勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。 作:かませ犬S
「エクレアと何かあった?」
なんで
途中サーシャがこちらを見てニヤニヤしていたのは知っている。少しばかり嫌な予感はしていたが、どうやら的中していたようだ。
「すまない、何の話だ?」
「流石に誤魔化すのは無理があるわよ」
こちらを見てサーシャがクスクスと笑う。どうやらサーシャも確信を持って言っているようだ。どういう事だ? 観察眼が良いのは知っているがどうしてもこうも的確に当ててくる?
「不思議そうね?」
「そうだな。何故、そう思ったんだ?」
「2つあるのよ」
「2つ?」
「1つは昨日ね。カイルとの約束もあったし、宿屋までカイルを迎えに行ったのよ」
「昨日の事か、申し訳ない事をしたな」
元々魔法の練習は昨日を予定していた。が、エクレアと色々あった後なのでそれどころではなく日にちを1日ズラして貰った。心を落ち着かせる時間も欲しかったしな。
「その時にたまたま出くわしたのよね、エクレアと」
「エクレアと?」
「出かける所だったみたいね。久しぶりに会ったし挨拶したのよ。そしたら、それはもう嬉しそうな顔だったわよ。欲しいものが手に入った子供のような表情かしら? どこに行くのか聞いたら温泉に行くみたいだし、あたしも色々考えたわけ」
「……………」
「決め手はカイル、貴方よ」
「俺?」
サーシャがクスクスと笑っている。こちらに近付いてきて俺の首にソッと手を添えた。彼女が背伸びしてめいいっぱい手を伸びしているのが分かる 。身長差があるから無理してないか?足がプルプルしている気がするんだが。
「首にキスマーク付いてるわよ」
サーシャの顔を見ると嘘を言ってる訳ではなさそうだ。エクレアに付けられたのだろう。しっかりと確認していなかったな。
なるほど。セシルに手紙を渡しお願いした時に彼女が不機嫌だった理由が分かった。キスマークを見られたんだな。
また別の問題事が発生した気がする。
「あら、否定しないの?」
「ご察しの通りという事だよ」
「それはそれで面白くないのよね。あたしの告白しっかり聞いてなかった?」
「聞いていたよ」
「ならあたしの気持ち分かってるじゃない。エクレアより先にあたしを抱きなさいよ」
流石に疲れたのか首から手が離れていった。椅子に座ってる時ならともかくお互いに立った状態だと身長差があるからな。
実際に年上だし、お姉さんって感じで話しているのは分かるが小柄な所為でどうも格好がついていない。
「からかってるだろ?」
「やぁねぇ、あたしも本気で言ってるわよ」
その割にクスクスと楽しそうに笑っている。恐らく本気で言ってはいないだろう。あまり反応するとサーシャが面白がって余計にからかわれる気がする。
「俺が本気にしたらどうするんだ?」
「その時は相手をするわよ。あたしもそれを望んでるから構わないわよ」
改めて彼女を見る。
身長は130あるかないかぐらいだろう。ドワーフの平均より少し小柄だ。今日は魔法使いとしての装いで来ているのかマクスウェルと同じ紺色のローブを身に纏っている。小柄な体型に反して胸が大きく、酒場の客がよく鼻の下を伸ばしているのを見かける。
俺が視線を胸に向けていたら、からかわれるのが目に見えているので直ぐに逸らす。
胸元に届くか届かないかぐらいの栗毛を首元で纏めて、右肩から前に垂らしている。ルーズサイドテールなんて呼び方だっただろうか? 前世の妹がそんな髪型をしていたなと不意に思い出した。
髪と同色のぱっちりした大きな瞳と三日月のような形の眉、頬はお酒を飲んでいた為か少し赤い。
贔屓無しで見ても綺麗な女性だと思うが。
改めて上から下までサーシャを見ると思うことがある。
なんというか犯罪臭が凄い。彼女は既に成人しているし、何だったら俺の何十倍も生きている。歳の話しは基本的に女性にはNGなので言う気はないが、実年齢と見た目が噛み合わないにも程がある。この見た目で500歳超えてるんだよなサーシャは。
「ねぇ、今失礼な事を考えなかった?」
「イエ、ソンナコト考エテナイデス」
「なんでカタコトなの?」
やはりというか感の鋭い女だと思う。観察眼も良いし彼女の前では隠し事が出来ない気がする。それはさておきそろそろここに来た目的を進めたい所だ。
「いや、すまない。それよりサーシャの事はなんて呼んだらいい?」
「急にどうしたのよ? いつも通り呼びなさい」
「いや、今から魔法を教えて貰うだろ?教えを乞う立場だし敬った方がいいかと思ってな」
「ジジイじゃあるまいし、そんな事あたしは気にしないわよ。何時も通りサーシャって呼んで。あ!どうしてもって言うなら『愛しのサーシャ』って呼んでくれて構わないわよ!」
「よろしく頼むサーシャ」
「少しはノリなさいよ!」
