勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。   作:かませ犬S

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前話の最後。少し加筆しています


100.白の方が少ない

 この世界で最も偉大で強大な魔法使いであり魔法研究の第一人者と知られる大賢者マクスウェル。先生がコバヤシだと気付いた時点で分かっていた事であるがマクスウェルはどうやら魔族側の者らしい。ドワーフ自体が魔族に近い種族だ。マクスウェルが魔族と親しいとしても不思議ではない。ティエラとテスラの恋愛を本にしていたくらいだ、余程親密な関係だったのだろう。

 マクスウェルが魔族側か…、彼と師弟関係にあるサーシャも魔族側の可能性が高い。もしかして彼女が魔王か? いや、彼女は人間とドワーフのハーフだと言っていた。だが、証言をしたのがマクスウェルなら彼女の言葉が嘘の可能性もある。魔王である可能性も浮上する。

 

「マクスウェルについて考えているな」

「そうだな。マクスウェルが魔族に近いという話は勇者パーティーの一人として軽く流す訳にはいかない」

「先にも話したが魔族とドワーフたちとの関係は打算ありきだ。種族の力が大きくなる為に魔族を利用したに過ぎない。マクスウェルも同様だ」

「どういう事だ?」

「マクスウェルは魔法の研究にしか興味がない。魔法の真理を知り魔法を極める為なら何でも利用する。そういう男だ。私たちに協力したのも魔族との協力関係があったからではない。魔法の実験をしたかったから協力した、それだけだ」

「マクスウェルは魔族側ではないと言いたいのか?」

「正確に言うならドワーフが魔族側ではないと言った方がいいか? ドワーフと魔族の関係は良好ではない。むしろ険悪と言っていい。ドワーフの勢力が大きくなってから魔族とドワーフの種族間で大きな溝を生む事件があった」

「何があった?」

 

 思考を巡らせるがそんな出来事があっただろうか? マクスウェルから様々な本を借りて読んだが思い当たる出来事はなかった。

 だがティエラが断言する以上種族の友好に亀裂が入るような事件が起きたのだろう。

 

「三代目魔王の事は知っているか?」

「いや、知らない。世界各地の図書館にもマクスウェルが集めた書物の中にも三代目魔王について書かれた物はなかった」

「三代目魔王については意図的に隠滅されている。ドワーフと獣人にとって世に知られると不味い情報だからな」

「嫌な予感がするんだが…」

「その予感を当ててやろう。三代目魔王は魔族と獣人の王族のハーフだった。カイルが今現在抱えているように大きすぎる爆弾を獣人は抱えたのだ」

「獣人の王族と魔族のハーフ…そういう事か」

 

 三代目魔王の情報が隠滅される訳だ。特に獣人にとって不都合な情報だろう。三代目魔王が獣人の王族と魔族のハーフという話が世界に広がれば獣人の立場は間違いなく悪くなる。

 魔族と獣人が親しい関係であると勘繰られる事もありえる。実際に協力関係にあったから嘘ではないのだが…。

  勢力として大きくなったとはいえ、人間とエルフの二つの勢力を同時に相手には出来ないだろう。4つの勢力の力関係は均等していた。いや、当時においては人間やエルフたちの方が上か。魔族と表立って協力しなければ二つの勢力には太刀打ち出来ない。獣人と一緒に魔族を支援していたドワーフがどちらに付くかで戦力差は変わる。

 ドワーフも選択を強いられる事になる。獣人に付くか人間とエルフに付くか。ドワーフが人間やエルフ側に付けば獣人は間違いなく負ける事になる。獣人側に付けば勢力としては互角になる。

 

 この場合、重要なのは魔族が加担するかどうかだ。ドワーフと獣人側に必ず加担する必要はない。魔族としては戦争のきっかけになるだけでいい。 一度戦争が始まれば終わった後に介入した方が被害が少なく済むだろう。これまでの戦いで魔族は数を減らしている。この戦争に加担すれば多くの犠牲を強いる事になる。

 漁夫の利を狙った方が魔族としては利が大きい。人間とエルフを滅ぼすと決めたのなら加担するだろうが…。

 

 それに魔族側に不満が溜まっている事も想定される。奴隷の立場から解放される為に魔族は戦ってきた。ドワーフと獣人から支援を受けていた立場ではあるが魔族はいい様に使われた事実は残る。現に魔族との戦いで二つの勢力が縮小した際にドワーフと獣人は国を起こし勢力を拡大した。犠牲は殆どなかった。戦いで数を減らしたのは魔族と人間、そしてエルフたちだ。

 利を得たのは彼らだけだ。当然魔族に不満は残る。だが支援を受けている立場である為強く出られない。三代目魔王の件は魔族側が意図して巻き込んだ可能性が高いな。所謂ハニートラップかも知れない。

 ドワーフと獣人の連合と人間とエルフの連合。この勢力間の戦いを望むのは魔族だけだ。どちらが勝っても被害は大きくなる。

 大戦争だな

 

「獣人もドワーフも戦争など望んではいない。当然だ。一度戦いが始まれば少なくない犠牲が出る事になる。民が死ねば労働力が減り生産性は落ちる。一度減った数を元に戻すのは簡単ではないからな。民が減れば国が大きく事はない」

