案外ボックスの中は快適である   作:喬喬

4 / 18
作者の妄想にお付き合いしていただき、ありがとうございます。


世界が自分を中心に回ってると勘違いしても無理はないよね。けど、例え主人公が居ない場合でも世界は何だかんだ問題や事件は解決するのでした▼

 

 

 ポケモン協会。

 

 本部はジョウト地方のコガネシティにあるのだが、支部は各地方に存在している。

 ポケモン協会本部は統括理事がトップとしているが、他の地方の支部では理事がトップ。統括副理事という立場の人物は本部や支部を行き来する存在。云わば、己の城を持たぬ人物達だ。

 

 

 「統括副理事、【ハヅチ】という方がいらっしゃったのですが……」

 

 「通してください。彼とは二人で話し合う事があるので、他の者達は席を外してください」

 

 

 ポケモン協会カロス支部。

 その天に聳え立つ摩天楼の中で唯一飛び抜けて頭が出ている頂上に一人の人物が外の景色を眺めながら湯呑みに口を付けた。

 

 その人物は、綺麗で端正な顔立ちであり非常に麗しき人であった。浮世離れした程、美しい容姿は人だけではなくポケモンまでもが見とれてしまう程だ。長い金髪を腰よりも下まで伸ばしており、そしてその容姿とは不釣り合いな鋭い目付き。その声色とは異なる仏頂面は、相手を黙らせる威圧感があった。

 

 

 

 「まさか、かつての名(・・・・・)を使うなんて……何の気紛れだ【ハヅチ】」

 

 「今の私は【トパーズ】だよ。私のますたーがくれた、大事な名前なんだ」

 

 

 音もなく現れたのは、ローブを纏った一人の人。

 その者は自らを【トパーズ】と名乗った。

 ローブを纏った人、その者こそが人に化けた(・・・・・)キュウコン希少種であり【冠位(クラウン)】。【煌天“トパーズ”】であった。

 

 

 「ふん。ならばトパーズと伝えればいいだろう。何をヌケヌケと過去の名を。しかも俺に名指しで……何かの嫌みか貴様は」

 

 「わかってるんでしょ。私が昔の名で貴方を名指ししたのは只事ではないってことを」

 

 「…………それで。何様だ」

 

 

 ギロリ、と相手が【冠位(クラウン)】相手であっても怯んでしまう程の睨みであるものの、トパーズはそよ風の様に受け流す。そもそもトパーズ自身もローブで素顔は見えないものの、対抗する様に威圧で防いでいたのだ。

 

 

 「“ヒガナ”………この名に覚えは」

 

 「知らんな」

 

 「そんな訳ないでしょ。君、我が子の様に話してたじゃない」

 

 「知らんと言っておろうが」

 

 「……【シガナ(・・・)】」

 

 「私の名は【シオン】だ。前の名(・・・)で呼ぶとは、仕返しか」

 

 「おあいこってことで」

 

 

 忌々しい、と心底嫌そうな表情のままため息をつく【シガナ(シオン)】は湯呑みを置いた。そして夜空に煌めく星星を眺めながら呟く。

 

 

 「……ヒガナがどうした」

 

 「彼女、ホウエン地方を隕石から守った英雄だってさ」

 

 「ハッ!英雄だと?バカを抜かせ。余計な事をしただけだろう。そして協会にも報告せず、勝手な判断をしたデボンとソライシもだ」

 

 「けど、実際に隕石からホウエンを守ったんじゃ?」

 

 「あの隕石は(・・・・・)害は無かった(・・・・・・)。彼はただの訪問者(・・・)に過ぎない。“流星の民”の伝承者は俺の代で終わりだ、“流星の民”の役目は無意味だと族長にも話した筈だが」

 

 「その代は何前年君が担ってたのかな」

 

 「仕方があるまい。“ルネの民”は神話を伝えるだけにしたが、“流星の民”はそれを良しとしない。レックウザの狂信者共だったからな。ふむ、その結果があのヒガナというわけ、か。全く……しかし、これで奴らも懲りたことだろう」

 

 「シオンが直接出向けば全て解決してたんじゃない?」

 

 「今の時代を生きる者達が解決すべきだ。老い耄れが余計な事をするものじゃない。することは失敗した時の尻拭いくらいだ」

 

 

 自らを老い耄れと言うシオンは、それなりに年齢を重ねた見た目に見合わない存在なのは察する事が出来るだろう。しかも太古の時代を知るトパーズが、まるで幼馴染みの様に接することからトパーズと同じ年齢という常人とは掛け離れた生命力。或いは不老不死に近い存在。

 

 

 「話はそれだけか、トパーズ。お前達は三体の【冠位(クラウン)】の捜索依頼を出した筈だが」

 

 「その一体があの神使(・・)なんだけどさ」

 

 「……あぁ、あの創造神の従者か。話が通じん奴だ。捕獲も不可能だろう。例えマスターボールでもな」

 

 「だろうね。仮に捕獲でもしたら、ボール越しから厄災を振り撒くよ。アレは」

 

 「過去に巨人共を殲滅しかけた奴だ。創造神の命令なら何でもするバカ」

 

 「君が出向いたら解決するんじゃないかな」

 

 「創造神を刺激させる気は無い。後々が面倒だ」

 

 「私からすれば、シオン程の適任は居ないと思うよ。出向けば必ず(・・)歓迎してくれるでしょ?」

 

 「それが嫌なんだがなぁ……。あぁ、わかった。貴様、俺の名を」

 

