勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。   作:かませ犬S

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63.問題の先送り

 ───武術大会から2日がたった今日。王都はまだ興奮冷めやらぬ様子で武術大会の話題を口にしている。勇者と剣聖の対決が良かっただの、先生との決勝戦は見応えがあっただの聞いてるこちらからすると申し訳なさを感じる試合だったと思う。

 最後の試合に関して言えば八百長に近い。どちらも本気でやっていなかっただろう。実際に先生と本気でやっていたらどうだっただろうか?

 苦戦はしたと思う。それでも最後には俺が勝っているのは予想出来る。自惚れではなく、客観的な判断だ。先生は恐らく剣士ではない。どちらかと言えば魔法使いだろう。

 戦っている時の先生の距離の取り方に違和感があった。あれは魔法使いが敵に接近された時にやる、間合いの取り方だ。サーシャも同じような動きをする。彼女の場合は近付かせないように魔法で牽制するし、何だったら飛んで逃げる。

 先生の本職は魔法使い。そして武術大会では魔法の使用は禁止だ。相手が転生者とはいえ本職ではない剣の勝負で負ける程弱くはない。

 

 そんな先生からマクスウェルを通して手紙を貰った。あくまでもバレないように本に挟む形で隠していた。ワシのオススメの本じゃよ、とマクスウェルがウインクしていたのが印象に残っている。

 あの人も大概演技が上手い。歳を取るとみんなあんな感じになるのだろうか?

 手紙の内容は決勝戦で先生と話した事の延長戦だ。彼はミラベルにバレない会談の手段として世界樹と教会の最奥部にある聖域を調べるらしい。また結果が分かったら報告すると書いてあった。末尾に返事不要としっかり書いてある辺りこちらの事を考慮してくれている。

 

 加護について少し書いてあった。先生との会話で少し聞いてはいたが、加護とは名ばかりの呪いだという事だ。

 呪いは教会で解呪する事は出来るが加護となると教会でも消す事は出来ない。俺にも他の転生者同様に加護が与えられており、その加護の影響が既に出ているだろうと書いてあった。人生を歪める程の力を持っているそうだ。それが何か早めに気付いた方がいいと。

 正直見当がつかないが何もしないよりはいいだろう。少し考えてみる事にする。

 加護は能力を与えた時に一緒に渡されている事が多いようだ。当然だがこちらに説明はない。加護を解除する手段が今の所ないのが厄介だと書いてあった。

 唯一ミラベルの加護を自力で解除したのが、初代法皇ルドガー・キリストフらしい。それもあって教会関連を先生は調べるようだ。

 

 最後に俺のパーティーの仲間であり、主軸である『勇者』エクレア・フェルグラントについて書いてあった。

 詳しい理由は会談の席で話します。気になる事も多いと思いますが決して彼女を怒らせたり発狂される事はしないでください。世界が滅びますと記されていた。太字で念を押していた。

 手が震えたよ。この手紙を貰う2日前に修羅場を迎える所だったのだから。

 兎にも角にも先生からの手紙を読み終えたので、マクスウェルに渡された本に挟む。また後日返却する予定だ。

 

 先生からの手紙は非常に読みやすかった。文字が綺麗で読みやすいのもあるが、こちら側を考慮した文面になっていた。

 前世が教師だと言っていたのに納得出来る手紙だ。同じ転生者という事でどうしても彼とタケシさんを比べてしまう。

 タケシさんからの手紙を読んでいる風を装って先生からの手紙を読んでいたので、嫌でもタケシさんの汚い字が目に映る。

 ごめんなさいタケシさん。本当に読みにくいです。何度も見ても地図は理解出来ないです。

 なんでこんな字になったんだろうと疑問に思いつつ彼の手紙を封筒に仕舞う。

 

「前のマスターの手紙を読んでいましたが、何か気になる事がありましたか?」

「いや、タケシさんの癖字が気になってた。もしかして読み間違えていないかと見直してたんだ」

「前のマスターは悪筆でしたからね、読みにくいですよね。勇者ロイドにも注意されていましたよ」

「勇者にもか?余程だな」

「はい!字を書くのは昔から苦手だと愚痴を零していました。この世界の字は特に書きにくいと」

 

 タケシさんの気持ちは分からないでもない。俺も慣れるまでは苦労したし、リゼットさんに随分と言われたよ。そのお陰で人並み程度に、しっかり読める文面は書ける。

 今のやり取りを見て分かる通りデュランダルは何時もと同じ調子だ。2人きりになると彼女から積極的に話しかけてくる。悩み事は解消したとの事だ。不思議に思いデュランダルに聞いたら『乙女の秘密を聞くのですか? マスターも男ですねー』と言われ、断念した。

 デュランダルは俺と先生とのやり取りを知らないので、それについて話す訳にはいかない。先生からの手紙にも出来るだけ内密にして欲しいと書いてあった。

 

「話は変わりますが、ノエルさんに手紙は書いたのですか?」

「あぁ、今書き終えた所だよ。これからセシルにお願いして教会経由でノエルに届けて貰うつもりだ」

「あれだけ注意したのにエクレアさんと関係を持つのはダメですよ。起きたら鞘に向かって『俺が1番愛しているのはお前だ』と言われたので、私の魅力にマスターが堕ちてしまったのかと思いました」