「勢力を拡大する為に魔族を利用したが、戦いに巻き込まれる事は望んではいないか…」

「獣人が戦いに巻き込まれれば必然的にドワーフも巻き込まれる事になる。獣人だけでは人間とエルフの勢力には勝てないからな。無理矢理にでも巻き込むだろう」

「共に魔族を支援していた立場でもある。その事を公表されれば嫌でも敵対するか。それにエルフとの確執も残っている」

 

 ドワーフはエルフの領地を奪う形で勢力を拡大した。魔族という強大な敵がいたからこそ種族間で戦争にはなってはいないが、ドワーフとエルフの間には戦いの火種が残っている。

 仮に獣人の戦いに巻き込まれなかったとしても獣人が滅びた後、ドワーフの立場は今より悪くなっている可能性が高い。

 

「だが戦争にはなっていない」

「なる前に戦争の火種を消したからな」

 

 その言葉で何が起きたか察する事が出来た。ドワーフと魔族、いや獣人もか。彼らの関係に亀裂が走る事態が起きた。つまり獣人とドワーフが魔族を裏切った。捨てたと言うべきか。協力関係にはあったが関係を続けていく事で不利益が出た。彼らとしても戦いに巻き込まれる訳にはいかなった。

 

「三代目魔王が魔族を率いて立ち上がった時に最も危虞したのが獣人だ。ドワーフも同様だな。今までのように魔族が戦いを始めるのとは訳が違う。戦いに巻き込まれない為に獣人とドワーフは一つの策を講じた」

「何をしたんだ?」

「獣人の王とドワーフの王、二人の連名で三代目魔王を秘密裏に呼び出した。呼び出した名目は『人間とエルフに対抗する為に三勢力で同盟を結びたい。その為の会談を開きたい』というものだ」」

「罠に聞こえるんだが?」

「間違っていない。同盟を結ぶ口実で魔王を会談の席に呼び出し、秘密裏に殺害したからな。三代目魔王の名が世界に知られていないのは魔族が立ち上がって直ぐに魔王が殺害されたからだ」

 

 ドワーフと獣人にとって都合が悪い情報はそのまま隠滅した訳か。

 

「それにしても随分と詳しいな」

「当時の持ち主が当事者の1人だった。分かりやすい罠にも関わらず引っかかった知恵の足りない愚か者だったよ」

「三代目魔王がデュランダルの持ち主だった訳か」

「ティエラと呼べ。まぁいい、その通りだ。三代目魔王…名前は確か桃次郎と言ったか。名前から分かる通りミラベルの送り込んだ転生者の1人だった」

「同じように加護が与えられていたのか?」

「恐らくな。呼び出した相手が実の父親だった事もあり疑う事をしなかった。私の言葉を聞いて怒ってた程だ。愚かすぎて救えないと直ぐに見限ったよ」

 

 何の加護を与えられたかは知らないがその最後は決して良いものではなかっただろう。実の父親の手で殺された事になる。それもティエラの言葉を聞いて怒る程に信頼していた父親の手でだ。

 

「話を戻そう。三代目魔王は秘密裏に殺害され、魔族に対してもドワーフと獣人は牽制を入れた。同じような小細工をすれば支援を打ち切る、あるいは敵対する。そういったモノだった筈だ」

「支援がなくなれば魔族は孤立する事になる。戦争が起きるように動けばその時は敵対か。どうやっても味方がいなくなる訳だな」

「結果から言えば魔族は苦渋を舐める事になった。弱者の辛い所だな。常に強者から不利益な二択を選ばされる」

「その事が原因で関係が悪化した訳か」

「事の始まりと言えばそうなる。その後も色々とあった訳だ。互いに相手に対して不満を抱えている。関係は決して良好ではない」

 

 それでも魔族が今も支援を受けている可能性は高いな。人間やエルフに比べると獣人とドワーフの被害が少ない、その事実は変わらない。黒寄りのグレーだな。

 

「マクスウェルは魔族側か?」

「どちらとも言えないな。先も言ったようにあの男は魔法の探求にしか興味がない。魔法の為ならば魔族にも付くし人間やエルフにも付く。そういう男だ」

「最も信用出来ない類じゃないか」

「カイルの目で見極める事だな。ただコバヤシとの繋がりを踏まえてみるならマクスウェルは魔族側だぞ」

 

 思わずため息が漏れる。胃痛の種が減る気配がない。増える一方だ。獅子身中の虫が多すぎやしないか?これで世界を救えとかふざけた話だ。

 それでもやるしかない訳だが。

 

「それにカイルも他人事ではないだろう。ダルの事が知られればどうなるか」

 

 特大の爆弾(ダルの事情)を思い出し胃に痛みが走った。

誰の個人エピソードが読みたいかというアンケート2

  • 1.エクレア
  • 2.サーシャ
  • 3.ダル
  • 4.トラさん
  • 5.ノエル
  • 6.セシル
  • 7.デュランダル
  • 8.テスラ
  • 9.マクスウェル
  • 10.シルヴィ
  • 11.ディアボロ
  • 12.ドレイク
  • 13.タケシ(無投票)
  • 14.とある衛兵
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