 「じゃないと戦いになっちゃうじゃん」

 

 

 何言ってんのこの人みたいに小馬鹿にするトパーズに若干イラつきながらもため息をつくシオン。あぁ、コイツはそういう奴だったなと再認識したのだろう。

 

 

 「わかった。あいつに遭遇したら俺の名を使え。悪いようにはしないだろう…………いや、お前面識あるから問題ないんじゃ」

 

 「アイツとは前に喧嘩してさ。あと名前だけじゃなくて」

 

 「なら………これを付けとけ。かつて俺が身に付けていた“耳飾り”だ」

 

 「これなら……うん!ありがとうシガナ!」

 

 「シオンだって言っているだろうが戯け!」

 

 

  その耳飾りは、銀色のプレートに翡翠の宝石を鏤められたもの。そしてそのプレートには金色の、創造神の紋様(・・・・・・)が刻まれている。

 

 トパーズは耳飾りを受け取ると、それを左耳に付けたのだ。が、そのフードを脱いでその素顔を晒した刹那、シオンから乾いた笑い声が漏れてしまう。

 

 

 「……なんだ貴様、その姿は(・・・・)嫌がらせか?」

 

 「あぁこれね。悪いね。人の姿になるのはこれしか(・・・・)無理なんだよ」

 

 

 そう言いながら、シオンは翡翠の瞳を。そしてトパーズは紅色の瞳を宿していた。

 そしてトパーズの容姿は、シオンと瓜二つ(・・・・・・・)。シオンは眉をひそませた難しい表情を、そしてトパーズは穏やかで優しい表情を。そして唯一異なるその翡翠と紅色の瞳。

 

 

 「その姿、他には見せるなよ。後々面倒になりそうだ」

 

 「え、ますたーにはもう見せてるよ?」

 

 「……お前の主以外は見せるな」

 

 「ますたーの手持ちにも見せてるけど?」

 

 「お前な」

 

 「ますたーとますたーの手持ち以外には見せてないよ!人前に出る時は眼以外は布で隠してるし。安心してよ!」

 

 「安心できねぇんだよなぁ」

 

 

 これがかつての相棒(・・・・・・)か、と気分を変える為にか再び湯呑みに入っていたお茶を飲み干した。さてこれで用事は済んだのかと思いきやまだいるトパーズ。

 

 

 「まだ何か用なのか」

 

 「シオン。君は今何をしてるのさ。あの王国(・・・・)は滅び去った。もう君が今の世に深入りする必要は無い筈でしょ?」

 

 「………貴様ならいいか。かつての相棒のよしみだ。各地方で、その王国(・・・・)の陰(・・)がチラホラとな」

 

 「!」

 

 「用心しろよトパーズ。あの王国(・・・・)の件、お前は無関係じゃない。むしろ当事者に近いからな」

 

 「最悪の知らせだね、ホント」

 

 「奴等の狙いがわからない以上、俺も表に出るのは難しい。そして十中八九【冠位(クラウン)】を狙っているだろうからな」

 

 「なるほどね。だから今になって、えっと……なんだっけ?あ、私の様な特殊なポケモンを探してるってことだよね?戦力を集めるため?」

 

 「そういうことだ」

 

 

 シオンは来るべき時の為に様々な手段や布石を打っているのだろう。それが確実に証明することは出来ないが、トパーズはそれは間違いないと判断する理由があった。

 

 

 「未来視(・・・)で酷いものでもみたの?」

 

 「……さあ、な」

 

 「貴方の眼は未来を見通す千里眼。そして並行世界(・・・・)も見渡せるその力で、何でもわかるんでしょ。私も多少並行世界(・・・・)を視ることは出来るけどさ」

 

 「良し悪しはあるさ。未来には、な。ほらさっさと帰れ。愛しのご主人様が待ってるだろう」

 

 「はっ!そうだった!そんじゃ、シガ───じゃなくて、シオンの名前とこの耳飾りを借りるよー」

 

 「さっさと行け、バカタレ」

 

 

 

 トパーズはフードを被り、その部屋から去る際に横目で疑問を感じていた。

 

 

 「(創造神は、創造神であって主神(・・)ではない(・・・・)。その力関係はもう同等な筈なのに)」

 

 

 それはシオンに対しての疑問だ。

 しかし、元は前世人としての期間が短くポケモンとしての生が長い為か純粋に人の価値観というのが薄れに薄れてしまっているトパーズ。

 

 

 「(前世で例えるなら、シオンは(・・・・)戦神であり軍神(・・・・・・・)その強さ(・・・・)は私以上。そして、唯一“モリオン”が従うトレーナーでもある(・・・・)のに………)」

 

 

 その内容はあまりに不可解だ。

 普通なら意味不明なことを言っているしか思えない狂言者。あまりにもその内容は、シオンを単なる人間として考えていない。

 

 

 「(あの王国の陰。用心はするしかないよね)」

 

 

 トンっ、とトパーズが一歩歩いた瞬間にその姿は消える。統括副理事の来客をお送りしようとした職員達は忽然と姿を消したトパーズに困惑するしかなかった。

 

もしアニポケに介入するなら何処がいいですか?

  • 無印編(※赤緑青ピカチュウ)
  • 金銀編
  • アドバンスジェネレーション編
  • ダイヤモンドパール編
  • BW編
  • XY & XYZ編
  • サンムーン編
  • 無印編(※剣盾)
  • 新章編(※リコ&ロイ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。