言ったら言ったでめんどくさい事になるのは目に見えている。魔法を使う為にデュランダルを持って来ているので今のやり取りもノエルに聞かれているしな。下手な事は言ってはいけない。
「それで魔法についてどこまで教えた方がいいかしら?」
「最低限は知っているつもりだ。ただ肝心の『メテオ』の詠唱は知らないんだ。使えると思ってなかったから調べていなくてな」
「詠唱だけなら話しは早いわね。と言っても本を読んだだけだと身に付いていないと思うから1度見てから指摘してあげるわ」
「心強いよ」
さて、改めて魔法について振り返ろう。魔法を使うに当たって必要なのは
魔力があったとしても属性適正が間違っていればどれだけ試行を繰り返しても魔法は発動しない。逆の場合でも同様だ。属性適正が合っていたとしても魔力が足りてなければ魔法は使えない。
俺の場合は後者に当たる。と言うよりも魔法が使えない者の殆どは魔力が足りていないから魔法が使えない。
属性適正に関しては教会に行けば分かるので、適正を間違えて苦労するという事はない。
学者たちが必死に研究をしているが今の所生まれ持っての魔力を増やす術は存在しない。それ故に魔法使いとしての才は生まれた時に決める。努力ではどうしようも出来ない壁というものがある。
俺も魔力が足りなかった為『メテオ』が使えなかった。だが、魔力不足はデュランダルの蓄積によって補う事が出来た。俺にとって念願の魔法が使えるという訳だ。
さて、魔法を使うのに必要な最低限の土台は準備出来た。当然だが土台だけでは魔法は発動しない。
魔法は属性毎に魔力の流し方が異なる。正しい魔力の流し方をしなければ魔法は決して発動しない。教会で適正を知るのはその為だ。
魔力の流し方で重要なのがスタート地点とゴール地点。スタート地点である部位に魔法を使う際に必要な魔力を溜めて、血液と同じように体中を巡らせゴール地点まで運ぶ。
その魔力の流し方と使う魔法の名前さえ分かっていれば詠唱がなくても魔法は使える。
俺が使う『メテオ』は火属性に分類される。火属性の魔力のスタート地点は右手だ。右手から始まり、頭→左手→左足→右足と時計回りに体中を流れゴール地点である右手へと帰ってくる。
属性毎にそのスタート地点とゴール地点が違うので、複数の魔法を使う際には注意が必要らしい。
例外を除いて基本的にスタート地点とゴール地点の部位は同じで、体を一周して戻ってくる感じだ。
『雷』は頭、『水』は左手、『土』は左足、『風』は右足。それぞれスタート地点から魔力を流して時計回りで体を巡ってスタート地点の部位に帰ってくる。
例外は『聖』と『闇』。『聖』のスタート地点が左手で他の属性と違い反時計回りで体を巡ってスタート地点の部位に戻ってくる。
『闇』属性のスタート地点は右手。『聖』属性同様に反時計回りで体中を巡るが、他の属性と違い『闇』属性はスタート地点とゴール地点が違う。右手→右足→左足→左手と巡ってゴール地点が頭となる。
他の属性とは明らかに違う魔力の流し方なので魔族が自力で発見出来なかったのも納得だ。
魔法の流し方と使う魔法の名前は分かっている。必要な魔力も蓄積で貯めた。
魔法の威力向上に必要な詠唱もたった今、サーシャに教わった。幼い頃に教会で教えて貰い、自分の魔力不足故に諦めてきた『メテオ』をとうとう使えるらしい。
「目が輝いてるわよカイル。そんなに嬉しいの?」
「あぁ!サーシャに聞いた日からこの日を楽しみにしていた」
「そういう顔も出来るのね。可愛いわね」
サーシャの言葉に反応すると長くなりそうなので無視だ。『メテオ』だぞ『メテオ』。ゲームや漫画で出てくる魔法の中でも最高峰の威力を誇る魔法だ。
それはこの世界でも変わりはない。『メテオ』はトップクラスの破壊力を誇る大魔法だ。
それを今から使える。ワクワクするな!
デュランダルから蓄積で貯めた魔力を引き出して右手からスタートして体中を巡らせる。この時に魔力の流し方を間違えないように集中して行う。
サーシャから教わった詠唱も噛まずに言えた。完璧だ。魔力がゴール地点である右手に辿り着いた。後は魔法を唱えるだけ!
「『メテオ』!!」
体中を巡りに右手に留まっていた魔力が消えた。上空を見れば赤い巨大な魔法陣が浮かび上がっている。
対象も既に決めてある。堕ちろ!『メテオ』!
赤い魔法陣が輝く。魔法陣から炎を纏った隕石が現れ、俺が対象とした地点へと一直線に堕ちていく。
この時気付いた。思っていたより小さいと。全長で30cmくらいか?え?小さくない?魔法陣あんなに大きいのに…。
魔法陣から放たれた『メテオ』が地面に堕ち、直径1メートルくらいのクレーターを作った。
───俺の『メテオ』はしょぼかった。
魔法についての説明回のようなもの。
何度か話に出ている魔力の流し方についての話です。
カイル君が魔法を使わないので今の今まで書く機会がなかったです