勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。   作:かませ犬S

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Side-story1.野営

 日が暮れるのが早くなってきたと思う。ひと月前の今頃ならまだ夕日が見えていただろう。それが今では遠くを見渡すのも苦労するような真っ暗闇だ。今日に限っていえば曇天が空を覆い尽くしているのも大きいか。

 俺一人なら雨が降ると判断して濡れない場所に移動しただろうが、雨は降らないとトラさんが断言した。今回はトラさんの判断に任せよう。

 

「曇ってはおるが、本当に雨は降らないのか?」

「降らないな。これだけ曇っていても俺がまだ顔を洗おうという気にならん」

「それで雨と判断出来るのはおかしいと思うのじゃ」

 

 暖を取るために準備した焚き火に薪をくべながら会話する二人のやり取りを静観する。トラさんの話を聞くとまるで猫みたいだなと思ってしまった。会話に混ざりたい気もしてきたが俺は俺でやる事があるからな。

 

 トラさんが捕えエクレアが解体した魔物の肉を一口サイズに切り、串に刺していく。俺が作っているのは串肉だ。料理と呼んでいいのか分からない単調なものだな。今宵の料理担当は俺だ。

 串に刺した肉に調味料をふりかけて味をつけてから焚き火の火で肉を焼いていく。

 

 トラさんが捕らえてきた魔物はモコモコシープという羊の姿をした化け物だ。名前と見た目は可愛らしいんだけどな。体長も大きい個体で1.5メートルくらいだし、顔も前世で見た羊に似ている。ただ、その凶暴性は比較するのがバカらしくなるほど違う。

 頭に生えた角は前世のような螺旋を描く巻きツノではなく、額から真っ直ぐに伸びておりモコモコシープはその角を使って狩りをするとされている。動物やほかの魔物だけじゃない、人間やエルフだって襲う。その角で一突きにして殺すのだ。

 一度だけモコモコシープの角に団子のようにささる人間の死体を見た事がある。それを見て以来、可愛らしい見た目であろうと油断しては行けないと学んだ。

 

 そんな化け物みたいな魔物ではあるのだが、腐っても勇者パーティーに選ばれた一人───格闘家のトラさんにかかれば容易く捕らえる事が出来る訳だ。戦闘面であったり、こういった食料調達ではトラさんに頼ってばかりだな。

 

 こういったトラさんのいい所を沢山見つける事が出来て嬉しい旅ではあるが、胃に痛い事もそれ以上に起きている。

 

 ───勇者パーティーとして旅立ってから2ヶ月と半月、仲間の一人であるトラさんが捕まった回数は7回を超えた。

 

 この人は本当に世界各地の猛者から選ばれた人物なのかと疑問に思ってしまった。トラさんだけなら最悪アルカディアの王様に文句を言って変えて貰うつもりであったが、サーシャはトラさんより少ないが4回、ノエルは絡んできた人間をぶん殴って2回、ダルとエクレアがそれぞれ1回ずつ捕まっていたりする。

 

 懲罰部隊か何かか?

 

 短い期間で色々な事がありすぎた。一人で活動している時も苦労する事はあったが勇者パーティーに加入してから数倍⋯いや数十倍に跳ね上がった気がする。

 これだけ捕まっても尚、勇者パーティーとして扱われる事が不思議で仕方ない。いや、まぁ理由は分かっている。

 

 単純に強いし優秀なんだ、こいつら。旅を始めて直ぐに魔物の大軍と出くわしたが、特に苦労する事なく殲滅する事が出来た。ドラゴンの被害に怯える村に訪れた時もものの半日で方がついた。騎士ですら苦戦する魔物を瞬殺するのは当たり前。

 それだけ圧倒的な強さを見せつければ皆が期待する。勇者パーティーならこの騒動を治める事が出来ると。強さ故に許されている感じだな。

 それに捕まったと言っても大きな犯罪に手を染めた訳ではない。ダルの一件を除けば殆どが軽犯罪だ。

 

 とはいえ俺以外が見事に前科持ちなのは胃によろしくない。深いため息をつきながら肉が焦げないように調整する。

 

「ところでだ、少しは俺の手伝いをしようって気にはならないか?」

「ならないわねー、あたし料理とか得意じゃないし」

 

 モコモコシープを見つけて捕らえたトラさん。調理がしやすいように解体してくれたエクレア。焚き火を準備、火の管理をしているダル。楽しそうに酒を飲むサーシャ。

 

 少しは手伝えと言いたい。サーシャ以外の三人はともかくこいつは本当に何もしていない。俺も調理以外はしていないからせめて一緒に調理しろ。

 言った所で無駄な事は短い付き合いだが、分かった事である。特に気分良くお酒を飲んでいるサーシャ(こいつ)に言った所で、聞き流されるだけだ。

 

