『武蔵ちゃんを助けたい』 作:みたらしうどん
※:Aチームメンバーの具体的な脱落時期はあくまで筆者の予想です。
キャラ崩壊注意。(ここの藤丸はカドックという頼れる人がいる分彼の前では弱気成分強め→進むにつれ本当の意味で『相棒』と言える関係になっていき、元の明るさを取り戻していくイメージ)
前にも言ったが、未来視というものはそこまで便利な能力じゃあない。
ついでに言うと、
だからまぁ、『世界の終わり』ともなれば結構な数の人間がそれに感付く。そして、阻止する方向に動く。
……にも関わらず、世界は終わる。
これは、
…………それも、眼の精度と『存在の格』は……本気になった英雄王より、更に上らしい。彼と対峙した時ですら、ここまで『ぼやける』ことはなかった。
──逆に、相手はこちらを認識しているだろう。俺は未来を視すぎた。
こうなると、俺が取れる方針は二つ。
その1。『視えていても防げない動きをする』 ……マリスビリー所長のように。
しかしこれは不可能だ。
なので方針は、『その2』でいくしかないワケだが──さてここで問題。
『
答えは『アーサー王』 聖杯戦争で対峙した、あのセイバー。彼女とは二度と対峙したくない。
何故か?
それは戦闘中、視界を何度も乱されたからだ。驚くべきことに、彼女は
俺達からすると、ああいう『一つの未来へ一直線』に爆裂猛進してたと思ったら急に『直角カーブで軌道修正』みたいなコトをしてくる輩が一番苦手。
だから俺も、彼女に習い『直角カーブ』をやる。
具体的に言うと、『本気でキリシュタリアを救う手段を模索』しつつ『土壇場でカドックを助ける』
……方針の性質上、成功するかどうかは分からない。それを視てはならない。
しかし、これが『最適解』だという確信がある。
全てを持っていた英雄王は、『手に入らないからこその美しさ』を求めていた。……その気持ちが、俺には少しだけ分かるのだ。
人間は基本的に、自分の死期を知らないからこそ穏やかに時を過ごせるイキモノだ。己の死期を悟っても、正気のままでいられる者なんて……そうそういない。
だから、俺や
マリスビリー所長は『八つの大令呪』を用意していた。彼は最低でも、八つの『壁』を想定していた。
……一回くらいなら、俺は遮二無二それを乗り越えよう。だがそれを、何度も何度も繰り返すのは……無理だ。自分で、そう解ってしまう。
…………だからこれは、『今』を全力で生きることのできる人間にしか解決できない。
Aチームのメンバーで、それができるのは……キリシュタリアを除けばカドックだけだ。
…………そして、それは『ほぼ正解だった』と証明された。
死にかけの身体で、一人になった管制室で……ぼんやりと未来を視ている。
いやはや、まさかデイビットが力技で人理を修復する可能性があったとは。一番驚き。
キリシュタリアは流石だった。それ以外言葉が出ない。……いやウソ。正直妬くわ。ちょっとうらめしい。
…………カドックが惜しかっただけに、尚更。
難所は『四つ』あった。
俺とぺぺとオフェリアは、二つ目で。芥さんとベリルは最初の難所で潰される。
カドックは、最終関門まで辿り着くけれど……そこを突破する未来は、視えなかった。
──世界を救うのは『ポッと出』の少年。『藤丸立香』だ。
「……まぁ、マシュもいるし……『Aチーム』の面子は保たれてるけどさ……」
…………この世に『主人公』がいるとしたら、ああいう存在なのだろうか。
「クソッタレめ……」
何が『主人公』だ。あんな──。
「
あんなに『普通
彼が『初めからそう望んでいた』のならいい。だが彼は、押し付けられただけだ。
そんな彼が、少しずつ……しかし着実に、壊れていく様を視た。
「視過ごせるワケ、ないだろ……」
これを無視したら、俺は母に顔向けできない。『彼女』にもきっと、軽蔑されてしまうだろう。
……だからきっと、これでいい。
彼と、マシュと、カドック。
そこに己の名が無いことは不甲斐ないけれど、しょうがない。やれることは、もう全てやった。あとは祈るのみだ。
現地組が二組になることで、未来がどう変わるかは分からない。さっきまで視ていた『発生しないと
……つまり未来が悪化し、『最終関門』に辿り着くことすらなく旅が終わる恐れも、なくはないのだ。
特に、四つある『難所』の一つ目には
……第一関門。『ファヴニール』
聖人達に協力を取り付け、ジークフリートが退去する前に救出することが、第一特異点攻略の
彼らに協力を取り付けられないと、基本的にこの特異点は攻略できない。ちなみに芥さんとベリルはこれで詰んだ。
加えて、ある意味そこ以上に心配な点が──。
*
──深夜に目が覚め、寝台を降りる。
そして洗面台に向かい、胃の中身をぶちまけた。
「…………ぅッ、オェ゛エ……」
帰ってきて、落ち着いて、一人になって……振り返る余裕ができた途端、思い出す。
死体を見た。
血肉を見た。
臓腑を見た。
「…………コレを、あと六回……?」
しかも、オルレアンは
「………………いやだ」
もう戦いたくない。戦場に立ちたくない。全部投げ出してしまいたい。
そう思った時に、軽く扉が叩かれる音がした。
……幽鬼のような足取りで、カメラを確認。その後ロックを解除。客人を迎え入れる。
「カドック……」
「…………やっぱ、起きてたか」
それから彼は、おもむろに水筒を渡してきた。
「水は飲んでおけ。……吐くとき楽になる。
あと、落ち着いたら
「……どうして」
「分かるよ。僕も吐いたからな……初めて臓腑を見た時は」
「……いまはもう、慣れたの?」
「慣れるほど壊れてはいないつもりだ。……まぁでも、お前よりかは耐性があることは確かだな」
「…………」
居心地の悪い沈黙に耐えかねて、貰った水筒に口をつける。……胃酸で傷んだ喉が、少しだけ楽になった気がした。
「……藤丸。
お前が望むなら……第二特異点へは、僕とアナスタシアだけでレイシフトしようと思う」
「──ッ、でもそれじゃ……!」
「抑止力はまだ機能している。前衛も、物資も、現地調達でどうにでもなることはもう分かった。
マシュとドクターにも、僕から話を通しておく」
「…………ダメだ。俺も戦う」
だって、彼を直接支えられるのは自分とマシュだけで……俺達がいても、これまでの戦いはギリギリだった。
自分も戦わなきゃ、彼は死んでしまう。
あの、名も知らぬ兵士達のように。
ぐちゃぐちゃの肉塊に、されてしまう。
──それは、ダメだ。
「……無理はするなよ」
「カドックこそ。そういうのはせめて、目のクマを消してから言ってくれないと」
「…………余計なお世話だ」
「お互いさまでしょ」
「……そうだな」
元より『過去を修正』して『世界を救う』なんて、無茶に無茶を重ねた所行をなそうというのだ。無理を通さずしてどうするのか。
── 一人では潰れていたかもしれないけれど。
二人で支え合えたなら、きっと……最後まで。