『武蔵ちゃんを助けたい』   作:みたらしうどん

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 大変長らくお待たせしました。ぼちぼち更新再開でございます。

 編集報告:一部誤字修正。ベリルが特性『愛する者』を持っていると誤解されるであろう記述を修正。スミレの魔眼ランクをAからA+に変更。(描写的にそちらの方が相応しいと思われたので)

 それでは本編を、どうぞ!
 
 


立香とエドモン/スミレと■■■■

 

『──人を羨んだことはあるか?』

 

 男性の声。

 

『己が持たざる才能。機運。財産。

 それらを前にして、『これは()わない』と膝を屈した経験は?』

 

 ソレは『炎』だった。

 光り輝くモノではないにも関わらず。周囲を照らすモノとは対極に位置する存在であるにも関わらず。

 

 一目見て、俺はソレを『炎』だと思った。

 

 ……心当たりは、ある。

 

『答えるな。その必要はない。

 ただ、その心から目を逸らすな。ソレは誰しもが抱く故に、誰ひとり逃れられないモノ』

 

 知っている。ソレの名は、

 

『──〝嫉妬〟の罪』

 

 

 

 *

 

 

 

「あぁ、そういえば……『難所』って、言うほどじゃないけど……アレは、どうなるんだろうね……?」

 

 ぺぺとオフェリアは、第三か第四特異点で突然『先』が見えなくなる場合が多い。

 ……他のメンバーが辿る未来と併せて考えるに、これはおそらく『黒幕』が直接潰しに来たパターンだ。そしてあの二人は、『そこ』で諦めてしまう。

 

「いや、それは俺もなんだけどさ……」

 

 自嘲する。

 抵抗したとして、俺にこの管制室より『先』は無い。……そう『ここ』で諦めた俺に、二人の選択を講評する権利なんてありはしない。

 

 ──だからこそ、俺には()の気持ちがよくわかる。

 

「クハッ」

 

 嗤う。そして謳う。

 

「そうだ。歩め。足掻き続けろ。

 それは誰にでもできることで、だからこそ誰もが『できない』事実に苦悩するもの」

 

 キミが自覚していない、大きな武器。

 

「──〝勤勉〟の徳」

 

 体力が底をつく。眼が光を失っていく。

 

 心残りはある。

 それでも、最期に視る演目がコレならば……まぁ、文句をつけるほどではない。

 

 あぁ、待っていよう。希望で胸を膨らませ、俺はここで待っている。

 

「…………どうか、負けないで」

 

 俺はここで死ぬけれど。『生きてれば勝ち』とは、限らない。俺は、『死んだら負け』とは思っていない。

 

 ──だからどうか、どうか。

 

 それを、証明してほしい。

 

 …………。

 

 あぁ。

 永久(とこしえ)の、眠りが

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

「──()()()()()()()()!!」

 

 彼はそう言って、心底愉快そうに高笑いした。

 『魔術の王とて全能ではない』のだと、嗤っていた。

 

「やっぱり、これは()()()()の……?」

「──その真名を軽々しく言の葉に乗せるな。そんな調子では、ここを出てもまたすぐ別の地獄へ落とされるぞ? 口にするなら『魔術王』としておけ」

「……分かった。気をつける。でも、名前を言うだけでそんなに危ないの?」

「莫迦め。お前がここに居るのは、ロンドンでアレと目が合ったからだぞ?」

 

 なんでも『邪視』という魔術(?)らしいが……要約すると、『魔術王は全身呪いの塊だから、認識するのもされるのも、それだけでヤバい』とのこと。『ヤツにとってはそれで十分』なんだとか。

 

「だが──ククッ、クハハハハ!!!

 結果はこの通りだ! 残念だったな魔術の王よ!! ご大層な『眼』を持っているくせに、本質が見えていたのは()()()の方だったワケだ!!」

「──『あの男』って?」

「分からないか? あの場には二人のマスターが居ただろう。では何故()()()()がここへ落とされたのだと思う?」

「……俺が、魔術の素人だから」

 

 カドックは俺と違って、スゴい魔術師だから。元からあった知識で回避したか、自力で『邪視』を防いでいたのだろう。

 

「────」

 

 しかし、俺の答えを聞いた彼は……芝居掛かった空気が消えるくらい、ポカンとしていた。

 

「────くはっっ、クハハハハハハハ!!!!

 あぁそうだな! お前からすれば、そう思うのも無理はない話だった!」

 

 『だが』と、彼は続ける。

 

「実態は違う。

 確かにあの時お前達は見逃された。どちらも等しく『()()()()()()()』としてな。

 ──では何故、お前だけがここに居るのか。その答えは……ククッ」

 

「……答えは?」

 

「決まっているだろう?

