勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。   作:かませ犬S

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94.一度聞いたら忘れられない異名

 何度かしてきたやり取りではあるが、デュランダルが楽しそうだな。タケシさんについて話したくて仕方ないみたいな口調だった。タケシさんと親しかったのは分かったが、もう少し俺に配慮してくれ。反応に困るんだ。

 メリルとの逢い引きに使われていたのは思う所はあるがこの際良しとしよう。まさかデュランダルから聞いていた現場がここだとは思わなかった。思いっきり床に跡が残っているじゃないか。

 

 推理ドラマなんかで出てくる生々しい事件跡みたいになっている。雲のような床に刻まれた魔法陣も気にはなったが、血痕のインパクトの方がやはり強い。

 こちらに向けて訴えかける何かがある。赤黒い血痕跡とタケシさんの家と聞いて嫌な予感はしていたが、当たって欲しくはないんだ正直に言うと。この現場に残されたあの血痕は将来的に俺も辿るかもしれない未来の1つを暗示している。

 

「ここで刺されたのか」

「はい。ナイフでグサリといかれましたね」

「傷は深かったと推測出来るが…」

「刺されたのは1回だけではないですからね。何度もナイフで刺されましたよ。メリルも殺す気はなかったのか臓器だったりは避けていましたし」

「聞いている限りだとタケシさんが生きている事が不思議なんだが」

「メリルは一流の魔法使いでしからね。タケシをナイフで刺したら直ぐに『ヒール』で治療して、また刺すというのを繰り返してました。

『痛い?そんな痛みより私の心の方が痛いの』って言葉では言ってましたけど、嗜虐的な笑みを浮かべていましたのでメリルの性癖の可能性が高いですよ」

 

 言葉が出ない。元々悪かったメリルのイメージが下がる一方だ。デュランダルが語る内容があまりに酷すぎて受け入れたくないんだが。嗜虐的な笑みを浮かべてタケシさん(好きな人)を何度も刺すって…、どういう思考回路でそんな行動に映るんだ?俺には理解出来ないな。理解したくない。脳が拒否しているのが分かる。ヤンデレでサディストなエルフの王女か。

 

「事のきっかけはなんだ?」

 

 とんでもない女ってイメージがついてしまってはいるが、メリルが犯行に及んだ原因があると俺は考える。デュランダルから今まで聞いた話だとメリルはタケシに対してしっかりと好意を向けていた。悪意があってやった訳ではない。

 デュランダルに尋ねはしたが俺の中で答えは出ている。だからあえてハッキリ言おう。タケシさんがやらかしたんだろう、きっと。

 

「前のマスターの浮気?いえ、メリルとは付き合ってはいなかったので浮気ではないのですが、少しばかりだらしない女性関係がバレた結果メリルがブチ切れたって感じですかね?」

 

 だよな、そんな気はしてた。答えが合ってて安心したよ。俺のタケシさんへのイメージは間違っていないようだ。

 メリルのイメージは大分変わったがな…。

 

「それまでメリルに気付かれる事がなかったという事は、タケシさんは上手く隠していたんだな」

「私からしたら良く隠し通せたなという思いですよ。恋は盲目とはよく言ったものですね。前のマスターを疑おうとしなかったのですから」

「でもバレたんだよな?」

「メリルにバレる前に1つ修羅場が起きましたからね。それが尾を引いた結果、メリルが追求してバレました」

「メリルを除く勇者パーティーとシルヴィによる修羅場であってるか?それにしたって何が原因だ?」

「上手く隠せてはいたんですけどね、なんというか女性同士の醜いマウントの取り合いから発覚しました。私は前のマスターに愛を囁かれたとか、体の関係を持ったとかマウントを取り合っているうちに前のマスターの女性関係が浮き彫りになって修羅場ですよ!」

 

 楽しそうに話すのはやめてくれ。笑える内容ではないんだ。当事者だったり巻き込まれた側からしたらたまったもんじゃないが、第三者として見るなら中々愉快な喜劇だったのかも知れない。反面教師にするのは申し訳ないが、タケシさんのようにならない為にもノエルには正直に言おう。エクレアも説得出来ればいいが…。タケシさんの話を聞いた後だと想像するだけで胃が痛くなる。

 

「あの時の光景は良く覚えています。前のマスターが部屋で調べ物をしていた時に豪快に扉を開けてメリルが入ってきましたからね。手にナイフを持っていたので私は直ぐに察しましたよ」

「俺でも気付くと思う」

「前のマスターも弁明しようとしましたが無駄でしたね。制止の声も届かなかったので必死に逃げましたが、結局捕まって滅多刺しです。殺意はなかったので死ぬことはなかったですが、見事にトラウマを植え付けられましたね。色々あって事が落ち着いた後は、前のマスターはメリルの顔色を窺うようになりましたし」

 

 デュランダルが省いた部分が気になる所ではあるが、聞かない方が身のためだろう。サディストなメリルがタケシさんに何をするか予想はつくが想像はしたくない。

 俺が思っていた以上にヤバい女だ。この女ならタケシさんを処刑しても可笑しくない。ほんの数年前まで生きてたんだよな、エルフの女王として。関わる事がなくて良かったと心から思う。

 

「そんな事があっても関係は続いてたんだな」

「前のマスターが女性に甘いのもありますけど、メリルに上手く絆されたんだと思います」

「自分を刺した相手に絆されるか?」

「マスターは見た事がないのですが分からないと思いますが、女の私から見てもメリルは可愛かったですよ。世界一の美少女と言っても過言ではないくらいです」

「そんなにか?」

「はい。性格はお世辞にも良いとは言えませんが…」

 

 エルフの国の王女で世界一の美少女と言われる程の容姿をしているのならそれはもうチヤホヤされたのだろう。会った事はないが、どういう性格か容易に想像がつく。

 

