セミダイブ!   作:小沼高希

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We shall not cease from experiment 10

換気扇を回し、新聞紙を敷いた上で作業を進める。こういう工作はいつぶりだろう。一応高校生の時に小物作った時が最後かな。結構最近だった。

 

船便で届いたガラス製のパーツはちゃんと確認したように完璧で、求めていた通りの出来だった。というわけできちんとメールを送って高い評価をつけておいた。こういうふうに人間ベースのデータは人間以外作れないので、別にAIに全てが取って代わられることはないと思う。

 

結局人工知能は今のところ主観的に楽しむために経済を回すということをしない。いやもちろんそういう風に作ることも出来なくはないのだが、そうすると何を楽しむかというのが少しわからない。チーフはあれ、何を楽しんでいるのかな。観察者としてのロールプレイ?それはこう、目的と手段がごちゃまぜになった本末転倒じみたものではなかろうか。

 

「あと少し……」

 

さらさらとした油のような液体を流し込み、ぎりぎりまで満たす。表面張力がすくないせいもあって、結構難しい。多少はこぼれても大丈夫だし、大量に吸い込むことでもしなければ身体には害があまりないはずの成分だ。しかしちゃんとゴーグルとマスクと手袋をしている。安全第一。

 

とはいえリストバンドで常に体調確認をしているし、この作業の前には設定を変えておいて異常があったらアラーム音を鳴らし、しばらく経っても反応がなかったら救急車を呼ぶように頼んである。ちゃんと連絡内容には住所データも入っているし、ドアの鍵も開けてありますよ、完璧だ。

 

「よし」

 

スポイトで吸った液体を垂らし、その後で栓になる透明パーツを入れる。少し液体がこぼれるが、こうしないと気泡が入るので仕方がない。

 

ぎゅっと押し込み、その後液体を拭き取って接着剤で止め、表面を削って球体にする。ここまでの作業は二回目で、すでに一つ球体ができている。

 

ガラス球は四つ注文したので、次は色を付けてみることにする。着色剤はそう高くなかった。全体でかかっている金額も、ワールドを二、三日かけて作れば払われる報酬と同程度だと考えると趣味を兼ねた課題としてはなかなか悪くないと思う。

 

「……固まったかな」

 

とはいえ安全のために数時間置いてから次の作業へ移ることにする。このあたりの手順書も人工知能任せなので、本当に昔の人はかなり大変だったんだなと思ってしまう。

 

なにかがあった時の対応を、常に一瞬でする必要があって、事前に予測することも難しいとなるとどうしようもないとしか言いようがないのではないだろうか。

 

「よしよし」

 

そんな事を言ってまたしばらくやって、今日の作業は終わり。楽しい土日がもう終わってしまった。いやまあ、別に他にもっと有意義なことできたかと言われるとこの工作が一番良いってことになりかねないんですが。

 

「……課題は、どうしようかな」

 

それはそうと年明けに提出の課題を課す授業がいくつかある。中にはもう課題内容が提出されて、いつ提出してもいいものがある。ただ実家に戻ってしまうとあのだらけた空気の中で何かができるとも思えないので、帰らないほうがいい気がする。それと単純に動く気力がわかない。

 

別にXR端末があればその場にいるような感じで会話はできるし、たまに連絡とかも取っている。前に帰ったときは水着を取りに行った感じだったな。楽しかったなぁプール。

 

大学は二月と三月はしっかりと休みなので、三人でまた遊びに行けることもあるだろう。あるいはVRでやれることも多いだろうし。

 

ああそうだ、そんな事をしていたらもう大学一年生が終わってしまう。一応クライマックスになるのは発表会かな。本来ならあれ大学三年生でやるやつだよ。大学院というところは起きて研究して寝るみたいな生活になる場所らしいので、大学生らしいことができる時間はあまり長くないのかもしれない。

 

「まあ、色々と苦しめるいい機会だと思おっか」

 

そうして身体を伸ばす。座って細かい作業をしていたからか、全身がかなりこわばっている。

 

実際にできた球体を持ってみる。水晶玉のように透明で、軽く手の中で回してみる限りはそこまで変な感じはない。ただ、ガラスならもう少し重いかもなという気はする。

 

「しかし」

 

そう誰に聞かせるでもなく言って振ってみる。手から伝わってくるのは揺れるようななにか変な感じ。屈折率をちゃんと調整してあるから、本来はそこにあるはずの二液間の水面のようなものはない。

 

「気持ち悪いよな……」

 

この違和感をちゃんと感じてもらえるか、そしてそれをXRでさらに上書きできるかどうか。発想は悪くないはず。たぶん。

 

ちなみにこれの作成にかなり時間を取られていて、メインのXRアプリケーションのほうはできていません。どうしようもない。

 

いやまだこの球体にも赤外線反射塗料をマーキングする作業が残っているんですよ。画像処理で透明を扱うってかなり難しいんです。人間だってたまにガラスの扉にぶつかったりするじゃないですか。

 

それを読み取って処理するのは基本的な画像処理のアルゴリズムなので基本的な組み合わせで大丈夫なはず。エッジ側でかなりの処理はできるだろうし、クラウドというか大学の計算資源をそこまで食うこともないだろう。

 

改めて説明すると学生は毎年度一定量の計算資源を使うことができる。ただ処理内容は基本的に全部記録されるので、自由に使えるからと言って危ないコンテンツを生成させたりするとよくない。そもそも国外と繋がるシステムでそういうの作ると違法になることもありますからね。

 

古き良き表現の自由の概念は東アジアではクリエイティブ方面の色々もあって重視されているけど、それ以外の地域ではじつはそこまででもない。EU法とかのあたりだと医療とか政治とか法律関連のコンテンツは許可が必要だしね。

 

一応日本も条約との兼ね合いでコンテンツの生成を業として行う場合には色々手続きが必要だが、個人でやる分にはなぜか問題ないのだ。そしてその主体が誰かみたいな法解釈をやると、基本的には自己責任ということになる。

 

「いやでも、プログラム書くのには大学のサービス使ったほうがいいかな……」

 

ソースコードとかを設計するのには専門のソフトを使ったほうが精度がいいし、デバッグがしやすいような様々なタグをつけてくれるので人間にもやさしい。ただ高いんですよねこういうサービスは。使用料が学費に入っている今のうちにいっぱい触っておくべきだろう。

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