『武蔵ちゃんを助けたい』   作:みたらしうどん

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『第四次聖杯戦争』(前編)

 

 ──地獄を視た。

 この冬木(まち)に訪れる、地獄(みらい)を視た。

 

「……視えてたくせに、()()()()か。ダッサいなぁ……」

 

 燃える家屋。肌を焼く熱波。響き渡る悲鳴。

 ……魔力も体力も使い果たしたこの身体では、誰一人救いに行けない。

 

 そもそも未来視なんてのは、そこまで便利な能力じゃあないのだ。

 定まっていない未来はぼやけて視えにくいし、ハッキリ視える未来は変えにくい。そして、自分以外にも未来を視ている者が存在する場合……未来はコロコロ変わる。

 

 ……英雄王ギルガメッシュ。

 この時代の冬木には、彼が居た。その気になれば母以上に詳細な未来を見通せる、人類最古にして最強の大英雄が。

 

「…………これでも、頑張ったんだけどな……」

 

 殺人鬼『雨生龍之介』は、キャスター共々真っ先にブチ殺した。

 マキリの老害も、『眼』で本体の位置を割り出してしまえば楽勝だった。

 バーサーカーは、戦う理由を失ったマスター『雁夜さん』から引き取った。

 ランサー主従は、工房に踏み入り正々堂々相手の得意分野で戦い勝利した。

 厄介なアサシンには手を出さず、ライダーに処理してもらった。

 セイバーは、バーサーカーと引き分けた。…………あの戦いは、いろんな意味で思い出したくない。

 

 そうして顕現する、『汚染された聖杯』

 

 ライダー主従の手を借り、彼の固有結界で聖杯を隔離。神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)を用いた壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)で吹き飛ばし、溢れ出た『泥』も武蔵ちゃんに薙ぎ払ってもらうことで処理。

 あとは俺が、故郷に伝わる母直伝の『奥義』で英雄王を華麗に撃破して──完全無欠のハッピーエンド。

 

 …………と、なる筈だったのだが。

 

 聖杯を破壊したところまでは良かった。

 しかし聖杯の補助が無くなったことで、ライダーは『座』に即退去。令呪も含めた魔力を全て『聖杯の破壊』に費やしてくれたため、これは仕方ないのだが……。

 ライダーの全力と、武蔵ちゃんの後詰めがあっても尚……『泥』は消し切れなかった。被害は、本来のものより大幅に軽減されただろうが……火災の発生は、止められなかった。

 

 そして俺の戦果は、論外。

 

「やっぱ、英霊相手に正面戦闘とか……やるモンじゃ、ないわ……」

 

 正直、舐めてた。そこまでトントン拍子に、全部計画通りにいってたから……天狗になっていたのだ。

 

 『奥義』で『宝具(ゲート・オブ・バビロン)』を封じ、マスターとの『縁』を断ち切って、聖杯の補助を消し飛ばしたにも関わらず……彼は単独行動スキルのみで存在を維持。戦闘を続行してきた。

 

 こうなると、もうダメだった。

 なんとか勝ちをもぎ取ったものの……満身創痍で、もう動けない。華麗さなんて欠片もない、みっともなくて泥臭い勝利。

 ……それは俺にとっての、『敗北』を意味していた。

 

「みっっともねぇなぁ、クソだせぇなぁ……」

 

 

 ──『縁』を、斬られた。

 

 

 戦いが終わってすぐ、強制的な漂流(ドリフト)の前兆があって……この身体じゃ、転移の『負荷』に耐えられずに()が死ぬと判断した武蔵ちゃんは…………『天眼』を使って、俺との繋がりを断ち斬った。

 

 

「『生きてれば勝ち』じゃ、ねぇんだよ……!!」

 

 

 勝利の代償に、俺は……一番大切な人の『安全(命綱)』を、手放したのだ。

 

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