勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。   作:かませ犬S

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タイトル短くしたよー(・ω・)ノシ


62.大切な記憶

 ───大会が終わった後、騒ぎが落ち着くのを待ってから応援に来てくれた仲間と合流した。その中にエクレアの姿はなかった。ダルが言うには先に宿屋に帰ったらしい。正直助かったという気持ちが強かったか?

 先生との会話の後だったし、少し考える時間が欲しかった。彼女と目を合わすと何故か頭にノイズが走ってそれ所じゃなくなるからな。仲間にも心配かけるだろう。何より原因がエクレアだと知られたくない。出来れば彼女を傷付けたくない。

 

「優勝おめでとうなのじゃ!流石はカイルよ!」

「凡人にしてはやりますね。僕が褒めてあげます」

「流石は俺のカイルだ!次は俺とやろう!」

 

 三者三葉の祝いの言葉を受け取りつつ、ダルからデュランダルを受け取る。トラさんに背中をバシバシと叩かれ、かなり痛い。トラさんががやけに興奮している。

 

「カイルの優勝を祝ってご飯を食べに行くのじゃ!」

「お祝いですね!義兄さんに奢らせてあげますよ」

「クハハハ!カイルの優勝賞金で祝勝会だな!」

 

 なんで俺が奢る事になってるんだ!?祝われる側だよな俺? いや、まぁ別に構わないと言えば構わない。優勝賞金が引くほど大金だったし、正直最後の2戦に納得がいっていない自分がいる。このお金はパアっと使っても良いと思う。食事程度では殆ど減らないくらい貰っているが…

 

 既に王都の色んなお店のオススメを聞き出しているらしいダルに案内されて、お店へと向かう。どうやらドラゴンのお肉を提供しているそうだ。俺かエクレアのどちらかが優勝するだろうと予想してお店を予約していたらしい。

 俺たちに対する信頼は嬉しいが、優勝賞金で豪遊するつもりだったのだろうか? というかお前達もお金に困らないくらい持ってるだろう!

 祝勝会ぐらい奢って欲しい。あ、でも女性に出させれるのもアレか。リゼットさんの言葉が頭に過ぎりグッときた。

 あの人彼氏にフラれてから執拗に女性には優しくしなさいって俺に教育してきた。俺の所為で彼氏にフラれたんじゃないかと不安になり傭兵の仲間に相談したな。

 結局リゼットさんの酒癖が悪くて彼氏が逃げて行っただけだった。リゼットさんお酒飲むと暴れるからな…。リゼットさんの酒癖の悪さを思い出して思わず遠い目になる。

 

「クハハハ!カイルも飲め」

「義兄さん!このサラダ美味しいですよ!この僕がよそってあげます」

「カイル、我は酔ってしまったぞ」

 

 カオスだな。リゼットさんの時に比べればまだマシだが一人一人対応するのが面倒に感じるくらいだ。セシルはいいんだ。俺の為にサラダをお皿によそってくれてるだけだから。

 いや、でもサラダばかりお皿によそうのはやめて欲しい。さっきから俺サラダしか食べてない気がする。エルフ全体に言える事だが肉よりも野菜を好んで食す。肉も食べるし、禁止されている訳ではないが単純に野菜が好きなようだ。そして好きな人に同じ物を食べて貰いたいという思いが強いのも特徴。結果、サラダばかり食べる事になる。

 ドラゴンの肉、早く焼けてこないかな?サラダだけでお腹いっぱいになりそうだ。

 

 トラさんはやたらと俺にお酒を飲まそうとする。俺は酔わないから影響はないが、もしかして酔わそうとしてるのか? 後、お尻を触るのはやめて欲しい。ゾワゾワする。

 耳元で今夜どうだ?とか誘ってくるのも勘弁して欲しい。流石に直球すぎるだろ。そこまで男らしいのかトラさん! 申し訳ないがノエルを裏切りたくないので、なしで!