「その後何があったか話していたら長くなりますのでこの話はここまでにしておきましょう。一先ず前のマスターの家に入りませんか?」

「それもそうだな」

 

 興味を持った俺も悪いが語り出したデュランダルも悪い。あんな血痕を見た後に言われたら気になるだろ。とはいえデュランダルの言う通りだ。当初の目的を優先させよう。ここでは時間の流れは微妙に遅いが、それでも時間は有限だ。修羅場について聞いていたらタケシさんの残した情報を確認する時間が少なくなる。

 今日に関して言えば昼からダルたち会う予定だ。また日を改めて此処にくればいい話だが、世界樹の状況を考えると無駄は省きたい。

 ふかふかの床に違和感を感じながら緑色の扉の前まで行く。何の変哲もない普通の扉だ。鍵が違うなどというハプニングは特に起こらず、普通に施錠は解除された。ゆっくり扉を開き、視界に映る光景に思わず目を見開く。

 

「これは…」

「変わりませんね。相変わらずの汚部屋です」

 

 一言で言えば物が散乱している部屋だ。ゴミが溢れているゴミ屋敷ではないので匂いなどは特にしないが、至る所に物が散らばっている。主に本や書類だな。見る人が見たら怒るんじゃないか?

 先程の空間よりも広く、家具が置いてある為部屋という実感が湧いてくる。先程の空間はどこか異質な感じがしたからな。初めてくる場所なのに郷愁感を感じたり、居心地はあまりに良くなかった。それにが比べるとこの部屋は少し落ち着く。我儘を言うならもう少し片付けをしておいて欲しかった。

 

 軽く見渡したが中々に広い部屋だと思う。ちょっとした会議室位の広さだな。部屋の真ん中に大きな机が置かれており、山積みの書類と本が机を占拠していた。よく見ると机の上に見覚えのあるポージングを決めるマッチョ(魔道具)があったが、今はスルーしよう。

 ちょうど真正面に入口と同じデザインの緑色の扉があり、扉の開閉に影響がないように一定のスペースをあけて壁にはずらーっと本棚が並んでいる。数えるのが馬鹿らしくなる量だ。隙間なく本棚に並んでいる。

 

「かなりの量だな」

「前のマスターが10年以上の歳月をかけて集めた書物ですね。数は前のマスターも把握しきれていなかったです」

 

 5000冊くらいはあるか? 数が多すぎて1冊1冊数える気にはならないな。1つ気になる所はこの本はしっかりジャンル分けして本棚に並べているかどうかだ。無造作に並べられているのだとしたら、この本の量から目当ての本を探し出すのはそれなりに時間を要するぞ。

 

「机の上に照明用の魔道具があるので点けませんか? 少し薄暗いでしょう?」

「確かにそうだな。見えなくはないが、文字を読むのには困る暗さだな」

 

 床に落ちている本を踏まないように進む。机の上に妙な存在感を放つマッチョ(魔道具)がある。タケシさんの時代からこのマッチョ(魔道具)はあったらしい。目に毒だ。ぶりっ子ポーズをしているのが尚更きつい。マッチョのぶりっ子ポーズってなんだ。誰得だ?

 触りたくないな。マッチョ(魔道具)を触る事に躊躇しているとデュランダルから声がかかった。

 

「そのマッチョ(ゴミ)も魔道具ですけど、マスターから見て机の右端にある鳥の形の魔道具を前のマスターはメインの照明として使ってました。そっちにしませんか?」

 

 言われた通りに視線を向けると梟のような鳥の形をした物体があった。白い鳥の彫像のようなモノは照明用の魔道具らしい。マッチョには触りたくないので、デュランダルの提案に乗って鳥の形の魔道具に魔力を流す。

 直ぐに部屋が明るくなった。これなら本や書類を読むのに苦労はしないだろう。とはいえ何から手をつけたらいいんだ? 本や書類が山のようにある。シルヴィから託された手紙にはどれを読めとか指定はなかったからな。

 もしかしてこの中から探すのか? いや、情報を纏めたモノがあると手紙には書いてあった。まずはそれを探すか。ありそうな所は机の上じゃないか?

 机の上を確認しようと一歩踏み出した時だ。

 

『ようこそ、いらっしゃいでござるよ!』

 

 鳥の形をした魔道具が当然喋った。驚きはあったが、不思議と安心感を与える声だ。この声の持ち主が誰かは直ぐに分かった。あまりに特徴的すぎる喋り方だ。

 

『某はこの部屋の主でざる。手紙を読んでこの場に来たのなら言わずとも分かっていると思うでござるが、あえて!!某は名乗ろうと思う!

某は『テルマ法国』第一王女親衛隊隊長兼『妖精の騎士』初代団長にして、勇者パーティーの魔法剣士!世に伝わりし某の異名は一度聞けば誰もが忘れられないでござるよ!

某はタケシ!合田(ごうだ)(たけし)!『動けるデブ』のタケシとは某の事でござる!』




とうとう100話ですね。話が長くなっている気がしてならない。
一なら読み直すのが面倒になってきている作者です。完結まで書いたらどれくらいのページ数になるだろうか?

読んでくださる読者の皆さんに感謝です!引き続きよろしくお願いします。

誰の個人エピソードが読みたいかというアンケート2

  • 1.エクレア
  • 2.サーシャ
  • 3.ダル
  • 4.トラさん
  • 5.ノエル
  • 6.セシル
  • 7.デュランダル
  • 8.テスラ
  • 9.マクスウェル
  • 10.シルヴィ
  • 11.ディアボロ
  • 12.ドレイク
  • 13.タケシ(無投票)
  • 14.とある衛兵
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