勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。   作:かませ犬S

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4.サーシャの見解

「あたしの勝ちぃぃぃ!」

「…………。」

 

 15人目の挑戦者が限界を迎え机に突っ伏した。周りの男が慣れたように男をどかしている姿が見える。相も変わらず飲み比べは彼女が無双中である。

 飲み比べが終わるまで待とうかと思ったが絶えずに現れる挑戦者を見て、埒が明かないとサーシャに話しかける事にした。

 

「サーシャ!」

「あれ、カイルじゃん!どうしたのー?」

 

 声をかけて漸く俺の存在に気付いたのか、サーシャはこちらに手を振りながら笑った。

 お酒を飲んでいるせいか頬が赤い。口調も軽く陽気な印象を受ける。最も酒を飲んでいない時の方が少ないので、サーシャは普段からこんな感じだ。

 

「話があるんだけど、大丈夫か?」

「んー?その感じだと大事な話よね?

場所を移した方がいいかしら?」

「そうしてくれると助かる」

「分かったわ。店主!2階の部屋借りるわよ!」

 

 カウンターにいた酒場の店主に向かってサーシャが話しかければ、店主はあいよーと軽く返事を返した。

 椅子から立ち上がりおもむろに階段の方へ向かう彼女を慌てて追いかけた。

 

「なんと言うか、慣れてるな対応が」

「そうねー、ここで飲んでるとたまーに酒に酔って鬱陶しく絡んで来る客がいるのよね

そういう時は1人で飲みたいから、部屋を借りて飲んでるの」

「なるほどな」

 

 とはいえ随分と対応がいい。疑問に思った事が顔に出ていたのだろう。こっちを向いたサーシャがクスクスと笑いだした。

 

「どうもあたしの噂を聞いたみたいでね

店を吹っ飛ばされると困るから2階の部屋で飲んでくれって」

「そういう事か」

 

 なんと言う悪名だろうか。勇者パーティーとして良いのか悪いか。いや、間違いなく悪いと思う。

 こうして酒場の店主にまで彼女の酒癖の悪さが知れ渡っているのだから。

 

 階段を登り目当ての部屋へ向かう彼女の背中を見ると、この小柄な身体のどこにあれだけのお酒が入るのか疑問に思う。

 飲み比べの現場は何度か見てきたが彼女が負けた姿を見た事がない。

 

「この部屋よー」

 

 2階の突き当たりの部屋だ。家具はベットと机と椅子があるだけ。

 何度か来ているのか慣れた様子で部屋に入ると、彼女は椅子に座り机に頬杖をつきながら笑った。

 

「で、要件はなーに?」

「サーシャに相談したい事あってね」

「あら、カイルがあたしに相談なんて珍しいじゃない」

 

 楽しげにサーシャが笑う。

 彼女に相談したい事、と言ってもパーティーに魔王が混じっている等を言うつもりはない。

 魔法ついて詳しい彼女に聞きたい事があった。

 

「ダルの魔法についてだ」

 

 俺の言葉に先程まで楽しそうに笑っていたサーシャの顔が引き締まった。

 頬杖をやめて、右手の人差し指で額をポンポンと数度叩く仕草が妙にゆっくりに見えた。

 思っていた以上の緊張感に少し胃が傷んだ。

 

「ダルが魔族じゃないかって疑ってるのね、カイルは」

 

 まっすぐにこちらを見つめるサーシャに身体が強ばった。

 やはり彼女は賢い。俺の少ない言葉で言いたいこと直ぐに理解したらしい。

 

 ミラベルに魔王が混じっている事を告げられた時、俺が真っ先に疑ったのが盗賊のダルだった。

 国に招集され、勇者パーティーとなった俺たちだったがダルの事を俺は知らなかった。

 他のメンバーは多少なり名を聞いた事があったが、ダルだけが全くの無名。他のみんなもダルの事は知らなかった。

 

 と言ってもそこまで気にする事もなく冒険を続けていたが、ミラベルに言われてからそういった経緯がダルを悪く見せた。

 