「肉はまだかのぅ?」

「まだ中まで焼けてないな。もう少し待ってくれ」

「楽しみなのじゃ!」

 

 生焼けの肉を食べた所で体調を壊す面子ではないだろうが、食事は美味しい物を食べるのが一番だ。

 

「ノエルの事は構わないのか?」

「と言っても、な?」

 

 トラさんに聞かれるも返事に困る。焚き火を囲むように集まる仲間から少し離れた所に、簡易的なテントが立てられている。教会が開発した野宿用のアイテムで魔物避けの結界まで張れる優れモノ。ただし一人用。

 察しの良い者は気付いていると思うが、ノエルは一人でテントに籠っている。こうして食事を共にしたり、会話を混じえるつもりはないらしい。

 

 人選間違えてないか王様?

 

 ノエルが優秀なのは認めるが仲間に対してここまでツンツンしていると対応に困る。特に人間の男である俺に当たりが強いのは心にくる。

 もう少し歩み寄ってくれないものか⋯。

 

「ノエルなら町を出る前に食糧を買ってたわよ。気にする必要はないんじゃないのー」

「お前はお酒ばかり買っていたよな」

「そうよ、悪い?あたしはお酒がないと死んじゃうもの」

「なんと!サーシャはお酒がないと死んでしまうのか!お酒を切らさないように気を付けねば!」

「そうなの、気をつけてね」

「うむ!我に任せろ」

「サーシャの話を真に受けるなダル。お酒を飲まなくてもこいつは死なない」

 

 焼き終わった串肉をダルに渡しながら念の為注意しておく。このパーティー最年少という事もあって少しばかり経験が足りていないせいで、ダルはよくサーシャに騙される。

 サーシャ曰く、ダルの反応が可愛いからついからかいたくなるそうだが⋯見ている側すると止めたくなるな。

 

「解体大変じゃなかったか?」

「⋯⋯⋯⋯」フルフル

「そうか? でも助かったよ。俺一人で肉の解体までしていたら夜も更けていたと思う」

 

 隣に座ってきたエクレアに串肉を手渡しながらお礼を言っておく。肉の解体が大変な作業である事は知っている。一人で活動していた期間が長い分、そういった経験もそれなりにしている。

 エクレアができるとは思っていなかったら正直驚いたのが本音だ。彼女のお陰でこちらもその間に調味料を作ったり、料理の為の準備をする事ができた。美味しそうに串肉を頬張るダルとエクレアを見て頬が緩んだ。

 

「ねーねー、あたしのは?」

「そこのヤツが焼けているから取っていいぞ」

「あたしにも手渡ししなさいよ!」

「両手が酒で塞がってるバカにどうやって手渡すんだ。せめてどちらか片方を置け」

 

 というより何で両手に酒を持って飲んでいるんだサーシャ(こいつ)は。見た感じどちら違うお酒だな。お酒の味比べでもしているのか?

 

「カイル、俺はそこの肉が一番大きい串が欲しい」

「それはトラさん用に準備したやつだから、焼けたら渡すよ。塊が大きいから焼けるまで時間がかかるんだ」

「多少火が通ってなくても構わんぞ」

「トラさんのは焼き始めたばかりだから殆ど生肉だぞ」

「それは困る」

 

 クハハハハと豪快に笑うトラさんに、肉の代わりにお酒でもどう?っと進めるサーシャ。トラさんに渡したお酒のラベルに『獣人殺し』と書いてあるのが見えてしまった。

 当然ではあるが獣人を殺す為の毒ではない。単純に度数が高いお酒だ。二人ともお酒には強いから大丈夫だろう。

 

「カイルは食べないのか?」

「⋯⋯⋯⋯」モグモグ

「俺の分は⋯後で焼くさ。今は少しばかり食欲がなくてな」

「そうなのか?無理をしてはダメだぞ」

「⋯⋯⋯⋯」コクコク

「ありがとう。無理はしないさ」

「うむ!」

 

 返答に満足したのか再び串肉を食べる二人を見て、お腹を抑える。決してお腹が空いていない訳ではない。道中は魔物との戦闘もあったし動いた分のエネルギーを体が欲している。だが、食べれない。胃が痛くて食欲が湧かないのだ。

 

「⋯⋯⋯⋯」

 

 今日と同じペースで進めば明日にでもクレマトラスの領内に着くだろう。目指しているのは王都だが、その前に町が幾つかある。旅支度や魔族の情報を求めて立ち寄る事になるだろう。そうなると確率が上がる訳だ。何がとは言わない。それが俺の胃にダメージを与えている。さて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───次の町では誰が捕まるだろう?

 

 楽しそうに食事を楽しむ仲間を見てため息が漏れた。




旅を始めて間もない頃


え?にしては犯罪回数多くない?
ソンナコトナイヨー

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