『武蔵ちゃんを助けたい』   作:みたらしうどん

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『第四次聖杯戦争』(後編)

 

「──悪漢死すべし慈悲はない!!」

 

「あべしっ!?」

 

 傷が癒えたので武蔵ちゃんと合流するべく漂流(ドリフト)を使ったら、目の前で女の子が襲われていた件。

 完全に雰囲気が『快楽目的の輩』だったので、とりあえず顔面に右ストレートを叩き込んだあと、自前のリボン(飾り紐)でふん縛り、女の子に『痛み止め』と『治癒促進』の術式を使ったワケだが……。

 

「……ちょっちマズいか? この状況は」

 

 世界線を跳び越える『漂流』に、時代や座標はあまり関係ない。

 軽く周囲を視てみたが、どうやら時代は冬木に居た時より進んでいるらしい。そして今しがた縛った男性と、治療した女の子の姿を見るに……日本ではない恐れが大きい。

 

「言葉が通じなかったら、ヤバいよなぁこれ……」

 

 ……幸い、これについては杞憂に終わるのだが。

 

『ベリルお前! 何やって──ぇええ!? もう鎮圧されてる!?』

 

 もうすぐそこまで迫って来ている『白衣の彼』は、なんと()()()()()()()()使()()()()()らしい。

 ……もしかしたら海外出身の人が多いだけで、ここは日本なのかもしれない。

 

 少しだけ緊張を解いて、『彼』を待つ。

 状況から察するに、彼は『敵』じゃない。話し合いでこの場を乗り切ることは、充分に可能だろう。

 

 ──そして、時間が訪れる。

 さっき『視た』通りに驚く彼は、『誰だキミは』『どこから入ってきたんだ』と続けた。

 

「はじめまして。(はざま)(すみれ)と申します。冬木市から来ました」

 

「……それは、ここがどこか知ってて言ってるのかい?」

 

「いいえ。日本ではないのですか?」

 

「…………ここは南極だよ」

 

「なんと」

 

 これはまた、随分と厄介な場所に跳ばされたものだ。

 

「……もしかして、キミ自身『どうして自分が南極(ここ)にいるのか分からない』のかな?」

 

「そうですね……『人探しをしていたら迷い込んだ』としか言いようがありません」

 

「…………分かった。事情聴取はひとまずこのくらいにしておこう。

 でも、まだキミを自由にしてあげるワケにはいかない。大人しく、こちらの指示に()()()くれるかな?」

 

「────」

 

 『従う』という文言が聞こえた瞬間、反射で『未来視』を使った。

 ……特に、魔術が使用された形跡はない。そもそも、彼には()()()()()()()()()()()()

 『肯定した場合の未来』も、別段悪影響はなさそうだ。

 

「えぇ、勿論。やましいことは何もありませんので、構いませんよ。

 ……ところで一応確認なんですが、諸事情でこの人気絶させちゃったんですけど……大丈夫ですよね?」

 

「あぁうん、それは大丈夫。むしろよくやってくれた。ありがとう」

 

 よし、言質取ったぞ。

 

「それと、そろそろ名前をお伺いしても?」

 

「──そういえば名乗っていなかったね。すまない。

 ボクは()()()。『ロマニ・アーキマン』 そこで寝ている娘、『マシュ』の主治医だよ」

 

 …………なるほど。

 

「アーキマンさんですね。覚えました」

 

「差し支えなければ、親しみを込めて『ロマン』と呼んでくれていいよ」

 

「では、俺も『菫』で構いませんよ」

 

 それから別室に連れられ……別れ際に、声をかけられる。

 

「……菫くんがマシュを守ってくれたことは、理解している。キミの素性が明らかになるまで、しばらく拘束することにはなってしまうけど……決して悪いようにはしないと約束しよう」

 

「ありがとうございます」

 

「それと、キミさえ良ければ……素性を洗うついでに『菫くんが探している人』についても調べておこうと思うんだけど、どうかな?」

 

「…………では、お言葉に甘えて。

 俺が探しているのは──『宮本武蔵』と名乗る、女性の剣士です」

 

「……分かった。情報を集めてみるよ」

 

 そう言って、彼は扉の向こうに消えた。

 

「……まったく、我が事ながら……どうにかならんのかねぇ、この性分は」

 

 『ロマニ・アーキマン』

 

 その名の起源は、冬木に繋がっていた。

 ()()()()()()()()()()()()()だったから、すぐに遡ることができた。

 

 俺単独の『漂流』は、『眼』で道を探っているから『縁』を辿ることになる。

 今回は、冬木で生まれた彼が場所の起点になっていたらしい。

 

 勿論、生まれだけなら『縁』が薄い。俺と彼には、他にも繋がりがあった。

 

 第四次聖杯戦争の参加者。

 開催時期が十年ほどズレているらしいが……その影響か、どうやら『この世界線』の聖杯は汚染されていなかったようだ。

 

 ロマンさんの正体は、『願い』によって『人間として再誕した英霊』らしい。

 

 ──が、()()()()()()()()()()()()

 問題は、彼が生まれた瞬間のこと。

 

 

「あぁクソ……『()()()()()()』とか、視過ごせるワケないだろうが……」

 

 

 『地獄』が、あざ笑うように揺らめいていた。

 

 

 

 *

 

 

 

 ……あぁ、わかっていた。

 

 キミは命を救う者で、私は命を奪う者。

 根本的に、相入れない。

 

 私の『眼』は『斬り捨てる』ことに特化しているけれど……キミは逆。『縁を(つむ)ぐ』優しい眼。

 

 だからキミは、視て視ぬフリができない。

 そういうひとだと、わかっていた。

 

 だから、私のことも……ただ『見捨てられなかった』だけに、決まっている。

 

 だから、これでいい。

 

 時が経てば、彼は大勢の女性に愛されて……その内私のことなんて忘れるくらい、素敵な出会いがある筈だ。そして、幸せになってくれる筈だ。

 

 そう信じて、『縁』を斬った。

 

 自分の心に蓋をして、視ないフリをして、私は彼と離別した。

 

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