 そして一番の問題がダルの魔法だ。

 彼女が魔法を使えるのが分かったのは最近の事だ。サーシャ程ではないが彼女は複数の魔法を使う事が出来る。問題なのは彼女が使う属性。

 ダルが使う魔法は『火』属性と『闇』属性だ。

 

 魔法の属性は7つ存在するが、人が使えるのは6つまでだと言われている。残り一つは過去と現在を見ても使えた者はいない。

 

 

 ───『闇』属性の魔法は魔族のみが使える。

 

 それが魔法を使う者の常識だ。

 これだけで彼女が魔族じゃないかと疑う証拠となる。魔族だけが使う属性、彼女が魔王である可能性は高いと俺は思った。

 

 サーシャに相談したのはこの闇属性について俺の知識が間違ってないか確かめたかったからだ。

 彼女の反応から間違いではないのが分かった。

 

「そうね、闇属性の魔法を使えるのは魔族だけ。

この間も案内役に化けて魔族が奇襲を仕掛けてきたから、カイルが心配するのは分かるわ」

「ダルの事は信頼している。

詮索する気はないが、今までの経歴だったりで怪しい部分が見えてしまう。

疑いたくないんだが…」

 

 続きは言えなかった。思わず口を噤んだ俺を見て、サーシャは笑い出した。

 想定していなかった反応に呆気に取られていると、彼女は再び頬杖をついて大丈夫よーと一言。

 

「ダルは確かに闇属性の魔法を使うわ。

その理由について私は目星がついてる」

「どういう事だ?」

「それは直接本人に聞いたらどうかしら?

彼女も貴方になら教えてくれると思うわ」

「…………。」

「大丈夫よ。ダルは信頼していい。少し事情があるだけ。彼女は貴方の事…仲間の事をしっかり愛してるもの」

 

 優しげにサーシャが微笑んだ。

 どうやら俺に教えるつもりはないらしい。直接聞けとそう言ってる。

 俺よりも賢いサーシャがそう言うのだ。それが間違いとは言えない。

 少なくともこうして話したお陰で腹の中にあったモヤモヤは消えた。ダルと直接話すべきか…。

 

 ───ダルは恐らく魔族だ。あるいは魔族のハーフか。それでもサーシャが危険はないと判断している。

 それを信じても良いのだろう。

 サーシャが魔王だった場合、完全に裏目に出るが優しく笑う彼女を信じてみたいと思った。

 

 もし仮に魔王がサーシャの心を覗いたとしても、そこにあるのは闇属性の魔法を使う事からダルが魔族じゃないかと心配する俺が分かるだけだ。

 

 闇属性を使えるのは魔族だけというのは魔法の知識がある者なら分かる事だし、警戒するには十分な筈。

 仲間の中に魔王がいると俺が疑っているとは思わないだろう。

 

 こうして振り返って見れば、ダルが魔王である可能性は低いと思った。

 読心を使え仲間に混じるほど、狡猾な魔王が魔族と疑われるような魔法を使うとは思えない。

 少し気が楽になった。

 

「あーあ、誰かさんのせいで酔いが覚めちゃったなー」

 

 そう言うが非難している様には見えなかった。どこか期待しているような目だ。

 

「悪かったな、俺でも良ければ1杯付き合うよ」

「まってましたぁぁぁ!」

 

 俺の返事を聞くとほぼ同時に机の下に隠していたと思われる大きな酒瓶をドンッと机の上に置いた。

 1杯だけって言ったつもりなんだけどなー。

 

 いつ間にやら酒器も準備しており、俺の器になみなみとお酒を注いでいく。

 飲むぞ、飲むぞーと楽しそうにしてるサーシャに文句を言う気も失せて注がれたお酒を一思いに飲み干した。

 

「おおっ!いい飲みっぷり!あたしも負けてられないわ!」

「なんの勝負だよ」

 

 自分の分を飲み終えたら直ぐさま俺の酒器に酒を注ぐのを見てこれは長くなるなと、1人ため息を吐いた。

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