『武蔵ちゃんを助けたい』 作:みたらしうどん
「──悪漢死すべし慈悲はない!!」
「あべしっ!?」
傷が癒えたので武蔵ちゃんと合流するべく
完全に雰囲気が『快楽目的の輩』だったので、とりあえず顔面に右ストレートを叩き込んだあと、自前の
「……ちょっちマズいか? この状況は」
世界線を跳び越える『漂流』に、時代や座標はあまり関係ない。
軽く周囲を視てみたが、どうやら時代は冬木に居た時より進んでいるらしい。そして今しがた縛った男性と、治療した女の子の姿を見るに……日本ではない恐れが大きい。
「言葉が通じなかったら、ヤバいよなぁこれ……」
……幸い、これについては杞憂に終わるのだが。
『ベリルお前! 何やって──ぇええ!? もう鎮圧されてる!?』
もうすぐそこまで迫って来ている『白衣の彼』は、なんと
……もしかしたら海外出身の人が多いだけで、ここは日本なのかもしれない。
少しだけ緊張を解いて、『彼』を待つ。
状況から察するに、彼は『敵』じゃない。話し合いでこの場を乗り切ることは、充分に可能だろう。
──そして、時間が訪れる。
さっき『視た』通りに驚く彼は、『誰だキミは』『どこから入ってきたんだ』と続けた。
「はじめまして。
「……それは、ここがどこか知ってて言ってるのかい?」
「いいえ。日本ではないのですか?」
「…………ここは南極だよ」
「なんと」
これはまた、随分と厄介な場所に跳ばされたものだ。
「……もしかして、キミ自身『どうして自分が
「そうですね……『人探しをしていたら迷い込んだ』としか言いようがありません」
「…………分かった。事情聴取はひとまずこのくらいにしておこう。
でも、まだキミを自由にしてあげるワケにはいかない。大人しく、こちらの指示に
「────」
『従う』という文言が聞こえた瞬間、反射で『未来視』を使った。
……特に、魔術が使用された形跡はない。そもそも、彼には
『肯定した場合の未来』も、別段悪影響はなさそうだ。
「えぇ、勿論。やましいことは何もありませんので、構いませんよ。
……ところで一応確認なんですが、諸事情でこの人気絶させちゃったんですけど……大丈夫ですよね?」
「あぁうん、それは大丈夫。むしろよくやってくれた。ありがとう」
よし、言質取ったぞ。
「それと、そろそろ名前をお伺いしても?」
「──そういえば名乗っていなかったね。すまない。
ボクは
…………なるほど。
「アーキマンさんですね。覚えました」
「差し支えなければ、親しみを込めて『ロマン』と呼んでくれていいよ」
「では、俺も『菫』で構いませんよ」
それから別室に連れられ……別れ際に、声をかけられる。
「……菫くんがマシュを守ってくれたことは、理解している。キミの素性が明らかになるまで、しばらく拘束することにはなってしまうけど……決して悪いようにはしないと約束しよう」
「ありがとうございます」
「それと、キミさえ良ければ……素性を洗うついでに『菫くんが探している人』についても調べておこうと思うんだけど、どうかな?」
「…………では、お言葉に甘えて。
俺が探しているのは──『宮本武蔵』と名乗る、女性の剣士です」
「……分かった。情報を集めてみるよ」
そう言って、彼は扉の向こうに消えた。
「……まったく、我が事ながら……どうにかならんのかねぇ、この性分は」
『ロマニ・アーキマン』
その名の起源は、冬木に繋がっていた。
俺単独の『漂流』は、『眼』で道を探っているから『縁』を辿ることになる。
今回は、冬木で生まれた彼が場所の起点になっていたらしい。
勿論、生まれだけなら『縁』が薄い。俺と彼には、他にも繋がりがあった。
第四次聖杯戦争の参加者。
開催時期が十年ほどズレているらしいが……その影響か、どうやら『この世界線』の聖杯は汚染されていなかったようだ。
ロマンさんの正体は、『願い』によって『人間として再誕した英霊』らしい。
──が、
問題は、彼が生まれた瞬間のこと。
「あぁクソ……『
『地獄』が、あざ笑うように揺らめいていた。
*
……あぁ、わかっていた。
キミは命を救う者で、私は命を奪う者。
根本的に、相入れない。
私の『眼』は『斬り捨てる』ことに特化しているけれど……キミは逆。『縁を
だからキミは、視て視ぬフリができない。
そういうひとだと、わかっていた。
だから、私のことも……ただ『見捨てられなかった』だけに、決まっている。
だから、これでいい。
時が経てば、彼は大勢の女性に愛されて……その内私のことなんて忘れるくらい、素敵な出会いがある筈だ。そして、幸せになってくれる筈だ。
そう信じて、『縁』を斬った。
自分の心に蓋をして、視ないフリをして、私は彼と離別した。