 

 最後にダル。絶対酔ってないだろ。顔を赤らめて上目遣いでこちらを見ている彼女にツッコミを入れたくなる。そもそも彼女はお酒を飲んでいない。しっかりと王様に言われた事を厳守している。

 ダルが飲んでたのは果汁を搾ったジュース

だ。当然だが酔う訳がない。雰囲気にでも酔ったのか? 反応待ちか?お持ち帰りでもしたらいいのだろうか。そんな事したらノエルの目から光が消えるのでやらないが。

 

 ───そんなこんなで随分と騒がしい夕食だったと思う。メインであるドラゴンの肉がテーブルに届いた時には7割くらいサラダでお腹が膨れてたと思う。それでも大変美味しいお肉でございました。

 聞いた所、俺たちが討伐したエンシェントドラゴンのお肉らしい。ドラゴンのお肉の中でもグレードが高いお肉なんですよーとニッコニコだったな。俺たちが討伐したドラゴンの肉だし安くなるかと言われればそうでもなく、他のお客さんと同じ価格だった。

 そりゃそうだろう。店はドラゴンのお肉を仕入れているので適正価格で売りたいだろうからな。と、思ったがダルが交渉したら安くなった。意味が分からない。

 こういった値引き交渉にはダルがやたらと強い。別に値引きしなくても余裕で払えるから構わないのだが。

 

「家計の事を考える我は良妻じゃな!」

 

 と高笑いしてたので、ツッコミだけは入れておいた。

 『カイルの戦いに興奮した。今晩どうだ?』と俺を部屋に誘うトラさんを振り切り、『我の事をお持ち帰りしても良いぞ!』と赤らめた顔で言うダルをどうにか言い含め、『義兄さんと一緒がいいです。ダメですか?』とお酒に酔ってトロンとしているセシルを彼女の部屋に寝かしつけてきた。

 ちゃんと健全だ。ノエル、俺頑張ったよ。

 

 武術大会以上に疲れた祝勝会が終わり部屋へと帰ってきた。デュランダルを机の上に置いて俺も椅子に腰掛ける。

 やはり様子が変だな。いつもなら彼女の方から話しかけてくる所だが。

 

「大丈夫か、デュランダル?」

「ん?…あ!すみませんマスター。少し寝ぼけていたようです」

「寝てたのか?」

「昨日の夜寝れなかった所為ですかね?マスターが飲んでる間寝てしまっていました」

「珍しいな。無理はしないようにな」

「はい!すみませんが今日は私は早めに寝ますね。蓄積されますか?」

「今日はいいよ。おやすみデュランダル」

「おやすみなさい、マスター」

 

 デュランダルが静かになると急に部屋が静まり返った気がした。寂しいという気分はない。俺もまた1人で考えたい事があった。

 その前に着替えるか。食べに行く前に鎧はこの部屋に置いてきたが、服に汗の匂いが染み付いている気がする。あらかじめ着替えを用意していた事もあり、直ぐに着替え終えた。

 改めて椅子に腰掛ける。デュランダルの反応はない。寝てるのだろうか?

 

 今日の事で考える事がある。先生の話もそうだが、何よりエクレアの事だ。エクレアと顔を合わせるだけで、体に不調がある。今までこんな事はなかった。タイミングで言うとミラベルと夢で出会ってからだ。

 先生の言葉が脳裏に過ぎり、小さく『加護』かと呟いてしまう。疑い過ぎか? いや、彼女はもう信じてはいけないだろう。

 

 エクレアと顔を合わす事でもそうだが、同様に前世の事を思い出そうとすると頭にノイズが走る。それは決まって脳裏に浮かぶ黒髪の女性の事を思い出そうとした時だ。

 多分、彼女が『栞』という名前の女性の筈だ。だが俺の知り合いの中に彼女はいない。また頭にノイズが走る。思い出させないように何かが働いてる感じだ。これが『加護』によるものなのか?

 

「ん?」

 

 ───トントン、と不意に部屋がノックされた。こんな時間に来客か? まさかトラさんか!? 少し不安になりながら扉を開けるとそこには昼間と違う装いのエクレアの姿があった。

 鎧ではなく彼女がよく着ている白いワンピース姿で、顔は少し赤らんでいる。この白いワンピースは俺がプレゼントしたやつだったか?また頭にノイズが走った。

 

「どうかしたか?」

 

 エクレアは悪くないと思うが、彼女を見るだけで頭を掻き回されるような不快感が襲ってくる。最低な気分だ。

 俺の言葉に対する彼女の返答はなく、エクレアが俺の体を押して部屋に入ってきた。扉が閉まる音をどこか他人事のように聞いていると、エクレアがギュと抱きついてきた。

 思わず彼女を見る。また頭にノイズが走るかと思ったが、何もなかった。違和感が消えた。

 どういう事だ? 

