『武蔵ちゃんを助けたい』 作:みたらしうどん
「……ずっと私を、待っていた?」
私がそう問うと、彼女は肯定し……『より正確には
「前にも、
……返ってきたのは、『言葉自体に隠された意味は無い』『
どうやら、何から何まで煙に巻くような言動をするワケではないらしい。
……それなら、
「…………単刀直入に聞きます。
どうすれば、私は
「……」
少しだけ躊躇するような、短い沈黙。
しかし彼女は、ハッキリと答えてくれた。
「結論から言うと、
……私が『どうして』と問うと、彼女は『
「『視えない』ではなく、存在ごと『無い』と断言する理由は?」
「……あるべき場所は、『視えている』わ。だけど、『何もない』の。虚空という『名残』だけが、そこにある。
……貴女の世界は、もう『剪定』されているわ」
「剪定って……盆栽の、アレ?」
「……えぇ」
「…………私の『世界』は、『いらない枝』みたいに切り捨てられていて……だから、どこにもない……と?」
「……そうよ」
短い肯定。
…………薄々、察してはいた。だから、覚悟もしていた。
最初は数え切れないほどあった、『別世界への入り口』は……気付けば数を減らしていて。……『一度訪れた世界には戻れない』のだと悟ったのは、いつだっただろうか。
世界を渡るたびに減っていく『入り口』
一所に留まれない、根無し草の私。
「…………なら、私が最後に行きつく場所も……見えたりするの?」
「……えぇ。大体、貴女が想像している通りよ」
「……そ」
私はきっと、どこにも行けなくなって……。
「──でも今なら、私が
「……え?」
「新免武蔵守藤原玄信、私は貴女に取り引きを持ちかけます」
そう前置きして彼女は、『
対価は──。
「あらゆる世界が貴女を拒んでも、私が貴女を
『悪い話じゃないでしょう?』と、そう言って彼女は笑った。
*
昔から、ひとより多くのものがみえた。
過去・未来・現在。その全てが……と言ったら、流石に誇張になるだろうけど。職業柄代々『眼がいい』村人達と比べても尚、私はとびきり優れた眼を持っていた。
……だから私は、人柱になった。
『視る』ということは、一種の『存在証明』だ。それ自体が魔術的意味合いを持つ。
だから私はここで、『間の裏』で、存在自体が曖昧な『村』を眺めている。彼らの存在を、外側から支えている。村の皆はそんな私を朧げながらも認知して、食事や本を送ってくれている。『一人は皆のために』『皆は一人のために』というやつだ。私はこの役割に満足している。
……たとえそれが、半分強がりだったとしても。
だが息子は違う。自分の意志でここに来たワケじゃない。
菫は、私の弱さのせいで……『寂しい』という我儘で、産み落とされてしまった子だ。
未来を知っていたくせに、人柱になることが決まって……その日が近付くにつれて、怖くなって。
……私を好きでいてくれた人に、身体を委ねた。
彼は私が『寂しいだけ』と理解した上で、何も言わず、優しく抱いてくれて……菫の魂が、私に宿った。
私は
……あれから十五年。
菫は多感な時期を、
……なのに、
「…………一人で大丈夫なのかよ、母さん」
思わず、引き止めたくなってしまう。
私がやったことを知っても、菫は変わらず私を『
でも、
「大丈夫よ」
母として、これ以上……この子を束縛できない。
「…………」
「永遠の別れじゃないんだもの。心配しないで」
「……母さんがそう言うなら、信じる」
「えぇ。気負うことなく、行ってらっしゃい」
「……おう。行ってきます」
縁を結ぶ。二人が離別しないよう、強固に補強する。
これで、菫は武蔵さんの
「武蔵さん。息子をよろしくお願いするわ」
「……任されました」
────その言葉を最後に、二人は消えた。
「……やっぱり分かっていても、寂しいものは寂しいわね」
だが、これでいい。
我が子と、我が子の愛した