 ──単なる『嫌がらせ』だ」

 

「…………嫌がらせ?」

 

「そうだ。

 魔術の王は、お前もあの男も脅威とは思っていない。ヤツにとっては現代の魔術師なんぞ、小蟻と大蟻程度の違いだ。同時に、お前達が使役する英霊も似たような認識だろうさ。()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だからな」

 

「不可能……」

 

「まぁ、そこの対策はお前が考えることではない。案ずるな。

 ──さて。時間も無くなってきたし、そろそろ察しの悪いお前にも分かるように言ってやるか」

 

「…………」

 

 できれば最初からそうして欲しかった。

 

「ハハハ、そう睨むな。

 今しがた話した通り、魔術王にとってはお前ともう一人に違いなんぞ無い。では『違い』を感じているのは誰だ? ──それは()()()()()に他ならない。

 カドック・ゼムルプス(あの男)()()()()()、『世界を救うのは藤丸立香(お前)だ』と信じているらしいぞ?」

 

「────」

 

「逆にお前を残し、あの男をこちらへ寄越したとしよう。その場合はどうだ?

 お前は魔術王が『厄介な方から潰しに来た』『自分は脅威じゃないから見逃された』と()()()()()が──()()()()()()()()()()()だろう?」

 

「……カドックだって、一人になったくらいで諦めるような人じゃない」

 

「だとしても、結果として魔術王はお前を『カルデアの中核』と看做(みな)した。

 ──まぁその核を砕く道具にオレなんぞを選んでいる時点で、ヤツが『眼』を持て余しているのは確定なんだがな!!」

 

「…………」

 

 ()()()()()()

 自分よりも遥かに優れている筈の人達が、揃いも揃ってそんな『よくわからないもの』に踊らされている様を見るのは……少し、苦しい。

 

「そんな顔をするな。お前はこれから、この監獄塔を出ようとしているんだぞ?」

 

「…………そうだね。

 でもその前に、一つ確認させて」

 

「なんだ?」

 

「アヴェンジャーは、ここで消えて……永遠に、そのまま?」

 

「……再会を望むか。復讐者たるこのオレに?」

 

「うん」

 

「──ははっ、ハハハハハハハハハ!!!

 ならばオレはこう言うしかあるまいよ!」

 

 

 ──彼は言った。

 

 『待て、しかして希望せよ』と。

 

 

 

 *

 

 

 

『──それでいいのか?』

 

 声が、聞こえた。少なくとも、自分ではない者の声。

 

『選ばれし君たちに、捨てられた君たちに、提案する。提示する』

 

 ……なるほど。『()()()()』とは思うが、聞いてやろう。

 

『栄光を望むなら、蘇生を選べ。

 怠惰を望むなら、永眠を選べ』

 

 …………なるほど。

 

 怠惰は望まない。栄光はいらない。

 ……でも、押し付けられた『命』はあまりに得難くて。

 

『神は、どちらでもいい』

 

 ああ。あぁ。

 俺には未練があって、それを解消するためには……『蘇生』という選択肢が、あまりにも甘美で。

 

 ────人ひとりを狂わせるには、充分過ぎた。

 

「蘇生を」

 

 ()()()からには、義理は果たそう。

 押し付けてきた彼には勿論、無関心な彼女にも。

 

 ──だが。だが、しかし。

 

 お前達が本質的に、俺を観ていないのだとしても。

 ()()お前達を視てしまったから。お前達が、俺を救ってしまったから。

 

「────やってやんよ」

 

 壊れるまで踊ってやる。腕がちぎれるまで抱えてやる。脚が潰れるまで背負ってやる。

 

 ──泣きたくなるほど、美しいものを視た。

 

 喉が裂けるまで慟哭したって、この心は治らないだろう。

 

 ──ふざけるな。ふざけるな。

 

 過去は変わらない。泣いても喚いても、変わることがない。

 だから大抵、俺が視るものは『手遅れ』の悲劇になる。

 

 ……本来、俺が助けたいのは『一人だけ』だけど。他はどうなったっていいのだけど。

 

 ──それでも、救いのない結末は気分が悪い。

 それが善良な者の辿る結末であったのなら、尚更に。誰だって、そういうものだろう?

 

「視過ごせるワケ、ねぇだろうが……!!」

 

 これが、救世主達への仕打ちであっていい筈がない。

 これが、己を度外視して人類を救おうとした彼への仕打ちであっていい筈がない。

 これが、誰にも助けてもらえなかった彼女への仕打ちであっていい筈がない。

 

 これが、これが……!

 許せるものか。誰一人として、そんな死に方をさせてやるものか。

 

 

 ──第二幕を始めよう。

 今度の舞台は、俺が主演になってやる。

 

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