『武蔵ちゃんを助けたい』   作:みたらしうどん

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 二部まではサクサク進めていきます。
 


『第一部』
特異点F終了直後


 

「──まずは生還おめでとう、藤丸くん。そしてミッション達成、お疲れさま」

 

 

  所長は残念だったけど……今は弔う余裕がない

 

 

 そう仰るドクターの横で、私は黙祷を捧げる。

 先輩が『自分が生きているんだから、所長だって』と溢すも……その先は、『()()()()()()()()()()()』なんて希望的観測は、音になる前に噛み殺された。

 

「…………。

 カルデアスの状況を見るに、レフの言葉は真実だ。おそらく既に、人類は滅びている。

 でもこの場所、『カルデア』だけは……通常の時間軸から切り離されているから、()()()()()()()()。我々にはまだ、世界の終わりに抵抗する(すべ)がある」

 

「……過去改変(レイシフト)

 

「そうだ。そして、それができる『マスター』はキミとカドックの二人だけ。動員可能なサーヴァントは、アナスタシアとマシュの二人だけ。

 こんな状況じゃ、どんな言い方をしても『強制』に聞こえるだろうけど──敢えて問おう。

 マスター適性者四十九番、藤丸立香。キミに、『人類史』を背負う覚悟はあるかい?」

 

「……自分にできることなら」

 

「──ありがとう。

 いやぁ、本当に安心したよ! 実は諸事情で、マシュは()()()()()()()のサーヴァントになってるから……。藤丸くんに降りられたら、その時点で戦力半減。士気は低迷。人類のお先は真っ暗か──なんてことになるところだった!」

 

『…………』

 

 相変わらず余計な発言の多いドクターへ、ジト目を向けるが……やはりというべきか、気付く様子はない。

 ……悪い人では、ないのだが。なんというか、本当に……『残念』な人だ。

 

「……マシュが、俺専属?」

 

「あぁ。

 英霊だって、基本的には元人間。感情があるし、個々人で趣味趣向がある。だからサーヴァントの運用は、能力以上に精神的な相性が重要なんだ。

 その点、マシュの中の英霊は気難しいみたいでね。キミが来館する以前から在籍していた、四十八名のマスターは……誰一人として、お気に召さなかったらしい。

 ──キミだけなんだよ、藤丸くん。彼が『マスター』として認めた人間は」

 

「…………」

 

 私からすれば、順当な評価だが……先輩は納得がいかないのか、難しい顔をしている。

 そして納得していないのは、()()も同じだったらしい。

 

「──気に食わないわね。『他の英霊は皆尻軽』とでも言いたいのかしら? 私だって、カドック以外をマスターにする気はないわよ?」

 

「おい、身内同士で対立を煽るようなことを言わないでくれないか……?」

 

「言い出しっぺは向こうよ。

 マスター、あの性悪男はやっぱり信用できない。今のうちに氷漬けにしておいた方がいいと思うのだけど」

 

 ──ドクターとアナスタシアさんの間に、身体を割り込ませる。

 殺気こそ感じないが、念の為。いざという時、彼女を止められるのは私だけなのだから。

 

「……何もしないから、そんなに睨まないで。

 私が悪かったわ。『内部分裂して共倒れ』なんて、私も望んでないもの」

 

 その後ドクターも謝罪を返し、『七つの特異点』について軽く触れたあと……この場は解散となった。

 

 

 ──これはまだ、カルデアが一丸となる前の……始まりの記憶。

 

 

 

 *

 

 

 

 個室(マイルーム)に、インターホンの(来客を告げる)音。

 カメラで扉の前を確認すると……。

 

「……先輩?」

 

 特に拒む理由もないので施錠(ロック)を解除し、彼を迎え入れる。

 

「いま……時間、大丈夫?」

「大丈夫ですよ。どうぞ」

「そっか、よかった。おじゃまします」

 

 お茶を用意しつつ、私が用件を訊ねると……返ってきたのは、予想通りの質問だった。

 

「……『菫さん』の(こと)を……聞きたくて。

 えっと、ほら。名前からして……俺と同じ、日本人だったみたいだし……さ」

 

 …………。

 それも『嘘』ではないだろうが……あくまで『建前』であることは、態度からすぐに分かった。

 

「マスター。勘違いでしたら申し訳ないのですが……初めに明言しておきますね。

 私が先輩に向ける信頼と、『彼』の存在は、一切関係がありません」

 

「……マシュってもしかして、心が読めるの?」

 

「いいえ。先輩が分かりやすいだけです」

 

 私に心が読めたなら、レフ教授の裏切りを見逃すワケがない。

 

「……じゃあマシュは、どうして」

 

「…………先輩は、『サーヴァント』という単語が本来どういう意味か……ご存知ですか?」

 

「……? ごめん、知らないかな」

 

「──『下僕』『召使』です」

 

「────え?」

 

「『敬称』だと、思いますよね。人類史に名を残した偉大なる先人に、英雄豪傑に対して……こんな『蔑称』染みた呼称を用いているなんて、()()()思いませんよね。

 ──でも魔術師の間では、これが『普通』なんです。もう通称として定着していて、誰もそれを疑問に思わない。

 …………しかもこんなのは、序の口です。だから基本的に、『マスター』が『魔術師』である時点で……『英霊との関係が良好』だなんて、それだけで希少(レアケース)なんです。カドックさんとアナスタシアさんレベルにもなれば、奇跡と言っても過言ではありません」

 

「そうなの……?」

 

「はい。しかも、アナスタシアさんのクラスはキャスターなので……現時点までに一度も殺し合いが発生していないだけでも、魔術師基準では平和的と言えるでしょうね」

 

「えぇ……」

 

「いまの話を聞いて、本気で困惑してくれるひとだから……先輩は『先輩』なんです」

 

「それは……褒めてるの??」

 

「勿論です。私にとって『先輩』とは、『理想的な良識人』という意味ですから」

 

「それはそれで、どうかなぁ……」

 

「先輩以上に『先輩』とお呼びするに相応しい人物は、そういないと思われますが……」

 

「そ、そう……?」

 

「はい」

 

 ──嘘を吐いた。本当は、()()()()

 だって、貴方以外の一体誰が……『あの時』あの状況で、私の手を握ってくれるというのか。

 

 そんな私の想いが通じたのか、彼は少し……覚悟を決めたような表情になった。

 

「……なら『先輩』として、頑張らないとだ」

 

「──はい。ファイトです、先輩!」

 




 
 マシュ視点でのスミレについてまで書く予定が、気付いたらこうなっていた……。
 スミレがカルデアに来た当初と経緯(の一部)については次回となります。
 
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