 

「俺に用事があるのか?」

「……………」コクコク。

「それは昼間の事が関係してる?」

「……………」コクコク。

「分かった。一つだけ俺もエクレアに確認していいか?」

 

 エクレアがコクリと頷いた。準決勝で戦った時、彼女の様子が変だった。戦っている時はこちらを気遣ってはいたがいつものエクレアだった。俺が一言名前を口にした時にエクレアは驚いた表情で固まっていた。『栞』という名前、そして脳裏に浮かぶ黒髪の女性。驚いたエクレアの顔。何か関係があると思う。

 彼女は魂にかけられた制約で答えられないかも知れない。それでも聞いておきたい。

 

「エクレアは『栞』なのか?」

 

 俺は何を聞いているんだろうと、自分でも可笑しく思ってしまう。エクレアの反応はない。前と同じだ。答えられない内容なのかも知れない。だが、今回はその反応が答えだと思う。

 エクレアにナツメ・シノノメの名前を言った時は反応していた。日本人の名前に反応出来ない訳ではないと思う。

 多分彼女の前世が関係しているんじゃないかと俺は考える。そして『栞』という名前はエクレアの前世の名前じゃないかと。

 だとすれば俺はエクレアと知り合いだったのか? 黒髪の女性の姿が脳裏に浮かび、ザザっとまたノイズが走る。

 

 エクレアに押し倒された。だが、そんな事が気にならないくらい不快感が強い。とはいえ彼女を止めないと不味い気がする。

 

「エクレア待ってくれ」

 

 が、俺の制止の声なんて聞こえていないのか彼女の顔が近付いてきてキスされた。不快感が消えた。意味が分からない。

 触れるだけのキスだった。数秒くらいか? 顔を上げたエクレアはご満悦な様子だ。 顔が彼女にしては珍しくニヤケている。随分と嬉しそうだが、俺はノエルの事を思い出して体が震えそうなんだが。

 

「エクレア、1ついいか?」

 

 彼女が首を傾げる。ここでしっかりと言っておくべきだ。俺に好意を向けてくれるのは嬉しいが、その思いに応える事は出来ない。

 

「俺に好意を持ってくれているのは嬉しく思う」

 

 エクレアが照れた様子でコクコクと頷いた。正直言い出し難い。

 

「だが、その思いに応える事は出来ない」

 

 ガーン!!と効果音が聞こえそうなくらいエクレアがショックを受けている。少し前までの嬉しそうな顔がどこへやら。瞳に涙を貯めて信じられないものを見るような顔でこちらをみている。

 

「俺はノエルと婚約している。彼女に不誠実な事は出来ない。エクレアの好意を嬉しく思うが、応える事は出来ないんだ」

 

 殴られる事は覚悟の上だ。エクレアを見ると目が据わっている。怒った時のノエルと同じ仕草だなと、他人事のように思う。

 死んだか俺。流石に不安になったが、俺の予想に反してエクレアがワンピースを脱ぎ出して流石に慌てる。

 

「エクレア!落ち着いてくれ!」

 

 どうやら俺の言葉には制止の力はないらしい。無理やり止めようとしたが遅かった。全くこちらを気にすること無くエクレアはワンピースを脱いでいた。傷一つない美しい身体が目に映る。エクレアの女性らしい部分に劣情が湧くがノエルの事を思い出して振り払う。

 こちらを見る目は相変わらずだ。1つ違うのは口元の笑みか。それがどうしてか捕食者の顔に見えた。あ、これ喰われるやつだ。

 教会でノエルを怒らせた後を思い出す。今のエクレアはノエルと被る。

 ───心が諦めたのが分かった。

 

 結果から言おう。エクレアと体の関係を持ってしまったので、ノエルに合わす顔がない。

 多分、次にノエルと会った時が俺の命日になるかも知れない。でも死にたくないので朝起きたらノエルに手紙を書こうと思う。

 謝罪の言葉とノエルへの愛の言葉。それと彼女との結婚を意識して指輪を買った事を。

 俺の横でスヤスヤと満足そうに眠るエクレアを見る。どうやって責任取ったらいいだろうか?

 教えてください。タケシさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───自分の記憶(なか)で大切なものが1つ消えている事にこの時の俺はまだ気付いていなかった。 




前から思ってたけどこの主人公、押しに弱すぎやしないですか?
エロゲーのヒロインかお前!?

エクレアは前世の名前で呼ばれてウッキウキの所を水をさされてお怒りです。既成事実を作る事で黙らせにきました。

ノエルに刺される事を気にしていますが、彼女がカイルを傷付ける事はないです。代わりに女の方にいきます。具体的にはエクレアを殺そうとします。
カイル君は頑張りましょう
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