「いや、すまない。デュランダルにも悪い事をしたと思う。それでも手紙で書くよりしっかり言葉で伝えるべきと判断してな」

「もう少し考えて行動して欲しかったです。他の人が見たら剣に愛を囁いている変人にしか見えないですよ。私はマスターの愛を受け止める事が出来ますけど!」

 

 エクレアが俺の部屋を出た後だな。ノエルに手紙を書く前にしっかりと謝ろうと思いデュランダルに話しかけた。正確に言うとデュランダルが収まっている鞘だが。

 ノエルが盗聴器を鞘に仕込んでいるので、盗聴器越しにひたすらノエルに謝った。俺からもノエルに手紙を出すので出来ればノエルからも俺に対する文句だったりを我慢せずに書いて送って欲しいと伝えた。

 あくまでも盗聴器なので返事はない。代わりにデュランダルが反応してくれたが、我に返ると随分と恥ずかしい事をしている事に気づいた。

 事情を知らない人が見たら変人にしか見えないだろう。

 

 さて、もう1つの問題であるエクレアの件だ。先生に謝りたい思いがある。手紙を読む前だったのでどうしようもない事ではあるが、エクレアを怒らせる所だったと思う。

 朝、お互いに目が覚めて顔を合わした時だ。俺の方は非常に気まずかった。エクレアは昨日の夜の事を思い出したのか顔を赤くしていた。

 改めて彼女と向き合って話をした。

 俺がノエルと婚約をしている事。神の祝福を受けているので俺は彼女との婚約を破る事は出来ない。それにノエルに不満がないので魔王を倒し魔族の問題が解決したら彼女と結婚するつもりだと。

 エクレアは怒っている様子ではなかった。不満そうな表情で頬を膨らませていた。

 

 改めてエクレアに確認した。エクレアは俺の事が好きなのかと。何度も縦に首を振るエクレアに心が揺れたのは内緒だ。ギュッと俺の体に抱きついてきて、どれだけ俺が好きかと喋れない代わりにアピールしてくれた。

 隠す必要がないので言うと何回もキスされた。流石にここまでされるとエクレアが俺に好意を持っているのは分かる。

 その好意を嬉しく思いつつ、ノエルという婚約者がいるのでその思いに応えられない申し訳なさはある。

 エクレアからとはいえ行為にも至っている。それで責任を取らないのは男ではないだろう。ここで逃げたらリゼットさんに合わせる顔がない。いや、まぁ既に女の敵みたいな事をしてるから合わせる顔はないのだが。

 

 さてそこからエクレアと行ったのはこの問題の着地点をどうするかだ。彼女の好意は嬉しいが応える事は出来ない。だが、エクレアがそれに納得するかと言えばそうではない。

 納得していたなら昨日襲ってこなかっただろう。ノエルにもエクレアにも不誠実な事をしたくないので正直に話して、2人でどうしたいのか確認しあった。

 結果から言おうか。ノエルとエクレアと俺の3人で改めて話し合う事になった。エクレアは俺の1番でありたいらしい。細かく確認したらノエルが2番目なら2人目も許すみたいな感じだった。

 どちらも俺の1番でありたいらしい。これは揉める。間違いなく修羅場を迎える気がする。

 

 なので1つ決め事をした。教会の神官の立ち会いの元で3人で話し合おうと。エクレアは合意してくれた。目が私を選んでと、強い眼差しだったが。

 問題の先送りとも言う。とはいえ当事者が1人足りないのでこの場でどうこう出来ないので仕方ない。俺の気持ちの問題ではあるのだが、どちらを選んでも多分取り返しが付かない事になると予想出来た。

 なので最悪を予想して、神官を間に挟む事にした。悪いな神官。俺と一緒に死んでくれ。

 

 後はノエルからの返事の手紙を待つだけだ。正直怖くて手が震える。ノエルの反応が怖くて仕方ない。情けない話だ。

 既に分かっていると思うが俺はノエルを選ぶつもりでいる。エクレアが納得してくれるかだな…。憂鬱な気分だ。

 

 セシルに手紙を渡してからサーシャの所に行こう。約束していた魔法の練習の為だ。 

 

「立ち会いの神官をセシルさんにお願いしたらどうですか?」

「それだけはやめろ」

 

 ───間違いなく誰か死ぬ。それだけは分かる。





展開遅くて申し訳ないです。
以下、ストレス発散の為の悪ふざけ。








俺の名はカイル!勇者パーティーの傭兵だ!
今日俺はついに俺たち転生者を玩具にして遊ぶミラベルの居城へと辿り着く事が出来た!

「とうとうここまで来たのねカイル」
「あぁ!5人いる四天王も全員倒したし、仲間にいた魔王も裁判を起こして仲間とフルボッコにした!剣が初代魔王だったりタケシさんの情報も大した事なかったし俺の記憶が無くなったり色々あったが、お前を倒す為にここまできたぜ!」
「全部見てたから知ってるわ!先に言っておいてあげるわ。私の神としての権限はついさっき書類仕事をミスした件で剥奪されたから、今の私は貴方でも倒せるわ!」
「ウオオオいくぞオオオ!」
「さぁ来なさいカイル!」


カイルの勇気が世界を救うと信じて…!ご愛読ありがとうございました!
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