん。今は名前を変えているところも多いので街中で見る数が少なくなっている、なんか変なマシンがあって歌が歌えて大きな画面があって注文すると軽食が出る個室空間です。たいてい監視カメラがあるので不健全なことはやめた方がいいですよ。

 

「初めて来ました」

 

セキさんは楽しそうだ。わたしは昔家族で行ったことがある。家にテレビがなかったので大画面でみんなで小学校の時の写真を見るためのやつですね。おまけでちょっと歌った。今となっては懐かしい思い出になっている。

 

「あー……まあいいか……」

 

跳華さんはどことなく憂鬱そうだ。さっきまでの仮想空間の時のような元気さというか鬱陶しさにも片足入れた雰囲気とは違う。

 

「何かあったんですか?」

 

わたしは小声で聞いてみる。もし何かあるなら今からでもやめておかないと今後の関係が不味くなる時とかありますからね。

 

「昔酔って吐いてしまって迷惑かけた記憶が……」

 

「ああ……」

 

跳華さんは嫌な記憶がフラッシュバックするタイプの人か。わたしもそういう時はあるけど。嫌というか嫌になってしまった記憶というか。当時の自分がそれを無邪気に楽しんでいたのを思い出すと恥ずかしくなる時があるんです。

 

「まあ、一応未成年もいるし酒はやめておこうか」

 

「ですね」

 

かせくり氏にわたしは同意する。高校でも色々うるさかったんですよ。高校三年生になると十八歳になる人も増えて法的には飲酒できるのですが学校からは飲みに行かないようにっていうお願いがされているし条例でも避けるようにとかなっていたはず。

 

本来ある権利を奪うのはどうなんだという意見もあるし、そんな酷い飲み方をするのは古い世代だけだみたいな話もあったが少し前に死者も出ているからな、高校生のノリというのは恐ろしいかと思いきやお酒が二十歳以上でなければダメだった時代でも似たような事が起こっていた。やはり人類にお酒は早過ぎたのではないだろうか。

 

というわけで適当に歌を入れていく。今時の流行りは色々あるのは知っているが、よく動画とかでBGMがわりに挿入されていたり、あるいはドラマや映画の主題歌だったりと普通に音楽業界は元気だ。まあ確かに生成された音楽は普通にいいけどそれをプロデュースしたところで業界のメリットにはなりませんからね。

 

人間は物語が好きなので、作詞作曲演奏とかの過程に人間がいてそこで関係性があったり波乱があったりするとその曲を好ましく感じる習性がある。これのおかげで音楽業界を含めたエンターテイメントのあたりには消し去りようがない原罪的な闇が蠢いているのだ。

 

とはいえそんな事を考えていては楽しくないのでわたしはマイクを持って最近新盤が出たメジャーな人のやつを歌う。この作詞の人がテーマにする恋愛と呼ぶには淡くて友情というには執着が混じってしまったような感情が好きなんですよ。そこのあたりが一般層にも受け入れられているのはありがたいのだがその一方でわからないだろお前らという感情もある。辛い。

 

「ミドリさん、上手ですね」

 

間奏のタイミングでセキさんが褒めてくれた。どこまで社交辞令かはわからないけどそんな事を考えると楽しく無くなってしまうので頭の中の余計な思考を無視。

 

「ありがと、じゃあ次の曲は男女ペアのやつ一人で歌うか……」

 

「声、出せるんですか?」

 

「多少はね」

 

私が無意識で使えるようになるまで訓練した中性的なボイスと、それから少しだけ高くしたものと低くしたもの。少し調整して声を響かせる場所を変えれば一応男女に聞き分けられる程度にはなる。

 

とかやってるうちに歌い終わって跳華さんにマイクが渡る。さっき曲を入れていたはずだがどうなっているかな。

 

「……知らない曲ですね」

 

歌い出しからして激しめだが、歌詞は淡々としている。なんかすごいギャップがあるな。あと跳華さんこんな感じで歌うんだ。意外だった。

 

「私が子供の頃のドラマの主題歌」

 

ギターソロみたいなシーンでちょっと肩で息をしながら言う跳華さん。思ったより肺活量とかが少なさそうだ。

 

普段生きていて思いっきり叫ぶように歌ったり、下手とかどうかを気にせず好きな曲を好きに歌う機会は少ない。誰もが防音室を持っているわけではないのですよ。

 

「じゃぁ、俺か」

 

かせくり氏は有名なアニメの主題歌だった。上手い方ではないが楽しそうに歌うのでよし。あまりこの辺りはコメントしづらい。

 

「ミドリさんはこれ、知ってますか?」

 

次に歌う番のセキさんが選曲画面を見せてくる。そういえばこの手の端末はやっぱり頑丈さが重要だからか大きくてそれなりに重くできているんだよな。

 

「うん」

 

「じゃあ一緒に歌いましょう!」

 

「どっち歌いたい?」

 

デュエット曲で、声が重なる部分があったはずだよななんて思い出す。かなりメジャーなやつで、ミーハーなわたしでも何回か聞いたことはある。ミーハーってもう十分定着してるよね?かなり古い言葉だったはずだし。

 

「……高い声の方、お願いしていいですか?」

 

()()()()

 

調整。元気な感じで、通り抜けるような声。背筋を伸ばす。身体全体を楽器のように使う事を意識する。声については少しは練習したし、歌唱から朗読までざっくりではあるが知識はある。

 

最近ドラマか何かに主題歌になったやつ。確か最近デビューした人でかなり当たったって言われていたんじゃなかったかな。

 

前奏が流れる。しばらくはセキさんの歌う部分。やっぱりハリのある声だな。少年のものではあるが、比較的中性的と言ってもいい。ただらしさがそれなりに残ってしまっているというか。わたしは何を考えているんだ。

 

いやその、いわゆる中性的な声ってやつでもそれが自然に出されている場合にはどうしても癖みたいなものが残りがちなんですよ。そこをわたしの場合は訓練で潰しているんですが、セキさんはそのあたりが甘いというかそもそもやってないんだろうな。

 

やはり昔使っていた教材を提供するべきかな、などと考える。ただ使ってた音声分析サービスがまだやってるかわからないんだよな。

 

さてと、セキさんの歌う癖も大体わかったのでそれに合わせていこう。楽しく歌うのが一番ですからね。わたしはマイクを取って、セキさんの歌詞を追いかけるように歌い始めた。

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